『かばんのなかみ』

外側はよく知っていても、内側に何が隠されているかは意外とわからない。
思ってもみなかったモノがあったり、当然あるだろうと思ったモノがなかったり。
もしくは今日はあっても明日はなかったり、今日はなくても明日はあったり。
何が飛び出してくるか、いくら知恵を絞って考えてもその全てを知ることは不可能。
・・・だからこそ気になるモノ。


昼休み。中央広場の近くを通りかかったら、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「どうしよ・・・いくらなんでもヤバいよなぁ、これでもう二度目だし・・・」
広場の片隅で幼さの残る少年が一人、芝生にしゃがみこんでがさがさと草をかきわ
けながら、何かぶつぶつと呟いている。その作業に熱中・・・いや必死になって集中
しているせいかこちらには全く気づいていないが、よく知っている人物だった。
何となく嫌な予感がして声をかけようと一歩足を踏み出すと、足下でチリンと
小さな鈴の音がした。視線を落とすと、ピンク色の小さな鈴と黄色の奇妙な丸い物体
のキーホルダーのついた鍵が落ちている。
その鍵に・・・正確に言えばキーホルダーにだが、それには見覚えがあった。
どうやら嫌な予感は的中したようだ。ため息をつきながら鍵を拾い上げ、再び芝生
で探し物をしている少年の方にそっと足音を忍ばせて歩み寄る。
本当に切羽詰まっているようで、背後に立っても彼はこちらに気づかない。苦笑し
ながら、鍵を彼の目の前よりちょっと高い位置にまるでエサで釣るように垂らした。
「おい、探しモンはコレか?」
「あ、ルシード・・・って、あ〜〜〜〜っ!そ、それ、オレの部屋の鍵っ!?」
・・・獲物は物の見事にエサに食らい付き、釣れた。探し物をしていた少年、
ビセットは振り返って鍵を見た途端、飛びつくようにルシードの手を握りしめた。
彼は今年からこの学園に入学した新入生で、寮の隣室の住人でもある。年下の、特
に新入生にはぶっきらぼうな口調といつも怒ったような不機嫌そうな表情のおかげで
大概怖がられるのだが、ビセットだけは例外だった。もっとも、その彼にもつい最近
こちらから止めろと言うまでは『先輩』と呼ばれていたのだが。
「・・・やっぱお前のか、コレ・・・相変わらず趣味の悪いキーホルダー使ってんな」
「あ〜よかった、助かったぁぁ〜〜〜・・・前の時にさあ、管理人さんに『二度目は
ないぞ』って言われてたじゃん?もしかしたら寮から出てけとか言われるかもって考
えたらすごい不安で・・・だから見つからなかったらどうしようって、もうめっちゃ
焦って必死で探してたんだよ!!ありがとルシード〜!」
皮肉は耳に届かなかったらしく、ビセットは本当に助かったと安堵し切ったしまり
のない笑顔でルシードを見上げている。
その手に鍵を乗せ、思わずため息をついた。
・・・ビセットが鍵をなくしたのはこれが初めてではない。六月の、ちょうど梅雨
の雨の激しい時期にも同じように鍵をなくしてしまい、ずぶ濡れ状態で寮周辺を探し
回っていたという前科があるのだ。
「バカ、それくらいで追い出されるわけねえだろが!だが・・・お前、今度から鍵に
紐付けて首にかけとけ。いくらなんでも、そうすりゃ落とさねえだろ」
呆れながらそう言えば、笑っていた顔がみるみる不満げに膨らんでいく。
「げ〜〜っ!そんなガキみたいなのヤだよ〜っ!」
「へっ、ガキが何言ってやがる。嫌なら絶対に落とさない方法考えな、前科二犯」
「人を犯罪者みたいに言うなよな!・・・っと、やば!カバン置きっぱなしだ!」
不満げな顔はまた表情を変え、ビセットは慌ててベンチの方へ駆けていった。何を
するにも、静かにとかおとなしくということを彼に期待するのは無理らしい。
ついていこうか一瞬迷い・・・ため息をついてから結局、後を追った。
ビセットは本当に、ころころとよく表情が変わる。年中不機嫌そうと形容される
自分とはまるで正反対で・・・目が離せない。放っておけない。
ふと見ると、ビセットは何故かベンチの側にしゃがみこんでいた。
怪訝に思いながら近づいてみて・・・唖然とした。ベンチの周りにビセットの鞄の
中身らしき小物類が散乱しているのだ。
いったい誰がこんなことを・・・なんて事は考えるまでもない。財布目的で鞄の中
身を物色するにしてもここまで派手にぶちまけることはないだろうし、何しろ財布
までベンチの下に転がっている。鍵をなくしたビセットが慌てて鞄をひっくり返し、
そのまま芝生の方に探しに行った・・・というのが妥当な線だ。
「・・・置きっぱなしっていうのか、コレ?」
「う、うるさいな・・・よしよし、サイフの中身は無事っと!・・・ルシードも
ぼ〜っとつっ立ってないで拾うの手伝ってよ!」
「やなこった。自分の始末は自分でつけろ」
・・・いくらなんでもそこまで面倒は見きれない。空っぽの鞄が置いてあるベンチ
に腰を下ろすと、ビセットが恨みがましい目で睨んでくる。
「なんだよ〜、別にいいじゃんこれくらい!ルシードのケチ〜!」
「何とでも言え」
ビセットは頬を膨らませてぷいっと顔を背けると、まだ何やらぶつぶつ呟きながら
自分で散らかした物を拾い始めた。手伝ってくれないので拗ねているらしい。
そんな子どもっぽい仕草が何とも言えず可愛らしく思えて・・・知らず知らずの
うちに顔が緩んでいるのに気づき、ルシードは慌ててビセットから視線を外した。
当のビセットは自分がそういう風に見られていることに全く気づかず、相変わらず
ぶつぶついいながら小物を拾ってはベンチの上に乗せている。
何気なくそれらの小物を見て・・・その数の多さに頭が痛くなった。
携帯電話に財布に生徒手帳、ハンカチとティッシュ、タオルぐらいはまだ納得がい
く。マンガの単行本にCD、飴やガムぐらいも一応想像の範囲にあった。
しかしベンチの上に山を作っているのは、ハンドミラーに折りたたみ式のブラシ、
ハンドクリーム、整髪料、制汗スプレー、エチケットブラシ、目薬、バンソウコウ、
爪切りとヤスリ、カッターナイフ、油取り紙・・・上げればきりがないが、いったい
いつ何に使うんだと聞きたくなるような品々ばかりだ。教科書の類いは置いて帰るの
だろうから、これ以上荷物が増えることはないとしても・・・重くないのだろうか?
その物の山の中に見たことのない物を見つけ、ルシードは思わずそれを手に取った。
ハンドクリームを小さくしたような丸い容器で、どうやら化粧品の類いらしい。
側面には『LIP TRETMENT(薬用)』とある。何となくどういうものな
のか想像はつくが・・・いったいどうやって使うのか?
じっと見ながら考え込んでいると、それに気づいたビセットが、
「あ、それ?リップクリームみたいなものだよ。クラスの女の子と唇が荒れてしょー
がないって話してたら、コレ使うといいよって教えてもらったんだ。
ほら、唇荒れてる時って痛いからつい舐めちゃって余計酷くなっちゃったりする
じゃん?普通のリップクリームだと結構こまめに塗ってないと痛くなるけど、
それだとあんまり気にならなくなるんだよね〜!」
・・・と、聞いてもいないのに得意気に説明してくれた。
「やっぱそういうモンか・・・で、どうやって使うんだ?」
言いながら容器をビセットの方に突き出すと、彼は少し意外そうに笑った。
「どうやってって・・・わかんないかな〜?指に付けて塗るんだよ、こーやって」
それを受取りながら隣に座り、ビセットは少し得意気に実演して見せた。
・・・少量を指に取り、唇にそっと擦りつける。
「ついでに言うとね、コレって手先のひび割れにもよく効くんだって。ま、これは
裏技なんだけど・・・あ、ルシードも唇荒れてる」
そう言って、ビセットは悪戯を思いついた子どものように笑った。
・・・オレンジのような甘い香りが鼻をくすぐる。
「っな・・・!」
あまりに意外な行動に、反応が遅れた。ビセットはさっき自分の唇に当てた指を
そのままルシードの唇に擦りつけてきたのだ。
「これでよしっと!ルシードもこういうの使えとは言わないけどさ、リップクリーム
ぐらいちゃんと付けてた方がいいよ?油断して唇の上に口内炎・・・あ、でも口の外
だから口『外』炎とかいうのかな?とにかくそんなのが出来たら唇腫れちゃって、
マスクなしでは歩けない顔になっちゃうぜ〜!」
自分がしたことがどういうことなのか全くわかっていないのか・・・それとも
何とも思っていないのか、ビセットは全然動じていない。
「お、お前なぁ・・・」
「何?・・・もしかして、ルシード照れてる?顔真っ赤だよ」
「・・・・・・」
「それとも・・・怒った?」
肯定も否定も出来ずに黙っていると、ビセットの顔が急に不安げに曇った。
怒って顔が赤くなったとでも思ったのだろうか?口元を手で押さえているから、
そう見えたのかもしれない。・・・目つきが悪いのはいつものことなのだが。
「別に、驚いただけで怒ってはいねえよ」
顔の火照りもだいぶひいてきたので手を降ろし・・・素直に『照れている』とは
言えなかったが一応否定すると、ビセットはあからさまにほっとした顔をする。
「なんだ、脅かさないでよ・・・黙ってるから怒ってるかと思った。ルシードもこう
いうことにはケッペキな方だったのかって、思いっきりビビっちゃったじゃんか!
・・・そうだよね〜、考えたらジュースの回し飲みとかへーきでしてるもん、これ
くらいで怒るワケないか〜!」
泣いたカラスがもう笑うとはよく言ったもので・・・すっかりいつもの調子に戻っ
たことにほっとしつつも、的の外れた言葉を聞いていたら何だか頭痛がしてきた。
まったく、人の気も知らないで・・・何をどう考えているのかは知らないが、
ジュースの回し飲みと同じレベルのことだと思っているのだろうか、コレが。
「・・・潔癖かどうかは知らねえが・・・普通、こういうことはしねえと思うぞ」
言いたい文句のほんの一部だけを返すと、ビセットは意外そうな顔をしたが・・・
ルシードにとってはその言葉の方がよっぽど意外だった。
「え〜、そう?結構貸し借りしたりしてんじゃん、こういうの」
「・・・そうなのか?」
「う〜ん・・・まぁ確かにオレはしたことないけど、女の子とかは結構やってるよ?
だからこういうのもアリかな〜って思ったんだけど・・・変かな?」
改めて言われると不安になってきたらしく、ビセットは縋るような目でルシードを
上目使いに見上げてくる。
「どうだろな・・・俺もよくわからんが、あんま普通じゃねえと思うぞ」
本音を言えばビセットが沈むのはわかっていたが、ここで嘘をついたって何も良い
ことはない。・・・別の人間に同じことをしているのを見るのなんてゴメンだ。
「そっか・・・ごめんね、ルシード」
予想通り見るからにしゅんとして、ビセットは俯きがちに呟いた。
「別に謝ることじゃねえよ。誰かに見られたわけでもないし、お前は親切でやってく
れたんだろ?俺は気にしてねえし、怒ってもいねえよ・・・だからそんな顔すんな」
さっきの言葉と矛盾するのかもしれないが、これも間違いなく正直な気持ちだ。
ビセットが自分を気づかってくれたことは嬉しいし、怒っていないことも事実。
・・・それに何より、沈んでいる顔は見たくない。
ぽんぽんと頭を撫でると、ビセットは少しだけ笑った。笑顔というより、苦笑いと
いうか自嘲の笑みというか・・・何だか微かに、ほんの少しだけ寂しげな・・・。
だが微妙な笑いはため息とともに消え、いつもの表情が戻ってきた。・・・とはい
え、何だか少しぎこちない感じのする表情だったが。
「ありがと!ルシードって目つきも口も悪いけど、ホントに優しいよね〜!」
いつもの口調で語られた言葉は、仲良くなった相手から非常によく言われる台詞で
・・・それを言えばどういうリアクションが返ってくるか、ビセットはもう良く知っ
ているはずだった。だから、彼は普段絶対にこの言葉を口にしない・・・何かよほど
誤魔化したいことがない限り。
「・・・それは褒めてんのか、けなしてんのか・・・どっちだ?」
あの表情は気になったが、ルシードはあえてその誤魔化しに乗った。
・・・問いつめても、答えは返ってこないような気がしたのだ。それで今の関係を
壊すぐらいなら、このままそっとしておいた方がいい。
「え〜っ、褒めてるんだよ!人がせっかく褒めてあげてるのに、どーしてそうやって
ヒネくれた取り方するかな〜、まったく・・・やっぱ前言撤回!ルシード性格悪い!」
「やっぱりけなしてんじゃねえか!」
「それはルシードがつっかかってくるからだろ!?」
そこで、午後の授業の予鈴が鳴った。昼休みももう終わりだ。
「・・・あ、ヤバい!もうこんな時間じゃん!オレ次音楽なんだ!」
がさごそと大量の荷物を鞄に詰めながら、ビセットはおろおろと時計を見る。
「そ〜かそ〜か、んじゃさっさと行け」
「なんだよその言い方〜・・・ルシードだって急がなきゃ授業遅れるよ!?」
「俺はどうせ次も自習だからいいんだよ」
受験シーズン真っ只中で、今の時期は個人にあった勉強ができるようにほとんどの
授業が自習になっているのだが・・・上の大学への進学を早々に決めたルシードに
とってはヒマな時間でしかない。
「ちえっ・・・とっとと進学決まった受験生はヒマでいいよな〜・・・」
つまんなそうに呟いて、ビセットは鞄を肩にかけてとぼとぼと歩き出した。
「な〜にクサってんだよ?お前音楽は好きなんじゃなかったのか?」
その足取りがあまりに重そうだったので、心配になって思わず声をかける。
何か嫌なことでもあるのか、ビセットは憂鬱そうにため息をついた。
「ま〜ね。でも時にはサボりたくなる日もあるんだよ」
足を止め、振り向いたビセットの顔はいまだに不満げな表情のままだ。
「・・・ならサボりゃいいじゃねえか」
俺と一緒に。・・・とは、さすがに言えない。『頑張れよ』ではなく『サボれば?』
なんて、真面目な生徒の言うことではない。自習であるなし関係なく、授業をサボる
ことなんて珍しくもなんともないルシードだからこその言葉だ。
それはわかっているらしく、ビセットは苦笑しながら首を振った。
「そりゃルシードは慣れてるもんね、サボり・・・。でも、居眠りしても授業は
サボらないのがオレのポリシーなのだ!」
「偉そうに言うことかよ、それが・・・」
呆れ口調で呟くと、ビセットはべ〜っと舌を出す。それが高校生のすることか!
・・・と言いたいところだが、先に笑いがこみ上げてきてしまった。
「わ、笑うなよ〜!!・・・とにかく、オレ行くから!またね、ルシード!」
自分でも子どもっぽいと自覚したのか、恥ずかしいらしく真っ赤になったビセット
は照れ隠しのように乱暴に手を振ると、さっさと背を向けて走り去ろうとした。
「・・・あ、ちょっと待て!」
急に呼び止められて、ビセットは校舎の方に振り向いた反動そのままに・・・結果
的にくるりと一回転してこちらを向いた。
「今度は何!?」
本鈴が鳴るのは予鈴の五分後・・・授業の始まる時間が迫っている。
「あ、いや・・・お前、今日部活何時頃終わる?」
「へ?・・・んと、大体6時ぐらいかな?」
「そ、そうか。俺もそれぐらいに生徒会の仕事終わるんだが・・・一緒に帰るか?」
ビセットと一緒に帰ること自体は珍しくも何ともないが、いつも偶然合ったとか
誘われた(というよりゴネられた)とかそういう具合で、自分から誘ったことはない。
・・・慣れないことをしたせいか、自分でも口調がぎこちない気がする。
「えっ、ホント!?」
どういう風の吹き回しかと驚くかと思ったのに、ビセットはただ素直に喜んでいる
ようで、時間に追われて焦っていた顔がぱっと輝いた。
・・・だが、その笑顔はすぐに曇る。
「あっ・・・でも1年は片付けとかあるから、もっと遅くなるかも・・・」
喜んだぶん落胆は激しいらしく、ビセットはため息をついたそのままの姿勢で落ち
込んでいる。時間が合わないと断わられると思っているのだろう。
・・・そんなに薄情な人間だと思われてるのだろうか。
「別にそれくらい待っててやるよ。俺の方も丁度に終わるわけじゃねえし」
苦笑しながら答えると、ビセットは信じられないといった表情で顔を上げた。
「ほ、ホントに!?じゃあさ、待ってる間にティセとかに帰ろって誘われても
帰っちゃわないで、オレのことちゃんと待っててくれる!?」
「なんでそこでティセが出てくんだ?・・・ったく、当たり前だろ!言い出したのは
俺の方だからな、お前がくるまでいくらでも待っててやるよ!」
思ったより自分は信用がないようで・・・いったいどんな目で見られてるんだと少
し傷つきながら答えると、ビセットは今度こそ本当に嬉しそうに笑った。
跳びはねるように・・・いや実際に跳びはねるほど、本当に嬉しそうに。
「ホントのホントに!?・・・やったぁ!絶対だよ?約束したからね、ルシード!」
「ああ・・・ただし、出来るだけ急げよ」
「もっちろん!ありがとルシード、大好きっ!」
・・・それはもうすでに聞き慣れた言葉。
満面の、しかも極上の笑みといってもいいくらいの笑顔付きでそう言われるのは正
直悪くない気分だったが、同時に少しばかり頭痛の種も一緒に蒔いていってくれる。
「・・・ああ、ありがとよ。それよりお前時間は・・・」
複雑な面持ちで、ルシードが腕時計に目を落とした途端・・・タイミングよく
本鈴が鳴った。
「うわわわわっ!ヤバい、遅刻だぁっ!じゃ、じゃあね、ルシード!またあとで!」
「おう、あとでな」
ひらひらと手を振り、校舎に向かって全力疾走するビセットの姿を見えなくなる
まで見送る。さすがに部活で鍛えているだけあってかなり速く、本鈴の余韻が消える
前に見えなくなってしまった。
「・・・ったく。相変わらず元気だけはあり余ってんな、あいつ・・・」
誰もいなくなった広場で、ルシードは一人ため息をつく。
自習時間とはいえ、こんな所で堂々とサボっていたら、通りがかった教師に説教を
くらうことはわかっていたが・・・どうも、動く気がしなかった。
「・・・『大好き』ねえ・・・」
ビセットはほとんど口癖のように、何かにつけてそう言う。誰かが側にいようと
いまいと関係なく、時には抱きついてきながら。
その言葉には・・・別に、深い意味などないのだろう。
『大好き』と言われる割に、あまり信用はないようだし。さっきのリップクリーム
モドキの一件にしても、きっとビセットにしてみればただの友人、もしくは兄の
ような存在に対しての行動であり、言葉なのだ。
・・・でも、たかがそれだけの人間と帰りの約束をするだけであんなに喜べるもの
だろうか?学園から寮まで、たかだが十分程度の道程だ。部屋も隣同士だし、話がし
たいのなら直接部屋に押しかけて来ればいい。
 ・・・いや、ビセットは現にそうしている。
一人で帰るのが嫌だとは聞いているが・・・他にも一緒に帰る相手はたくさんいる
はずだ。なのにビセットは、何故か特に自分と一緒に帰りたがっているように思える。
・・・そう思うのは、自惚れなんだろうか?いくら考えても、答えは出ない。
どうもはっきりしない。いったいビセットは何を考えているのか?
いや、違う・・・いったい自分のことを、どう思っているのか?・・・だ。
何気なくポケットに手を突っ込むと、意外なモノが入っていたのに気づいた。
 ・・・目新しい、きれいなピンク色の包み紙に包まれた飴。そういえばこの間
ビセットに1つもらって・・・あとで食べると言って、そのままポケットにしまった
ような気がする。
確か新商品とか言って騒いでいたモノだ。・・・今の今まですっかり忘れていたが。
見るからに甘ったるそうな飴で、あまり好みではなさそうだが・・・それをあえて
食べてみようと思ったのは、単純だがそうすることで少しでもビセットのことが
わかるような気がしたからだ。
包み紙を剥がして、口の中に放り込む。・・・だが予想に反してその飴は甘ったる
くはなく、甘酸っぱいぐらいのものだった。
ルシードが思わず苦笑して、立ち上がった。
ビセットがどう思っているか・・・そんなこと考えてもわかるわけがない。人の心
の中なんて、いくら頭を捻って考えたって理解しきれるものではないのだから。
 ・・・自分の心の中だってあやしいのに、それが他人のものなら尚更だ。
「・・・裏庭にでも行くか・・・」
いつもなら保健室でサボるところだが、今は人に会いたくない。
裏庭に足を向けながら、ルシードは自分の中で決着をつけた。


・・・結論。『なるようになるだろ』


思ってもみなかったモノがあったり、当然あるだろうと思ったモノがなかったり。
もしくは今日はあっても明日はなかったり、今日はなくても明日はあったり。
いくら知恵を絞って考えてもその全てを知ることは不可能。
だからこそ気になるモノ。気になるけどわからないモノ。
・・・気になるなら、開けてみれば?



さざえのたわごと
それを言っちゃあおしまいだっつーの(死)・・・と自分ツッコミはさておき。
一年前の高校生ルシードと新入生ビセ子の話だったんですが、わかりました??
さざえは自分で書いてたくせに、たまに忘れてました(おいおい)
今回は実話(?)ネタ満載です。リップトリートメントというモノはさざえが使って
いるやつで、この辺りの話はうちの下の弟が「どうやって塗るの〜?」と言ってたのを
見て思いつきました。・・・とすると、ルシードさんてば小学生並みの感性?(爆死)
それからビセ子の鞄の中身!参考にしたのは私の家出時の荷物っス(死)ちょっと
持ち過ぎかな?・・・え?これくらい持ってて普通!?それは失礼しました(苦笑)
どうでもいいけど、リップクリームとかの貸し借りって人によって微妙ですよね。
ちなみにさざえはあんまり気にしない方だと思う・・・けど、高校時代はちょっと
周りについて行けてなかったから、そう言う意味では結構潔癖なのか・・・?
今気づいたけど、その辺のことを気にする人にはとんでもない話ですよね、コレ。
リップどころか指だし(苦笑)次元違うっつーの。
・・・ほっぺにちゅーするのと、どっちがすごいだろう??

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