ポケットモンスターSIGN episode1
襲撃

タマムシシティ

分室

「とんでもない子連れてきたね君は」

「はい?」

開口一番に所長が言った。

「今本部で彼女を調べてもたらった所だがね。彼女、フジ博士の一人娘だ」

「は、はぁ・・・それが何かやばい事でも・・・?」

「問題なのは、彼女は死んでいるって事だ。事故でね」

エイジの思考が一瞬だけ泊まった。

またまたとんでもない事実をさらっと言うなとエイジは思った。

「とりあえず身柄は引き取ろう。本部からエージェントを一人彼女の世話係りにつけるそうだ。」

エイジの所属する機関本部巨大コンピュータの端末。イージスのデータベースならアイの情報は得られるかもしれないと思い、エイジはPCの画面に向かう。

アイ・・・アイ・・・

『フジ博士の一人娘。交通事故により9歳で他界』

「これは・・・18年前・・・?」

おかしい。今のアイはどう見ても9歳だ。計算が合わない。

カタカタ・・・

更に詳しく調べる。

『フジ博士 ミュウを元に遺伝子を改造し、ミュウツーの製作に成功』

「そういうんじゃなくて・・・」

カタカタ・・・

もっともっと詳しく調べる。そこへ所長が来た。

「おんや〜珍しいね。エイジ君がデスクワークかい?」

所長がPCモニタを除きこむ。

「んあ?」

所長の方に顔を向けたとたん、モニタに!マークが表示された。

『アクセスエラー』

「あれ・・・?」

「ふむ・・・どうやら地雷踏んじゃったようだね?」

所長が不適な笑みを浮かべる。

「地雷・・・・」

そういいながらモニタと睨めっこする。

「AAA極秘機密事項。イージス内部職員にも漏らせないような『とっぷしーくれっと』っていう奴さ」

「へぇ・・・」

「でもエイジ君みたいな優秀なエージェントなら・・・アクセス権を得られるかもよ。本部に問い合わせてみる?」

「あ、いや・・・そこまでしなくても・・・・」

とそこへ分室に訪問者が訪れた。

そいつはドアや窓からではなく、突然”そこ”に現れた。

「あ、アイちゃん!?」

「テレーポーテーション・・・か」

二人の前に突如現れた少女・・・アイに向かって所長が言う。

アイは小さな口を開いて言った

「・・・逃げてきた・・・」

タマムシデパート屋上

「はむ」

売店で買ってきたクレープを渡すと、小さな口でカプっと噛り付いた。

「どうだ?うまいか?」

コクンコクンと2回頷いた。

だが、端から見たら無表情で黙々と食べているので美味しいのか不味いのかは判断できない。

「だったらもう少し美味そうにして食えよなー」

「すいません・・・」

「いや、別に謝らなくてもいいんだけどな」

クレープを全部食べ終えて、しばらくしてからアイがしゃべった。

「7年ぶりです」

「ん?何が?」

「物を食べたの。・・・今まで薬だったから」

ドキッっとした。自分の隣にいたのは普通の9歳児じゃないという事を改めて認識してしまった。

「そうだな・・・アイちゃんの事俺全然知らないからさ・・・教えてくれないかい?君の事」

「私の事・・・」

アイが何か言いかけた時、顔がビクンと震えた。

「どした!?」

「く・・・・る」

辛うじて出したような声だった。

「何が?」

アイは答えなかったが、数秒後に何が来るのか実際に目に見て知った。

ズドォォォォォォン・・・

隣のビルが崩れた。

「なんだ?」

それまで隣にビルが建っていたところから、巨大なギャラドスの顔が覗いた。

「で・・・でかい・・・」

怪獣映画に出てくるようなサイズだ。少なくとも頭から尻尾まで一キロはあるんじゃないかと思うほどに。

「どうしますか?」

屋上にいた社会人や売店の店員達が必死で逃げ、あっという間に屋上にいる人はアイとエイジの二人だけになった。

「どうするって・・・・こいつただ暴れてるんじゃないな。何か目的があって行動してる」

「目的とは?」

「例えば・・・お前とか?」

「私もそう思います」

恐らくこのギャラドスは誰かの差し金。

そしてこの大きさから見て改造が施してあるのは明らかだった。

ギャラドスの口にエネルギーが集中し、それが一直線に放射された。

タマムシデパートは3階から上が見る見るうちに崩れて高さが縮んでいった。

「大体レベル900ですね」

崩れ行く中で冷静に分析をしているアイ。

「テレポーテーションお願いできるか?」

「了解しました。」

アイがエイジの手を握ると二人は一瞬でタマムシデパートの1階に移動していた。

「って1階じゃダメじゃん!」

「すいません…」

冷静だがやはり9歳児か・・・。とエイジは思った。

二人に瓦礫が降りかかる。


ギャラドスはターゲットを失い崩れた2つの建物をうろうろしていた。

「ガルルルル・・・」

スパンッ!!

首が綺麗に切れた。

巨大ギャラドスはタマムシデパートの前に落ち、胴体はそのまま少し痙攣しながら地面を這って、やがて止まった。

「すげーだろ。バルキーの空手チョップ」

コクリと小さくうなずくアイ。

その周りにはコイルとコイルの電磁波でビリビリと浮いている瓦礫があった。

コンクリートが粉砕されて巻き起こった煙の中から人影が現れた。

「戻っていいぞ、バルキー・・・」

その影はエイジ達に近づいていった。

「バルキーじゃない!!」

煙がやんだ。

人影は赤い髪をした青年だった。

「普通のボーイスカウト・・・じゃないよな。普通のボーイスカウトならこんな異常レベルなポケモンを倒せるわけがないもんな。」

赤い髪をした青年は赤い眼でエイジを睨んだ。

「お前こそ何者だよ・・・こんなでっけぇギャラドス街中で出すなんてメーワクだっつーの。ってかぶっちゃけお前どこの組織だ?」

「弱い奴には教えてやんねぇ・・・。おいそこの女。お前俺と一緒に来い」

赤い眼差しはエイジの後ろにいるアイを見つめていた。そして

「オリジナルミュウツーか・・・なるほどね。」

直後、背後のビルの瓦礫からバルキーが飛び出し、赤髪に向かって拳を放った。そのスピードは通常のバルキーの限界値を大幅に超えるものだった。が、

「フッ・・・」

赤髪は背後からの攻撃にも怯むことなく、まるでどこから攻撃がくるか知っていたかのように余裕の表情で交わした。

「何・・・」

「ポケモンで俺と戦おうなんて・・・考えが甘かったな」

赤髪がバルキーの背に手のひらを向ける。

すると星型の形をした攻撃がバルキーの皮膚を裂いた。

バルキーは空中で皮を、肉を裂かれ血が勢いよく飛び出した。

そしてそのまま地面にぐしゃりと落ちた。

「今のは・・・スピードスター・・・」

今のバルキーを裂いた攻撃を顔を顰めながら見ていた。

「驚いてる驚いてる・・・残念だがこの技を見た者は死んでもらわなくてはならないんだ。ゴメンな」

赤髪は軽い口調で言うと今度は上半身を逸らした。肺に思いっきり空気を吸い込む。

「!!」

エイジは危険状態のバルキーを瞬時にモンスターボールに回収した。

「狙いはバルキーじゃねぇ・・・お前だよ」

赤髪が思いっきり上半身を前に出し、空気を吐いた。それはただの空気ではなく灼熱の炎が灯った・・・

「火炎放射!!!」

メラメラと燃え盛る炎が一直線にエイジ達を襲った。

ゴオオオオオッ!!!

炎が巻き上がった。途端にそこの温度が一瞬にして40度近く上がった

そして空気に紛れるように炎は上空に上って消えた。

「・・・・・」

そこにはエイジの前に立ち塞がるようにしてアイが立っていた。 アイの前には・・・

「光の壁・・・・フッ・・やはりそうか」

赤髪はアイの光の壁を見ると何かを確信したかのように笑った。

「許しません・・・」

いつもの無表情顔だったが瞳の奥には怒りが篭っていた。

アイは両腕を赤髪に向けて伸ばす。

「サイコブラストッ!!」

真っ直ぐに超念波エネルギーが赤髪を捕らえる。

赤髪はギリギリの所で体制を崩しながら交わす。

「ま、マジかよ!!」

そのままサイコブラストは背後の建物、ギャラドスの死体を木っ端微塵に粉砕した。

「なっ・・・聞いてねぇぜ・・・こんなの相手に出来るかっつーの・・・」

次にアイは手のひらを空に向けた。
すると手のひらに黒い球体が現れみるみるうちにバレーボールぐらいの大きさにまで膨れ上がった。

その気配に気づき咄嗟にアイに向き直る赤髪。

「シャドーボール」

ボーリングの球を投げるようなフォームでシャドーボールを放った。

地面すれすれを飛びながら地を抉り、赤髪に迫る。

「チッ・・・竜の怒り!!」

拳から放たれた竜形のエネルギー派がシャドーボールに当たって弾けた。が

「相殺できない・・・!!」

シャドーボールは赤髪に命中した。

ズドオオオオオオン

小さな地震が起こったような衝撃がタマムシ全体を襲った。

「グッ・・相手が悪すぎるぜ・・・出直しだな」

衣服がボロボロになり、片足を失った赤髪が膝をついて、かろうじてバランスを保っている状態でいた。

「・・・・・」

赤髪はそのまま炎に巻かれて消えた。

「逃げました・・・」

アイは半壊した通りを呆然と眺めながらつぶやいた。

その光景を見ていたエイジは唖然としながら

「ぶっちゃけ・・・ついていけねぇし」

とだけ言った


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