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「家出してきた」 「は?」 それがおそらく、ことの発端。 果報は寝て待て カンカン… 端が錆びかけたお世辞にも立派とは言えない(むしろはっきり言えばボロい)階段を一定のリズムを刻みながら昇る。 空はとうの昔に日の光と別れを言い渡し、満ちるにはほんの少し満たない月が街を照らす。 何処かで犬の鳴き声。 漏れ聞こえるTVの音。 誰のものとも知れぬ言い争いの言葉。正反対の談笑。 何もかもをごちゃ混ぜにしたような世界。 頬をさらう風に、この季節特有の何とも言えぬ湿り気を感じて。 「あち…」 内心のぼやきが口をついて出た。 でもそれだけ。 空いている左手で少しでも涼しくなるようにと、風にぼさついた前髪をかきあげる。 僅かに硬い毛質。 その色は、この国の人とは違う彩。 気にした事など無いと言えば嘘になるが、今現在自分はそれを気にしてはいないのでまあいいかと思う。 それに、この違った毛色、そして自分では鏡を通してしか見ることの叶わない瞳の色も、好きだと言ってくれた奴がいる。 それだけで気にも止めなかった(悪い意味で気にしてはいた)人と異なる色が、急に変えがたいものとなるなんて案外自分も安い。 そんなことまで脳裏をかすめる。 チャリ… 思考を展開させても、道順を覚えてしまった足は迷うことなく目的の場所へと辿り着き。 にび色の扉の前。 ジーンズのポケットに無造作にねじ込んであった鍵を取り出そうと手を探り。 そういえば、そんな必要も無かったのだと思い当たるようになったのは最近のこと。 がちゃ。 機能の為にのみ取りつけられた飾り気の無いドアノブは、抵抗も無く回る。 それはこの扉に鍵が掛かっていないと言う何よりの証拠。 そんなことを考えながら、手は扉を開き。 身体を中に滑りこませると閉じた。 チェーンと鍵を2重にかける。必要無いと思うが、何かと物騒な昨今。用心にこしたことはないのだ。 しん…と静まりかえったオマケのような狭い玄関。 明かりは当然の如く消えている。節電節水。全ては金に変わるのだから。 使うのが少ない方が良いに決まっている。 それを納得させるのには随分と骨を折ったが。 なんだか今日は物思いにふけることが多い気がする。 やはりこのじめじめ…としか形容しようがない季候のせいだろうか。 後少しで履き潰してしまいそうなスニーカーを整える事も無く脱ぎ捨てて、すぐ部屋に向かう。 向かうと言ってもほんの少し、1、2歩進んだ程度。 それくらい狭い部屋。 ぎっぎっと床板が、体重を移動させるについて鳴る。 やはりオンボロというのが相応しい。 その音に反応したのか、まだ明かりも無く窓からの外灯のみを頼った暗い室内で闇が動いた。 「…んぁ?」 もぞりとそれは身を起こし、しばらくの間キョロキョロと顔を左右に振っている。 己の神経に障った音の原因を探しているのだろう。 まだ半分寝ぼけたような緩慢な動き。 それはしばらく続いて。 唐突に原因を認めガバリと身を起こす。 「…ニクス!」 「……ただいま…士朗」 暗闇だからはっきりとは分からないが、士朗は満面の笑みを浮かべていたのだろう。 きっと尻尾が生えていたなら盛大に振りかねない。 そんな相手の様子に、帰宅を報告する言葉尻も小さいものとなる。 なんのことはない。 俺だって恥ずかしい。 「おかえりぃ〜♪今日は早かったんだなー」 にこにこにこ。 そんな表現が似合いそうな顔が、すぐ近くに寄ってくる。 ようやく暗闇に慣れてきた瞳に士朗の銀の髪が映る。 サラサラと梳けるような、それが案外針の様にしっかりしていたなんてよくある話。 そっと手を伸ばせばやはり、期待を裏切らずそれは芯を持ち程よい硬質を感じさせる。 そのまま上下に撫でてやると、空のような青い瞳がすぅと細まった。 思わず、無言のまま口づける。 「ンン…」 強引な、けれど触れ合うだけのそれ。 湿気のせいかいつもよりしっとりしと感じる唇。 そこに舌をのばし、けれど内には潜りこませること無く表面を舐めて離れた。 士朗の焦点が、先ほどより少しずれているのは寝ぼけているわけではないだろう。 「いい加減、床で寝るのはやめろっていったろ?」 その癖で一度季節はずれの風邪を貰ったのは誰だ。 言外にそう伝えれば、 「む…いや、ついこう…うとうとっとしてたら…さぁ?」 士朗はもごもごと言い訳めいた言葉を口にする。 「なら布団に行けよ。ほんの1メートル程度なんだから」 そう。 士朗がよく眠ってしまう床と、本来その意味で使われるはずの寝床は、薄い壁一枚しか隔てておらず。 その気になれば5秒とかからず辿り着けるのにも関わらず、だ。 士朗は床でよく眠る。 「まさか、今まで高級な寝具を使っていたので、床が案外気持ち良くて…なんて腹の立つ理由じゃないだろうな?」 それはムカツク。 どうせこの部屋の布団は使い古しのペシャンコだよ。 冷たいフローリングの方が、これからの季節適してるかもな。 半ばやけくそのようなため息をつくと、士朗はきょとんとして悪びれも無く。 「エ?だって、ここの方がニクスが帰って来た時に気付けるだろ?」 それに『お帰り』も言えるしな。 絶対に天然だ。 確信した。 「……んむっ?」 再び口を塞がれて、士朗は驚いたようだった。 それはそうだろう。前触れなんて置いてやらなかったから。 伝わる熱と柔らかさを軽く味わい、すぐさま舌を薄く開いた唇へと差し入れた。 生暖かい自分と同じモノが先端に触れ、意思を持って絡み合う。 それでも足りず、更に奥。内壁。舌の裏。全てに這わせる。 震え始めた士朗の体。 それを支える為に左手で肩を抱きこみ頭を支え、足を絡めてやる。 しかしまだ安定とは言えない状態で、ニクスは右手を塞いでいた荷物を床へと置いた。 とす…というその物音に、士朗は気付く余裕などないようで。 ようやく自由になった右手で腰の辺りを掴み、ぐっと引き寄せた。 「ん…うぅ…む…」 僅かな呼吸の合間に鼻から漏れる喘ぎ。 そんな些細なことに熱を持ちはじめる自分。ああ、あさましい。 でもそれが嬉しくもあり。 長い口付けの後、潤んだ青を真っ直ぐに見つめて。 「…士朗…」 囁けば。 「……メシ……」 ああ、色気の無いことを言うこの唇。 ぐぅと士朗のお腹から情けない鳴き声。 そんなことではもう、着いてしまった火は消える事などなくて。 「1回したらな」 その言葉に不満そうに唇を尖らせた様にすらやられている辺り。 自分は末期だと思ってしまった。 もっとも。 そんな態度をとりながら、期待に潤んだ瞳を見せた士朗も同罪だとは思ったけれど? 「あーあ、やっぱり冷めちまってる」 結局1回で終われるはずが無く。 床で1回。布団で2回。 一つが2人に戻った時には、すでに外は白々と明け始めていた。 士朗は腰に毛布を巻いただけのあられもない姿(士朗曰く、男同士なのに何を今更、ということらしいが)で、床に置いたままになっていた袋をがさがさと漁っている。 そこには2つの簡易容器。 表面には『吉野○』の表記。 今日の…ただしくは昨夜の夕食or夜食として買って来たものだったのだが。 それらは当然の如く冷めていた。 「別に冷めてたって食えるだろ」 なんでもないことのように口に出せば、士朗はぷーっと頬を膨らませた。 それが20を過ぎた男のすることか…? 「俺はあっつい方が好きなんだよ!猫舌のニクスと違って」 別に比較する必要はないだろうに。 この食事代も光熱費も、今現在すべて自分が1人で負担しているのを知っての口ききだろうか。 「じゃあしないほうが良かったか?」 少しばかり意地悪をしてやろうと思い、そんな風に投げやりを装って応えると。 士朗はパッと頬を上気させて、視線を袋に戻した。 そしてぽつりと一言。 「してくんなきゃ…ヤだ」 ああ。 やっぱりコイツにはかなわないと思った。 「家出してきた」 「は?」 「行く場所がない」 「それで?」 「ニクスしか思いつかなかったんだけど……」 その様子。あんまりしょぼくれているから。 「んじ ゃ俺んちくるか?」 思わず言ってしまった。 運の尽きってやつ。 それとも。 何かを掴めた? ただ、光熱費と食費が一度に上がった事により。 生活維持のためバイトを増やしたことだけは、事実。 了 |
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まずはこのSSを親愛なるイチイキクコ様に奉げます<返品可 事の発端は茶にて。 いちゃごろのニクシロなんてDOよ。そんな気持ちで書き始めたのデスが。 理想は。 「チャー○ーグ○ーンを使うとぉ〜手を繋ぎたくなぁ〜る♪」 というお買い物ラブラブだったり。 あちちのキッチンラブだったのですが。 気付けば何の変哲もないぼんやりSSに。<汗 ああ、イチャゴロ(いちゃいちゃ&ごろごろ)のニクシロははるか彼方…よよ。 士朗のかわいこちゃん度が飛躍的にUPしてしまったとか。 ニクスの良い男なのに惚れてる女にゃ滅法弱いぜタイプ変化とか。 これら原因はすべて私の浮気のせい。 ニクスの中に油女シノ(NARUTO)と海馬瀬人(遊戯王)。 士朗の中に犬塚キバ(同上)と城之内克也(同上)。 そんな諸々要素が加わっちゃってもう大変。 いや、城之内くんて可愛いですね<脳内飛躍。 すんません。とりあえずエロ落ちは限界だったからです。 描写するともっと長くなるから嫌<正直過ぎ。 |