| 蟻/無題/幻影/触れる/真昼の月 /終詞恋歌/すずのね/宵玉/独白/たがえる /手首 |
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蟻 這い回る。 熱いアスファルト。 せわしなく。 「熱そう」 「そりゃあ熱いんじゃねえの」 もてあました視線。 落ちた場所に動く、米粒大のイキモノ。 一列に。あちこちに。 黒く。 「休めばいいのに」 「休んだら生きてけないんだろ」 スニーカーの底ごしに、じんわり沁みる熱。 空には照りつける太陽。 雲一つない、青空。 「そうなのか?」 「さあな」 ぽたり。 黒い群れの中に落ちた一滴。 手にしたアイスクリームがいつのまにか溶けているのに、まぬけにもそれで気付いた。 白いヴァニラの中、熱い大地に焼かれた蟻1匹。 「おぼれるかな」 「食いモンで死ねたら本望じゃねぇの」 クリームに閉じ込められ、動けない蟻1匹。 その縁に集まる黒数匹。 気付かず進みつづける前方後方幾数匹。 「それも餌?」 「おい、たれてる」 横から伸びてきた手。手首をつかんで引き寄せて。 ぺろり。 白一筋舐めとった。 「ごめん」 「甘いな」 赤い舌。ちろちろ見える。 「ヴァニラだから」 「口直し」 触れて絡み合って。 舐め合うように口づけた。 じりじりじり 焼けたアスファルトの上。 蟻はまだ居る。 |
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テーマは蟻。溶けるアイス。熱。 誰と誰であるかはご自由に当てはめてください。 蟻の動き。蟻の行列。見ていると何か色々な事を考えてしまう。 TOP |
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そうして意味もなく日々は過ぎていく 繰り返す朝 同じ見知った顔 顔 顔 そして眠れぬ夜と 訪れる体のみの快感 悦楽 何処で間違ってしまったのか もうわからなくて 考える事すら酷く 無意味 『好きだよ』 たった一言 それが言えない 『好きなんだ』 言葉にしてしまえば 掌に落ちた雪のように あわく もろく 消えてしまいそうで 「何か言ったか?」 「別に」 今もまだ 言えないでいる 一緒にいる意味を探してしまうから 「もう1回 しよう?」 それはどちらの心だったのか。 |
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題名なし。あえていうなら『無題』。 両思いでありながら片思い。そして本気の心に臆病な恋心にも劣る何かを抱き続けて。 ただ、体の深いつながりだけが心を置いていく。 TOP |
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幻影 視線ひとつ 背中に 酷く 突き刺さる 憎んでくれてかまわないと 思ったあの日 それでも変わらずにいてくれたらと 自分勝手に求めていた 求めた分だけ それが無意識であればあるほど 裏切られた代償は 灼熱の炎のように身を焦がす それでも それでも ただ たった1人 愛してた 愛してた 今は独りの 貴方を お前を それは 2人でいた 懐かしい幻影 |
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別れ話。よく書きます。 愛していたのにすれ違う。感情は同じなのに心が違う。 ただそれだけが二人を大きく隔てて、戻る事は無い。 TOP |
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触れる 指 掌 肩 顎 耳 髪 頬 瞼 唇 もっと もっともっともっともっともっと 触れて 撫でて 口付けて 私の中を 貴方で一杯にして 体中 あますところなく全て 細胞の一つ一つまで 貴方のものに なりたい よ |
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触れられる安心感。 触れられていれば、それだけで愛されているような気がした。 触れられる事が愛の証と感じていた。思っていた。思いたい願望。 一つになってしまえば、もう離れる事は無いのに。 TOP |
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真昼の月 ぽっかり空に開いた穴のような 白い月 見上げるとそればっかりが目に付いてしまう どうしてかなんて 分からないけど 「月だ」 見たまんま、ひねりのない言葉。 「ん?」 隣りに息づく気配。 視線が上がるのが、見なくても分かった。 「ああ、月だな」 そうして吐き出された言葉は、否定とも肯定ともつかない。 ただ、差し出された事実。 現実。 今この瞬間の。 「白いなぁ」 空の青に滲んで消えてしまいそうな、でも確かに消えることなく浮ぶ月。 闇夜を照らすそれとは異質とさえ。 思ってしまう、それはただの勘違いか? 「ああ、白い」 やはり隣りの言葉はただ、続けられるだけ。 それがからかいともごまかしとも聞こえない。不思議。 他人ならば馬鹿にされているとでも思っただろうか。 そう思わないのはどうして? 「消えちゃいそ…」 「消えねぇよ」 間髪入れぬ否定。 「どうして」 「お前と同じだから」 理解できたためしは無い。 それでも、居心地は不思議と悪くはなかったんだ。 空には白雲。 そしてその隙間に消えそうに、でも確かに在る。 真昼の月。 了 |
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月が大好きです。よくテーマにしてしまいます。 たいていそんなときは私自身、月に感動していた時であったり。 真昼の月は在るのに存在は薄く。しかし消えることも無く。 ぽっかりとうす雲の奥にしとやかに、ひっそりと。 息づく何か。 TOP |
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終詞恋歌 いつ『好き』になったのか もう、その境界線がわからなくて ただ、今はこの距離を壊すことが何より怖い あと少し、もう少しだけ 願う心に縛られて、一歩も動けない それでもいい 共に在れるのなら いくらでも 何度でも 殺そう それは【恋】の死んだ日… |
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これも片恋。 両思いよりもすれ違いが好きという屈折した私です。(SSにするならば) 共にいたい。この距離を変えたくない。変えたい。 ジレンマは何より深く、心を削ってそれでもまだいえなくて。 それは弱い心に他ならない。それでいて何より深く愛してしまった証拠ではないか。 TOP |
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すずのね むかし むかし とても すばらしい ねいろ の でんわ が ありました ほんとう に すばらしい ねいろ だったのです あるひ しょうねん の ちちおや が この でんわ を かって きました しょうねん には いもうと が いました いもうと は その でんわのねいろ が とても すきに なりました しょうねん は「きらいだ」と いいました それは しょうねん の うそ でした でも しょうねん は いもうと のように すなお に「すき」と いうこと が できなかった のです しょうねん の ちちおや は すこし さみしそう でした ははおや も ちょっと がっかりした ようでした いもうと は しょうねん に おこりました しょうねんは それでも どうしても あやまる ことは できません でした いもうと は でんわ が なるのを たのしみ に していました でも でんわ は なりません だって かけてくるひと が いなかったのです しょんぼりする いもうと に ちちおや と ははおや は いいました 「でかけた さき から かけて あげるよ」 しょうねん と いもうと の ちちおや と ははおや は りょこう に でかけたのでした いもうと は でんわ を まちました しょうねん は くち では いいませんでした が まっていました そして でんわ は なりました そのばん に にかい りりん いちどめ の おと で しょうねん は ちちおや と ははおや を なくしました りりん りりん にどめ の おと で しょうねん の いもうと は こえ を なくしました しょうねん は ねいろ が「きらい」に なりました ほんとうに ほんとうに しょうねん の うそ は ほんとう に なりました りりん りりん りり ん |
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これは完全なる失敗。何より読みにくい。 そしてわからない。 しょうねんはセム。いもうとはリリス。 二人の過去を捏造したさいの副産物。過去はおいおい書いていけたら良いと。 すずのねは吉凶どちらにも傾くと思う。 TOP |
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宵玉 たとえば寝苦しい夜。 伝わる体温に、全身の毛穴から汗が噴出したとしても。 たとえば肌寒い夜。 伝わる体温を、凍えた全身が奪ってしまったとしても。 どうしても離せない ものがある 世界でたった一つ 夜の たからもの きみが すき 了 |
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シンプルに。愛の独白。 ただ共にいるだけの何よりの幸福。 感じて欲しい何か。この想いはあなたにもあるだろうか。 TOP |
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叫ぶ 嘆く そんなことをしたところで、なにか世界が一つでも変革したかい? たとえ一時、周囲の同情や注目を浴びる事ができたとしても それからどうする それからどうなる わかりきったことだろう あとはただ、忘れ去られていくだけだ 今の自分を自覚しろ 今の弱い 今の何も出来ない無力な 何も守れない自分自身を自覚しろ 今の自分を底だと思え 地の底をはいつくばって、泥をすすってでも生きてみろ これ以上は落ちることはないのだから 少しでも這い上がってきてみろ そうして掴み取ったものこそ 何よりもえがたいものになるだろう そうして守りきったものこそ 何よりも大切なものなのだろう 暖かい声をかけてもらい 他人に助けてもらうことはたやすい しかしそれを認めてしまえば、お前はそこまでの人間 情けをかけられ生きていくようなら、お前を見つけたりはしない 立ってみろ そして自分の力で切り開け 傷ついて それでも自分の足で 拳で そんなお前だから それが出来るお前だから 愛しているんだよ セム。 |
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独白。ただ、ひたむきに。 TOP |
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好きだから 誰よりも臆病になる ねえ、俺のこと好き? 何度も聞いてしまう それを聞いた顔はとても不機嫌そうで そんなに信用できないのか 顔に書いてあるよ 違うんだ 信用できないんじゃなくて、自分が信じられなくて 貴方にふさわしくない自分 それがことあるごとに陰のように、目の前に そして背後に ふりむくと目にとまる 考えないふりをして 馬鹿なふりをして いっしょにいられることだけ望んで考えて まるで能天気のようにうつるかもしれない 貴方にとっての俺はどんな俺なのか そんな答えのない迷いばかり 前向きに見えるのは強がりで 元気に見えるのは辛さを隠すためで それがいつ見つかってしまうのか、怖いんだ 好き 大好き 愛してる。 ------------------------------------- いつもいつも聞いてくる へらりと笑った顔で 無垢を装って 『俺のこと好き?』 わかってるよ、お前は信じられないんだろう 俺の言葉も、お前の存在も まったくどうしてそこまで思いつめるのか お前が好きでないのなら、あんなことは赦さないのに お前が好きでないのなら、こうして一緒にいたりしないのに 行動でわかれと言っても無理な話 言葉でわからせてと言われても、それは出来ない話 強がりも隠し事も 本当は全部見えているんだと、教えてやったらどんな顔をするんだろうか 好きとか 大好きだとか 言えたら 苦労はしないんだよ。 |
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顔を合わせて笑って。 それでも心の底なんて、簡単に読めはしないから。 TOP |
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手首 反射的に掴んだ手首は思いのほか細く、少し力をこめると指の腹に骨の硬さを感じた。 「ご飯、食べてる?」 思わず詰問口調になりつつ、ぐいと引っ張ってやれば。 僅かに顔をしかめて視線を外された。 「お前には関係ない」 「関係…そりゃないけど」 あまりにも切り捨てるようにそう言われてしまえば、それ以上問う事はためらわれて。 まだ未練の残る指先だけが、最後に一瞬、手首の筋をなぞって離れた。 「もう、俺のことはかまうな」 それきり彼は背中をむけて、こちらをみようとはしなかった。 ただ、ここにいることまで否定されたわけではないと。 最後の細い希望だけを掴んで、立ち尽くすしかなかった。 「心配なんだよ…よけいなことかもしれないけど… 仕方ないだろ」 背中はこちらをみない。 背中は言葉を返さない。 「好きなんだ」 あとにはただ、沈黙が残るばかり。 |
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手に残るのは、わずかばかりの感触と。 捕らえる事など出来ない現実。 TOP |