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ねえ、なんか足りなくない? 何が? 味。 何の味? 味がまったくないとおもうんだけど… え!? 鍋とコタツと真冬の夜空 新年会。 お約束のように、識の家。 前回のクリスマスパーティーでは欠席した、孔雀とデュエルも参加して。 皆で鍋を囲んだのはPM7:00。 さあ、食べようというところで。 先に一箸つけたナイアが呟いた。 「味無いわよ…?」 鍋を囲んだ面々に戦慄が走る。 味の無い鍋。 いわば水炊き。 それはそれで美味いとおもうのだが…何しろこの面子は濃い味がお好みだった。 「別に…食べられなくは無いとおもうけど…」 遠慮がちに言い出したのは士朗。 日本育ちの日本びいきな日米ハーフは、薄味がお好みだった。 和食は薄いのが一番と考えていた。 そんな士朗に集まる視線。 「鍋は濃くなきゃ食べた気にならんやろ!?」 ぐっと握りこぶしで力説したのは、赤い髪もまぶしいYUZ。 その髪色どうりというか、辛いものが得意な彼で。 酒には辛いものが合うと豪語している。 「そうですよね!師匠!!」 にこにこと賛同したのはYUZと古くからの師弟関係だと言っている、この家の主でもある識。 タコライスが好きという彼もまた、辛いものには目が無い。 というか、味が濃ければ甘かろうが辛かろうがいいというのが、彼の愛妻談であるが。 「デンジャーにホットがイイですねー♪」 訳のわからない日本語はサイレンの物で。 ホットドックが好きという彼もまた、味つけは濃いものが好きらしい。 先日、和食を共にした時その味に感動していた姿もみられたらしいが。 「別に食えりゃいいんじゃねーの」 とりあえず食べたいのはニクス。 彼にとってはただ飯ならなんでも美味いらしい。 いや、今回の新年会は会費を後ほど徴収するらしいが、その時までニクスがいるかといえば否であろう。 ていよく士朗辺りに支払をおしつけて悪びれもしないのである。 そんな彼の本日の財布の全額は、20円らしい。 「まあ、味が薄いだけなら…」 と無難に答えを出すのは、この面子の中でも一際場所をとっているジルチ。 他の面子にこっそり端に追いやられている。 麺類の好きな彼には、うどんが入っているならいいや程度の気持ちなのかもしれない。 「そうですね〜。水炊きも俺は好きですけど」 中途半端な敬語はエレキ。 この面子の男性陣の中では、一番若い彼は少し遠慮がちらしい。 「とりあえず飲むか!?」 といいつつ、もう日本酒コップ3杯目ぐらいになっているのがデュエル。 笑顔…と言ってイイのだろうか。 口を閉じていればそれなりにイケメン…といわれる彼は、大口を開けて上機嫌で。 その隣りでは孔雀がデュエルをあおるように、酒を次から次へと注いでいる。 「そうそう、とりあえず飲まなきゃ」 この二人をよんで、本当によかったのだろうか。 と、誰が思ったのかはあえて伏せておきたい所。 「何飲む?」 「…なんでもいいわ」 ちょっと離れた所で、二人の世界を作ってしまっているのはARMYとリリス。 リリスの方がふた周りかそれ以上身長は高いのだが、ARMYはそんなことは気にならないらしい。 自分がセレクトした飲み物をコップに注いであげている。 ARMYは未成年ということで強制的にジュースにされていたが、今は文句は無いようだった。 「熱いね〜」 そんな二人を笑顔全開で見ているのはケイナ。 剣山頭も健在で、頬杖を付いて非常に楽しそうである。 「でも、たしかキムチ鍋って…言ってなかった?」 「そうだよね」 声をそろえて正当なことを言うのは、振袖姿も眩しいエリカとセリカ。 その着物姿を『ビューティフルですネー』と出会い頭にサイレンが誉めた為、二人の男性が二の句を告げられなかったのも、秘密で。 彼女達の言葉に、台所にひっこんでいた識の奥さんが顔を出した。 「ええ、確かにキムチ…買っておいたけど。そこになかった?」 そこ。 と指差されたのは識の目の前。 皆の視線が集中する。 コタツの上には。 確かにあった。 キムチの特大瓶が。 しかし。 「あーーーー!!!」 空っぽの無残な姿で。 「わり。食べちまった…」 頭をかきながら苦笑するのは…識だった。 よくみれば、彼の前にはキムチの残骸とおもわれるものが付いた箸が置いてある。 「識ーーーーーーー!!!」 ぐつぐつぐつ。 温かい部屋。 鍋の煮える音。 そんな部屋に、怒声が響き渡った。 「じゃあ、買ってきて頂戴ね」 ぽいっ。 識の前に投げて渡されたのは、広告の裏に書かれた買物メモ。 そこには。 「…なあ、キムチはわかるとしてさ。その他のトイレットペーパーとか、粉ミルクとかは?」 おそるおそる問いかける識。 その問いに、さも当然そうに。 「ついでよ。ついで」 台所から声が返ってくる。 「あの…それで、代金は…」 返事はおおよそ検討付いていたが、聞かずにはいられない。 「自分で食べちゃったんだから、自腹」 それには、覚えの無いトイレットペーパーや、愛娘のための粉ミルクも含まれるらしい。 識家での力関係を垣間見た気がして、おもわず周囲は沈黙した。 『識って…尻に敷かれてんのか?』 これが殆どのメンバーの共通の思いだっただろう。 そして、妻の言葉にあえて反論する識ではなかった。 「じゃ…ちょっといってくるわ」 そうしてコタツを抜けて立ちあがる。 と、そこへ鶴の一声。 「識だけじゃ可哀相じゃない。もう一人ぐらいついて行った方がいいわ」 ナイアである。 持ち前の姐御肌でしきりはじめる。 そしてさらに追加。 「でも、こんな夜道を女の子に歩かせるなんてことはないわよね?」 釘刺しも忘れない。 ここで女性陣のお使い免除は約束された。 ARMYもみそっかすということで、はずされる。 「ジャンケンにするか?」 誰とも無しに男性陣はうなづきあう。 最初から女の子にいかせるつもりなど無かったし、いいのだが。 なんだか男の方が弱くないか、と視線が語っていた。 顔を見合わせ、うなづいて。 「せーの、じゃーんけーん…」 ほい! グー グー グー… 「……え?」 ちょき。 「いえーい!士朗の一人負けー!」 全員が固く拳を握り締める中、ひとりだけちょきを作ってしまった士朗は呆然としている。 そんな士朗に。 「はい、士朗。寒いから気をつけてネ」 エリカが笑顔で駄目押し。 手渡されたコートは、酷く温かかった。 「いってらっしゃーい」 全員に笑顔でほおり出され…いや、送り出される二人。 まさに『ポイッ』という擬音が似合うだろう。 玄関を出て数歩。 おもわず顔を見合わせる二人。 「じゃんけん…弱いな」 「……ほっといてくれ……」 二人分の白い息が空に向かって消えて行く。 見上げた空は満天の星。 冷えた空気が頬を撫でて。 「……行くか」 寒空を、スーパーまで歩いていく二人だった。 ちなみに。 二人が帰って来た時には、鍋の中身は殆ど空で。 転がった酒瓶を前に、もう1度今度はコンビニに走らされたのはここだけの話だ。 end |
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新年あけましておめでとうございます! そしてようやくキリリクSSの一本目を消費です。 なんとか全キャラだせたんじゃないかと…おもいます。 こんなんでいいですか?カリさん。 貴方向けにちょっぴり識と士朗を多めに出してみたんですけど。 途中までエレキのことを忘れていたのは秘密です。 誰かメンバーが抜けていたらごめんなさい。 大阪弁わかりません。ごめんなさい。 奥さん勝手に出しました。ごめんなさい。 もう何がなんだか。 とりあえずキリリク消化。 リクエストになってないですが;; 次はサイシロ…?久し振りに書きます。書けるかな。 |