| 「フリード様」 ヨシノ殿がどこか恥ずかしげに、そう言ってきた。 「何でしょう、ヨシノ殿?」 「あ、あのう、御報告がありますの」 一体なんだろう・・・? 「報告ですか?」 「あ、わ、私・・・できましたの・・・」 「・・・?何がです?」 「・・・フリード様と私の赤ちゃんですわ」 「そうですか、赤ちゃ・・・・・・って、えー―――!!!!??」 がばっ!・・・・・・はあっはあっ・・・ ゆ、夢・・・か・・・ ぴちぴち・・・ぴちぴち・・・ 窓から朝の光が鳥の声とともに入ってくる。 まさかこんな事が、考えた事もない・・・本当にびっくりした。 「大丈夫ですか、フリード様?」 「はい、ってわー――!!!?」 目の前にはヨシノ殿が起こしに来ていた。 「?どうなさいましたの?・・・うふふ」 「あははは・・・なんでも・・・あり・・・ません・・・ははは」 「?とりあえずお着替えをなさいましょう」 まさか、あんな夢を見たなんて、言えるはずがない。 「今日はいい天気ですね、フリード様」 「そうですね。こんなに良く晴れたのは久しぶりですね」 このところ曇りがちで、あまりいい天気ではなく、ヨシノ殿も洗濯物がよく乾かないといっていた。 こんな日は、ヨシノ殿とどこかへ出かけたいなあ。そうだ! 「ヨシノ殿。今日の午後はどこかへ出かけませんか? 午前中は仕事がありますので、終わったらどこかヨシノ殿のお好きなところへ行きましょう」 「本当でございますか?それでは私は、午前中にお洗濯を済ませてしまいますね」 そう言いながら見せるヨシノ殿の笑顔に、私も笑みをこぼした。 「よし、終わった。早速ヨシノ殿のところへ行こう」 午後からは久しぶりにヨシノ殿と出かけるということで、仕事のペースも速くなった。 るんるん気分で歩いていると、ビクトールさんが前からやってきた。 「よう、フリード。どうした、なんかいい事でもあったのか?」 こんなところでビクトールさんに会うとは。まずい・・・ 「べ、別に何でもありませんよ!」 「なに顔赤くしてんだよ。さては、愛妻とデートかい?」 「!ち、違います!!!」 「ははは。バレバレだよ、フリード。ま、うまくやってくれや〜」 そう言ってビクトールさんは去っていった。 どうもこの人はだめだ・・・ 「お待たせいたしました、ヨシノ殿」 部屋へ戻ると、ヨシノ殿が待ち構えていた。 「お待ちしておりましたわ、フリード様。さあ参りましょう」 「まずはどこへ行きましょうか?」 「私いろいろ考えたんですけれど、のんびりと船で湖を廻るのがいいかと・・・」 「なるほど、それはいい。早速船着場へ行きましょう」 「おう、フリードの旦那と奥さんじゃねえか。どこかへお出かけかい?」 船着場へ行くと船頭のアマダさんが出迎えた。 「今日はヨシノ殿と船の上でのんびりと過ごそうかと」 「いいねえ、いいねえ。そうときたら、ちょちょいと乗ってくれや。そしたら出航だぜ!」 アマダさんの案内で私たちは船に乗った。 「ああ、いい気持ちですね」 すっきりと晴れた空に暖かな風が流れる。 そして、この湖を囲む緑。戦乱の世を全く感じさせない。 この美しい景色の中で戦争が起こっているなどとは、私たちはなんという愚か者なのだ。 ぐうう・・・きゅるる・・・ 突然私のお腹がなった・・・なんと恥ずかしい事だ。ヨシノ殿の前でこんな・・・ 「まあフリード様ったら。そろそろお昼にしましょうか。私、お弁当をつくってきましたのよ」 そう言ってヨシノ殿は風呂敷に包んだ、大きなお弁当を出した。ありがたい。 早速手を伸ばそうとするが、どうも気分が悪い。どうしたというのだ。 いつもなら、ヨシノ殿の手料理を見たらうれしくて、とびついてしまうというのに・・・ まさか、船酔い? そ、そんな、こんな時に・・・ しかし、どんどん気持ち悪くなっていく・・・ 「どうなさいましたの、フリード様?」 「い、いやあ、何でもありませんよ。さあ、いただくとするか」 そう言って今にも吐きそうなのを抑えながら、料理に手を伸ばす。 「うーん。やっぱり、ヨシノ殿の手料理が一番ですな、ははは」 「まあ、そう言っていただくと作りがいがあるというものですわ。さあどんどんお食べになって」 「は、はい・・・」 何とか平静を保とうと料理を口に運ぶが、いつまでもつことか。 「でもいいですわね、こういうのって」 「そ、そうですね。ヨシノ殿と二人でこうしていられるなんて、私は幸せ者です」 「それは私も同じですわ。いつまでもこうしていたいものです。そしていつかは子供と・・・」 「こ、子供!?もしかしてヨシノ殿、こ、子供を・・・・・・!!!??」 「え?」 私はあまりの驚きに、吐き気を抑えられず、船の外へと顔を出した。 「どうなさいましたの!?きゃあ!フリード様、しっかり!?」 ヨシノ殿が慌てて私の背中をさする。 「フリード様!大丈夫ですか!フリード様!?」 ああ、せっかくの二人で過ごす時間を・・・うう・・・ 今日は朝から一体なんだったんだ・・・ その後しばらくの間、ヨシノ殿の声がこの湖に響き渡ったと言う。 |