Episode5 攻防

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シードは、意識して堂々と歩いていた。
どこかやましい気持ちに反発したかった。
行き先は、バーンと約束した中央広場。約束の時間まで、あと10分ほどだ。
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夕闇に埋もれた城下町に、ひとつ、またひとつと灯りが点る。
まだ聖夜までひと月余りもあるというのに、気が早いルルノイエ気質からか、 早くも家々の外燈には、色とりどりのキャンドルが淡い光を放つ。
路地という路地は一種、幻想的な世界を醸し出すこの時期のルルノイエ城下 だった。
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シードは、広場まで少し近道をしようと淡い光の中、細い路地へと進んで行く。
この辺りの地理には明るく、路地という路地はシードの頭の中に入っていた。
シードは、まだ迷いがあるのもわかっていたが、それを振り切りたくて 今はただバーンと天群雲剣の事を考えていた。
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決めた以上、とっとと返事をしてしまおうと近道をし、足を早める。
手に入れられない方が、後悔する。
自分の貞操なんか、あの刀の素晴らしさに比べたらどれ程のものでもない。
同性愛に対しても未知の事だから不安になっているだけだ。
そう自分に言い聞かせ、先を急いだ。
その角を曲がればすぐ先にもう、噴水が見え中央広場へたどり着く。
と、角の手前で大きな人影が動いた。
クルガンだった。
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「!!!!!!!!!! な、何でお前ここに? つけてきたのか?」
羞恥心で慌てふためくシードに向かってクルガンは無言で、その手首を 掴むと、奥の狭い路地裏に引き込んだ。
「痛ぇな、放せよ!!」
振りほどこうとしても、クルガンの方が冷静でまた力が強い分、シード の手首が外されることはなかった。
「自分を売るのか、シード。」
クルガンのその声は低く迫力があり、シードは現場を押さえられた恥ずかしさ もあって、返す言葉がない。
「もっと正しい価値判断ができる男だと思っていた。失望したぞ。」
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失望?
その言葉にシードは、はっと我を取り戻す。
「お前、何か勘違いしてないか? 俺は未成年でもなければ当然、お前は 俺の保護者でもない。大人の俺が自分で考えて決めたんだ。口出ししない でくれよ。」
「行くな、シード。」
凄みをますクルガンの声音は、シードを更に反発させた。
「何だよ?俺を束縛する権利なんかないだろう? 放せよ!!」
「だからといって見過ごせると思うか?」
「なんでだよ? お前には関係ないだろっ」
「いや…、道を誤って進もうとしている同僚を黙って見過ごせない。」
「クルガン…、放してくれ。もう時間なんだぜ!」
「軍人としての誇りはどうした?」
それを言われると辛かった。
だがバーンが言った軍は止めなくていい。配慮すると言ってくれた一言 が、シードの背中を押していた。
「誇りならあるさ! それとこれとは別だ。軍は止めるつもりはない。 バーンさんも仕事に関しては配慮してくれるって…。」
「必ず支障が出てくるぞ。」
「大丈夫だ!!」
「男同士での肉体関係も抵抗ないのか、本当に?」
手首を掴む力が一層、強くなりシードは思わず顔をしかめる。
「ああ!! あの刀の為ならな!!」
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「………………そうか。」
シードの手首が放された。
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あまりにも呆気なくクルガンが引き下がったので、シードは咄嗟に次の 言葉が出てこなかった。
気まずい沈黙が流れる。
「…わかった。もう何も言うまい。行ってバーンに抱かれてこい。」
「お…お前はどうすんだよ?」
「どうもしないさ。間違った道を選んだ同僚をここで、見送るだけだ。」
―――間違ってるのはわかってる。けど俺も覚悟決めて来た。
男同士でも何とか…。そして軍務だって…。 .
あの刀の価値はクルガンも十分わかっている筈。
そしてバーンの人となりも。
―――こいつの思慮深さ、冷静で正確な判断力は俺の及ぶとこじゃない。
そのクルガンがこうまでして真剣に引き止めるほど、俺の選択は間違って いるのだろうか?いや、間違ってるのは承知の上だ。
俺が思ってるより深刻な影響が軍務にあるとか?
それに…男同士でヤるなんて…やっぱ正直、自信ない。
何とかなるとは思ってるけど。
いざ、そうなったら逃げ出してしまわないだろうか、俺…。
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「クルガン…」
手首を離すや否や、約束の噴水広場へ駆け出すのかと思っていれば、 自分の目の前で考え込んでしまったシードにクルガンは遠慮がちに、 その肩に手を置いた。
「何だ、考え直したか。」
「クルガン…俺、間違ってるのはわかってる。 だけど…あきらめきれねえ。」
「お前が自分で考えて出した結論だ。忠告にも耳を貸さないほど決心が固い のなら俺からは、もう何も言うまい…。」
クルガンから浅い溜息が零れる。
「覚悟は決めてきた。あの刀が俺のもんになるならってな。けど正直、 男同士でなんて、やっぱ…。」
長めの前髪が俯いた顔にかかり、表情はクルガンからよく見えない。
おそらく、彼にしては珍しく自信のない顔をしているのだろう。
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「シード……。」
クルガンはシードの肩に置いた手に、ほんの僅か、力を込める。
と、肩を伝わって感じるクルガンの手が、シードに別の感覚を呼び起こした。
それは、本人の意識の外で、唐突にやってきた。
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―――だいたい男同士でヤるって、どんなだ…?
そういう世界に、俺は足を踏み入れようとしているんだろう?
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「クルガン…。」
名をかすれた声で呼ばれシードを見ると、何か思いつめたような表情で 自分の事を見上げている。
「クルガン、お前…ちょっと実験台…な?」
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「実験台・・・何の?」
シードは、肩に置かれたクルガンの手を取って自分の背中に回すと両腕をクルガン の首におずおずと回した。
「男同士でやるってどんなもんだろう。ホントに俺、大丈夫かな…。 ちょっと実験させろよ。」
消え入るような声。
やはり迷っているのだ。
「実験とは?」
「…ちょっとキスだけ。」
「俺が実験台になるのか?」
顔を見られるのが恥ずかしいのか、シードはクルガンの肩口に顔を押し付け じっと動かない。
思ってもなかった展開に、クルガンは多少驚きつつも、今、自分の腕の中に いる存在を確かめる。
視界を半分、埋める見慣れた緋色の髪。
その匂い・・・確かにシードだ。
思わず腰に回した手に力が入る。
だが早鐘のようなシードの鼓動を感じ、少しでも落ち着かせようと、 クルガンは優しく慈しむように、シード全体を包み込んだ。
ごく・・・と生唾を飲む動きが触れている身体を通してクルガンに伝わる。
−−−そう、緊張するな・・・シード。
「お前は抵抗ない?男同士でキスとか…。それ以上の事…。」
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自分の胸に顔を埋めているシードの顎を、そっととって囁く。
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「どうかな。試してみるか…。」

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01.12.13.
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koh mirimo
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やったネ、クルガン!トンビが油揚げ。棚からぼたもち。飛んで火に入る夏の虫。
次回以降UG扱いとなりますので、苦手な乙女様はご注意くださいませ。
当サイトUG(裏)は心身共18才以上の乙女様推奨です。
一応、UGに分岐後、また表に戻ってきますのでUGすっ飛ばしても、何となく(笑)筋はわかるようにするつもりです。
だから無理矢理、次回(UG分)読まなくてもいいヨ・・・。
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