ポケットモンスターSIGN episode1
探索
グレン島
火山によってできた島で、開発がされてない沿岸部では未だに安山岩や流紋岩、玄武岩がゴロゴロしている。
年間平均気温は26℃。
炎属性ポケモンの宝庫として謳われている。
「グレン島なんて、俺がトレーナーだった頃に一回来ただけだもんなぁ・・・久しぶりだ。」
一人乗りモーターボートを岸に泊めて、上陸する。
休火山の舗装されていない道を進んむ。目的地は人里からかなり離れた所にある。
「今回の任務はグレン島にある研究所。偵察班からの報告によれば地下から人並の生命反応が探知されたのでその正体をつきとめよ」
その研究所はずっと前に建てられたものらしく、今は使われていない廃墟と化している。
「所長はフジ博士。研究対象は化石、古代種、そして細胞や進化・・・か」
資料を片手に研究所の前に立つ。
人気は無い。
門には立ち入り禁止の札がかけられていた。元々、この研究所は”ある事故”で所長を含め全員死亡し、
研究所としての機能を失ってしまったため
そのままになっていたのを、ある日を切欠にカントー自治政府がそこを立ち入り禁止区域と指定したものだ。
エイジの所属する”機関”は政府公認のため、入る権利を正規の手続きで入手するのにはそう時間はかからなかった。
中はまるっきりの廃墟。ホコリならまだしも火山灰まで積もっている。ここ最近火山が爆発したのは10年前だから
「10年も人が入ってなかったのか」
という事になる。
あちこちに素人目には用途不明な研究装置が設置されているが全部死んでいる。
「・・・・」
他の扉より一際頑丈な金属で作られているドアがあった。
ノブの横にカードキー差込口がある。が、カードキーも無いしあったとしても果たして読み込んでくれるかわからない。
「ここは・・・」
ウェストポーチから小型時限爆弾をドアに仕掛け、中央のボタンを押す。
そして少し離れて耳を押さえる。
ドゥン!!!
短い大きな爆発音と共にドアにポッカリ綺麗な穴が空いた。
ドアの先には
「階段・・・」
下り階段を進んでいく。先は真っ暗で何も見えない。まるで地獄へ続いてるかのようだ。
エイジはフとこんな話を思い出した。
ポケモン研究所の研究対象に、ミュウがあった。
当時アジアの奥地でミュウを捕獲したフジ博士はミュウの進化の可能性に興味があった。
ミュウの遺伝子を組替え、新たな種のポケモンを作り出そうとしたのだ。
その研究成果はご存知の通り、ポケモン協会も正式に認めたNo150のポケモン『ミュウツー』が誕生した。
しかし現在世の中に出回っているミュウツーのほとんどは、本物とは少し違う。いわ不完全なコピー。
唯一オリジナルミュウツーに近いコピーミュウツーはハナダの洞窟での目撃情報を最後に行方不明。
ミュウと、オリジナルミュウツーの行方、そしてフジ博士は事故でその研究データも消えている。
「まさかここに来てオリジナルミュウツーとご対面・・・ってわけじゃねぇだろうな」
エイジは苦笑いしながら言った。
ミュウのコピーなら”裏”では別に珍しくないが、ミュウツーのオリジナルとなると文字通り1匹しかいないので貴重である。
階段を下り終えると、また分厚い鉄の扉がある。こちらは電子ロックも何もされていないので力一杯押せば開く。
「ぬっ・・・ぐ・・・」
ゴゴゴゴ・・・
重い扉を開くと部屋があった。その部屋の中央に大人一人が余裕で入れる縦長の水槽があった。
が、その水槽は割れていて破片が飛び散っている。
入っていたと思われる溶液も乾燥してしまっていて無い。
「これは・・・」
水槽内部に僅かに残っていた白い粉。溶液が乾燥した際に残った物だろうか。とりあえず採取するため、小ビンを取り出す。
「・・・・」
見渡すと、小さな机がある。机の上に写真が立てかけてあった。
写真はフジ博士と・・・ミュウ。そして誰かいるがそこだけ掠れていて見えない。
「ミュウ・・・か」
”裏”の組織は腐るほどあるが、その組織に共通している資金源。それは先日エイジが派遣された事件にも関わっていた
『麻薬』、そして『人間の臓器』その次に多いのが『珍しいポケモン』である。
裏の組織を沢山討伐して来たエイジ。その資金元の取引現場で大量のミュウを見た事があったが、その写真のミュウは今まで見てきたミュウよりも違って見える。
「なんていうか・・・神秘的なオーラを感じるな。うん。」
ギィィィィ・・・
写真を見ていたエイジの背後で、扉がゆっくりと
バタン
閉まった。
「!!」
咄嗟に体に染み付いた危険への反射神経で銃を構えて地面に伏せた。
「・・・・・」
机の下に隠れながら様子を見る。
確かに”何か”いる。
数々の危機を乗り越えてきたエイジにはわかった。それがいままでに無いとてつもなく大きな存在である事を。
顔を机の外に少し出しあたりを見回す。
誰もいない。
しかし、あの分厚い扉が風で閉まるようなモノじゃない事は開けた時にわかっている。
そしてこんな窓もない地下に強い風が吹くハズがない。
何か物理的外の力が働いた。
物理的外・・・超能力・・・エスパー・・・
「エスパー!?」
!!
直後、床に散らばっていたガラスの破片が独りでに襲ってきた。まるで一つ一つに意思があるかのように。
「クッ!!」
横に飛び出した。
そして入ってきた方とは逆の、奥の扉に駆け寄る。
扉を思いっきり開いて部屋の中へ滑り込み、急いで扉を閉める。。
ガスガスガスッ!!
と、扉一枚を通じてガラスが刺さったのがわかった。
「ぶっちゃけ、危なかった・・・って・・・ここは・・・・?」
そこは小さな部屋だった。
今までの研究装置や本棚と違って生活観あふれている。
本棚には絵本が何冊もあり、床にはピカチュウやプリンのぬいぐるみが散らばっている。
人目見てそれが女の子の部屋である事がわかった。
そしてベッドにはマリルの布団。
そしてそのベッドには
「・・・!!」
9歳ぐらいの少女がいた。
赤いリボンのかわいい女の子だ。が、目は世間一般の9歳児の目では無い。
どこか悲しく、そしてすべてを悟ったような目だ。
その虚ろな目がエイジをジッと見据える。
「・・・・・君か。さっき俺を襲ったのは」
コクリと静かに頷いた。
別に驚くことじゃない。エスパーならヤマブキシティのナツメも使える。
驚くのは、なぜこんな地下施設に少女がいるかという事だ。
「き」
少女がゆっくりと口を開いた。
「き?」
「危険・・・」
それだけ言うと少女はバタンと起こしていた上半身を寝かせて布団の中に潜った。
「ど・・・どういう事?」
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