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ねぇ 好きな人に 一番最初に触れた場所は 何処? 掌〜てのひら〜 「ふぅん、まあこれでかなりイイモンだけどな」 カツカツと響くのは、ペンが机を叩く音。 右手にペンを持ち、空いた左手を額にあてて。 少しかがむとパラリと視界を遮る長めの黒い前髪を幾分無造作にかきあげる。そこからのぞく一対の赤。 この見事なコントラストに目を奪われた回数は多い。 「だけど・・・なんだよ?セム」 何か文句でもあるのかと暗に伝わる。そんな声音。 しかしそんなことには全く関心を持たず、セムは机に広げられた数枚のうち一枚にペンを走らせる。 かりかりとペン先が紙を引っ掻く音。 「なにして・・・」 皆まで言い終わらないうちに、視界をその紙が覆った。 「ちょっと」 「ホラ、そっちの方が良いと俺は思うけど」 言いかけた抗議の言葉の上に被せられた声に誘われて、視線を紙に描かれたものへと移す。 それは今日、自分が持ちこんだ仲間のデザイン画で。 几帳面に描かれている友人の絵の上に、ほんの数本、タッチの違う線が乗せられている。 なるほど。 それが加わった事で、デザインのバランスが一層引き立つ。 「ここのラインがな、後少しこう…上に持ちあがるとな…」 長い、けれどけして女の用に細くはない男性独特の筋張った指が、紙面上を描かれた線に沿って滑っていく。 説明の為の単調な、含みなどない動き。 しかし、それに言葉も忘れてつばを飲み込んでしまう自分がいた。 おかしい。 何故こんなふうに心臓が騒ぐんだろう。 こころなし、頬も熱を持って熱いような気さえ。 「…だから……ジャック?おい、聞いてるか?」 「へっ!?」 知らず知らず、聞き飛ばしてしまっていたらしい。 視線を上げると、飽きれたようなセムの顔とぶつかって。 「なんだかオカシイな、お前」 ふう、とため息と共に吐き出された言葉。 そうして口元に当てられたセムの指に。 気付いた時には手が動いていた。 「…おい、なんだよ」 「あ、その…」 いつのまにか握っていた。 ぎゅうっと、セムの手を。 俺の手が。 「う…や、俺の手と違ってしっかりしてるから…羨ましいなって…」 骨のしっかりしたセムの筋張った手を握り締めている、女性的ではないにせよ、あきらかにセムの手より劣って見える自分の手。 それは子供の頃からのコンプレックスで。 望んでいた指の形、掌の大きさがそこにあると思ったから。 「別に…お前の手だって良いカタチしてると思うけどな?」 とりあえず離してくれないか? 再びため息。 こんどは本当に、ただ息を吐き出しただけの。含みのない。 でも、離すことが出来ない。 頭では分かっているのに、分かっているはずなのに。 何処かで分かっていない自分がいる。 「俺のは…小さいから………セムの、爪の形まで綺麗だ…」 「お前、熱あるんじゃないのか?」 眉根を寄せ、本当に飽きれたような。 諦めたような声。 でも無理に引き剥がしたりはしない。そんな残酷さを含んだ、セム特有の優しさ。 今は痛い。 「熱なんてないよ?ホラ」 そう言って、握ったままのセムの手を自分の頬に寄せる。 さらりと乾いた肌は、熱に浮かされたような今の自分にとても心地良くて。 「…大丈夫か?」 頭。 最後の一語はあえて言葉にせず、ただその空気だけが伝わる。 普段なら湯気をたてて怒っているだろうその言葉も、怒りを感じさせることなくすんなり胸に落ちる。 ただ、まだ目の前で現状を理解できない(又は勘違いしている)までも、余裕の見られるセムの顔を驚かせたくて。 常に余裕を持った大人の空気を壊したくて。 チュ… 「…うぇッ!?」 指先にちょっとだけ、軽いキス。 軽い悪戯。 の、つもりだったのに。 「な、何すんだ!?」 目の前にあったのは、余裕を残さず崩したあとに現れた。 まるで初心な反応。 朱に染まった頬と、赤みを増した驚愕に開かれた瞳。 「や、つい」 そう、本当になんとなくやってしまっただけなのだが。 その言葉にセムは力任せに手を引き戻した。 「【つい】でこんなことするなっ!」 離したのにも関わらず、まだセムの頬は僅かに赤い。 落ち着きのない焦りを前面に出したその様子に、思い当たることがあって。 「…セムってもしかして……結構敏感体質?」 ぷつん。 言ってしまってから後悔。 それは本来聞こえないはずの、何かが切れる音を聞いてしまったから。 「ア…」 「出てけっ!!!」 バン!! なんて早業。 俺は捨て猫よろしく、首根っこを掴まれて店の外にほおり出されてしまった。 がちゃん!と激しい音と共に閉じられる扉。 路上に呆然と立ち尽くして3分。 「え?ちょっと、セム!!開けてよここ!」 ようやく頭まで情報が行き渡り、慌てて店内に戻ろうと扉に走りよる。 がちゃがちゃとノブを回すが、一向に開く気配はない。 よくみれば、ドアの硝子窓部分に内側からかけられた木の板。 【CLOSE】 「セムーーー!」 悲しいかな。 絶叫は完璧に無視される形となってしまい。 それでもデザイン画は押し返されることなく、セムの手にあるようなので。 (そこらへんが彼の甘い所だと思う) とりあえず、次に会う約束にはなったなと1人ごち。 帰り道、ネオンに彩られたアスファルトを歩いて行く。 ほとぼりが冷めるまでは、少し距離を置いた方がいいだろうと思いながら。 了 |
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クジャセム第2段です。 携帯で途中まで打って、パソコンでまとめてみました。 どうでしょう。もっとストイックな感じに仕上げるつもりが、べたべた? ちょっとラブ? セムが思わずかわいこちゃん(?)になってしまい、頭を抱えて部屋の隅でKAMIKAZEを口づさみたいムスミです。 こんなんどうなんでしょう。 セム敏感推奨。 ていうか器用そうなので、手が敏感希望。 孔雀手フェチ希望。 彼の手は、オフィシャル見てる限り小さいと思うので。<だってアーマー着こんであの太さですもん。 なんだ、この馬鹿っぷるみたいのは…<ブルブル。 あ、セムがデザイン画に一筆入れちゃってますが、それはコピーされたものだからです。 まさか原物にガスガス書きこんだりするような謀略武人っぷりは流石に…。 |