Happy Present

 最後に剣を手渡すと、グレミオは深々と頭を下げた。
「いってらっしゃいませ、テオ様」
「いってらっしゃい、父さん」
「...うむ」
 受け取った剣を腰に差すと、ライトに視線を向けてテオが小さく頷く。
「お帰りは昨日と同じくらいでしょうか?」
 クレオが微笑しながら、いつもと変わらぬ落ち着いた口調で尋ねる。その質問にテオはしばし考えをめぐらすと、また小さく頷いた。
「そうだな。今は特に急ぎの仕事もないし、何もなければ帰ってこれるだろう」
「かしこまりました。お気をつけて」
「では、行ってくる」
 最後に背筋をぴんと伸ばし、見送りに来たライトたちを見回してからテオは玄関を出た。外にはすでにテオの馬を用意したアレンとグレンシールの姿がある。二人と挨拶を交わしてから騎乗し、二人と共に城に向かうテオを通りの角を曲がるまで見送ると、ライトたちは家の中に戻った。
「....あの様子じゃ、今日のこと気がついてないね」
「そうですね、毎年のことですが」
「テオ様らしいですけどね」
「でも、そのほうが父さんが帰ってきたとき驚かせることができるし」
 振り向いて、ライトがにこりと笑う。
「さぁ、早速準備を始めよう!」
「はい」
 ライトの楽しそうな掛け声に、グレミオたちは笑顔で頷いた。

「お、やってるなぁ」
 ライトたちが準備に取り掛かり始めてからしばらくして、テッドが片手に小さな箱を持って現れた。
「おはよう。テッドも手伝ってよ」
 椅子の上に乗り、高窓を拭いていたライトが振り返って笑う。
「勿論。その為に来たんだから」
 テッドは笑って頷き、食堂のテーブルの上に箱を置いた。その箱にライトが興味深そうな視線を向ける。
「今年は何にしたの?」
「秘密だ。ライトこそ、今年は何にしたんだ?」
「僕も秘密。今晩のお楽しみ」
「テオ様は、今年も今日が何の日か気づいてないのか?」
「うん、全く。僕やグレミオたちの誕生日はちゃんと覚えてるのに、自分のことはさっぱり」
 ライトが笑って肩をすくめる。
 今日はテオの37回目の誕生日だった。皆、何日も前からプレゼントを用意したり、お祝いの料理のメニューを考えたりしているのだが、肝心のテオ自身はその事をきれいさっぱり忘れていた。
「テオ様らしいなぁ。でも、そんなものかもしれないな。歳をとると自分の誕生日なんて、あまり意識しなくなるものだから」
 女の人は違うようだけどな、とテッドは軽く腕を組み一人納得して頷く。
「....なんか実感こもってるね、今の言葉」
「ん? まあな。これだけ生きてりゃ―――」
 そこまで言って、テッドがハッとして口をつぐむ。ライトはそんなテッドの様子を見て少し首を傾げたあと、バシッとテッドの背中を叩いて笑い声をあげた。
「なにお爺さんみたいなこと言ってるのさ。僕と変わらない歳のくせに」
「..........」
 テッドは無言で、曖昧な笑顔をライトに返す。その大人びた表情が気に入らないのか、ライトは少し意地の悪い口調で言葉を続けた。
「でも、そう言えばテッドの好みって渋いというか、年寄りくさかったっけ」
「....ほっとけ」
「去年のプレゼントも、からくり式の肩叩き機だったっけ」
 もしかして今年は孫の手とか? とからかうライトから、テッドは不機嫌そうに視線を逸らす。
「うるさいなぁ。年寄りくさかろうが何だろうが、良いものは良いんだ。それより、さっさとここの掃除を済ませてしまうぞ」
 そう言うと、テッドは壁に立てかけてあったモップを手にして床を磨き始める。普段テッドにからかわれる事のほうが多いライトはもう少しからかってみたかったが、不貞腐れた顔で黙々と掃除するテッドを見て、軽く肩をすくめると自分も窓拭きを再開した。

 しばらく二言三言交わしながら二人が掃除を続けていると、珍しくエプロンを着けたクレオが大き目の箱を持って食堂に入ってきた。
「あら、テッド君来てたの」
「ども。久しぶりのクレオさんのエプロン姿だなぁ。その大きな箱、もしかしてプレゼントなの?」
「違うわ。この中にはテーブルクロスが入ってるの」
「ああ、そっか」
 ここに引きとられてから最初に迎えたテオの誕生日の時に教えてもらった事を思い出してテッドが頷く。
 マクドール家には、テオに関するお祝いの時だけに使われるテーブルクロスや花瓶などがある。それは全て今は亡きテオの妻であり、ライトの母親でもある女性がテオの為に選んだものだ。夫の好みをよく理解して購入されたそれらの品物はテオの一番気に入りの品であり、大切な形見となった現在ではテオの誕生日にしか使用されていない。
「それより坊っちゃん、テッド君。ここはもういいので下にいるグレミオの手伝いのほうをお願いします」
「え、でもまだ掃除終わってないよ?」
「掃除はパーンにやらせます。それ位しか役に立たないんだから」
 今呼んできますから、どうぞ下に行ってくださいとクレオに言われ、ライトとテッドは顔を見合わせたあと掃除道具を置いて食堂を出た。
「クレオさん、相変わらずパーンさんにはきついなぁ」
「まぁね。でも、あれで結構二人とも楽しんでるから」
 長年共に暮らしているライトには、クレオとパーンがきつい事や文句を言い合っていても、互いを信頼していることがわかっている。それを口にすると、二人は照れてまた文句を言い合うのだけれど。
「そうだろうな。なんだかんだ言ってても、クレオさんの目って優しいもんな」
「うん。もう母親の域に入ってるかもしれない、あれは」
「言えてるかも」
 くすくすと笑って喋りながら二人は階段を下りて厨房へと向かう。中では、グレミオが調理台に落ちそうな程の食材をのせて、下ごしらえや料理の準備を進めていた。
「グレミオ、手伝いにきたよ」
「坊っちゃん、テッド君」
 ジャガイモの皮をむこうとしていたグレミオが顔を上げて振り向く。
「何かやることある?」
「そうですねぇ、たくさんありますけど....。....坊っちゃん」
「何?」
「今日はテオ様のお祝いの料理を作るんですから、悪戯は絶対にしないでくださいね」
 表情を引き締め、グレミオが真面目な声でライトに向かって言う。ライトは何度か目を瞬かせたあと、拗ねたように口を尖らせた。
「当然だろ。それ位わかってるよ。いちいちそんな事言わないでよね」
「絶対ですよ?」
「わかってるってば! 僕ってそんなに信用ないわけ?」
 頬を膨らまし、ぷいとライトがそっぽを向く。それを見てグレミオが怒らせてしまったかとおろおろするのを、テッドは笑いを必死にこらえて眺めていた。
(まぁ、心配するのも当然だろうな)
 ライトはよく、グレミオが調理している時に耳を引っ張ったり、調味料を隠したりして悪戯する。テオの誕生日で、いつもより腕をかけた料理を作っている最中にペースを乱されては堪らないだろう。
「そ、そんな滅相も無い! グレミオは坊っちゃんのことを、どこまでも信じていますとも。そ...それじゃ、二人でケーキのスポンジを作ってもらえますか?」
「うん、わかった。ほらライト、いつまでも不貞腐れてないで手伝うぞ」
「.....うん」
 まだ不機嫌な声ながらも、コクリと頷いたライトにグレミオがほっとした表情を見せる。
「じゃあ、坊っちゃんはそこにあるレシピを見て、生地をつくってください。薄力粉はちゃんとふるいにかけてくださいね」
「うん」
「俺は?」
「テッド君はメレンゲを作ってください。ツノが立つまでしっかり泡立ててくださいね」
「わかった」
 それじゃ始めるか、とボールに卵白を入れて泡立て始めたテッドの横で、レシピを見ながらライトがふるいにかけた薄力粉をボールに入れ、卵黄や砂糖を加えていく。
「二人とも頑張ってますね」
 厨房に戻ってきたクレオが目を細めて悪戦苦闘しているライトとテッドを眺める。その眼差しは母親に近い。
「結構メレンゲを泡立てるのって大変だな...。腕が痛くなってきた」
「そうよねぇ、料理って結構力がいるのよね。だからかしら、グレミオに意外と腕力があるのは」
「クレオさん、それは聞き捨てなりませんね。意外ってなんですか。私は坊っちゃんをお守りするため、日々鍛錬しているんですよ」
「あら、そうだったわね。ごめんなさい」
 微笑して軽く肩をすくめると、クレオはグレミオの横に立つ。
「じゃがいもの皮は私がむくわ。グレミオは......って、こら!」
 ナイフを持とうとしていたクレオがいきなり振り向き、テーブルに置かれたクッキーにそろりと伸ばされた手を思い切り叩いた。
「いてっ」
「いてっ、じゃない! 食堂の掃除はどうしたの、パーン!」
 さっき頼んだばかりじゃない、とつまみ食いの犯人を仁王立ちしてクレオが睨む。パーンは叩かれた右手をさすりながら、悪びれずに答えた。
「ちゃんとやってるよ。ただ、ちょっと喉が渇いたから水を飲みにさ」
「それでどうしてクッキーに手が伸びるの? 全く、油断も隙もないんだから」
「美味しそうだったから自然と手が動いたんだよ。それより、坊っちゃんが作ってるのはスポンジケーキですか?」
「うん。苺たっぷりのケーキを作るつもり」
「苺ですか。うん、苺もいいですけど、俺の時はブルーベリーのタルトをお願いできますかね?」
「ちょっと、パーン! なに図々しいこと言ってるの!」
「いいけど。でも、パーンの誕生日の前に、クレオの誕生日を祝わないとね」
「そういえば来月でしたね、クレオさんの誕生日」
 鶏肉の下ごしらえをしていたグレミオが顔をあげ、思い出したように呟く。
「そうだった。俺よりクレオのほうが誕生日が先だったな。三十路にまた一歩近づくわけだ」
「.....パーン....。あんた、二度と喋れないようにその口縫い付けてあげようか?」
 いつもより低い声で言ったクレオの右手に握られたナイフがキラリと光る。パーンを睨む目は半分すわっていた。
「うわっ。冗談だって、クレオ」
「あはは。メレンゲにツノが立つ前に、クレオさんにツノが立っちゃったな」
「テッドく〜ん?」
 くるりと振り向いたクレオの笑顔が怖い。テッドは慌てて疲れて止めていた手の動きを再開する。
「も、もうすぐメレンゲができるからな、ライト!」
 滅茶苦茶美味しいケーキを作るぞ! と力任せにメレンゲを泡立てるテッドと、それをくすくすと笑いながら眺めているライトを見て、ふっと息を吐き出しクレオが微苦笑する。視線をパーンに戻すと、彼はびくりと肩を震わせた。
「まったくもう...。パーン、水を飲んだらすぐに掃除を再開すること。わかった?」
「わかった、わかった」
 パーンはコクコクと頷くとグラスに注いだ水を一気に飲み干して厨房を出る。ちゃんと2階に上っていくのを厨房の入り口に立って確かめると、クレオは中に戻ってジャガイモの皮むきを再び始める。
「さぁ。早く準備して、美味しい料理を作ってテオ様をお迎えしましょう」

 スポンジも上手く膨らんで出来上がり、昼食を取る頃には料理の下ごしらえも食堂の掃除も一通り終わっていた。
「あとの調理はグレミオにまかせるとして、次は食堂のセットだね」
「そうですね。パーン、あんたちゃんと掃除したんでしょうね」
「してるって。まったく、疑り深い女は嫌われるぞ、クレオ」
 その途端、パーンはクレオに思い切り足を踏まれた。
「〜〜〜〜〜っ!!」
 前かがみになり、必死に痛みを堪える。それを見ながら、クレオはすました顔で食後の紅茶を飲んでいた。
「日頃のあんたの生活を見てて、信用しろというほうが間違いね。手抜きしてたらやり直してもらうから」
「ひでぇ....」
「あはは。クレオには勝てないよ、パーン」
「そうそう。なんたってクレオさんはこの屋敷のお局さま....」
「テッドく〜ん?」
 再び怖い笑顔を向けられ、テッドは残りのご飯を急いでかき込むとライトの腕を取り立ち上がった。
「ごちそうさま! さ、ライト。残りもぱぱっと済ませるぞ!」
「え!? う、うん、ごちそうさま」
 テッドに引きずられるようにしてライトが厨房を後にする。グレミオは無茶しないでくださいね、とその背中に声をかけると皿を片付け始めた。それをきっかけに、クレオとパーンも席を立つ。
「それじゃ、私は花を買ってくるわね」
「はい、お願いします」
「じゃあ俺は食後の休憩を―――」
「何馬鹿なこと言ってるの。あんたは荷物持ち。一緒に来るのよ」
「そ、そんな....」
「問答無用。さぁ、行くわよ」
 パーンもクレオに引きずられて厨房を出る。一人残ったグレミオは苦笑を浮かべてご愁傷様ですと呟くと、皆の食べ終わった皿を流しに置いた。その横では火にかけられた鍋がぐつぐつと音を立てている。
「さて、私は超特製シチューの仕上げにかかりましょうかね」

 クレオが買ってきた、テオの好きな花を花瓶に活けて食堂の準備が終わったのは3時を過ぎた頃。丁度お茶の時間でもあるので、5人とも居間に集まって紅茶を飲みながら一息つくことにした。
「あとは父さんの帰りを待つだけだね」
「そうですね。昨日と同じ位とおっしゃっていたので、日が落ちる頃にはお帰りになるでしょう」
「ええ。実はアレンとグレンシールに、テオ様には内緒で話をつけてあるんですよ。ですから余程の事が無い限り大丈夫です」
「そっか」
 グレミオとクレオの言葉に頷き、ライトは窓の外を見る。よく晴れた空から降り注ぐ太陽の光は明るく庭の木々を照らし、日が傾くまでにはまだ時間があることを教えていた。
「そういえば、皆はどんなプレゼントを用意したの?」
「秘密です。それを言っては楽しみが減るでしょう?」
「でも、もし同じ物だったらって思うとさ」
「う〜ん、それは無いんじゃないですか。皆、結構趣味がバラバラですから」
「そうそう。クレオさんは意外と新しい物好きですし、テッド君は渋好みですし」
「...いいじゃん、別に」
 また暗に年寄りくさい好みと言われて、テッドがふいと横を向く。それを見てクスリと笑うと、ライトは用意したプレゼントに視線を向ける。
「父さん、喜んでくれるかな....」
「勿論ですよ。坊っちゃんが選んだ物を、テオ様が嫌がることなんてありません」
「それを言うなら皆のもだよ」
 どんな顔をするのか楽しみだなと笑うと、皆もつられて笑顔になる。
「それじゃ最後に、帰ってきた父さんを出迎える方法を考えよう」
「去年は暗くした部屋に、帰ってこられたとき一斉に明かりをつけてお祝いの歌を歌いましたっけ」
「あれは止めましょう。パーンの音程を外した声が全てを台無しにするので」
「なんだって? クレオだって少し音外してただろうが」
「うるさいわね。あんたに比べればましよ」
「まぁまぁ、お二人とも。だけど、歌は確かに私もちょっと恥ずかしいので、できれば違うのにしませんか?」
「そうだなぁ、確かに。テッドはすぐ変な替え歌にしちゃうしね」
「あ、俺のせいにするか? お前だって面白いって笑って聞いてたくせに」
「あれを思い出して、歌ってる途中に吹き出しそうになったんだもん。というわけで、今回はシンプルにいこう」
「シンプルって、どんな風に?」
「それはね」
 ティーカップをソーサーに戻すと、ライトは4人を見回した。
「クラッカーと、とびきりの笑顔!」

* * * * * * * * * *

 太陽が西に沈み、僅かに空に残っていた茜色も闇に変わる頃、テオはアレンとグレンシールを従えて屋敷へと戻った。閉められたカーテンの隙間から明かりが洩れ、部屋の中を動き回る影がちらりと見える。口を固く結んでいたテオの顔が、ふっと綻んだ。
「テオ様、お疲れさまでした」
「うむ」
「明日も、今日と同じ時間にお迎えにあがります」
「わかった。二人ともご苦労だった」
 テオはアレンとグレンシールに労いの言葉をかけ家に入ろうとして、足を止め振り返った。普段なら「それでは失礼します」と挨拶をして帰る二人が、動かずにじっとテオを見ていたからだ。
「...どうした、二人とも。何か言い忘れたことでもあるのか?」
「いえ、言い忘れたことは何もありませんが...」
「よろしければ、我々に玄関の扉を開けさせていただけませんか?」
「扉を? どういう事だ」
 訝しげにテオに問われ、アレンとグレンシールは顔を見合わせて苦笑する。
「開けてみればわかりますので」
「では」
「? 一体....」
 不思議がるテオの横をすり抜け、アレンとグレンシールが扉の取っ手に手を掛ける。そして頷きあうと、同時に扉を開いた。テオが中でライトたちが立っているのを見たその瞬間。

 パン! パパン! パン!

 一斉にクラッカーが鳴り、紙吹雪が舞った。
「父さん」
「テオ様」
「「誕生日おめでとう!!」」
 呆然としているテオを、ライトたちは満面の笑顔と祝福の言葉で迎える。扉を開けたアレンとグレンシールも、「おめでとうございます」と笑みを浮かべた。
「...あぁ、そうか....。今日は私の誕生日だったか....」
 ようやく事情を理解したテオが、少し照れくさそうな笑みをこぼす。
「ほんとに今まで思い出さなかったの? さすが父さんだなぁ」
「それがテオ様だって」
「さぁ、早く中へ。準備はもう出来ていますから」
「アレンさんとグレンシールさんも良ければどうぞ」
「え、いいんですか?」
「お祝い事はたくさん人がいたほうがいいですから。この後のご予定がないのでしたら、ぜひ」
「今日はグレミオの超特製シチューもありますよ」
 クレオの言葉に、二人がぴくりと反応した。
「...それではお言葉に甘えまして」
「グレミオの作るシチューは一流シェフのものより美味しいとの噂ですからね」
「じゃ、決まりだね。皆早く二階の食堂へ行こう」

 剣をはずし、軽装に着替えたテオが食堂に入って来た時も、皆は立ち上がり笑顔と拍手で迎えた。テオは冷静な表情で席に座ったが、いつもより少し下がった眉が、実は照れていることを示している。当然ライトたちはそれに気づいており、不器用なテオの一面に密かに笑みをこぼした。テオのこういうところが、大好きなのだ。
 グレミオとクレオが料理を運び、大人には最高級のワイン、ライトとテッドにジュースが用意されると、グラスを持ってライトが立ち上がった。
「それでは改めてもう一度。父さん、誕生日おめでとう!」
「「おめでとうございます」」
「皆...。ありがとう。自分の誕生日のことなどすっかり忘れていたが、祝ってもらうとやはり嬉しいものだな」
 ワインを一口飲むと、テオはそう言って笑顔を浮かべる。その嬉しそうな笑みに、自然と周りの者も笑顔になった。
「このケーキは僕とテッドで作ったんだ。父さん用に砂糖を少なめにしてあるから食べてね」
「わかった」
「プレゼントも勿論用意してるから、楽しみにしてて」
「ああ。ありがとう」
「テオ様、もっとワインをどうぞ」
「あ、俺も....」
「あんたは水でも飲んでなさい、パーン」
 ワインに伸ばしたパーンの手が素早くクレオに軽く叩かれ、周りの者は声をだして笑った。そのお陰で硬い空気はどこかに退散し、かわりに食堂が和やかな雰囲気に包まれる。

 その日マクドール家は夜遅くまで明かりが灯り、明るい笑い声で満たされ続けた。

 ―――それは、もうすぐ訪れる嵐を知らぬ、幸せなある一日の出来事。

                    FIN.

キリリクで頂いたSSです。
いやあ〜、ほのぼのですよ!ほんわかですよ!
私のリクエストに対して、お釣りがくるぐらいに…。
ゲーム中にはこういうのってみられませんけど
やっぱりあったのかな〜、いや、あってほしい!と思いマス。
高城様、ありがとうございました。

ブラックに乗って頂き物へ