ザー ザー ザー ・・・



雨の中、知られるはずの無いこの場所。
その前で倒れていた青年。
雨に濡れた髪は長い黒髪。
きつく閉じられた瞼と寄せられた眉はとても険しそうで。


「おい…生きているのか?……生体反応はまだあるな……」


まさか。
こんなことになるなんて思ってもいなかった。







DJ戦隊デラレンジャー
#21
「雨の中の出会い・失われた記憶は何を意味するのか」




ダカダカダカ!
騒々しい足音が通路を駆け抜ける。
そのまま目前の自動扉まで速度を緩めることなく。
シャ!と開いた扉に飛び込んでいく人影。

「不審なヤツが侵入したって!!?」
「うるさいで、士朗」

叫んだ声に冷ややかな突っ込み。
ふわりと異様に長いマフラーが、金属製の床に落ちる。
首元からまかれた、いったい何メートルあるのかという青いマフラー。
その持ち主である士朗は、憮然とする。

「うるさいとはなんだよ!!ここは秘密基地だぞ!
侵入者なんて、それこそ一大事だろう!YUZ!!」

秘密基地。
なんとも恥ずかしい名称ではあるが、事実ここは地球を日夜守っている(らしい)デラレンジャーの基地であった。
そのあからさまな敬称に、YUZは眉を寄せて深々とため息をつく。
もちろんその首にはリーダーの証である、真っ赤なマフラー(もちろん普通の長さだ)がはためいていたのだが。

「ホンマ、はずかしいやっちゃ…」
「あんだとーー!!!?」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩は犬も食アタリデスヨー」

今にも殴りだしそうな(士朗から)様子に、新たな声が加わりかけて。

『五月蝿い!!!!』

(ゴス!)

すばらしいコンビネーションで繰り出された赤と青の裏拳に、紫のマフラーが散った。
ああ、瞬殺。あわれ、デラパープル・サイレン。

「あいかわらずすげーなー」

対して動揺も無いコメントは、牛丼をかっ込む合間に発せられた。
黄色いマフラーが目にしみる。

「ニクスv」

士朗の態度はあからさまだ。
ころりと借りてきたネコのようにおとなしくなってしまった。
そしてパタパタと、ややお腹の気になるニクスのもとへと走りよっていく。

「うわぁ…ホモがぎょーさんや…」

YUZは2度目のため息。
頭痛がしそうだ。

「まぁいいじゃない。多目に見てあげようよ♪」

お気楽な発言はYUZの後ろから。
紫のツーテールが揺れる、首元にはピンクのマフラー。
デラレンジャーの紅一点・セリカだ。

「多目ゆうてもなぁ…規律が乱れんか…?」
「今更規律も何もないし、チーム内の恋愛はご法度じゃないもの」
「せやけどなぁ…ああ、せちがらい職業やねん」

職業なのか。戦隊は。
という皆々様方の疑問は東京湾の底にでもコンクリ詰にして忘れてもらいたい。
とにかくこれが地球を守る(らしい)デラレンジャーのメンバーなのだ。

「ちょっと、ちょっと…一応侵入者のことはマジやさかい、話ふってほしいんやけど」

勝手に盛り上がっている5名(内、一名はいまだに床と仲良しこよし)にとっても軽い言葉がかかった。
根の真面目なYUZが声のほうへと振り向くと、そこにはにっこり笑った青年。

「オペレーターに今後のことを聞かなくてもええんか?」

デラレンジャーの補佐を勤める、オペレーターのケイナだ。
こちらは別段、微妙なマフラーを巻くこともなく。
むしろびしっと決まったオペレータースーツが、なんだか切ないものをYUZの胸に到来させなくもなかったが。

「そやったな…発見されたのはいつごろなんや?」
「そうそう、普通やったらそう返してくれんと♪」

ようやく返って来たまともな切り返しに、ケイナはいたく満足したらしい。
パチパチと手元のパネルを操作しはじめる。

「エリカ、サブ画面の映像をだしてくれるか?」
「了解です」

ケイナの指示に素早く反応したのは、彼の隣に席を構えるオペレーター補佐のエリカ。
その衣装もやはりケイナ同様にびしっときまっており、それに女性特有のラインが加わった。
凛々しささえ感じさせる。

今からオペレーターに変えてください。
そんなことをYUZが思ったかどうかはさだかではないが。
とにかくケイナとエリカのコンソール操作によって、彼らの目の前。
メインスクリーンに映像が映し出される。

そこに現れたのは基地の入り口付近の景色。
今日は昨夜から続く雨のため、映像の視界も雨にぶれている。
画面の右端には、早朝の時刻が表示・点滅していた。

「侵入者と思われる人物をはじめに発見したのはQ−JACKです」

「Q−JACKやて?あいつ、動けたんか?」
「へぇー孔雀なら見つけられそうだよね」
「セリカ、その呼び方はやめろて言うたはずやで」
「いいじゃない、孔雀ってカッコイイでしょー」

夫婦漫才が始まりそうなので(この場合はむしろ痴話喧嘩か)、完結に説明すると。
Q−JACKとは、デラレンジャーのメインコンピューターの端末でもあるアンドロイドのことである。
普段目にしているのは、大概が全身コードだらけの姿のため。
YUZは屋外までQ−JACKが出て行けたということに、驚いたのだった。

「Q−JACKの記憶データによれば、侵入者は前触れ無くここに現れて倒れたそうです」

「前触れ無く?どういうことだ?」
「センサー…もぐもぐ…引っかかんなかったんじゃ…もぐ…ねえのか」
「ニクス、食べながら話すのは牛の元デスヨ」

もはや誰もつっこんでくれるものはいない。
相手にされなかったサイレンは、少し寂しそうだった。

「ニクス、さっしイーネー♪そんで、食べながらじゃなきゃもっといいんやけど。
まあその通り。この基地の高性能センサーをもかいくぐって侵入してきたというわけ」

「で、そいつはやっぱりヤツラの仲間なんか?」

ヤツラ。
YUZが総称したのは、現在地球をどうにかしようとしちゃっている悪の組織のことであった。
先週もさんざんな手で、あぶなくやられるところだったのだ。
すんでのところで勝利をおさめたが。
あのときのピンクセクシーバディの女将軍と、その配下のモヒカンの含みのある表情が気になっていたYUZだった。

YUZの質問に、ケイナは顔を曇らせる。
と、そこへ天井から一筋の光が降りてきた。
直径30センチ程度の光の円柱の中、同じように降りてきたのは小さな少女(?)。

「あ、トランちゃん」

それはデラレンジャーの、いわゆる戦隊モノとしてはお約束のマスコットキャラ。
宇宙人(?)トランだった。

『TAKAカラ伝言ダヨ』
「司令官から?」
『ソウ』

そういうと、トランは手にもっていた小さなボタンのようなものを押した。
ぽち。
するとメインモニターの画像がぶれ、次いで人の横顔が影で現れる。

「司令官!」
『やぁ、諸君』
「いつも変わらないわね、そのポーズ」
『ははは、健在ということだよ』

セリカのつっこみもさわやかに交わす。
この画面の中の謎の横顔こそ、デラレンジャーの総司令官であるDJ.TAKAである。
画面の中、人影は黒く、その実体は窺い知れない。
彼は手を口元に持っていきながら、デラレンジャーの様子など気にすることも無く話を切り出した。

『まあもういきさつだけは聞いてると思うんだけどね、手短に言うと侵入者と思われる人物。
ああ、外見は人間にみえるんだけど。
記憶喪失らしいんだ』

「へ」
「記憶喪失ぅーー!!?」

間抜けな誰かの第一声に、他の声がかぶさった。
全員の動揺(ケイナとエリカはすでに知っていたらしく、眉を寄せる程度だった)する態度も気にせず、
TAKAは話を続ける。

『名前は自分で名乗った。【セム】というらしい。しかしそれ以外は何も覚えていないそうだ。
まあどこまで信用できるか怪しいところではあると思うが』
「で、そいつどうするんや?」
『しばらくはここで生活してもらうことになるだろう。
まだ敵かそうでないのかハッキリしない以上、ほおりだすわけにもいかないからな』
「危険ちゃうんか」
『ま、そこは君らの頑張り次第というところかな』

そういうと、TAKAの映像が再びぶれ始める。

「え!おい、ちょと…」
『デラレンジャー諸君、健闘を祈るよ』
「なに無責任な!」

ブツン。
YUZの悲鳴(?)も気にせず、TAKAの映像は唐突に消えた。
思わず画面に向かって伸ばした手が、行き所無くさまよう。

『ジャアトランモ行クネ』

その隙に、唯一TAKAと連絡の取れるトランも再び光の中上昇していってしまう。
残されたのは呆然とした赤。
慰めるような視線のピンク。
なにやら床にのの字を書いているパープル。
仲良しこよしの黄色と青。
そして、額に手をあてて苦笑するオペレーター組だった。

「とりあえず、侵入者はQ−JACKの管理下におかれることになったらしいから…」

ずーんと落ち込んで暗雲すら漂わせるYUZに、ケイナが励ますように説明する。

「わかった…」

しかしYUZの声には力が無い。
そんな彼の様子を見かねて、セリカがぐいっとYUZの腕を取った。
セリカの豊満な胸に、取られた二の腕が偶然当たってしまい。
動揺するYUZ。

「元気だそうよ!そうだ、お茶してこよう!!」

言うが早いか、YUZの了承は求めずさっさと歩き始める。
それにぞろぞろとついていく他メンバー。

「茶って…んな場合じゃ……てこら!お前らまでなんでついてくんのや!!」
「え?牛丼喰いに」
「ニクスが行くから」
「武士を見たいでース」

どれもYUZに言わせれば理由にならないのだが。
というか1人、理解できない理由もあったが。
もはやどなる力もうせてきた。

「なんでわいはリーダーなんや…」

呟く姿も涙をさそったらしい。
そのままずるずると引きずられていく。

「じゃあ行ってきまーす♪後は宜しくね!」

にっこりと笑顔でセリカに言われて。

「おー!マスターに宜しゅうな♪もしかしたら弟が来てんかもしれへんけど」

ケイナが同じくにっこり笑って片手を上げて返す。
そして程なくして、ホールにはケイナとエリカだけになった。

「…なんか、いつもこんな感じだね」
「ま、いいんじゃねーの?特にYUZには息抜きが必要っぽいし」
「それもそうだねー…
あ、じゃあ今日もここの接続のところ教えてよ」
「OKOK!」

エリカが小さなモバイル端末を出し、ケイナがそれに覗き込む。
モニタはいつのまにやらオート設定だ。
もしかしたら、地球を真の意味で守っているのはこのコンピューターかもしれない。





*****


静かな部屋。
そこに居る、二人。

ぶぅん。とどこかで機械音。

「本当に何も思い出せないのか?」

問うている声はどこか冷たく。機械的。
Q−JACKだった。
響きも硬いその問いかけを向けられたのは一人の青年。

「…思い出せない…俺の名前が『セム』ということ以外は何も」

返される言葉には、ほんの少し不安の色がにじみ出ていて。
その声に含まれる感情を分析して、この男は嘘をついていないとQ−JACKは冷静に判断する。
しかし不可解な出来事だった。
侵入不可能なはずの基地まで到達し、しかし目的をはたすことなく目前で倒れ付していた青年。
偶然彼が見つけなければ、どうなっていたのかすら解らない。
それでもただの迷い人のはずは無く。
こんなパターンはQーJACKの中には無かったため、表面には出ないが彼もまた内心複雑な思考パターンに陥っていた。
計算しても答えの出ない。
まるで円周率のようだ。

「とりあえず…お前の身柄はここにしばらく拘束されることになった。
窮屈かもしれないが…」
「かまわないよ。俺自身、自分がなんなのかわからないし…どこへいくあてもないから」

ふ、と諦めたように苦笑する。
その表情を見とめた瞬間、0と1で構成されたはずの思考にノイズが走った。

「ここに居る間は俺が外界とのパイプになる。何かあったらそこの壁にあるモニタで伝えてほしい」
「ん…」
「使い方、わかるか?」
「多分大丈夫…だと思う。でもこんな簡素なもので伝わるのか?」

Q−JACKが指差したのは、すぐ傍の壁に設置された小さな端末だった。
そのボタン二つ程度のつくりに、セムが首をかしげる。

「それは問題ない。この端末は俺自身とつながっている」
「つながってる…って」
「俺はここのコンピューター端末アンドロイドだ。だから問題ない」

アンドロイド。
その答えにセムは目を丸くした。

「アンドロイド…人間に見えるのに、信じられない」
「かぎりなくヒトに模倣して作られているから当然似てくる」
「その肌も?」

セムが問いたかったのは、コンピューターケーブルなどの端から見える顔の部分のことだろう。
あきらかに機械然としたほかの部分とはちがい、Q−JACKの頬の部分などはヒトの顔そのものであった。

「創造主の気分だろう。ここはヒトとほとんど変わりない」
「…触ってもいいか?」

突飛なセムの言葉に、再びQ−JACkは目を見張ることになる。
一瞬のうちに、何か罠ではないかと計算したが。
罠と該当できる答えはなかった。おそらく興味本位なのだろうと判断する。

「かまわない。触って楽しいものでもないとおもう」
「じゃ…」

そっと伸ばされる手。
人工灯の下で、その指先は一般に見られるものよりも白いのではないかとQ−JACkは認識した。
おずおずと触れられた指先。その感触を確かめるように、何度かためらいがちに擦られて。

ぴりっとまた、ノイズが走った気がした。
もっとも、アンドロイドの彼にとって『気がした』などという感情は持ち合わせていないのだが。
それでもそうとしか表現の仕様が無かった。
触れられた場所からショートしていくようだ。細かな電気がチリチリと。

故障だろうか。

「…本当に、人間と変わらないんだ…」

ややあって、納得したのか。好奇心が満たされたのか。
セムの指が離れていく。
それに伴い、ノイズも収まっていった。

「納得できたか。それじゃ俺はもう本来の稼動部へともどらなくてはいけないから…」

そう言って背を向けようとするQ−JACKに。

「待って!名前…あんたの名前は」

問われて一瞬機能が沈黙する。
そういえば名称を伝えていなかったことに、今更認識させられた。

「Q−JACKだ。孔雀と呼ばれることもある。ジャックでかまわない」
「ジャック…」

呼ばれた瞬間。
再びノイズが走り、それが形作るものが何なのか理解しかけ。
しかし、それらを無視して、ジャックは部屋の唯一の出入り口である扉へと向かった。

「また5時間後に来る」

それだけをいい残し、ジャックの背は扉の向こうへ消えた。
そして残された、電気灯。セム。窓の無い部屋。


「…ここは何処で…俺は
俺は一体何をしようとしていたんだ…」


言葉は、静まり返った室内に響くことも無く消えた。




*****



からんからん♪

軽やかな音を立てて、扉についた来客の鐘が鳴る。
その音にかけよってきた人物。

「いらっしゃいませー♪…って兄貴。皆さんもおそろいですか?」

エプロン。そして片手にお盆を持った姿で客を迎え入れたのは、白に近い髪に健康的に焼けた肌の青年。
この喫茶店のバイトをしている、ブルーの弟でもあるエレキだ。
エレキは突然の来訪に目を丸くしながらも、そこは客商売。
手馴れたもので、カウンター席へと5人を案内する。
席につくと、さっそくメニューを広げ始める一同。

「エレキくん、いつものちょーだい♪」
「セリカさん、わかりました。いつものですね」
「俺もいつもの」
「ああ、牛丼ですよね」

手早くメニューを取っていく。
そして一通り聞くと、カウンターの奥に向かって。

「マスター!YUZさん達来てますよ。いつものやつだそうです」

元気よく声をかける。
するとややあって、奥から人影があらわれた。
煙草をふかし、片手にコーヒーのカップを持って。

「はいはい、おまたせしました。師匠今日はどうしたんすか?」

YUZの前にコーヒーを置く。
そしてすぐに備え付けのキッチンに立ち、フライパンを出し始めた。
同時に鍋も火にかける。

「あいかわらず空いてる喫茶店やな。おまけにマスターが煙草なんて非常識ちゃうか?」
「ははっ、相変わらず師匠は厳しいね。
でも俺の煙草が嫌な人は常連にはならないし、これでも休日は混んでるんだけど」
「そうですよ、YUZさん酷いです。今日は平日の、しかも4時なんて中途半端な時間なんですよ」

人がこなくて当たり前、と言わんばかりにエレキが背をそらす。
そんなエレキの様子に識は苦笑している。
ふんわり柔らかな空気が二人を包み込み。
なんだか、入り込めなくないか?
そんな気がしなくもなかったが、コレ以上周囲で微妙なピンクオーラが発生するのを避けたかったYUZは見てみぬふりをした。

「はぁ…」

しかしため息だけは止めることが出来ない。
勘のいい識がそれに気づく。

「なに、師匠。またため息でてるよ?最近多いよね。
またやっかいな事件?怪人でも出た?」
「なに!!事件だって!!?」
「は?」

冗談半分に言ったつもりの識のセリフは、突然の乱入者によって打ち消された。
そこに忽然とあらわれたのは(そう思ったのは下を向いていたYUZだけで、実際は窓側の席に座っていた)刑事とおもわしき人物だった。
すこしくたびれた感じのスーツに、これまた使いこまれたネクタイ。
そして頭にはなぜかバンダナを巻いている。

「デュエルさん」

いつもかわらぬその熱血ぶりに、識が困ったように笑う。
デュエルは気にした様子も無く、YUZを問い詰めようとしている。

「あんた達にはいつも誤魔化されてる気がするんだ。今日こそは白状してもらうぞ!
この警察手帳の…警察手帳の…警察………」
「どないしたんや」

自信満々の様子はどこへやら。
なにやらあたふたと胸ポケットやズボンのポケットをがさごそをさがしはじめるデュエル。
YUZが気になって聞いてみても、返答は無い。

「あれ…あれ?」
「もしかして、警察手帳忘れてきたんじゃないですか?」
「まぬけやな」
「!!」

どうやら識の言葉は図星だったらしい。
瞬間的に顔を真っ赤にして、ぐぅの根も出ないデュエル。
最近日サロに通うようになったというらしく、微妙にこんがりと焼けかけている肌に朱がさしていた。


「あれ?今日は来てないの?ARMYくん」
「少し前に入れ違いで帰ったばかりなんですよ。お昼にサンドイッチ食べてました。つけで」
「ふーん、あいかわらずなんだね、お兄ちゃんが気にしてたのに」
「ええ、あいかわらずでしたよ」

その周りではセリカとエレキが仲良く、常連客の話題に花を咲かせている。
ARMYとはオペレーターケイナの弟で、よく食事をたかりにこの喫茶店に顔を出す少年。
大概において彼が現金を持っていることは少なく、主にマスターの識の好意でケイナへのつけになっているのだ。
顔を見合わせても兄のケイナと違い、にこりとも愛想にも笑わない目つきの悪い少年だった。


「はい、ニクス。あーんvvv」
「あー」
ぱく。
「んまい?」
「んまい」

元祖ラブイチャオーラ(YUZ命名)発信源の二人は、その名に負けず劣らず。
牛丼を食べさせあっちゃったりしている。(というか士朗がニクスに食べさせている)
そのあまりにも濃いオーラは、周囲の風景がゆがんで見えるほどだ。
気のせいか、その中に紛れ込んで悶え苦しんでいる髭が見えた気もしたが。
満場一致で幻、ということになりそうだった。




ぐるりと周囲を見渡して。
落ち込み始める刑事。
柔らかラブのマスターとバイト。
嬉しそうに特大パフェをほおばるセリカ。
ラブイチャすぎな目に毒の黄色と青。
どこか視界の外に消えた髭。


どうして自分はこんなところに居るんだろうか?


頭痛&めまいの酷くなりそうな光景に。

「はぁぁぁ〜…夢やったらええのになぁ……」

YUZの呟きは、誰の耳に入ることも無く。
ぬるくなったコーヒーと共に、喉の奥へと流し込まれた。






*****



ひたひたと暗い闇。
夜よりも深い、漆黒。
その中にぼう…と光る鬼火とも思われる無数の明かり。
ゆらゆらと揺らめいて。
それが炎によるものだとわかる。ただし、その色は赤よりも白に近い。白炎。

よくよく目をこらせば、少しずつ見え始める全貌。
グロテクスな装飾のほどこされたテーブルと思わしきものや、壁掛け。
そのさらに奥。

白炎のすぐ傍に身を置く誰か。
背もたれの大きな椅子に座して、不釣合いな小柄。
椅子に座られているようなその印象の少女。

しかしそれとは裏腹に、炎の光に照らし出された瞳は意志の強い赤灰色。
その目のすこし上で真横に切りそろえられた漆黒の前髪。
すっと通った鼻梁に、小さな口元はうっすらと笑みを浮かべてさえいた。

少女の細い腕は、テーブルの上に置かれた手のひらほどの水晶球に添えられている。
水晶の中は炎明かりが乱反射して見ることはかなわない。
それでも、少女の瞳には何かが映っているようだった。
時折楽しげにくるくると回る視線。



やもあって小さな声。








「私一人じゃつまらないわ…

          早く帰ってきて……

                          …お兄様?」


















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というのは冗談ですが。
ようするに戦隊ものです。しかもピピルチネという公式が出る前です。
孔雀はアンドロイドだし、サイレンはやるせないデラパープルです。
とある方に誕生日祝いとして送ったこのSS、書いたのは2002年の夏ごろ。
某お二方のお話に混ぜてもらった形で、SSとして形にした感じです。
あまりにも世間とずれていて切ない事この上なしですが、これも一つのお遊びとして受け取っていただけると幸いです(笑)
そしてケイナのしゃべり方も違和感ありまくりですが、見ないことにしていただけると幸い。本当に。

とりあえず、気になる基本カップリングは以下のとおりで。
YUZ(デラレッド・苦労性)&セリカ(デラピンク・紅一点・カワイイ系担当)
ケイナ(オペレーター・常識人で実は元ハッカー)&エリカ(オペレーター補佐・ケイナにちょっぴり恋心・ボーイッシュ系担当)
ニクス(デライエロー・牛丼大好き)×士朗(デラブルー・赤よりも熱い青)
孔雀(アンドロイド・感情が乏しい)×セム(記憶喪失の青年。実は・・・)
(喫茶店マスター・妻も子供もいません)×エレキ(喫茶店バイト・士朗とは兄弟です)

で、その他のキャラの分担は以下のとおり。
サイレン(デラパープル・泣かされ役)
トラン(デラレンジャーのマスコット的存在・唯一TAKAと直接会っている)
TAKA(デラレンジャー総司令官・影のみ)
デュエル(デラレンジャーを追いかけている刑事・別称バンダナ刑事(デカ))
ARMY(ケイナの弟・よく喫茶店にくる)
リリス(悪の組織の幹部(?)らしい・ミステリアス系担当)

で、出てないんですが他キャラ設定があったり。
ナイア(悪の組織の幹部・色気担当・ジルチの上司で実はちょっと識に→v)
ジルチ(悪の組織の幹部候補・ナイアの部下)
ホリック(悪の組織の指令・謎だらけ)
エレクトロ(悪の組織のアンドロイド・つまりジャックと反対位置)
TaQ(実は…)

まだツガルと達磨の出てない頃のお話でした!
笑って許してくださると幸い!!
です!
特にセムのあたりが痛くて自分的に笑い泣きという感じです。ゲフ。