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開放 3 ぱたぱた。 涙は止まることなく溢れ、零れ落ちて。 セムの頬を濡らした。 隠すことなく子供のように叫び、泣きじゃくる年下の姿。 ただしその猛りはセムの内部へとねじ込まれたままであり。 状況は明らかに彼のほうが悪いことをしているはずなのに。 まだポロポロと恥も外聞もなく泣く。 これではまるで、セムのほうが加害者に思えてくる。 男のくせに、こんなに泣いて恥ずかしくないのか… ぼんやりとそう思ってしまい。 力の抜けていた全身が、また違う意味で脱力した。 その瞬間に自分は彼のことを許してしまっていると、セムは認めた。 「…俺はモノじゃない」 不機嫌な、しかし先刻より嫌味のない声が響いた。 それがセムの口から発せられたものと知り、ジャックは涙のために閉じかけられた瞳を開いた。 そこに映った顔。 睨んでいるのにどこか穏やか。 きつい赤のまなざしの奥に、優しい光。 「セム…」 呆然とした。 セムに言わせれば間抜け面が、セムの顔を凝視する。 「誰がお前のモノになるんだ。俺は誰のものでもない、俺自身のものだ」 あきれたように。 むしろ小ばかにしたように続けられる言葉に、思わずカッとなる。 「だって!」 叫んだ瞬間、肩が跳ね上がってしまい。 「…いッ!」 どうやら反射的に、セムの内部をこすってしまったらしい。 頬が引きつり、歯を噛み締める表情。 それを見て、ジャックはようやく自分が何をしてしまったのかを正しく理解した。 むしろ、自分の暴走をやっと認識したというところだろうか。 「ご、ごめん!」 はっとなり、慌てて抜こうと身じろぎする。 それが更にセムの神経を尖らせているとも気づかずに。 「お前なぁ…わざと、か?」 ぎりぎり。 歯を鳴らしたまま、わざわざ区切って問いただしてくる。 目が、笑っていない。 ざざっとジャックの背中を冷たい何かが走った。 「わざとじゃない!わざとじゃ!!」 慌てて弁解する。 もちろんセムを組み敷いたままで。 なんだか酷く間抜け。 そんな気もしなくもなかったが。 とりあえずセムを怒らせたいわけではないのだ。 「じゃあどうしてこんなことをした」 「う。それは…」 直球で聞かれて。 むしろ責められているのか。 思わず返す言葉もなく、黙り込んでしまう。 視線がウロウロと空をさまよう。 まるで芯のないジャックの様子に、セムはため息をついた。 「…俺が男とキスしてたから、簡単に寝れるとでも思ったのか? それともお前、溜まってたのか…俺は手ごろな性欲処理か?」 俺も軽く見られたものだな… ふ、と蔑まれた目で見られて。 言葉でやんわりと跳ね除けられて。 「違う!俺はセムのことが好きだから…あんたのことが好きだから!!」 「だから強姦した、と」 言葉尻を取られて、涙がまたこぼれそうになる。 どうしたら自分の気持ちをわかってくれるのかと、ジャックは不安に押しつぶされそうだった。 「だって…だって仕方ないじゃないか! 昨日店にきたら、あんたがいて…俺の知らないやつとキスしてて…それも軽いヤツじゃなかったろ! 3分はたってたじゃないか!!」 もはや子供のわがままのようなジャックの言い分に、セムはポツリと。 「あのやろう…そんなにしやがったのか…」 と、まったく関係のない部分で怒りの火種をつけていた。 「だから俺、俺!」 「お前、そのあと最後まできっちりと覗き見してかなかっただろう」 なおも言い募るジャックに、ずばりとセムの冷たい一言。 「最後までって…見られるわけないだろ!!」 好きな人が他の男に寝取られるなんて、見られるはずがない。 自分はそんな神経は持ち合わせていない。 ジャックが怒鳴りかけ、再び肩がはねて。 「うっ!だか、ら。動くなっていってるだろう!」 再び激痛が走ったらしい、セムに睨まれジャックは言葉を飲み込む。 汗で額に張り付いた前髪を指でかきあげて、セムは嘆息した。 「あのあとなぁ…俺はぶん殴ったんだよ」 「…え?」 「だ・か・ら!俺はあいつをぶん殴って店から追い出したんだ。 当たり前だろうが!!」 二度と店の敷居を踏ませるか、あんなヤツ。 ぶつぶつと数え切れぬ文句を上げている表情は本気で。 本当にセムとあの男とは最後までなかったのだと知って。 それならば、今自分がしていることはなんなんだろうと。 視線を落とせば、上半身はほとんど乱れないスーツのまま。 下半身だけを光のもとにさらして、そこにねじこまれた自分の分身。むりやりにしたために、わずかに朱に染まって。 今更ながら。 自分こそ酷い人間ではないかと、ジャックは青ざめた。 「ごめん…」 「あ?」 まだぶつぶつと罵詈雑言を並べ立てていたセムの、耳元へ振ってきた言葉。 うまく聞き取れず、ぞんざいに聞き返してしまう。 「ごめん、ごめん、ごめん!」 自分こそ、もうセムの店へ顔を出すことなどできないではないか。 そんな資格などとうに無い。 子供のような勘違いと、思い違い。 くだらない嫉妬心で塗り固めて、セムをこんな目に合わせてしまった。 弱かった自分の心。 ぱたぱたと、再び涙がこぼれてくる。 こんなときにまで泣いて、まるで同情してもらいたいようで。 情けない。 それでも涙は止められない。 「…あのなぁ…お前はなんでも思いつめすぎだ」 そんなジャックの様子に呆れて。 本当に心底呆れて、セムは呟いた。 「ごめん…セムのこと本当に好きで…でもだからって俺のしたことはやっていいことじゃない…」 「当たり前だ」 にべもない言葉。それでも。 「でも、お前はそれぐらい俺のことが好きなんだろう?」 続いたのはジャックの気持ちを肯定する。 認めてくれる言霊で。 「好き…っだよ!自分でもどうしたらいいのかわからなくなるぐらい… もう頭ン中滅茶苦茶になるぐらい。 あんたのことで頭が一杯だよ!セムのことしか考えられない!」 告白はもっと気のきいた場所で。 もっと親しくなってから。 そんなことを思い描いていた、それはこんなにもボロボロとまるで自白するように情けなく。 あまりにも突飛に引き出されてしまった、隠していた本心。 「なら…もう少しマシなテクを見せてみろ… これじゃ俺は痛くてかなわんだろうが」 そうして囁かれた。 いや、ぶっきらぼうに吐き出された言葉にジャックはぽかんと口を開けた。 「…して、いいの?」 「…ここまでしておいて、何を今更なんだ? 第一、この状態はかなりきついんだ」 確かに今の状態。 ただ、セムの内部にねじ込んだだけの様子ではセムはきついかもしれない。 それでもすぐに抜く、という方法もあるのに。 「許してくれるんだ…?」 これは夢じゃないだろうか。 自分に都合のいい、いつもの夢。 ほうけたままのジャックの頬に、セムの長い指が伸びてきて。 「いった!」 ぎゅうとつねった。 夢ではない。 「やる気があるのか、それともないのか!?」 いらいらとしたセムの声に。 「やります!ていうかもう、俺頑張るから!!」 意気込んでは見たものの。 「いってぇッ!!お前、いい加減にしろッ!!!」 その反動でやはりセムの内部をきしませてしまい。 がつんと一発。 頭にコブシをお見舞いされてしまった。 ***** ちゅんちゅん。 外からは雀の鳴き声。 柔らかな朝の日差し。 結局あの後、床だけでは収まらず。 ベット(もちろんセムの)に移動しもう一度、というところをさすがにセムに止められて(殴られて)。 セムはベット。ジャックは床に寝ることになって。 朝を迎えた。 まだけだるさと寝起きのためにぼんやりとした頭で。 それでも昨夜のことを思い出すと、知らず口元が弛んでしまう。 ややあって、隣のベットから『うーん』と伸びをするセムの声。 「おはようッ!セム!!」 にこにこにこ。 念願かなったりの満面の笑みで迎えられた朝。 低血圧のセムには酷く辛かった。 しかも腰のあたりはじくじくと痛むし、体中がぎしぎしときしんでいる。 まったく最悪の目覚めで、今日が定休日でよかったと頭の中で理性的な自分。 あんまりにも目の前の彼。 昨夜無体を働いたやつが幸せそうなので。 「いっておくが、一度寝ただけで俺がお前のものになったと思うなよ」 「えー…」 明らかに不満そうな声。 口を尖らす、そのしぐささえ余裕に見えて。 むかつきを止められない。 「確かにこの前のやつとは、あの時寝なかったけどな。 それより前のヤツがそうだとは、か ぎ ら な い ん だ か ら な ! 」 それは言外に『以前は関係がありました』と言っているような物。 しかも相手はそいつだけではないと言うことで。 「ちょ…セム!?」 それに気づいたジャックが慌てふためきだすのをいいことに。 「とりあえず着替えるから。 お前は出て行け!」 げいん!と。 部屋から蹴り出されてしまった。 そしてご丁寧にも扉を閉められ、あまつさえ鍵をかけられて。 「せ、セムー!?どういうことなんだよ!」 驚き扉にすがるも。 部屋の中からは。 『いてーッ!畜生!!』 という、不満げなセムの声しか聞こえてこなかった。 好き 好き 好き 貴方のことが誰よりも それだけで何もかも許されると思うなよ? だからこの気持ちは、絶対に言ってやらない。 了 |
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結局シリアスで始めたはずなのに、ラストギャグ落ちに。 何故。 多分、瀬無(パソコンで一発変換)関係だとどうにもセムの方が立場的に強いため。 攻キャラを喰ってしまうんでしょうね… この話でセム>ジャックという力関係に落ち着いたと思うのですが、いかがでしょう。 とりあえずこれで、当サイトにおけるクジャセムは第一部完という感じです。 まあ一度はできたんでいいんじゃないですか。<投げやり。 許してもらえてよかったね、ジャック。<捨て鉢。 次にはきっと出来上がった後の二人とか…あ、ムリか。<酷。 おそらく代わり映えの無い二人だと思います。 あ、ちなみにセムは経験豊富ってことで。男にも女にも。 男相手にはネコ希望です。<受> その場限りの付き合いのできる相手ばかりを選んでいたんじゃないだろうか。精神的大人とか。あとくされのない。 セムこそ体のつながりは性欲処理のためという感じだと。 愛や恋という情熱は全て妹を育てるためと、デザインに費やしてしまったと思っています。 |