HAPPY TOMMOROW NEVER LOVE
HAPPY TOMMOROW NEVER LOVE

「……どーしよう。」
リュウセイ=ダテは一言呟いて、つんつんにとがった髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜながら大きくため息をついた。
そして、自室にかけてあるカレンダーに書かれた7月9日の赤丸を見て、再びため息。
今日は、相棒であるライディース=F=ブランシュタイン―――通称・ライ―――の誕生日だ。
前々から、なにかほしいもんあるか?とは聞いていた。が、その度に「なにもない」とか「興味がない」だとか言われていたのだがまさか、 今日になるまで何も買っていない上に、何が一番欲しいのかというのも考えていなかったとは、言えない。
そう、絶対に言えない…のだが。
何か、プレゼントをあげたい、と思うのは本当のことで。
でも、彼が何かに固執しているところなんか見たことがなかったので、何が好きなのか、ということを知らない。
さて、どうしたもんか。
「お?リュウセイじゃねーか。何こんなところで丸くなってんだ。」
ひょい、と顔を覗き込むようにされて、心臓が飛び出るかと思うほど驚いて、2,3歩飛び退ってしまう。あまりの驚きに、驚愕の叫びも出なかったそのままの顔で声をかけてきた彼を見る。
顔を覗き込んできた相手が自分の見知った顔だとわかると、ほう、とため息をついて、彼を見た。
緑色の髪といつもと変わらない、色の褪せかけたジージャン、いつも強気な瞳は今は驚愕に彩られていて、珍しい彼の表情を見ることができた。 「マサキかよ…驚かせるなよな〜。」
「驚いたのはこっちだっ!急に飛び退りやがって!」
マサキは、心臓に悪いだのなんだのって言いながら、リュウセイを上から見下ろすように近づいた。
「なにやってんだ?おまえ。さっきから突然叫んだと思ったら、俯いて髪の毛くしゃくしゃにしてみたり。
傍から見てると、あやし〜ぞ。」
「えっ、俺そんなに怪しい行動、とってたのかっ!?」
自覚がなかったのか…と思わずため息をつかずにいられない。事実、マサキははぁぁ、と思い切り深いため息をついた。
「俺、おまえの面倒見られる、ライの神経に感服する。」
「どーゆー意味だっ!!」
思わず呟いたら、声が聞こえたらしくリュウセイがものすごい剣幕でマサキを睨んだ。マサキはそれに「ははは…」と乾いた笑いをあげて、ごまかすために話をそらそうとする。
「んで、何悩んでたんだよ。」
「………マサキは、何か上げたか?」
「誰に何を。」
「シラカワ博士とか、リューネとかに誕生日のプレゼントを、だよ。」
「あぁ…二人ににじり寄られて今日誕生日なんだ、とかなんだとか言われたから…買ってやったな。」
こくこく、と頷きながら言うマサキにリュウセイは再びため息をついてしゃがみこんだ。
「どうしたんだ。今日、誰かの誕生日か?」
「………ライの誕生日なんだ。」
「…なるほどなぁ…でも、お前らしょっちゅう一緒にいるじゃねーか。
好きなもの、欲しい物くらい、わかるんじゃねーの?」 「わからね〜から、こうして悩んでるんだよ…
アヤとかに聞いても、「ライの趣味ってよくわからないわ」としか返ってこねーしよぉ…」
どーすればいーんだよ〜!!と叫んだリュウセイに、マサキは意地の悪いライのことだから、わざと教えなかったに違いない、と考えた。
欲しい物くらい、当ててみろ。というのだろうか?
「ま〜、うん。あれだな。…がんばれ。
「おまえっ、人事だと思ってるだろっ!」
「だって、人事じゃねーか。そうだな…ライって結構読書好きじゃなかったか?何か本でも買ってやれば?」
「本はいらないって言われたんだ…。俺も一番最初にそう考えたのにあっさり却下された。」
とことん、苛めるつもりらしい。別段親しいわけでもないが、マサキでも知っている。
ライの特性は『好きなやつはとことん苛める』…だ。
それで、相手が泣き出せばそこに颯爽と現れて、優しく甘い言葉で相手を暗闇から引き出して、自分の株を上げる。
珍しく、ライが固執した『者』…リュウセイは、きっと彼にとっては一筋の光明にも似ているから、余計に苛めてしまうのだろう。
「…料理でも、作ってやれば?」
自分から話し掛けておいてなんだが、悩んでからその実惚気てんだかよくわからないリュウセイニ、マサキはちょっとだけ嫌気がさして投げやりにそう言った。
その言葉にリュウセイはぱっと反応して、顔を輝かせる。
「そうかっ!その手があった!」
そう言うとばたばた、と爆音を立てて食堂のほうに走り去っていく
「って、おい!リュウセイ!?…………………あいつ、料理なんてできんのか…?」
マサキはそう呟いて、下手するとこの世のものとも思えないような料理を味わうことになるのであろうライに対して無責任にも『合掌』と心の中で手を合わせてしまうのだった…



「ライッ!!」
自動ドアなのに、それが開く瞬間すらももどかしく感じられてバンッ!と物凄い音を立てて相棒の部屋のドアを開く。
その音を、うっとおしげに聞いたライが眉を潜めリュウセイのことをちらりと睨んで、相手の存在を認める。
あくまで必要なものしか置かないライの部屋はいつもと変わらず簡素で、ただそこに今日は彩りを添えるものが多数あった。
「…リュウセイ、おまえは俺の部屋のドアを壊して俺に寒い思いをさせるつもりか?」
読んでいた本から目を上げて、ドアのところで立ったままのリュウセイにそう言葉を投げかけると、リュウセイは「勢いだよっ、いきおい!!」と言って今度はドアが自動的に閉まるのに任せてライの部屋の中に入った。 そして、色とりどりのリボンやラッピングしに包まれた大小さまざまな箱をみて「は〜」と感嘆のため息をついた。
「これ、全部おまえへの誕生日プレゼントか?」
「らしいな……」
「らしいなって…中身、見てねーのか?」
「…全て、ケーキらしい…俺に死ね、といってるんだろうか。」
確かに、甘いものはあまり好きではないが、体中全て使って拒絶するほどではないので少しくらいならつまめる。…が、この量は異常だろう。
ほんの少ししか食べたい、と思わないしこんなに大量にもらってしまったら、来年の自分の誕生日になってもきっと食し終わらないで部屋に残ってしまう。
それ以前に部屋に、甘ったるい匂いが染み付いてしまうだろう。
「は〜…そいつはご愁傷様。」
「…おまえ、ちっともそう思ってないくせに言うの、やめてくれないか…。」
「いやいや、心の底から思ってるって。」
リュウセイは片手ではたはたと手を振ってから笑った。
それにつられて少し笑みを浮かべてから、ライは本を閉じ「で?」と聞いた。
「へ?」
「何か、用事があってここにきたんじゃないのか?おまえは。」
その言葉に、「ア〜!そうだった、そうだった!」といって、リュウセイは後ろ手に隠すように持っていた皿をライの目の前に突きつけた。
「…なんだ、これは。」
「俺、おまえに何あげたらいいかわからなかったから、料理作ったんだ。」
自慢下に胸をそらして言うその台詞に、ライは目を見開いてそれからその皿―――布がかけられていて、中身が何なのかは、わからない―――を見た。
確かに、ふわりと香るにおいがおいしそうだと告げていた…が。
「…毒でも入ってるんじゃないだろうな…」
「どこまでも失礼なやつだなっ!入ってね〜よ、そんなもん!」
憤慨した様子のリュウセイにライは「悪いな。」と一言だけ謝った。
「食べてみてくれよ。結構美味くできてる…はずだから。」
最後の、はずだから、というのにちょっとだけ不安を感じながら、皿にかけられた布を外すと、暖かな湯気と共にふんわりとジャガイモの匂いが鼻をくすぐった。
「肉じゃが…か?」
なるほど、美味くできてる。
匂いもいい。見た目も彩りがよくて、食欲をそそってくれる。
「あぁ。俺、これくらいしかしらねえんだ」
他に知ってるものといえば、味噌汁くらいだし。といってはは、と頭をかきながら笑ったリュウセイが、箸を渡した。
それを受け取って、ジャガイモに箸を入れる。
かなりやわらかくなっているジャガイモから湯気が上がり、さらにそれを小さく切って、口に運んだ瞬間…
「………!?」
ライの顔色が、物凄い勢いで変わった。
そして、次の瞬間咽たかのように咳を繰り返す。
「ラ、ライ…?」
「お、おまえ…これ、どうやって作ったんだ…?」
「どうやってって…そんなに壮絶な味がするか…?」
不安そうな瞳で、ライの顔を覗き込むので無言のまま、リュウセイに箸を渡す。
リュウセイは恐る恐る、と言った感じで―――自分で作ったのに…だ―――ライが切ったジャガイモのうちのひとつを食す。
そして、彼も一気に顔色を変えた。
「げ、げほ…!」
「……砂糖とか、味醂とか、ちゃんと計ったか…?」
「…一応。」
一応。彼の一応は大雑把。ということだ。あまり当てにしてはいけない。
ライは、ようやっと咳が止まってほっとしたような顔をしてリュウセイを見た。
「ごめんな、ライ…俺…おまえのこと、喜ばせようとしたんだけど…逆に、不機嫌にさせちまったみたいだな…」
しゅん、とまるで叱られた犬のような表情をするので、ライはリュウセイの髪を優しくなでた。
「いや、気持ちだけで嬉しい。それに、おまえからもらえるものなら、もうひとつ、あるぞ。」
え?と顔を上げたリュウセイの唇に、自分のそれを重ねる。
短く、軽い夜のそれとは比べ物にもならないような、啄ばむような、キス。
鮮やかな、フェイント。
リュウセイが、呆然としてまるで、ファーストキスを奪われた乙女のように己の唇に手を添える。
「おまえからのプレゼント、しっかり受け取ったぞ。」
にっ、とさわやかな笑みを浮かべて、ライが自室から出て行った。
プシュ、とドアが閉まったのと同時にリュウセイがはっとする
「て、てめ〜!!ライ!不意打ちってのは、卑怯だろ〜〜〜〜〜〜!!?」
そうやって叫んでから、しばらく怒りをあらわにしていたが不意に小さく笑みを浮かべて自分しかいない部屋から出る。
「…たんじょーび、おめでと」
たった一言部屋に投げかけるようにそう言ってリュウセイもライの部屋から出た。



あなたが生まれたその時、その瞬間に…ありがとう………。そして、おめでとう…



ENDE...

ライディース少尉の誕生日からすでに一週間経ってからアップ…なんだ、自分…。
愛情が少ないぞ!!
しかし、どうにかアップできてよかったです…。
誕生日のその日はライリュウ書いてはいたけれど別の話書いてました…(ダメダメ)
お料理。リュウセイはきっと『お袋の味』にこだわると思ってるのですが。
そして、匂い、見た目はよくっても味はこの世のものとは思えないと思うのですが。
…だめですか。そうですか…。
ちなみに、ライはお坊ちゃんだろうから、高級料理には飽きてるとおもうのです。
んで、庶民料理が好きそうだと思うのですが。
…だめですか……