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開放2 「っ…いぁっ…」 濡らすことも無く乾いた指を、当然だがセムの内部は拒絶し。 強い抵抗感がかたくなに進入を拒む。 しかしそんなことは意に介せず、ジャックは腕の力を更に強めた。 やがてその力に負けて少しずつ、ずぶずぶと内部を侵しはじめる筋ばった指。 耐えがたい異物感がセムを支配する。 臓腑を下からえぐられているようだった。 ぐり…と中のものが奥へ進もうとするたびに噛み締めた唇から血の気が引いた。 ちり。 いつのまにか噛み締めた唇が切れ、口内に鉄さびの味が広がる。 舌に馴染まぬそれを、息を詰めて嚥下する。 喉を過ぎたものが胃に収まる。 そうしていくことで、その流れを意識しようと勤めることで、意識と離れかけた現実をなんとか脳裏に再び刻み込む。 右手は自由にならない。 肩は今だ床に縫い付けられたままだ。 しかし左手なら。 利き手ではないのが辛いが、それでもこの状態を逃れることは出来るはず。 振り上げて、表情の読めない顔を殴り飛ばして。 そうすれば。 そうすれば。 思考は程なく終わり。 「…ジャックッ!いい加減にッ」 振り上げかけた左手。 怒号の含まれた声。 は。 「入れるよ」 ずり…とふいに抜かれた指。 その感覚に対する脱力感・開放感。 そして囁かれた(言い捨てられた)、それに相反する言動。 順ずる行動に。 「…ひっ!」 新たな痛み。 前を上回る異物感・圧迫感で。 押しつぶされた。 「 ッ ! ! ぁ」 息が出来ない。 声にならない。 たかだか指一本。それも対して慣らしもせずに、ただ一度戯れのように侵入しただけの。 慣らしたといえるはずもなく。 まして女のように自然と濡れるはずもなく。 あきらかに狭い入り口へと、押し付けられた指をはるかに上回る異物。 それは乾いた内壁を擦り、奥へと引きちぎろうとしているのではないか。 痛い 痛い 痛い 両手が必死に何かを求めるように空をかく。 いつのまにか右手も解放されていたが、それに変わり両足の膝頭は固定され。 意味も無くさまよう手。 こわばった足。 空回りする、役立たずの思考回路。 限界まで開かされた、本来受け入れるための器官ではない部分で。 ぴり…と外界に近く沁みるような痛みが走り。 どこか冷静な別の人格が、『ああ、裂けたんだ』と感じていた。 やがて熱い異物は血液のすべりを借りて、横暴に。 自分勝手に動きまわり、蹂躙し、すべてを食い尽くしていくのだろう。 そう思うと。 そう感じると。 急に痛みが引いた。正しくは感じなくなった。 もしかしたら血液のすべりのためもあったかもしれない。 裂けたと思われる部分は相変わらず変わらぬ痛みを訴え、全身は拒絶に凝り固まっていたが。 それでも痛みに対する恐怖は無かった。 ただ、早く終わってしまえばいいと思った。 もがいていた両腕は床に落ち、激しく上下していた胸は床と平行になる。 力の抜けた体は好きにしろと言っている様でもあり、投げ捨てているようでもあった。 歪み、睨んでいた瞳を諦めたように伏せて蹂躙される時を待つ。 だが侵入が全て終わり、投げやりに自暴自棄に捨て置かれたこの状況で。 いつまでも内部のものは律動せず。 ただ在るだけであった。 時間にしてほんの数分。 短いような、長いような、沈黙の後。 ぱた … 暖かい何かが、瞼を伏せたままのセムの頬に落ちた。 ぽた ぱた た ぽた それは止まることなく、次から次へと頬をすべりあごのラインまで。 零れ落ちる。 降ってくる。 いぶかしく思い。 うっすらと開かれた紅い瞳。 そこに映し出されたのは、感情の消えた顔の中で嘆く深緑の瞳で。 「…ッ!セムを俺のものにしたいんだ!俺だけのモノにしたいんだッ!!」 唇から洩れた叫びは悲鳴に近かった。 続 |