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キリ番3000のプレゼント小説:to 菊理姫さま |
「ナルカミさんっv」 このところ、ヘイムダルはそんな台詞をよく聞いていた。 別にその少女をつけてまわる気はなかったのだが、何故かその行く先々でばったり会ってしまう。 (……正しくは、ばったり会う『ような所で待ち伏せて』しまう。) ちなみにそれは、世で言う「ストーカー行為」と呼べなくもないのだが、彼自身は気付いていない。 そして今日も、公園で『偶然』、その少女を見かけた。 フワフワの柔らかい黒髪、大きいリボンと、優しい目。 とりあえず今日は、彼女がベンチに座ったところで現れよう、そう思ったその時である。 彼女が道路に向かい目をパァッと輝かせてその名を呼んだのは。 「おぅ、レイヤか」 バイトの帰りか、あるいは行き道か。 そこには今日も、トール神・鳴神の姿があった。 多分、玲也は鳴神に会うために公園に来ているわけではなかった。 ただのお散歩コースだ。 そこを、鳴神が通ることがある。 というか、よく通る。 ヘイムダルこと和実は、その辺をよく承知していた。 鳴神は明らかに、よくその道を通っている。 バイト先が違っても、多少離れていても、大抵はその道を通っていた。 それで、たまに玲也に出会ったりする。 ……というのが、ちょっと前までの様子だった。 そして最近。 多分、玲也は鳴神に会うために公園に来ているわけではない。 それは彼女を見ていればわかることだ。 けれど、このところ明らかにそのお散歩が増えている。 本人に言わせれば『楽しいことがあるから』なのだろうが。 しかも公園へ着くと、まず辺りをきょろきょろ見渡していた。 そこへ鳴神が現れて……、以下、見ての通りである。 「じゃあレイヤ、そろそろ帰るデスねv」 玲也はベンチに座っていくらか他愛ない会話をすると、すっと立ち上がった。 「そーだな、オレも行くか」 鳴神もゆっくり腰を上げる。 と、そこで。 「あ、レイヤちゃんv……それとトール神」 和実はやっとのことで登場した。 「和実さん、アタマに葉っぱサンついてますぅ」 「えっ、ウソっ?」 「どうしたデスかぁ?」 ……言えない。草陰に隠れて一部始終玲也+1の会話を聞いていたなんて、死んでも言えない。 「あはは、なんでだろーねぇ?」 和実はとりあえず笑って誤魔化す。 「あのぅ、ゴメンナサイです。レイヤ、もうおうち帰らなきゃダメです」 「あぁ、いいよ、ボク、ホントは鳴神くんに話があったんだ」 そぉですかぁ?、と玲也は首を少し傾げ、お辞儀を一つして公園から出ていった。 「で?何なんだ?」 彼、鳴神は、和実登場時の言葉に気を悪くしたらしく、いらいらしたような口調で言う。 「何って、わかってるだろ?」 それは、玲也がもう見えなくなった瞬間。 和実の顔は一変して、地獄の眼差しへと変わっていた。 「な…、何がだよ」 鳴神はびくっとして一歩引く。 「レイヤちゃんのことだよ。手ぇ出さないでくれる?」 じりじりと、和実は詰め寄るように一歩押した。 「何言って……」 「言い訳しても無駄だからね?通り道じゃなくても毎日この公園通ってるの知ってるよ?」 鳴神はまた一歩引く。 こういうタイプは苦手だ。 「どっ、どこ通ったってオレの勝手……っ」 「なんでこの道じゃなきゃダメなんだよ」 片目なのに、いや、片目だからか、この目は相手へ強く強く圧力をかける。 「そんなこと言ってんじゃねぇだろ?」 鳴神は吐き捨てるようにそう言った。 和実はフーッと息を吐く。 「ボク、よくレイヤちゃんに会うんだけどね、すっごく優しく笑うんだ。すっごく優しく」 フッと、鳴神は顔を逸らした。 一瞬、玲也の笑顔が脳裏を過ぎる。 「ノロケか?それ」 それはもう呆れたように。 しかしそれでも執着深い。 和実は鳴神の目の前に回り込み、睨むでもなくその瞳を見つめた。 「これをノロケだと思う君は、世界一不幸だよ」 そして、少年はすたすたと歩いていく。 どういう意味だよっ、と叫ぶ鳴神を置いて。 ――これをノロケだと思う君は、世界一不幸だよ。 知ってる?そのすっごく優しい笑顔の先に、君がいるってこと。