★☆








another ending



 夜風がふいてる。  あれから何年経ったんだろう。  いや、何十年経ったんだろう。  同じ場所、ちょうどこの同じ木の下で。  微笑んでいた。  夜、木の下だから余計に細かいものなんて見えなくて、見えないのをいいことに思う存分微笑んでやった。  甘いコトバに酔ってみたり。  冷たい空気に醒めてみたり。  幸せだったの?  わからない。  ただここに来ると、思い出すのはあの夜に交わされしコトノハ。 『何しに来たの。』 『キミに会いに来た。』 『なんであたしがここに来るって決まってるのよ。』 『キミもボクに会いたがってたから。』 『あたしあんたなんかにそんなこと言ってないじゃない。』 『分かるんだよね。』 『わけわかんない。』 『頭カタいな〜。』 『あんたみたいなのよりマシだと思うけど。』 『もうちょっと優しい言い方できない?』 『そんな必要ないもの。』 『そうですか。』 『そうよ。』 『……なんで今夜ボクに会いたかったの?』 『今夜しかだめだと思ったの。』 『期待してイイこと?』 『頭使ったら。』 『やっぱり?』 『会えなくなりそうだったんだもの。』 『寂しかったんだ。』 『そういうのじゃないけど。』 『じゃあさ、キスしていい?』 『だめって言ったら。』 『する。』 『意味ないじゃない。』 『うん、そーだね。』 『今日だけだから。』 『そのコトバ待ってたんだ。』  何十年もかけてこの場所は蘇った。  まるであたしの髪はこの場所に色を与えてしまったようで。  星の明かりに緑の草木が輝いてる。  この丘の全ては艶やかに。  そして、私の全ては、乾いてしまった。  思い出せないあの次の朝。  それでもどうして時は刻まれ、あたしはここに存在しているのだろう?  この木から十メートルくらい離れたところにある独りの小さな小屋。  嫌いじゃない。  それでもどうして時は刻まれ、あたしはここに存在しているのだろう?  残サレタ?  そんなの考えたこともない。  残ッタ。  それは自分の意思で?  そうじゃない。  でも、残されたわけでもない。  神は何を思ったの?  違う、あたしが神だったんだっけ。  神話の時代が終わりを告げて、これが本来あるべき世界の姿なのかもしれない。  丘の下のあの気さくな夫婦があたしの艶やかな時代を知るはずも無くて、それが本来あるべき世界の姿なのかもしれない。  風が吹いた。  いつだったか、風を全能の神だという人間に出会った。  そうかもしれない。  所詮オーディンは、今思うとその程度のことしか出来なかったから。  だったら、邪神はどうなの?  あんたも風になったの?  だったらあたしはどうしてここにいるの?  あたしは『残サレタ』の?  どこにいるべきなの?  あたしの居場所はどこ?  あんたはどこにいるの―――?  こんな気持ちは、たぶん最初で最後。  星も、草木も、ただ吹く風さえも、全部全部疎ましくて仕方がない。  無くなってしまえばイイのに。  何が。星が?草木が?風が?世界が?  違う。  違う?  違う。  違う。  違う。  違う―――――。  無クナッテシマエバいいノニ。  アタシジシンガ。  アタシジシンガ。  アタシジシンガ。  ドウシテ?  ワカラナイ。  何モワカラナイ。  ワカリタクモナイ。  助ケテ………………。  きっともう潤うこともない唇に乾いた指をあてて。  空を見上げた。  星。  増えていく。  紫の空を蒼い星が喰らう。  漆黒の闇を白い光が喰らう。  なくなる。  喰われる。  そしてあたしは、醜くなる。  ホワイトアウト。 『あれ?丘の上に立ってるの、フレイヤおばあちゃんじゃないかしら?』 『何やってんだろーなぁ、こんな時間によぉ・・・・・・、???ちょ、ちょっと待てよっ!!ばあさん・・・・・・っっっ!?!?』 『うそぉ・・・・・・。き、消えてく・・・・・・・・・・・・???』 『・・・・・・・・・ヘンなばあさんだったよなぁ・・・』 残されたのは、一陣の風。







†いながき かおり†