桜咲。



桜はいつもその儚さを人に知らしめて、命が散る事を…





真っ白な髪を一房二房軽快に揺らし、周りをくるくる回る男の子。

真っ黒な髪を揺らしながら足を大きくひろげ一歩二歩、それを追いかける男の子。

まっさらな灰色の髪を風に遊ばせながらそれらを楽しく眺める女の子。

少しだけ離れたところでそこを微笑む人たち。



強い風にこの身を煽られ、腕が揺れてしまう。

その度に足元から感嘆の声が聞こえる。

「きれい…ねぇお兄ちゃんたち見て…とっても綺麗…」

「あはは、リリス、髪に花弁がついてる。」

「ほんとだ、とってあげる。」

微笑みと笑い声、真っ白な髪の男の子は楽しそうに笑って女の子の髪から花弁を掃った。

「そうだ、母さんと父さんに一枝もって行ってあげよう、な?手伝ってよセム。」

そしてうんと背を伸ばして私の腕に触れてくる。

…この子達になら、少しくらいは…
そう思って腕を少し下に下げてみる。
すると。

「…やめろよエース、木だって痛いんだ。それに折って行ったりしても母さんたちは喜ばないよ…」

黒髪の男の子は白い髪の男の子にいった。

「…そっか…そうだな…コイツも痛いのヤダもんな…ごめんな?」

白い髪の子は私の肌を優しく撫でてくれた。

「みんなーかえりますよー。」

すこし遠くから優しい穏やかな声がこの子達を呼んでそれに『はーい』と、
元気よく答えた。

「もうかえんなきゃ…」

白髪の子が声の方に駆け出した。

「セムおにいちゃん?帰ろう?お母さんが呼んでるよ?」

「あぁリリス…すぐ行くから、急がなくってもいいからな?走っちゃ駄目だぞ?」

「うん。」

どうしたのだろう?
なぜか黒髪の男の子はここにとどまっている。
帰らないの?

「…また来るから…」

そういってその子は笑って私に抱きついた。










…――あれから何年経ったのか。
何人の人が私の元で微笑みと悲しみを交わして行っただろう。
全てを覚えてる、全てが大切な私の一部…
でも会いたい、もう一度…もう一度だけ…
























――――――セム。



























「なんだ?」

ふとセムは誰かが自分を呼んだような気がして振り返った。
振り返った先にはいつもの様に赤毛を揺らして鼻歌を歌う奴が居た。

「おいジャック、お前俺を呼んだか?」
「?呼んでないけど?」
ジャックはキョトンとした顔をしてセムの方を向いた。
「いや…気のせいだったらしい。」
「そう?あ、なあセム知ってる?○×公園の丘にある大きな桜、切り倒す事になったんだってさ。」
その言葉にセムは反応した。
「それ…大きな丘にある狂い桜か?」
ジャックはセムは反応を返してきた事に「あれ?」と思った。
大抵こういう話は「そうか」程度会話が終わっていたから。
それが何故か異様に驚いているのだ
「うんそう、何年か前から時期がずれてて…群生地より早く咲くんだって。」
「…○×公園の丘にある大きな狂い桜…」


セムはぼーっと遠くを見て考え事をし始めた。
そうなってしまうと外から何を言っても聞かないことをジャックは知っていた。
それが今は桜が切られるという話で少し俯き沈んでいる様だった。
「…いつ…切られるんだ?」
俯いたままの小さな声はジャックに届いたようだった。
「えーっと。確か明後日だよ。」
「…明後日………。」

その日、この後ジャックはセムの声をあまり聞けなかった。
眼も何処か虚ろで、仲間や客が来ても対応に身が入ってなかったと思う。








深夜2時。

「明日…明日、あの場所が無くなってしまう…。」

セムは暗がりの中、電話の受話器をとった。
かける先は押しなれない場所だったが…ゆっくりすんなり押した。

プ・プ・プ…―――
『HELLO?』
向こう側から聞きなれない発音でよく知ってる声がした。
「俺だ…そう…別に用ってほどでもないんだがな…」
何となく気恥ずかしくて言葉がどもっている。
「いや…桜。…桜がみたくなってな…」

明日無くなってしまう桜の話はどことなく自分でするのは寂しかった。
それでも言わなければいけないことだから。
通話を切って自室へ戻ると散っていった桜の花びらが窓の外を舞う。
夜月に怪しく照らされて、つぃ…と、まるでさそっているかのようだった。

まだ開いたばかりだというのに、もう散っていってしまうなんて…
儚い…。
それだけでは片付けられな理不尽さ。



























―――――セム…エース…リリス…――――







公園の中にある少し小高い丘、セムは黒いコート羽織り風に遊ばせながらも
頭だけが見える木のところまで向かった。

「――エース…やっぱり来てたのか…」

上りきると自分より先に来てたのか、そこには真っ白な髪と同じ色の
自分と大差ないデザインのコートを強い風に靡かせて丘の上に佇む一人の男がいた。
己の姿を映したような姿はいつの日も変わることは無い。

「きちゃったよ…セム。」

丘の上はもはや工事中になって桜の側に行く事は出来なかった。
花どころか、葉一枚なく、その腕をむき出しにしていた。何処か痛々しい。
昼間はまだ幾人かの人々がこの木を懐かしみ足を運んでいたが、
もう誰も来ないであろう時間。
丘には枯れた大木を前に白と黒の対照的な男性がただ立っているだけという光景があった。
「…仕事は?」
セムが視線を木から離さぬまま聞いた。
「たぶん平気。チケットは取れるし?」
「…そうかよ…」
エースは遥々アメリカからやってきた、連絡したのは今日の午前二時。
『桜が見たくなった。』
それしか言わなかったのにエースは来た。長い距離を何でも無いように。
「…この桜…明日にはなくなっちまうんだな…」
「…あぁ…」
聳え立ち、しかし優しく葉音を鳴らすこともなくただ自分たちを見下ろしているだけの枯れている木。
セムがずっと上の方に視線を上げた。
そして、昨日の事を口にした。
「昨日誰かに呼ばれた気がした…優しくて、暖かくて…」
「力強い声…」
言葉にわって入ったエースはセムの声になぞって言った。
その通りだったのか、セムは否定することなく、そして別段驚く事も無い。
言った当のエースはセムとは反対に下を向いている。
「…お前も聞いたんだな…」
「まぁ…サウンドに雑じってたけどな…」
「…そうか、聞こえたのか…」
「…あれ…この声だったのかな…でっかいよなぁー…」

なんでもない、なんでもない会話、そして何故かこの場所に俺たちは来た。

懐かしいあの日。
決して戻ってこないあの日。

懐かしくて、楽しかった…あの日々。






「帰るか…」

「あぁ…」





木に背を向け光溢れる街へ帰る。。


ただ、強風が吹くだけの夜。
まとった服の端が木に惹かれるような表情を見せる。











そのとき、







「あ…っ」





ヒラ…―





「え…」








――ヒラヒラ…














――セム…エース…――











「嘘だろ…」

エースは信じられ無そうにポカンとしながら笑った。

…その光景に。















―――また会えて、嬉しかった…。





「…あぁ…」

セムの、きっとエースの中にも届いた声。

思い出の中微笑む家族。

あの日も。










「満開だな…」







たった一夜の狂い咲き。
満開の花弁を咲かせては散らすその姿。

『美しい』以外には声も出ないような光景。


思い出の中、今も思い出の中。







あの日の花は散り。
今この日の、この時の思い出は蕾をつける。











次の日





切られた木の袂、そこには小さな芽が青々と姿を見せていた。

























終わり。




桜には特別思い入れのあるnagiです。こんばんわ〜
桜には母性を感じてならないのですが、今回はそれを強く表せてたらいいなぁ、
と、思います。
子供って感じ取りやすいから、こういうのもありかな…なんて。
セムががさつですが;;うちのセムはこんなもんで、心のそこからセムが好きな方に申し訳が…
後エースとはご存知7thAAAの彼です。
nagiの脳内設定ではセムの双子のお兄ちゃんで陽気な大人の男なんで。
リリスのことは書いてありませんが、ちゃんとリリスにも声は届いてますよ。
こんな不完全なものではありますが。ムスミせんせーへ!!
そんなわけでMSNで急遽はじまった同モチーフによるSS交換!です!
「セムと桜」が今回のお題でした!
どうです、このほんわかちょっぴりせつなっぷり!しかもAAAが出てて、私的にはgood-coolを送りたいです!ビシッ★
桜が温かい感じで、私には出来ない表現等色々あって。
一読者として楽しむと同時に、同じ文字書きとして教えられることも多かったです〜
またこんな機会があったら、やりたいね!nagiさん!!にっこり!!

ちなみにnagi嬢のところに嫁いでいった私の桜とセムはこちらから→