〜T−BOYの自作小説集〜 筆 T−BOY
Another prelude of Raguol ラグオル もう1つの序曲
「違う・・・・!!」
豹変したラグオルの地に降り立った彼がまず感じたことはそれだった。しかし彼はその先
にあるモノの真の恐怖を知らない。
先日、総督からじきじきに呼出があった。なんでも最近ラグオルに調査に向かったハンタ
ーズが次々を行方不明になっているのでその調査に加わって欲しい、とのことだ。 常に危
険が付きまとうハンターズの仕事中に不覚をとって命を落とすことなどめずらしくない話だ
が、最近のその数は余りにも多すぎるらしい。 しかも皆、旅立つ前に告げた行き先は「森
エリア」だったらしい。数が月前、ラグオルに到着したパイオニア2から多くのハ ンターズ
がまずそこに降り立ち、多くの犠牲を出しながらも調査に次ぐ調査の末、今では最も調査
が進んでいるエリアになり、新米ハンターズでもよほどの油断をしない限り 命を落とす者
は出ないだろう。しかし最近の「森エリア」での行方不明者の数を聞いた時、彼はなにか得
体の知れないものを感じた。
彼の予感は残念ながら当たってしまった。 「森エリア」に着いた彼はその場に流れる雰囲
気が今までとは違っていることに気づいた。ただならぬ気配、重苦しい空気、そして微かに
漂う血の匂い。 彼は不安を感じながら前に進んだ。すると突然、目の前の地面が盛り上
がり土の中から「なにか」が出てきた。石のような身体と鋭いツメをもったそれは彼の知っ
ている それとは全く異なるものだった。その「なにか」は彼に気づくとその巨体に見合わな
い速さでこちらへ近づいてきた。
「こいつ、思ったよりもすばや・・・ぐあぁ!?」
異形のもの出現に驚きスキを作ってしまった彼に「なにか」は重い殴打を浴びせた。彼は
予想を遥かに越える速さの殴打を確認することはできたが反応することはできなかった。
激しく地面に叩きつけけられる。今まで味わったことのないような威力、彼はすぐに起き上
がることもできなかった。そこへすかさず追い打ちをかける「なにか」。 彼はなんとか身を
翻しそれをかわすと急いで距離を取った。普段この近辺に出現する怪物の一撃ならくらっ
たとしてもそれほど問題ではない。 しかし今の威力、続けて食らったらひとたまりもない。
「レスタ!」彼は回復のテクニックを使いダメージを和らげた。そして彼の息の根を止めよ
うとこちらへ歩いてくる「なに か」に向かって愛用のスプレッドニードルを構えた。一度に無
数のフォトんの針を発射するこの武器、高い凡庸性から最強と名高いこの武器、彼もまた
その愛用者だった。
「さっきは油断して一発ももらっちまったがもうそうはいかねぇぜ。覚悟しな!!」
そう言って彼はフォトンの針を発射した。・・・・・・・・・・ しかしその直後の光景は彼の想像と
はまったく違っていた。地面に落ちてボロボロになった無惨なフォトンの針、そしてこちらの
攻撃などまるでなかったかのように進む「なに か」。
「そんな馬鹿な!?」
その事実に彼は驚愕した。「なにか」を覆う堅い皮膚はフォトンの針さえ通さないようだ。信
じられない目の前の現実に唖然とし、スキだらけになっ た彼を再び「なにか」の攻撃が襲
った。彼の体が宙を舞う。恐ろしいまでの威力の殴打を食らった彼は5メートルほど吹っ飛
んだ。放置されていた箱に激しく叩きつけられる。 箱が大破するほどの勢いで飛ばされた
彼の意識は目の前が軽くボヤけるほど混沌としていた。
「くそ・・・あんなのありかよ・・・」
そんな様子を構うことなく「なにか」は徐々に彼に止めの一撃を与えようと近づく。彼の意
識はもうろうとしていたが、彼はまだ諦めてはいなかった。 彼の手にはまだ武器が握られ
ていたことがその証拠である。しかし彼がいつもと違った手応えの武器にふと目をやると、
なんとそのスプレッドニードルは無惨にもひしゃげて使 い物にならなくなっていた。
「ちくしょう・・・ここまでかよ・・・」
諦めかけた彼の手にスプレッドニードルとは違う別の物が当たった。 この握り心地、どう
やら剣の柄の部分らしいが彼には確認している余裕はなかった。すでにすぐそこまで「な
にか」が迫ってきているのだ。 彼は最後の賭けに出ようと全身に力を込める。
「よし、まだ動ける・・・」
「なにか」が彼の射程内に入った。
「今だ!くたばれバケモノォーーー!!!」
彼は最後の力を込めて思い切りその手に握られた剣らしき物を「なにか」の額目掛けて突
き立てた。
「グオオオオォォォォォォォン!!!」
「なにか」は辺り一体に響くほどの断末魔を上げてその場に倒れた。
「はぁはぁ・・・勝った・・・・・」
闘いに勝利した彼は力尽きたように倒れこんだ。 そしてトリメイトを口にほうりこみその場
に倒れながら体力の回復を待った。ふと「なにか」の額に刺さった剣が気になり目をやっ
た。 彼の窮地を救った剣、それは彼がいままでみてきた数々の剣とは根本的にちがって
いた。そう、その剣にはフォトんではなく実物の刃がついていたのだ。 フォトンとはちがう性
能、従来の武器がまったく通じない敵を一撃で倒した威力、後で鑑定屋に見せたところ、
これあどうやら古代で使用されていた剣らしい。 これから繰り広げられよう闘いに、このよ
うな武器が必要になていくのだろうということは彼は感じた。
新たなる敵、新たなる力、そしてまだ見ぬ新たなる驚異、 彼の進む道は困難を極めるだ
ろう。そう、彼はまだ新たなる闘いの領域に一歩踏み込んだだけなのだから・・・・。
続く・・かも・・・