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音も無く 降り積もる… SNOW 「あ…」 呟かれた声は、空気に触れて霧散する。 かちこちと、壁にかけられた時計の秒針の音が常よりも大きく聞こえるそんな夜。 闇にもそりと動く影。 それはゆっくりと上体を起こし、その度に白い波がいく筋も生まれ消えて行く。 カーテンも閉めぬままの窓から差しこむ外灯の明かりが照らし出した白い肌と、銀とも黒ともとれる長い髪。 滝のように流れ落ちる銀糸に隠れるように点点と残る赤い印は、先ほどまでの行為の花弁。 そこにそっと這われる大きな手は、ゆっくりと花弁を一つ一つなぞった。 そんな、些細な事にすらピクリと今は震えてしまう。 それでも白い体は波に沈むことなく窓の外へと視線を送ろうとした。 「なに見てんだ?」 もう一つの声。 先ほどもれた小さな声より低く、囁かれた言葉はそっと闇に溶けて。 窓を向く青年の細い腰に回す腕に、力を込める。 触れている肌は何処もかしこも掌に吸い付くようで、波に沈んだままの男は唇を寄せた。 それに振り向いた瞳は空を映す青。 「ゆき…」 薄い唇から盛れたのは、ほんの少し掠れた声。 風邪の為ではないそのかすれ方。そこまで声をあげさせてしまった張本人である男は、聞き取れずに眉を寄せた。 夕焼けの色を閉じこめた瞳が青い瞳に絡みつく。 「なんだって?」 唇は肌に寄せたまま視線だけを送れば、青年は困ったように。いや、もしくは照れたように笑った。 その青い眼差しは何処までも優しく向けられて。 「雪。見てた」 掠れの残る声で再度はっきりと口にする。 その言葉を理解するのに男はもう1度なぞるように呟く。 「雪…どうりで寒いわけだな」 雪に対する感慨はないようで、ただ部屋をとりまく空気の変化の原因として納得している。 事実、けして広いとは言い難い室内は行為にふける前よりも確実に冷えており、男には青年の白い体が冷え切ってしまわないかと、それを気にかけていたのだ。 しかしそんな事は青年の頭には無いらしく、寄せられる唇の感触に苦笑しながらも再び視線を窓の外へと向けた。 口元がほころんでいる。 「俺さ…雪って好きなんだ……白くて…何もかも綺麗にしてくれそうだろ?」 ぽつりとこぼす青年の言葉。 そして窓の向こうへと向けられる表情。 青い瞳も銀の髪も、その全てがチラチラと舞い落ちる白い精霊に惹かれているようで。 シャッ… 大きな手が開け放たれていたカーテンを掴み、無造作に閉めた。 突然塞がれた視界に青年は当然の如く驚いて、手の持ち主である男の方へと向きなおった。 男は問うような視線も気に止めず、今度こそ力任せに青年の体を引き寄せた。 突然の事に抵抗らしい抵抗もできず、青年の体は男の胸の上に落ちる形となって、白い波が揺れた。 そのまま背中へ手を回され、微塵も動けぬままに唇を奪われる。 「んん…」 息をつく間も無い突然の行為に青年の呼吸はせき止められ。 たちどころに苦しさが増し、無意識にもがき始めた体をさらに抱きしめられる形となって。 ほんの一瞬のあと。 ようやく離された唇はしっとりと濡れて、荒い息をつくその奥からチロリと赤い舌が覗いた。 「な…に?…突、然…」 抱きしめられた腕の力はそのままで、熱を分かち合う格好のまま自分を奪った男に問いかける。 それは非難の色も無い純粋な疑問。 苦しさだけでなく潤んだ青が赤い瞳に注がれ、男はふいと視線をそらした。 歯に物が詰まったようにモゴモゴと、言いにくそうな様子。 それでもどうしても聞き出したくて。 (こんなときはごまかされてしまうことが多いから) 青年はもう1度、今度は男の名前を呼んだ。 「ニクス…?」 囁かれ、青い瞳がぶつかって。 ニクスは盛大にため息をついた。 それは自分の負けを認めた時の彼のポーズ。 「わかったよ…士朗。降参だ…」 それでもその表情は悔しさなど感じ取る事も無く、ただ本当に恥ずかしいのだと言っていた。 「嫉妬したんだよ…雪に…」 ぶっきらぼうに、それでも限りない愛しさを込められて。 耳に届いた暖かい言葉。 思わず頬が染まるのを止められない。 「ばか…」 それだけ返すのが精一杯。 口元が笑みを作るのがわかる。 そんな士朗の様子に。 「ばかだからよ」 同じように笑みを浮かべて、そっと唇を寄せるニクス。 羽のように軽く。 蜜よりも甘く。 とろけるような口付けを。 カーテンの隙間から洩れる雪明り 窓の外は止まぬ雪 しん しん しん 降り積もる… 了 |
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目標。ラヴいニクシロ。 「うす!目標到達できましたでしょうか!隊長!!」 「うむ。まあまあといったところだ!」 「うす!ありがとうございます!!」 というわけで。ラヴです。 甘いです。無理です。ぎゃ。 久し振りのSSはドッキンなんだこりゃ!な出来デスね。すいません、出来心です。 今まですれ違いとか別ればっかり書いてたので…そしてイベント売りした本もそんな感じだったので。 たまには!と。 本邦初公開、本気ラヴいニクシロ。 これが限界です。 あーあーあー。 とりあえず裏置きなのにBACKはラヴ色、うーんマンダム。 これで、例の本を読んだ方は口直しをしてくださるとうれしいです。 ごふん。 |