春の祭典
季節は春
出会いと別れの季節
この春爛漫とした陽気の中でトウヴィルにも桜の花が咲き乱れていた
特に神殿の裏方の桜は見事な桜吹雪が吹いていて そこから
見下ろすスメリアの街の桜がまるで海のように広がっている
「おい!花見やろーぜ!花見!」
最初に言い出したのは説明するまでもなくエルクであった
つい先程トウヴィルに到着した一行は ちょうど桜の見れる
時期のピークにさしかかっている頃に休暇を取っていた
「あら お花見?いいわね
ちょうど全員そろってることだし やらない?」
私のショーでもりあげてあげる♪とつけたすシャンテ
「そうだな
この時期にしか出来ないからな」
と口々に賛成の声が上がる
「おっしゃ!決っまり〜!さっき神殿の裏によ すっげーいいとこみつけたんだよ
そこ行こーぜ そこ!」
興味心いっぱいにはしゃぐエルクを見てつられてウキウキしだす面々
「あら
裏にそんなところあったの?私全然気づかなかった」
「あんだよククル 知らなかったのか?すっげーぞ!
そこら中桜だらけなんだぜ!」
「へえ〜すごーい!私も早く見たいな」
「おう!リーザ じゃあ一足先に見に行こうぜ!お前ら 昼飯んときにやるからな!
そんとき来いよ!」
なぜか花見の段取りを仕切っているエルクを見送って他の衆は
お昼の間まで自由行動となった
街まで降りて酒の買い占めに出かける酒侍や 村のはずれで発声練習をする
歌姫 広間で修行だ修行だと暴れ回る修行僧に 岸壁でエレナエレナと
叫ぶ(?)ふんどし筋肉だるまなどなど それぞれ思い思いの
時間を過ごしていた
そしてキッチンでは…
「フフフ♪お花見なんて何年ぶりかなあv」
アーク ククル ポコ サニアの4人がお弁当の準備担当をしていた
調理も大体終わってお肉 野菜 果物と 色とりどりの食物が徐々に
箱の中に盛り付けられている
「うん 楽しみだねー
こんなに大人数でやるの ボクも初めてだよ!」
「あたし花見なんて初めてーvミルマーナにはそーゆーのなかったし
桜の木もあんまなかったしね」
「あっ そうなの?じゃあ思いっきり楽しもーねサニア!」
18歳同士の話題に花が咲いている中 アークはどこか上の空で
ククルを見つめていた
「…?アークどーしたの?…何見とれてんの」
そんなアークの視界に割って入ってきたポコの最後の1小節の言葉にすかさず
1発パンチを繰り出したアークは再び愛しの人を見つめ出した
視線に気付いたのか ふり返ったククルとばっちり目が合って静かに
微笑んでこちらに歩み寄ってくる
「どしたの?アーク
さっきからボーっとしてるけど?」
目の前で見つめられてなんだか余計に顔が火照ってきて…
思い出したかのようにつぶやく
「…ククル かわいいね」
声は静寂したキッチンに静かに響いた
目の前のククルも その後ろにやや小さく見えるサニアも
一瞬目が点になる
「あ ありがと…どうしたの急に」
「…いや なんかかわいいなって」
やけに素直な返答に内心ずっこける
「ちょっと…そーゆーのは2人っきりになったときにしてくんない?
聞いてるこっちが恥ずかしいわよ!」
こんなに嬉しそうなククルを見るのはアークとしても久しぶりなのだ
さっきから顔の緩みを制御しきれていない
今回ばかりはエルクに感謝
「おっ 来た来た!おーい!!早く早く!桜散っちゃうぞー!」
子供のように手を大きく振って叫ぶエルク
「エルクったらさっきからずーっと花見花見ってはしゃいでたんですよ」
誰が見てもそれはすごいはしゃぎ様でちょこをも凌ぐ暴れっぷりである
エルクも年相応の生活を送っていたわけではないのだ
こんなに嬉しそうなエルクを見て 休暇を取って本当に良かったと
アークは心から思った
なによりも…
「わあ!すごーい!アーク アーク!こっち来て見てみてよ!
すごいよー♪パレンシアの桜もダウンタウンの桜もすっごいキレー!」
「だろー!?さっすがオレ!」
ククルの満面の笑顔も見れたのだからこの上ない幸福が辺りを包み出していた
…そう思ったのも束の間でえ…
「おう!せっかくの花見なんだ
10代人も飲めや!」
花見も頂点に差し掛かったとき
…事の始まりはトッシュのこの一言からだった
ポコはすでにつぶされ サニアは花見という風習に酒はつきものだ!
とこれまたトッシュにだまされ ガバガバと飲んだくれている
「お おい トッシュ…俺たちまだ未成年だし…」
「あんだとこらああ!!!おれの酒が飲めねえなんざ1億年早いわあ!!
おら おら おら おらあ!!!!」
アークの声に聞く耳もたず トッシュは4人の前に酒ビンを
1本ずつ置いていく
「ち ちょっとトッシュ…飲みすぎなんじゃないの…?」
「うるへー!!いいからのみやがれ!!!」
完全に酔いつぶれ寸前の親父状態である
「ったく…教育に悪いおっさんだぜ…」
ここで飲まなきゃ刀が出る
そう悟ったエルクはとりあえず酒ビン1本いっき飲みした
「エ エルクっ アルコール中毒になっちゃったらどうするのよ!」
「おおお!さすがおれの息子だあ!!よくやったエルク!!!」
リーザの心配をよそに酒が入って別の人格となっているシュウが
感動に浸っている頃 エルクの脳細胞は徐々にアルコールに犯されていった
「…リーザ」
「えっ?」
CHUv
「!エ エルクっ!?」
いきなりリーザの頬にキス
「これコれ!コンなトこデなにやットるんジャ!!」
ヂークベックがちょっと顔を上気させながら止めさせようとしたが
エルクの勢いは止まりを見せない
それどころか…
「シャンテ…」
CHUv
「な 何 何!?」
「…サニアー」
CHUv
「あひゃひゃひゃひゃ!にゃーにやってんにょよエルクー!!」大丈夫かよ…(汗)
次々と女性陣のほっぺにチュー
そしてもちろん
「…ククル…」
CHUv
「!!!?ち ちょっと!!!」
ククルにもキス
しかもなぜか口に(爆)
「っだあああああああああーーーーーー!!!!!」
今まで放心状態だったアークが今の光景で見事に我にかえった
ククルを引き寄せて足でエルクを突き飛ばし ゲイルフラッシュを
数発ぶっ放す
だがそれでもエルクは立ち上がった!!!
「トッシュ…」
「は!?な 何でぃ!!来るな!こっち来んなーー!!」
「ふむ
どうやらエルクは酒が入るとキス魔になるらしいのう」
のんきに桜の木の上にテレポートしたゴーゲンが嵐と化した
花見会場を見下ろしてぼそりとつぶやいた
嵐がおさまるまでアークは険しい顔でずっとククルを腕の
中に抱きしめていた…
しばらく経って酒を飲み干した連中は寝静まりかえり
リーザはエルクの傍についていた
そのまま夜がふけてアークは1人まだ桜の散る神殿の裏庭に足を運んでいた
手の中にはお猪口と1本の酒ビン
「くそっ…なんでククルにまでキスするんだよ…!」
昼間の一件ですっかり最初の微笑ましい気分を害してしまった
アークは美しく煌く星の海の中にぽっかり浮かぶ一際輝く満月に愚痴をこぼす
「しかも口に…」
一筋の風と共にまたひとつ ふたつと桜の花が散った
それは彼女の気配を知らせてくれるかのように
「わーあ!夜桜も綺麗だね〜」
「…」
もしかしたら自分は彼女がここへ来てくれるのを待っていたのかもしれない
なのにあの光景が目に焼き付いて素直になりきれなかった
無言で彼女に返答する
「アーク 何やってるの?こんな時間まで…
いくら春でも夜はまだ冷えるから中入ろうよ
風邪引くよ?」
「…」
何も答えず ふり向いてもくれないアークにムッとして風になびく
赤い鉢巻に向かって勢いよく歩き出す
「んもう!何怒ってるの!?お昼のことは事故だってばーエルクだって
意識してやったわけじゃ…っ!?」
アークのすぐ真後ろに行ったとき急に腕を引っ張られてされるがままに
アークの足の間に座らされて強く抱きしめられる
「ち ちょっと アーク…」
アークの吐息がすぐ間近で聞こえてきて一気に顔が赤くなるククル
甘いお酒のにおいが鼻を掠める
「やだっ!アーク お酒飲んでたの!?」
「…甘酒だから大丈夫だよ」
「何が大丈…んぅっ!」
突然のキス
つい驚いてククルが顔を離してしまう
「何だよーエルクとはできて俺とはできないの?」
「もう!何言ってるのよ!酔ってるんでしょ?
急にやるから驚いただけよ!」
ぷいっと拗ねてそっぽをむく仕草がやっぱり可愛くて…
どちらからともなく笑い声が溢れ出した
「ククル」
ひとしきり笑いあった後 アークは再びククルに口付けた
今度はククルも受け入れてくれた…が
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
数十秒経ってからククルが胸をたたき出したので名残惜しげに唇を離した
ククルが大きく深呼吸する
「…長すぎ」
「短い」
アークが子供の口ゲンカのように反論してくる
「…エルクの感触なんか消してやるんだ…」
月をバックに美しい夜桜の舞い散る中で2人の影が再び重なり合った
2人の思考は甘い味のする長い長いキスに酔いしれていった