『街中』


「あ」
「…あ」

同時に漏れて重なる声。
ざわざわとした人のざわめき、無数の足音。
スクランブルの交差点。

そのど真ん中で、士郎は自分が今あまりにもマヌケな顔をしていると思った。
そして彼の目の前にいる人物もまた、同じ事を考えていた。

「……サイレン」

なんでこんなところで会っちまうのか。
ホームになっているゲーセンとは遠く離れている、しかも交差点のど真ん中。
自分よりも頭半分高い彼を、士郎は複雑な表情で見つめた。

良く見ればサイレンは常なる彼とは随分違う装いであった。
普段ゲーセンで会う彼は動きやすい服を基本としているようで、ダサくならない程度のジャージや頭からかぶるだけのボタンも何も無いトレーナーやパーカーを愛用していたように思う。
しかし今のサイレンはダークブルーのスーツをきっちりと着こなしている。
マヌケ面を浮かべている顔を除けばかなりの男前だろう。

結構…もてるんじゃねえの?このマヌケ面さえなけりゃ。

かなり失礼な感想を持ちながら、改めて斜め下から伺うようにサイレンの顔を見る。
そして。
士郎は鳥肌が立った。

大口を開けて信じられないものを見たようなサイレンの口元が、1度閉じるとこんどはニマーッという笑みを浮かべたのである。
さらに言うなら青い目は喜びで一杯と言う感じだ。

危険だ。

士郎の第六感がそう告げる。
この事態は緊急を要する。早急に手を打たなければ!

しかし士郎の心の警告は間に合わなかった。

「士郎チャーーー――ンvvvvvvvv」

突然の黄色い絶叫に、交差点にいた中でも野次馬根性の強い者達が絶叫の発進元を振り返った。
そして目を丸くする。

そこにはビシッとスーツを決めた外人が、青年を熱く抱擁している姿があった。
そう。それはハタから見れば完全なラヴシーン。その実、青年がもがいているのなんて目に入らない。
しかも場所はおあつらえむきにスクランブル交差点の中央で。
TVカメラがないかと2〜3人は周囲を見まわした。
そして通好みのお姉さん達は黄色い声をあげた。
仕事を急いでいた男達は見なかったことにしてそそくさと去って行った。
孫を連れたお婆さんは「見ちゃいけないよ」と孫に教えた。
孫は疑問を持った。
犬は感心を持たなかった。

要するに。不特定多数の前でサイレンは士郎を熱く抱きしめたのである。

「コンな所で士郎ちゃんに会えるなんて!今日はラッキーデイでーすネ!」

しかも口は好き勝手な事ばかり連ねている。
士郎は何か言いたかった。
しかし万力のような力で締め付けられて、ワイシャツの胸に顔を押し付けられているのでぐうの音も出ない。

「しかも士郎ちゃんジャージ姿!ラブリイでーすv」

サイレンの口は止まらない。
なんとかしなくては。
士郎はサイレンを押し戻そうとしながら考えを巡らせる。
巡らせて…ある一点に気づいた。

ていうか待て。
お前さっきから俺の名前連呼してないか…?
こんな人通りの多い所で……

悩む士郎の耳に更に追い討ち。

「士郎ちゃん今日もやりまショウねーv」

それはサイレンにしてみれば勿論2DXのことだったりするのだが。
主語が抜けていた為、周囲の黄色い声がひときわ高くなった。

ぷつり。

その歓声が響いた瞬間。士郎のなかで何かが切れた。

「ふっざけんなーーーーーーッ!!!」

それはまさにクリティカル。
渾身の一撃と言っても良い、士郎が今まで21年間生きてきた中でも1.2を争う威力だった。
怒りと共に突き上げられた右の拳は、立派な顎鬚ごとサイレンの顎に突き刺さった。
竜巻をも巻き起こすようなその力は、サイレンの巨体を中に浮かせた。

そして1メートルほど離れたアスファルトに、砂埃と共にサイレンの体が落ちると。
カーンカーンカーン!
どこからかリングベルの音が響いた気がした。

途端、周囲の人々から熱い拍手喝采。
何故か飛んでくる紙ふぶき。空き缶。

それらを認識した瞬間、怒りに青くなっていた士郎の顔が真っ赤になる。
そして。

「わあああ!」

脱兎のごとく駆け出したのであった。
去りぎわに士郎の目じりに水滴が溜まっていたというのは、すれ違ったサラリーウーマンの証言だ。
ウサギちゃんのようで可愛かったワ。とありがたい言葉までいただいてしまったのを、士郎は知らない。

残された人々は、歩行者用信号が点滅しているのに気付くと、今までの騒ぎを忘れたように無口になり本来の目的地に向かって去って行った。
スクランブルには、見事なストレートアッパーを食らいK.Oされたサイレンが、激しいクラクションのブーイングを受けるまで伸びていたと言う。



後日。
士郎の携帯に1通のメール。

『交差点で痴話喧嘩やらかしたって本当?   エリカ』



士郎がその日、もう1度サイレンをマットに沈めたのは言うまでもない。




オワリ。


あれ?ギャグ。
コンニチワ。2DXのSS(表)でははじめましてなのです。
ていうかあれ?
最初はサイシロ書こうと思って張り切っていたんですよ?でも出来上がってみたらギャグ?
サイシロは殆ど皆無です。なんで?
あ?あれれ?
書いた本人が一番わかってません。何故だ。
2DXはギャグの方がやりやすいってことでしょうか。いいけど。
ア…あんまり納得いかないぞ。
こんなんでよければ、初髭ポニってことで髭ポニ盟主の神威涼様へv
でもなんだかシロサイみたいだ……あ。

SSついでにうちのカプに付いて一つ。
サイレン士郎。基本です。サイレン御馬鹿な事ばっかり言っているようですが、実は心のなかはかなり大人&紳士。
本気の時は『士郎…』って呼びます。そんなサイレンにドギマギ士郎。そして照れ隠しアッパー(3コンボ)
ニクス士郎。美味しい設定。強引なニクスにたじたじ士郎。
エレキ士郎。実は腹黒エレキ。でも士郎は気付きません。師匠面してんの。
めざせいつか下克上。<……
エリカ士郎(士郎エリカ)。士郎かなりときめき。エリカも好きなんだろうけど表に出てない。
サバサバエリカ。ホモにとても寛容。士郎誤解だと涙。
セリカ士郎。友達・マブ達・悪友。YUZと3人でいたずら三昧。セリカがお姉さんぶってる。セリカのが年下だろうに。
父士郎。夢。乙女の夢。裏参照。

や。全部書けるように頑張ろう。