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たとえば 針を器用にあやつる指先だとか 糸を切る為にちらりと見えた白い歯だとか 真剣に作品に向き合う横顔 構想を語る時の、年齢より若く見えるいっそ無邪気な顔 でも一番気になったのは ふっと遠くを見た 眼差し 落下速度よりも早く 恋に堕ちる 約束 「いつ頃出来そう?」 いつもの言葉遊び。 決まり切った挨拶。 「また来たのか…この間、完成予定日教えなかったか?」 カウンターから軽いため息。 でもそれはけして悪い気持ちからではないと、もう知っている。 だから。 ちょっとつけ込む。 「気になって仕方ないんだよ」 これは口実。 この約束があれば、いつ訪れても理由になる。 「細かいな…おかげさまで予定より早く出来あがりそうだよ」 「え?」 予想外。 「お前がそう何度も突付きにきたら、俺だって頑張るしかないだろ」 完成間近。それが嬉しくもあり、怖くもあり。 約束が形になる前に、約束が無くても会える関係を作りたいと望むのは欲張りなことだろうか。 目の前の彼は、苦笑ともとれるやわい微笑み。 「期待して待ってろよ」 期待してる。 何よりも、同じ喜びを共感出来ることを。 でもそれは、約束の終わり。 「もちろん期待してる♪」 明るい自分。軽い口調。表の殻。 その中に隠れているもう1人の自分。 今まで気付く事もなかった奥底の欲望に…見ないふりをして幾重にも隠していたそれに。 触れてしまう禁忌。 近く遠く 感じた。 「さて、もう店じまいだ。 …今日は夕飯予定あるのか?」 「ないけど?」 「じゃあくってくか?たいしたもんは無いけど、あいつも今日は帰ってこないし…サイズ見てから仮縫いしたいからな」 いないから誘ってくれる。 あのこがいる時、けしてかけてはくれない気まぐれな優しさ。 それに縋る。 掴む。 離さない。 「ラッキー♪実は夕飯なんにも考えて無くてさ」 「またか」 足はもう覚えてしまった店じまいのルートをたどる。 手伝いは2度目に夕飯を誘われた時から。 「俺さーカレーとか好きなんだけど」 「リクエストとは図々しいぞ。今日は野菜炒め」 世界が 二人だけになってしまえばいいのに。 とは思わないけれど。 明かりの消えた暗い店内に外灯の灰色がさし込んでいた。 了 |
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元は某方と路上で暴走しまくったのが原因。 いや、クジャセムもいいですね。 可愛い系攻め。 裏日記に書き込んだのに、かなしいぐらいばっちり『文字数が多すぎます』だって。 しばらく放置してみたんですが、せっかくなので上げてみました。 どんなもんでしょうか。 |