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おあいこ
by.御法川 美留恵サマ






床に広がる紅い海、そこに転がる骸を見つめたまま、生気なく嗤い続けるフレイヤ。

「――アハハッ、ちょっと、何やってんのよ、ロキ?つまんない冗談やってんじゃないわよ。

どうするのよ、こんなに部屋汚して。シャレになんないわよ、こんな……こんな事して………」



                               ――君は、嘲笑ってくれるかい?



「……………」

フレイヤはなんとか腕を伸ばし、海に沈んだ黒い物を引き上げる。

「弾…まだ入ってるわね………」

そこへ入ってきた1人のメイドが、床を見て黄色い声を上げた。

「フレイヤ様、具合の方は……キャアアアアッ!!だ、誰か、誰か来て!!」

「うるさいわね、病人がいるんだから静かにしなさいよ。……もっとも、その病人ももうすぐ

死ぬけどね」

フレイヤは褪せた笑顔を浮かべ、手の中の黒い物をこめかみへと近付ける。先ほどのロキと

同じように。

「……っおやめ下さい、フレイヤ様!そんな事……ッ!」

メイドは慌ててフレイヤに飛びつき、それを止めようとした。

「放して!あんたらはあたしに死んで欲しいんでしょ!だったらお望み通り死んでやるわよ!

どうせあたしはもうすぐ死ぬんだから、ちょっとくらいそれが早くなっても文句はないでしょう!?

そうしたら……そうしたら、あんたらは満足なんでしょ!!死なせなさいよっ!!!

死なせてよおぉっ!!」

メイドの腕の中で、フレイヤは暴れ、ヒステリックに叫びまくった。

「もうすぐ死ぬ」病人とは思えぬほどに、狂ったように。

「なんでロキが死ななきゃいけないのよぉ…………」

しばらくして駆けつけた他のメイド達も加わり、フレイヤはようやく落ち着きを取り戻した。



                                 君は、嘲笑ってくれるかい?



「……分かったわよ。あんたがそのつもりなら、あたしにも考えがあるんだから」

彼女は何かを振っ切ったような顔をして、ロキを見た。

「生きてやるわよ。あんたの何十倍も何百倍も生きて、こんな所で死んだあんたを

嘲笑いとばしてやるから!これからあたしは、今よりもっと美しくなるわよ。こんな所で

死んだ事、思いっきり後悔させてやるからね!……フ、ウフフフッ。アーッハッハッハッハッハ、

アハハハハハ……」

フレイヤは嘲笑い続けた。しかしその瞳はボロボロと涙をこぼし続け、褪せた笑顔を浮かべ、

哀しい嘲笑い声を部屋中に響かせて。

彼女は、嘲笑い続けた――



                                         君は‥‥、



アハハハハ、アハ、ハーッハッハッハッハッハッハ………





その後、フレイヤは驚くほどの回復ぶりを見せ、季節が2つ巡る頃には、もうすっかり

元気になっていた。

ロキの死がそうさせていたのかどうか、定かではないが――



そしてある日、自室で本を読んでいたフレイヤのもとを、ある神が訪れた。

「…………」

顔を上げたフレイヤは目を細め、無言でまた本に視線を落とす。

「調子はどうだ?フレイヤ」

「あんたが心配しなくても大丈夫よ、トール。読書の邪魔だから、どっか行ってくれる?」

「おいおい、冷たいなあ。俺はお前を心配して来たんだぞ?そりゃあ、体調悪かったのも

心配だったけどよ……」

そこまで言って、トールは口をつぐんだ。

「ロキが死んだ事?」

「それだよ。さすがのお前でも、あれはちょっとショックだったんじゃねえかって……」

「ご心配アリガト。でも、どうしてロキの死に対してあたしがショックなんて受けなきゃ

いけないのかしら?あたしは別にロキの事なんて……」

「……そっか。ならいいけどなっ」

トールは満面の笑みを浮かべた。こいつは単細胞だから、こちらの返答に対してすぐに

納得してしまうのだ。

「それじゃ、俺はこれから用事があるから、もう帰るわ。じゃあな」

一体何をしに来たのか。トールはフレイヤの部屋を出て行った。



「あんなのただのバカじゃない。どうしてあたしが……」

…………。

フレイヤは黙って立ち上がり、部屋を出た。





あの時の部屋。自分が病に伏せ、ロキが紅い海に倒れた白い部屋。あれ以来、この部屋は

立ち入り禁止となっていた。

フレイヤは静かにそのドアを開け、中へ入った。

「…………」

床には、あの時の海の跡が残っていた。



――あの時。

  あの時の彼の言葉、あの時の彼の瞳、あの時部屋に響いた音――



  ――こーしたら……こーしたら、おあいこだよね。



  ――これで、僕の勝ちだね。



全てが、脳裏に焼き付いて離れない。どんなに時が過ぎようとも、それらがフレイヤの

頭を離れる事はなかった。



「……あんたの勝ちよ、ロキ」

床にぺたりと座り込んで、フレイヤはつぶやいた。

「けど、あんたの負けよ……死んだら、そこで終わりなんだから」

次第に込み上げてくる笑い。そして涙。

フレイヤは自分の右手をあの黒い物に見立て、自分のこめかみに当てた。

「……………ばあん」

そう言って、そのまま床にぱたりと倒れた。

「……フフッ、フフフフフ」



そう、おあいこよ、ロキ。あんたはあたしに勝って、そして負けたの。だから、おあいこよ。



オ ア イ コ … …



+*+終わり+*+



++あとがき++

‥‥ダメだ。ヘボい。

かおり様の小説に影響されて書いてみたんですが、

だめです。こんなんじゃ、お目汚しにしか

なりません。フレイヤ壊れちゃったよ。

‥‥一番壊れてるのは私ですが。



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ふぁぁぁぁっっっ!!!
もしかしてこれ、「HELL OR HEVEN」の続きだったりしちゃいますぅ!?!?
すっごい嬉しいっすっっっ!まじでっ。
しかも。もとの作者(?)よか全然上手いし。
フレイヤさまの切なさみたいなんが、なんかこう頭ん中に流れ込んでくるような。
そして立ち直ろうとするのがかっこいいです。
それでそれでっっ!
最後の、「……………ばあん」ってとこっっ!!!
本当に本当に好きです。
周りにどう見せたって、周りがどう見たって。
フレイヤさまの心は、まだあの紅い海に残ったままなんじゃないでしょうか?
想像すると、なんだか鳥肌がたつような気分です。
ありがとうございましたっっっ!!



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