赤と白と青の旗が風にたなびいている。
なんとも鮮やかなこの色は、青空によく映える。
赤と青と白・・・・・・。

ガタンッ!!!
ロックアックス城の広間からマイクロトフが飛び出してきた。
「待て、待つんだマイクロトフ!」
それを追ってカミューがやってきた。
マイクロトフは足を止めたものの、厳しい表情をしながら荒々しく息をしている。
マイクロトフはカミューに背を向けながら喋った。
「カミュー、俺は、俺はっ!!!」
「落ち着け、マイクロトフ!お前一人で行ってどうなる事ではないだろう?」
「いや、俺は行く!行かねばならない!!」
「マイクロトフ!」
「止めないでくれカミュー!俺は、俺は・・・・・・眉毛を剃る!!!
「へ?」
マイクロトフがまた歩き出そうとしたので、カミューは慌てて彼の袖を掴んだ。
「ま、待て、マイクロトフ!??眉毛を剃るって・・・」
「さっきゴルドー様に言われたんだ。この間『太眉ハンター協会』の会長から宣戦布告されたと。何でもものすごく太い眉を持つ者がうちの騎士団にいるからだとか。それが俺だとさ。太眉ハンター協会にうちの騎士団の者がとらわれるなど恥だから今すぐ眉毛を剃れと命令されたよ」
「そんな、マイクロトフ・・・」
「俺は行かねばならない。他の騎士たちに迷惑はかけられない!!!」
「待ってくれ、マイクロトフ!!!」
2人は走り出していった。


「ちょっと待て、マイクロトフ。行くといってもどこへ行く気なのだ?」
カミューがマイクロトフの肩をやっととらえて言った。
「俺の眉を剃ってもらいにさ。折角剃るならきれいに剃ってもらいたいしな。しかし俺はメイクの技術はもっていない。誰かできる人にやってもらうのがいいと思う」
マイクロトフは自分の肩に置かれたカミューの手をそっと下ろすと、酒場のドアを開けた。
「若い女の子ならできるだろうか」
そう言ってマイクロトフはあたりを見まわすと、制服を着た女の子が一人きょろきょろしている。
・・・あの子に聞いてみよう。
「失礼。少々尋ねたい事があるのだが・・・」
「え?」
ふんわりとした金髪をゆらしながら少女はこちらを向いた。
「あなたはメイクを得意とされますかな。その・・・眉毛を・・・」
「メイク?もちろん!愛しのフリック様のために特訓したもの!でもそのフリック様を私ったら見失っちゃって・・・。もう、どこに行っちゃったの〜フリック様〜!!そういえばあなたもフリック様と同じ青を着ているのね。まあ、フリック様にはかなわないけど。で、眉毛だっけ?もう任せてよー!フリック様と同じのにしてあげるわ!あの方の眉毛はそりゃあ素晴らしいのなんのって!あの細くてきりりとした眉っ!いつか私が整えてあげたりなんかしてっ!!!!!きゃー!!も〜フリック様ったらあ〜〜〜!!」
この少女があまりにも早口でまくし立てるのに、カミューとマイクロトフは唖然としていた。
・・・違う。何かが違う・・・。マイクロトフはそう思った。
「・・・いや・・・その・・・ちょっと用事を思い出してしまったので、失礼致す」
「え?ちょっと、折角やってあげたのにぃ!」
2人はそそくさと酒場の奥へ入っていった。


マイクロトフは、先程の少女が酒場からいなくなったのを確信すると胸をなでおろして言った。
「今の女の子はちょっと・・・変わっていたようだったな、はは。カミューならどの女の子がメイクが得意かわかるか?」
「そうだな・・・・・・。あの人はどうだろう」
カミューの言う方を見ると、若い女性が2人と大柄の少年がいた。
「あの、髪の長い人だ」
マイクロトフはカミューがあごをやった方を見た。
女性の一人は短い髪でボーイッシュな感じだ。
今カミューの言った髪の長いもう一人のほうは、落ち着いた雰囲気をかもし出していて、なかなか美人である。
「そうだな。よし、声をかけてみよう」
マイクロトフは一つばかり大きく深呼吸をすると、女性の方へと足を運んだ。
「失礼。少々尋ねたい事があるのだが・・・」
「はい?」
女性がしゃなりんと振り返ると、あまりにも魅惑的な笑顔を見せたので、マイクロトフはたちまち沸騰してしまった。
「あ、いや・・・そ、その・・・」
女性は笑顔を保ちつづける。
そんな二人を見てカミューはくすっと笑うとマイクロトフの代わって話をした。
「失礼を致します、レディー。こちらの私の親友が、眉をきれいに剃りたいと申しまして 見たところ、貴方がメイクを得意とされているようにお見受けしましたので、是非と・・・」
「まあ、そういうことでしたの。眉を剃る・・・。ナイフの扱いでしたら私より、こちらにいる 妹の方が得意でしてよ、ねえ、アイリ?」
と、隣に座っていた髪の短いボーイッシュな方の女性に問いかけた。
「ナイフ?任せてよ!ナイフの扱いは、誰にも負けないよ!」
マイクロトフはほっと息をついた。
「それでは安心してお任せできますね。マイクロトフ、よかったな」
カミューがマイクロトフに笑みをこぼした。
「ああ。それではやっていただけるかな?」
すっとマイクロトフがアイリという女性の前に膝まずくと、アイリはナイフを出しマイクロトフの眉に手をかけた。
息を呑むマイクロトフ。
と、アイリが呟いた。
「でも私、このナイフで眉毛なんて剃った事ないけど、大丈夫かなー」
「えっ!?」
マイクロトフは驚いて頭を動かしてしまった。
「ちょっと!危ないじゃないか、あんた!もうちょっとで顔に傷がつくところだったよ!」
「ああ・・・すまない」
しかし、剃った事がないなんて・・・。
「さあ、もう一回いくよ。大丈夫よ。ナイフ投げは超一流なんだから!」
ナイフ「投げ」・・・。
・・・違う。何かが違う・・・。マイクロトフはそう思った。
「や、やはり剃るのはまたの機会にするよ、はは・・・。じゃ・・・」
「え、ちょっと、あんた!」
2人は急いでテーブルを離れた。


2人は一息つこうと、空いているテーブルにすわり、飲み物を頼んだ。
マイクロトフがため息をついて言った。
「若い女性だからと言って、必ずしもできるとは限らないようだな・・・」
「まあ、そういうことになるかな」
「こうなったら、いろんな人にメイクの上手な人を知っているか聞いてみよう」
と、辺りを見回すと、となりのテーブルに、派手な服を着ていて非常に優雅な物腰で座っている四人組がいた。
どの人もみな異様に細く長い、そして山の高い眉をしていた。
それはマイクロトフには少し気味が悪いくらいだった。
・・・違う。何かが違う・・・。マイクロトフはそう思った。
マイクロトフがじっと見つめていると、眉の主がこちらに気づいた。
「おや〜?どうかしたかい?僕たちと一緒にお茶をしたいのかな?」
ウェーブのかかった短い髪をした男性が言った。
とその瞬間、どこからか優雅な曲が流れ出した。
な、なんなんだこの曲は!?と思いながらもマイクロトフは平静を装って言った。
「い、いや、あまりにもお美しい眉をお持ちだったので、つい見とれてしまって・・・はは」
「やはりそう思うだろう?君の眉もなかなか太くて立派だねえ。ふふ、どうやら僕の眉が気に入ってしまったらしいね」
「い、いや、そんなことは」
「あるんだな〜。わかるよ僕には。だって君とは心の友だもの。わかった、そんなに気にいったなら、僕と同じ眉にしてあげるよ!」
「い、いや、それは・・・」
すると同じテーブルに座っていた他の三人達も賛成してきた。
「それはいい考えだね、シモーヌ」
「彼はきっとステキな紳士になるよ」
「仲間が増えましたわね」
それから四人は一斉に立ち上がるとマイクロトフに向かってきた。
「さあ!遠慮はせずに!」
「さあ!」
「さあ!」
「さあ!」
あまりの怖さにマイクロトフ達は酒場から嵐のように去っていった。


はあはあはあ・・・・・・。
酒場からだいぶ離れた所まで来ると、二人は手を膝に当てて息を整えていた。
「あ、ぶなか・・・った・・・」
マイクロトフは恐怖から逃れる事ができてほっとしていた。
しかしこれからまた、こうして人を当たって行かなければならないことを思うと、げっそりしていた。
そんなことを思っていると、ふとカミューがようやく息を整えた様子で話しかけてきた。
「なあ、マイクロトフ。もうやめないか」
「何を言う!俺はこんな事でくじけてはいられないのだ!
 自分ひとりのために、他の騎士たちに恥をかかせるわけには・・・!!」
「マイクロトフ。俺は、お前に眉毛を剃って欲しくない。俺はお前のそんな眉毛も、お前らしくて好きだよ」
「カ、カミュー・・・」
「いいじゃないか。太眉ハンター協会とやらが襲ってきたら、倒せばいいだけのことさ。なに、俺たちの協力攻撃があれば、勝てないものはないさ。そうすれば、捕まる事もないし、誰も恥をかく必要もないさ」
「カ、カミュー・・・お前・・・」
マイクロトフは親友の言葉に、胸が熱くなった。
そして決心した。
「ありがとうカミュー。俺は決めたよ。眉毛は剃らない。お前がそう言ってくれるのなら、俺はそれに答えるまでだ!」
「ならばゴルドー様の所へ行こう!そして言ってやるのさ!おれは眉毛を剃らないと!」
「ああ!」
二人は広間へと走っていった。


「ゴルドー様!」
マイクロトフは勢いよく広間のドアを開けた。
「何だマイクロトフ。まだ眉毛を剃っていないのか。早く剃って来い」
「ゴルドー様。俺は、俺は眉毛を剃りません!!」
「なに!」
マイクロトフの言葉に周囲の騎士たちがざわめき始めた。
「俺は、この眉毛に誇りを持っている。カミューはこの眉毛が俺らしくて好きだと言ってくれた。俺は自分らしさを捨てたくない!!!」
「貴様!騎士として忠誠の誓いを破る気か!?」
「確かに騎士として忠誠の誓いを破るのは最大の恥辱・・・。だが・・・。俺は・・・俺は、騎士である前に人間だ!!騎士の名など要らない!!恥辱にまみれるのもあまんじて受ける!だが、この眉毛をそり落とす事はできない!自分をなくしてしまう事などできない!!!」
そして次の瞬間、マイクロトフは胸のエンブレムをはずした。
「貴様〜!!!おい、カミュー!マイクロトフを捕らえろ!こいつは反逆者だ!」
ゴルドーに命令されたカミューだが、彼はふっと笑って言った。
「マイクロトフを捕らえる?それはできませんね」
そしてカミューもまた胸のエンブレムをはずし、いつの間にかそこにいた同盟軍のリーダー、アクアに言った。
「アクアさま。私とマイクロトフの二名をオレンジ軍の末席にお加え下さい」
そしてマイクロトフも言った。
「騎士の名はなくとも、我らには剣の技と心と立派な眉毛があります。必ずや貴方のお力となりましょう」
「は、はい・・・。よ、よろしくお願いします・・・ははは」
少し苦笑いしているアクアをよそにマイクロトフとカミューの目は輝いていた。
「それではゴルドーの軍がやってこないうちに、早くここを出ましょう」
カミューの言葉に三人は広間を後にした。


マイクロトフはうれしかった。
青空を見つめながら、心を癒していた。
こういうことになったのも、あの時勇気をくれたカミューのおかげだ。
そんな彼にお礼を言おう、と思って後ろにいたカミューを振り返った。
「カミュー、あの時は・・・・・・」
と、なんだかカミューの様子がおかしい。
しきりに怪しい笑みを浮かべている。
「カミュー?どうしたんだ、お前・・・」
「マイクロトフ。油断はいけないぞ〜」
「?何がだ?」
「太眉ハンター協会は責めてこないと言ったわけではないだろう?」
するとカミューは腰のユーライアに手をかけた。
笑みは怪しさを増していく。
「おい、カミュー!・・・・・・まさか、まさかお前!!!!!!」
「俺はただ、お前の眉が好きなだけさー!!」
勢いよく襲ってくるカミューをもう誰も止められなかった。
「カミュー!!待て!やめろ!やめろおおおおおお!!!」

 

いやーやっちゃいました(爆)
ちゃっかりナルシーも出しちゃったし・・・。
最後は一体どうなったんでしょうね。


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