手を伸ばせば

いつでも触れられる

いつでも触れてくれる



そんな 距離



だから気づかなかった



貴方の





痛みに






nocturne−ノクターン−





衣ずれのかすかな音。
まだ昏い部屋に、さらさらと響く。
静寂は死よりも闇に近く、ただ周囲を閉じ込めては放す。

嗚咽を聞いた。

誰よりも耳によく馴染む声の。

いままで一度も聞いたことの無い、嗚咽。


片耳はいまだ柔らかな枕に埋もれ、ただ髪から僅かに出たもう一方が音を拾う。
押さえ込んだ。
くぐもった。
意識を向けなければ捕らえる事の出来ないほどの、小さなそれ。


伝わるぬくもりの 「兄」



一刻ほど前の。
あの夢のような出来事を思い出す。
幾度となく頭を撫でてくれた手。
に。
はじめて触れられたような、感覚。
心。
熱。

ただ、嬉しいと思ってしまった。
一つになれると、思ってしまった。
それは間違いだったのか。


どちらが手を伸ばしたのか。
それは覚えていないし、問題でないと思えた。
誘ったのは兄と私。
それを受け入れたのも兄と私。

血のつながった。

たった一人の、うつし鏡。




まだ嗚咽は続く。
それほどに。

悔いているの?

疎んでいるの?




想いは言葉にならず、浮いては消える。
瞼は重く。
開く事が今は怖い。

もしも今、意識が重なったなら。
どうする。
どうなる。
どうしたらいい。


早く。
早く眠りの闇が訪れるといい。

今までは怖くてたまらなかった、それに。
今はなによりも強い望みを託す。

そうして朝になって。



ねぇ。





この夜を埋めて。

この時を凍らせて。

この心を掻き抱いて。












ただ。



生きていきましょう。











わたしは




神様なんて いらないの





兄さん


貴方に 赦されるのなら。








end



これじゃリリセムじゃん<独り突っ込み。
出来心と考えていただきたく。
希望。
nocturneとは夜想曲・夜景画という意味です。

夜の狭間に。
想いは転がり形を変えて。