★ロキv玲也☆


SURE−前編−
by.寅さんサマ




  
 

 ひとつ、ふたつ。鮮血が指先から、鈍く光る銀のナイフから滴り落ちる。

足元に仰向けに倒れている少女の長い髪が、血に濡れて赤く染められていく。

光を失ったその瞳は虚空を見つめ、唇からは紅い線が一筋流れて。指一本ピクリとも動かない。

胸元から腹部に架けての朱は止まることなく服を赤くしていく。

 その様子を見つめてから、満足したように彼女は悠然と微笑んだ。

その微笑みはこの場所に似合わないほど・・・・・・・壊れていた・・・・

 

    消えることの無い罪を

事の始まりは玲也の何気無いこの一言から始まった。

「ロキ様はもし地震が起きたら玲也とまゆらさんどちらをお助けするですか?」

「・・・・え?」

いきなりそんな質問をされても応えようが無い。

ロキにしてみればどちらも大切には変わりないのだから。それなのに、彼女はそれを選べと言う。

難しいものだ。

「・・・どっちも助ける・・・じゃ駄目かな?」

冷や汗を背に掻いての苦渋の答え。暫しの沈黙の後。

「それでは駄目ですぅ。どちらか一方ですっ」

カチ、カチと振り子時計が音を鳴らす。

うんうんと唸るロキの姿とワクワクとした玲也の姿を見た者がいたなら、

この光景をどう映しただろうか。おそらくかなり奇妙に見えたに違いない。

「・・・・―――――?」

ぼそりと呟いたその言葉。しかしその声をただす前にロキはにっこりと笑ってこう答えた。

「玲也かな」

 

その日から数えて丁度一週間。玲也の心はあることで渦巻き、そして。

『玲也かな』

そう、彼は笑っていったが。本当はその前に確かに本当の答えを呟いていた。

・・・・・まゆら・・・?

頭を少しだけ振ったのも見ていた。

その日から玲也はまゆらに対して何か得体の知れない感情を持っている。

これはなんだろうか。理由はその手にもうあった。

銀のナイフ。果物のバスケットの中に入っていた果物ナイフだ。

よく研がれて、人一人位なら簡単に切り裂けるであろう。

くす、と玲也は笑った。これで何をするのかもう分かっている。だから笑う。

失敗しないと確信していた。夕暮れに彼女一人が鮮やかに映しだされて、不気味さがある。

ロキと闇野はいない。もう直ぐ来る彼女と玲也だけがここの空間にいることになる。

「待っていてくださいね、まゆらさん・・・・」

 

パタパタという慌しい音がしてすぐに、扉が勢い良く開かれた。

「こんにちはロキく・・あれ?玲也ちゃん一人??」

「こんにちはですまゆらさん」

にっこりと夕日をバックに微笑む。まゆらは一瞬彼女に違和感を覚えた。

が、さらりとその考えを流してしまった。

「ロキ君はお出かけ?」

鞄から透明なビニールの袋を取り出す。甘い匂いがほのかに鼻を擽った。

どうやらクッキーの匂いらしかった。

「最近コーヒー味飽きたからバニラとかにしてっていうから作ってきたんだけどな」

いないならいいやとテーブルにそれを乗せて帰ろうと踵をかえす。

「何処か御用があるですか」

「うん、和実君とデート」

クスクスと可愛らしい声と口元を指で隠す。約束した時のことを思い出しているらしい。

玲也もまた柔らかな笑みを浮かべて彼女に近づいていく。

背には冷たく光るナイフを隠し持ったまま。その笑みにまゆらは得体の知れないモノを感じた。

カタン、と花瓶に腕がぶつかる。

「玲也・・ちゃん?」

黙って微笑んだまま玲也は一歩一歩近づいていく。

まるで悪魔が嬉々としてその魂を喰らおうとしているように。

後退していたまゆらの視界が一瞬下の方に向いた、

その、僅かな隙に玲也は目を見張る程の恐ろしいスピードで彼女の懐に飛び込んだ。

ドスンッ

鈍い音が部屋に響き渡る。痛みよりも熱いとまゆらは思った。確かに腹部には深々と

何かが刺さっている。玲也の手からポタ、ポタ、と血が滴り落ちていく。

玲也は壊れた笑みをまゆらに見せた。その笑みにゾクリと背筋に寒気が走る。

「どうして」と言いかけていた言葉がヒュッと喉を通りすぎる。

脳裏に壊れた笑みを浮かべた玲也を焼き付けるのを最後にまゆらの意識は闇へと消えた。

 

どれ位其処に佇んでいたのか、騒がしい声が玲也の意識を現へと引き戻した。

耳を済まして聞いていると主は三人ほど。ロキと闇野、そして誰かもう一人。まずいと感じた。

こんな姿をロキに見られたくは無い。血に染まった手とナイフとそして、その血の主の姿と。

どうしようかと周りを見渡せば、ロキが愛用している椅子の後ろにある大きな窓に目が止まった。

今、考えている暇は無かった。出来るだけ静かに窓を開けると手前に丁度良い枝が生えていた。

子供が乗っても丈夫そうな太い枝。

 その枝に手を掛けると次のとき、玲也の体は宙を舞った。

「まゆら・・!?」

うまく着地すると同時に部屋から誰かの小さな叫びが挙がった。

ソロソロと垣根に身を潜め、事の成り行きを見守る事にした。

 

「まゆら!まゆら!!返事しろって!!」

血の海に沈んでいる姿を見た瞬間ロキは何故か直ぐ彼女だとわかった。

同時に目の前が暗くなるのも。駆け寄って耳元で叫んでみても彼女は動く気配を示さなかった。

「まゆ・・・ら・・・」

 心臓の音が微かに聞こえる。呼吸も微弱だが聞こえる。なのに彼女の死は確実に近づいている。

どうしたら良い?どうしたら彼女を生かせる?

考えがまとまらず、心臓が早鐘のように強く胸を打ち続ける。

そうしている内にも危険だというのに!?

「早く止血しろよロキ。それと、ソファーに動かさないように寝かせて・・」

呆然とまゆらを抱き締めるロキに 冷ややかに言い付ける一人の少年。

しかしロキは未だ動こうと死ない。視線が空を泳いでいる。

「早くしろよロキ!一刻も争うんだろ!?」

苛ついた罵声で耳元に怒鳴り込む。意識が戻り、はっと目をその少年に向けた。

紫色の髪が目に飛び込み、次にその赤い瞳が目に付いた。

「・・・そうだよな・・すまない、ヘイムダル・・」

上着を脱いで傷口を強めに縛り付け、闇野に頼んでソファーに寝かせた。

ふわりとその上から毛布を掛けて、ひとまず安心である。

傍に腰を降ろし冷たくなったその手を握る。

血の気が引いているというのにまゆらの美しさは損なわれていない。

青白い顔も少しずつ血色を取り戻していく。誰がこんな事を犯したのだろうか。

下手をしてしまえば、殺人にもなりかねなかったというのに。

「取り敢えずここにいる僕ら三人は抜くだろ?そうすると・・・」

「ナルカミ君はバイトでいない。フレイがこんな事をするとは思えない。

 となると犯人は―――――・・・・・・そんな馬鹿な・・・・」

辿り着いた答えは残酷にも。血を拭いた闇野が戻ってきて確信を得る重要な事を口にした。

「まゆらさんの身長から言って、そんなに背の高い人じゃありませんね。

 それに傷口の深さも見た目よりかなり浅かったですし・・・」

 気まずい沈黙が三人を包み込む。答えはとうに知れたのに言葉にするには躊躇いが残る。

信じたくないのは、皆同じだからだろうか。

 それを壊したのはヘイムダルだった。彼はきっぱりと言い切った。

「犯人は大島玲也。確立は低いけどフレイヤ様の可能性もある。

だから彼女を連れてきて真相を知る必要があるんじゃない?」

 だって彼女は殺そうとしたんだよ?神でもない、ただの人を。そう、付け足して。

 

   答えは未だ見つからないまま

 

ひたすら、走っていた。その声に惑わされないように、聞こえないように。

――――――――――――――――玲也は、悪くないです!

ならば何故、こんなにも涙が溢れるのだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・後悔じゃ無いの?・・・・・・・・

――――――――――――――違うです!!玲也はただ・・・玲也は――――

 ただ、見て欲しかっただけだ。自分だけを。他の人を見て欲しくなかった。

怖かったのだろうか。いつか、彼の隣にいられることが出来なくなる、その日が。

――――――――だってまゆらサンのお隣にいるロキ様はいつも幸せそうだから・・・

玲也が本当はロキ様を幸せにしたいのに・・・!――

 何時だったか前にもこんな事を思っていた。自分が彼を幸せにしたいのだと。

自分だけがが彼のモノになりたいと、そう願っていた、あの頃と。

 なんら考えは変わっていない。ロキもまゆらも悩んで苦しんで答えを作り出せたのに。

自分だけがまだ、変われない。己だけがまだ、冷水を浴びることを怖がって進むことが出来ない。

チカリとどす黒く固まったナイフが光る。手も服も朱に染まっている。

「・・・・・・どうしてですか?!どうしてこんなことに・・・!!」

答えはまだ、出ない。

 
 
 
 
 
 



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どうも。ああ、やっと出来ました。言ってみた通りダークです。しかも犯罪・・?
なんか私がやると凄く虚しいものになるのはナゼ・・??ちょっと面白いモノにしてみたくてチャレンジ。
・・・・見事に挫折してるってば。キリ番とった喜びと裏腹なる物語。後編ははっきり言って皆様のご期待
通りにはならないかと(え)私の中で玲也ちゃんとはこういう存在です。実際。
突っ走ったらそのまま壁にぶつかるまで止まらない。しかも、後悔して中々立ち直らない。
強そうで、弱い。そんな存在ですね。・・・・まゆらちゃんを刺す行為が素晴らしく怖いですね。
彼女の性格を現していそうです。玲也ちゃんは幸せ一歩手前が一番輝いています(偏見)
幸せに成り切られては困る(ヲイ)それでは、後編でvv
 
 
 




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玲也ちゃんダークです。
うにゃ〜〜〜〜〜!!!五行目の『彼女は悠然と微笑んだ。』ってとこ、
すっげぇかっこ良さげvvv
文章も驚くほど綺麗で、読み惚れてしまうというかなんというか。。
心の葛藤とか、もすごく上手で、玲也ちゃんの気持ちがすーっとわかります。
そして推理っぽいトコが、あぁ、やっぱロキくんなんだなぁ、なんて。(何)
あたしなんて推理っぽいのほとんど書いたことないわ;
まあうちのロキくんは“心理系”探偵マンガの二次創作ってことで。(固羅)
というわけで、ありがとうございました〜v
あ、後編に続きますよん☆



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