「秋」

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 深まる秋に木の葉は色付き、もの寂しい風景に数少ない彩りを加える。
 徐々に暖かさを失う空気に、恋人の肌の温もりを思い出しそっと思いを馳せる。
 秋とはそんな季節かもしれないと、白い息を吐きながらクルガンは空を見上げた。
 物悲しい声で鳴きながら、雁が南へ向かって飛んでいく。
 幾重にも白雲が細く連なり、澄んだ青に空の高さを知った。
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「クルガンッ」
 舞い散る落ち葉の間を駆け抜け、先を歩く相棒の頭を追い抜きざまにジャンプして はたく。
 傾くクルガンの視線を、鮮やかに白と赤の軍服が横切って行く。
「後ろ姿が老けてるぞ。」
 着地と同時に振り向いて、挑戦的な目を向けた。
「馬鹿な。」
 そう言って、飛びさすろうとしたシードを一瞬早くその腕に閉じ込める。
「たった3つ違いのお前に言われるとはな?」
「皆言ってるぞ。」
 暴れるシードに今少し腕に力を込めて、そっと耳もとに囁いた。
 シードはくすぐったそうに身を縮めると、笑ってクルガンの頭を抱え込む。
「この髪、白髪に見えるもんな。」
 言葉とは裏腹に、愛し気に目を細めて優しく手で梳く。秋の冷気に当てられた髪は、 固くひんやりとしたその質感を指に伝えた。指を差し込むと、ぬくもりがじんわりと 指先にしみる。
「そう見えるか?」
 されるがままに頭をシードの肩に預け、クルガンは目をつぶった。
 もう厚着をする季節にな?たかと、一人妙に納得する。頬に当たる布は体温を伝え ず、冷たい。
「表情が固たいから、老けて見えるんだよ。」
 頷くとシードは不満げに言う。
 将軍職に就けば、自然と周りは近寄り難くなる。クルガンの厳格な表情はさらにそ れに輪をかけ、お世辞にも同僚から見ても親しみ易いとは言えなかった。仕事上の上 司、同僚としては信頼できるが、友人としてはどうか。それが大方の見方だった。
 シードはそれが気に食わない。
 自分の信頼する人間が、悪口でないにしろあまりよく言われないのは不愉快で、聞 いていていたたまれなかったから。
 急に黙りこくったシードを、不審に思ったクルガンが肩ごしに覗き込む。
 口をへの字に結んだのを見て、やれやれといった風情で溜め息をついた。そのまま 何も言わずに頭をシードの上にのせ、冷たい風に眉をひそめる。
「それが性分だ、しかたないだろう。」
「…重たい。」
 クルガンの頭の重みが加わって、首が痛いし肩も凝る。クルガンの頭をどけようと 手を伸ばした時だった。クルガンがひょいと頭をどけて目線を合わせ、悪戯っぽく微 笑んだ。
「それに、シード。私が他人と親しくするのは見たくないだろう?」
 一瞬頬が強ばったが、何事もなかったかのようにシードは軽く息を吐く。
「自惚れんのもいい加減にしろよ?ばーか。」
「たまには自惚れたくもなるんだ。」
 そう言ってクルガンは忘れた温もりを取り戻すかのように、シードを抱き寄せた。
 はぐれた雁が一羽、南を目指して飛んでいく。
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2001.11.16.



クルシーSSサイト「TICOTICOTAC」の山野TACさんより味わい深いラブラブクルシーSSv
当方の駄文「EP4覚醒」の完結祝いとは、もう有り難すぎてただただ手を合わせてしまいます。
秋のちょっぴり物悲しい風景と、ふたりのHOTな雰囲気の取り合わせが美味しいです。
山野さん、ありがとうございました!