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夕飯は少し前にすませて。 手元には書きかけのデザイン画数点。 広げた机は自室のもの。 イメージを再び膨らませようと意識して。 その途中で、言葉にさえぎられた。 ぬくもり 「俺ね、セムになでなでして欲しいの。 なでなでースキー」 へらっと目の前で笑う。 まるで口ぶりは子供の言い回し。 そんな歳ではないだろうと思いながらも、強くはいえない自分。 「しょうがないなー・・・ ほら。」 仕方なし、作業を止めて。 すぐ横で背もたれのない椅子に腰掛ける彼の頭に手をのせる。 ぽふ、と短く立ち上がっていた髪が手のひらにあたり。ちょっとヒヨコのようだった。 数回そこを撫でてやると。 「えへへへへへーーーーーvvvvv」 なんとも表現できない。 幸せそうな顔。 「・・・そんな幸せそうな顔するな、いい大人なんだから・・・」 思わず嘆息すると。 「だってー なでなでって優しいから好きなんだよー」 子供のような理由。 でもそれが憎めないから。 「そうか?別にして欲しくなったら、してやってもいいけどな・・・」 もう一度、撫でてみる。 「セムやさしぃ〜へへへ」 「わ、お前抱きつくな!」 しかし調子にのったのか、椅子から乗り出して抱きつかれて。 慌てて押しのけようとする。 伝わる人肌は、いつまでたっても慣れないのだ。 「えーだってこうしたらもっと暖かくて、幸せだよー ねーセムー」 だのに、もう支離滅裂な返答。 おまけに抱きついてくる腕の力はより強く。 「・・・はぁ 幸せか?こんな事がか?」 なかば諦めの混じった境地で、また撫でる。 確かに、この髪の毛の質感は触っていて楽しいとも思うのだが。 「うん、俺今すっっっっっごい幸せー あったかいね〜vvv」 「そりゃ暖かいが・・・」 否定するのも面倒で、言うに任せてしまう。 そしてまた、手もくり返し撫で続けていて。 「セ〜ム〜vvv」 「はいはい」 多少ぼんやりしていた思考に飛び込んできた一言。 「ちゅうしてもいい?」 「断る。」 とりあえず即断。 なにを突然言い出すのかと、いぶかしめば。 「ぷー…」 拗ねている、25歳。 ありえない。 「そう拗ねるなよ・・・暖かくて幸せなんじゃなかったのか?」 「ちゅうできたら、もっと幸せかなって思ったんだもん… ちゅうしたら、好きってたくさん増えるかなって思ったんだもん。」 そんなにちゅうちゅうと連呼しないでほしい。 たとえ人目がなくとも。 羞恥心はあるのだ。コイツにはないとしても。 「そんないっぺんに幸せ手に入れたら、これから幸せが来なくなるぞ?」 「えーーーーそれはヤダー」 「じゃ、今はこれを堪能すればいいんじゃないか?」 何とか話題がずれると思ったのもつかの間。 「んー…でも今、セムにちゅうしたいのになぁ… …だめ?」 やや上目遣いで、懇願するように視線を合わせられる。 「・・・そんな目で見るなよ・・・」 訴えるような瞳には弱いのだ。 知ってか知らずか、ジャックはずいと視線を強める。 「ちょっとだけ。 誰もいないから、ちょっとだけ… だめ?」 まるでシッポがあったら丸まりそうな様子。 伺いをたてるような雰囲気に。 「・・・駄目かどうか、自分で考えてみろ・・・」 なかば選択権を放棄してしまいたくなる。 考えろと言われて、ジャックはまだ両の手で抱きついたまま。 「んーーーー」 「んーーーーー」 二度ほどうなったかと思うと。 『ちゅうっ』 触れられるだけの。 でも確かに。 キス。 「・・・! お前本当に考えたのかぁ!?」 あまりに突飛で思わず怒鳴った。 しかし。 「考えたー! 大丈夫だと思ったからしちゃったv えへへ、セム好きー」 正面からそう言われて、続きの言葉が飲み込まれてしまう。 ああ、そういえばジャックはこんなやつなんだと。 毎度同じ再確認。 「・・・お前なぁ・・・面と向かってそんなセリフ言うなよ・・・」 「えー じゃあ、大好き!」 「・・・!!!」 あまりに予想外のボキャブラリーに、カァッと頬に血が集まる。 まさしく、赤面。 「馬鹿かお前は!そんな事大声で言うな!!」 実はこっそり嬉しいかもなんて方向へ走りそうになる思考を押さえつけて。 (というよりも無視して) 自分よりやや下にある顔へ再度怒鳴りつけると。 「うー…言っちゃだめなの? 凄く言いたかったから言ったんだけど… 迷惑だった?」 なんてしょぼくれて。 さらに。 「ごめんなさい」 あっというまに緑の目は涙腺を弛ませる姿。 「あぁもう!大声で恥ずかしい事を言うは、今度は泣きそうになるは! もうちょっと落ち着け?ジャック…」 頭を抱えたくなる。 しかしそうしたところで一向に良い方向へむくわけもなく。 諭しながら何度目かも知れぬ手の動きで、頭を撫でてやる。 多少は効果があると、わかったから。 「うん、落ち着くー でもね、セムやっぱり大好き」 落ち着けと言われて落ち着くと言う答えも、なんだか信用性にかけるところがあるが。 とりあえず学習能力はあるのか、声は先程より小声だったし。 再び強く抱きつかれたのは思考の外においやった。 「・・・しょうがないなぁ・・・」 「んーーー」 嘆息は癖。 ただ考えるのも億劫で、撫でる手は休まずに。 髪はあいかわらずヒヨコのようで。 しかし、もぞもぞと顔をスーツの肩口に押し付けられて疑念が浮かぶ。 (こいつ、眠いのか・・・?) 布越しの体温は常より暖かい気もするし。 なにより言葉が普段よりも空回りしている。 「セ〜ム〜ぅ…」 わずかに見える表情は、カンペキに寝る直前。 ほにゃり、という表現が一番あうかもしれない。 「お前、眠いのなら、寝ていいぞ?」 「セムも寝よ〜ぅ…」 それとなく進めてみるが、眠さのまさった頭からの答えはとんでもなく。 ああ、何度嘆息すればいいのだろう。 「俺はいいから。まだやることあるし。寝ていいから、な?」 事実、机の上には広げたままの(今は意味をなさない)紙束があるし。 仕事の期日もそう遠いものではないのだが。 「ヤダー…セムも一緒がいいよ〜 そんなら俺も寝ない〜〜〜」 なんてごねる。 こうなってしまっては本当に自分が寝るまでは寝ないだろう。 存外に頑固なのも知ってしまっているから。 (こいつ、本当に眠そうだしな) 「しょうがないな、一緒に寝てやるよ・・・。 その変わり、変な事はするなよ?」 「うん〜〜」 最低限の釘はさす。 まあ、そこまでの思考ももうあまり無いだろうが。 仕事部屋と化している自室のすぐ隣にある寝室へと、眠さで重くなった体を引きずっていく。 本当は歩いて欲しかったのだが(というか引き連れるなど普段なら言語道断なのだが)いかんせん、抱きついたままの体は離れず。 これ以上の思考は放棄しようと思った。 とりあえずベットになんとかたどり着き、ほおりこむ。 少し離れようと体を動かしかけた時、手を掴まれた。 「ね〜手はぎゅってしてね〜 俺が寝るまでは寝ないでね〜」 「分かったから、だから早く寝ろ?」 まるで小さな子供をあやすような気持ちになり。 そういえばリリスも幼いころは一人で寝られなかったなぁなどと、ふいに思い出す。 そしてあの頃、幼い妹にしたように撫でてやる。 「ん〜〜…… セム〜」 「おやすみ、ジャック・・・」 「うん…オヤスミナサーイ… …セムスキ〜…」 最後の最後。 寝間際までそんな赤面させるようなことをいわずともいいだろうに。 そう思いながらも。 暖かい気持ちが、溢れた。 恥ずかしくて。 怒りたくなって。 泣く事もあって。 苦しくもあって。 でもなにより。 嬉しくて。 触れる手から伝わる体温の暖かさ。 自分以外の鼓動。 寝息。 とろとろと思考がぬくもりに溶け。 重たくなりはじめた瞼。 傍らに消えない他人の気配が。 ただ。 ただ。 愛しい。 そして自覚する。 ああ 自分達は今もまだ、こんなにも『恋愛』している と 了 |
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みなさま。砂はお吐きになられましたでしょうか。 ベッタベタのハチミツ級甘さからコンニチワ。ムスミです。 恋愛ですって!恋愛!! あのセムの口から恋愛!! へへ、すいません。まるで715完結のようなSSです。 元ネタは某方との、なりメッセです。 このSSのセムの言葉は全てその方から。 つまりムスミ産セムではないわけで。つまりうちのように眉間にしわはよっていないわけで。 優しいセムです。ああ、素敵!! メッセ中、あまりの甘えたさんジャックに思わずセムクジャ?と疑惑を持ってみたりしましたが。 セムが途中でジャックを襲わなかったので715ということです。だそうです。 なんかメッセをSSにしようとしたために、ムリな文章部分が多々あるとは思いますがそこは甘く見ていただけると幸い。 切なさも悲しみも微塵もない、ラブラブカップル。 食アタリを起こさない事を祈りつつ(わたしは赤面です・楽しかったけど!)… 実はこれまでにもコソリとなりメッセはしていたり。 そのどれもがラブだなんて。 言えやしない、言えやしないよ。<言ってるよ。逝ってよし。 |