ポケットモンスターSIGN episode1
密輸

カントー

港町クチバシティ

港にいくつもの大小様様な船が停泊している。

その中でも一際目立つ大きな船・・・豪華客船『サントアンヌ号』があった。

その船に一人の少年―外見から察するにボーイスカウトだろうか―が近づく。見た所チケットは持っていない。

出入り口にとまっていた船乗りになにやら小さな声で話す。ふなのりは小さく頷くと、ボーイスカウトの少年は簡単に船内に入っていった。

サントアンヌ号内部

「さぁて・・・」

ボーイスカウトは何やら客室とは違う関係者以外立ち入り禁止とかかれた通路を通っていく。

客室側と違いそこの床は油でギタギタしてあちこち汚れている。そこだけみるととても豪華客船とは思えない。

その通路を奥へ奥へと進んでいき、ある小さな扉の前で立ち止まった。

ゆっくりとドアノブに手をかけ・・・と、勝手に扉が内側へと開いた。

「!?」

ボーイスカウトは開いた扉から出てきた、毛むくじゃらのゴツイ腕に胸倉を捕まれ、一瞬で扉の内側に引きずりこまれてしまった。

薄暗い室内に引きずりこまれたボーイスカウトは床に叩きつけられる。

スチャ

顔を上げると額に何か冷たいものが触れた。

それは人差し指一本で人を殺傷することができる・・・この距離なら絶対に外れるとこはないだろう・・・・銃口だった。

「なんでぇガキか・・・」

日本語では無かった。ただしどこの国の言葉かと問われても答えることはできないだろう。

そいつはボーイスカウトの額に銃を突き付けていた腕の力を抜いた。

「油断したな」

とても13歳とは思えない悪人の顔で、ボーイスカウトもその男が使った言語で話した。

「な・・・っ!?」

男の顔が強張る・・・と、銃を持っていた腕を捕まれた。

バキュン!!

と銃声が響いたが、銃口は明後日の方向を向いて弾は天井に当たっただけだ。

「あぶねぇな・・・ホントに撃つなよ」

とぼやきながらボーイスカウトがその大男の腕をそのままねじ伏せた。

「ガッ!!」

変な方向に間接が曲がり、男は妙な体制のまま口から唾液を垂らしてうめいた。

そのまま力が入りにくくなった腕から銃を奪い、スッ・・・と男の額に銃口を当てる。

「やっ・・やめてくれ!!」

「バン」

とボーイスカウトは笑いながら言った。そして瞬時に銃を持ち替え、グリップ部分でこめかみを思いっきりぶん殴った。

男の顔は引きつったまま気絶した。

「ぶっちゃけ、殺しちゃまずいっしょ」

そう言いながら男が完全に伸びたのを確認し、薄暗い部屋の奥を小型ライトで照らす。

奥には木箱が沢山あった。

「ひぃふぅみぃ・・・全部で100個以上か。いくら灯台下暗しってもこれは運びすぎだろ」

気絶した男をチラッと見る。

カタ・・・

「?」

背後に気配を感じた。振り返ると影が襲い掛かった。

「シャアアアア!!!」

ゴーリキーだ。おそらくはあの男のポケモンだろう。

「あらかじめ仕込んでいたって?用意周到だ事。」

ポンッと腰のモンスターボールの開閉スイッチを押した。

「ゴオオオッ!!」

リザードが出た。リザードは迫るゴーリキーを両腕で押さえた。

ゴーリキーとリザードがお互いの腕を掴んで取っ組合いをしている。

「ん?」

ゴーリキの様子がおかしい。

「・・・まさか」

バキバキッ!!

鮮血が室内を染めた。

鈍い音と共にリザードの腕がもげたのだ。骨ごと。

通常に育てていればいくら格闘ポケモンといえどそれほどの力を出す事は不可能・・・つまりコイツは

「改造を施されてるってか」

両腕を失ったリザードは悲鳴をあげながら右往左往している。

そこにゴーリキーの拳が

ドスッ!!

リザードの肉を、心臓を正確に貫いた。

「・・・・ぐ・・・」

リザードは弱く鳴くと力なくうな垂れる。そしてそのまま地面に叩きつけられると完全に動かなくなった。

「最近いるんだよな。改造ポケモン。困るよなそういうの。折角レベル100まで育てたリザードなのに」

ボーイスカウトは別に悲しんでいるわけでも、怒っているわけでもなくただ残念そうな顔をしてそれまでリザードだったものを見た。

ゴーリキーがボーイスカウトと対峙する。

ボーイスカウトは小さな装置を取り出した。モニタと赤外線ライトがついているだけのシンプルな装置だ。

赤外線ライトをゴーリキに向けると、ピッっという音と共にモニタに数字が表示された。

『300』

「レベル300か。へぇ・・・じゃコイツでどうかな?」

「シャアアア!!!」

ゴーリキーはジャンプしてボーイスカウトに襲い掛かる・・・。

「ぶっちゃけ、そのレベルじゃ俺には勝てないし」

言い終わると、ボーイスカウトの少し前まで来ていたゴーリキーの体が僅かに震えた。

そしてそのままボーイスカウトを捕らえる筈だった腕は空を掴み落下した。

「流石バルキー・・・強いな」

ゴーリキーの背後にはバルキーが立っていた。バルキーの腕には鮮血がついている。

ゴーリキーはボーイスカウトの足元で絶命していた。ゴーリキーは首から上が無かった。
「よし。戻れ」

バルキーはモンスターボールに収納された。 そこには伸びた大男と腕の無いリザード、首の無いゴーリキーの死体が転がっていた。


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