Smile A Go! Go!
Smile A Go! Go!
結論から述べると、どうやら自分は彼…リュウセイを怒らせたようだった。
怒りをあらわにした瞳と、表情が「ぜってーゆるさねー」と言っていて、 なんだかこちらが悪いことをしたような気にさせられたが、多分、原因は向こうにある…はずだ。
しかし、何が原因でケンカになったのか、というのはまったく覚えていない。どうでもいいようなこと であったような気もするし、その中には重要なことも含まれていたような気がするのだが…つい今しが たまで、そのことで怒っていたはずなのに、原因だけが、すっぽりと抜け落ちていた。
「ぜってー、ゆるさねーからなっ!ライ!」
リュウセイが、睨んだまま言ってきたので俺は、ふっと鼻で笑ってやる。いつものことなのだ、どうせ彼のことだから、どうでもいい事で怒っているに違いないし、いちいち相 手にしていたら日が暮れてしまう。と、いうことでいつもの常套手段を使うことにしたのだ。
しかし、彼にとってはそれが大変面白くなかったらしく、カ〜と顔を真っ赤にして俺に近寄ると、ばき !っと一発顔を殴ってずかずかとわざとらしく音を立てて部屋から出て行った。
「…痛い。」
一言、無感動にそうつぶやくと陰に隠れていたのであろうリオがくすくすと笑いながら出てきた。
「また、リュウセイ君とケンカ?飽きないわね、あなたたちも。」
手には救急箱を持っている。どうやら、最近は女性陣が全員当番制で誰が手当てに行くか、誰がリュウ セイを宥めに行くか、というのが確立してきたらしい。
そして、今日はリオが手当ての当番のようだった。
「今日は、リオが手当てか…わざとらしく消毒液をつけるなよ?」
憎まれ口を利くと、リオは苦笑して、手に持っていた消毒液を隠した。
……冗談のつもりで言ったのだが、彼女は本当にそれをやろうとしていたらしい…言わなかったら、き っとやられていたであろう。そう考えると、少しだけぞっとした。
「今日のリュウセイ君の宥め当番は、アヤさんよ。」
顔に消毒液を染み込ませたガーゼを貼りながら、リオは静かに言った。テーピングをして、その上から 何もつけていないガーゼを貼る。
「まったく、本当に毎回毎回…よく、ケンカのネタが尽きないわね。で?今日は何でケンカしたの。」
「……昼飯がラーメンだったんだ。」
唐突にそういうと、リオがは?と、目を点にしてこちらを見てきた。
「ラーメン。それで、リュウセイが「俺、中に入ってるメンマ、好きなんだよな」って言ってな。
シナチクだろ、っていったらメンマだ!って言い張られて、そこから口ゲンカになったんだ。」
そういってから、ふ、と目線を彼女に戻すと、彼女は肩を震わせて笑いをこらえているようだった。…なんとなく、心外だ。自分は何かおかしいことを言ったのだろうか?
「何を、笑っているんだ、リオ。」
「だっておかしいもの。
普段は冷静沈着で、誰にも関心を持たない代わりに心も開かないライディース=F=ブランシュタイン少尉が、メンマかシナチクかって言うことで、ケンカするなんて…子供っぽくて、なんだからしくないわ。」
顔を上げ、目元の涙を拭きながら―――そこまで笑うことではないと思う―――リオは言った。
「でも、それだけリュウセイ君のことが好きなのね。」
彼女の一言に、思わず俺が固まってしまった。誰が?誰を好きだって?
「あら、自覚なかったの?傍から見るともうこれ以上ないって位リュウセイ君のこと好きっていうの、 わかるんだけど。」
キョトンとした顔でそういわれて、真っ赤になったりするよりも前に石化してしまった。
そうなんだろうか。言われてみれば、そうなのかもしれないが、認めたくない。かといって、否定する わけにも行かない。
「よく、わからないな…」
ただ、そうやって一言呟くと、リオは意外そうな顔をして俺を見た。
「なんだ。」
「いえ?天才の名をほしいままにしたあなたでも自分のことがわからなくなるなんてことがあるんだな 〜って、ちょっと感心していただけよ。あなたはやっぱり、人間らしいのよ。誰よりも、リュウセイ君 といるときは。」
なんとなく、子供扱いされているような気がして、少しばかりむっとはするが、まぁ、事実なのかもしれない。
自分のことは、何よりも誰よりも周りで見ている人間のほうが、知っていることのほうが多いのだ。
「はい、治療終わり。それにしても、ずいぶんと思い切り殴られたのね〜。せっかくの美形が、台無しだわ。」
リオがくすくすと笑いながら、俺の背中をたたいた。
「リュウセイ君の所、行くんでしょう?ちゃんと謝るのよ。」
その言葉に俺は苦笑を浮かべながらもこくりとうなずいて、軽く走り出した。
今ごろなら、アヤ隊長にリュウセイは説教され終わったことかもしれない。
さっさと謝ってしまうことにしよう。後腐れが残るのは、あまり好きではないしな…

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ずかずか、と歩いていくリュウセイの後ろをすたすた、と音を立てずに―――しかし、存在だけは聞き取れる程度の音で―――アヤが歩いていた。
緑色の髪が、歩くたびにふわりと揺れる。先を歩くリュウセイの歩調ペースに合わせているので結果として彼女は早歩きすることになる。
そして、急にぴたっと止まったのでアヤも同じように止まり彼が振り向くのを待った。
「…アヤ…。何でついてくるんだよ…」
少し、怒りが含まれた口調で言われて、彼女は笑みを浮かべたまま口を開いた。
「あなたとライのケンカの宥めにきたのよ。
また一方的に怒ってるんでしょう?しかも、ライの顔まで殴って。」
「だって!俺のこと、馬鹿にしたんだぞ!」
「…なに、今度は何でケンカしたの?」
いいかげん、彼らのケンカにも慣れてきたので、彼女は呆れた、というよりも理由を聞くのが楽しみになってきている。不謹慎だとは思うけれど、理由を聞くたびにほほえましいと思うからだ。
「アヤは、メンマとシナチク、どっちで呼ぶ!?」
「……は?」
「今日の昼飯で、ラーメン出たとき俺が「メンマ好きなんだ」って言ったら「シナチクだろ」って馬鹿にされたんだっ!!」
思い出したら、また憤りが復活してきたらしく地団駄を踏んで怒り始めたリュウセイを見て、アヤは盛大なため息をついた。ラーメンの具のことでここまで大きなケンカができるなんてある意味とてつもなく息が合ってるのかもしれない。
そういえば、前は「かたつむりかでんでん虫か」でケンカしていたような気がする。
「あいっかわらずちっちゃいことでケンカしてんのね〜…」
「あいつが悪いんだ!俺のこと、子供みたいに扱うからっ!」
それから「それに、俺だってあいつと同い年なのによぉっ!!」とまた怒り出したリュウセイにアヤがはぁ、とため息をつく。今回はいつになく機嫌が悪いようだ。
「実際子供じゃないの、そんなことでケンカして?顔まで殴って…別にどちらでもいいじゃない。」
「ぜんっぜんよくないっ!!あいつが謝らない限り、俺も謝らねー!ぜってー口も聞いてやらねー!!」
まるで、子供怪獣のようだ。よく吼える。
そんなことを思いながら、アヤは後ろを見た。先ほどから、気配があるのにリュウセイは気づいていないのだろう。そろそろ、ここで退散しておいたほうがいいかもしれない。またケンカになったら止めに入ればいいのだし。
アヤはいまだ一人で熱くなりながら「ライのばかやろー」だの「絶交だっ!」などと叫んでるリュウセイを置き去りにすたすたと踵を返した。荒療治のほうが効くのだ、この二人には。

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「誰が、馬鹿だって?」
不意に背後から聞こえてきた声に、リュウセイはびくり、と大きく肩を震わせてそちらを見た。
そこにいるはずのアヤの姿はすでになく、代わりに立っていたのはくすんだ金髪に少しきつい青い目の青年だった。
「げっ…ライ…」
「ずいぶんと言いたい放題言ってくれてたようじゃないか。」
「ほ、本当のことだろっ!いっつも俺のこと、馬鹿にしやがって!俺、おまえが思ってるほど、馬鹿じゃねーんだぞ!」
「馬鹿だろう。いまどき、メンマなんていうやつはめったに見ない。」
ライは言いながらリュウセイの顔色をちらり、と伺った。
少しずつではあるが、再び怒りがぶり返しているようだった。逆風警報発令。もう少しからかっていると1週間は本当に口をきいてもらえなそうだ。
「くっそ〜〜〜!!いっつもいっつもいっつもいっつも!そんなに俺が、嫌いかよっ!!」
思ってもいなかった言葉に、ライのほうが驚いた。
いきなりそこまで話が飛ぶとわ。さすがは単細胞…いやいや、熱血暴走馬鹿。とある意味感心してしまう
「誰が、誰を嫌っているって?」
「おまえがっ!俺をだっ!」
「………別に、嫌ってはいないぞ。」
呆れた。自分の態度がそんな風にとられていたとは…。案外、自分も馬鹿なのかもしれない。
「じゃぁ、何でいつも馬鹿にするんだよ!嫌いだからだろ!チクショー!俺もライなんかだいっ嫌いだ〜〜〜〜!!!」
えぐえぐ、と泣き始めたので、頭を抱えてしまう。どうしてそこまで本当に話を飛ばすことができるのだろうか。いいかげん、機嫌を直してやらないと、あとでリオやアヤ隊長だけでなく、ほかの連中にもにらまれそうだ。
そう考えながら小さくため息をついて、リュウセイの頭をぽんぽんと軽くたたいてやる。
「悪かった、悪かった。俺が悪かった、すまないな、リュウセイ。」
そういうと、じろり、と半眼で睨まれる。
「心がこもってね〜……」
呟くように文句をたれる。目は真っ赤になって腫れてはいるがとりあえず泣き止みはしたようだ。
心がこもっていない、といわれても困るだけだ。さて、どうしたものか。
「…よし、わかった。お詫びに飯おごってやろう。」
そう言ったとたん、リュウセイがぱぁっとうれしそうに笑いながらかおを上げた。
「本当かっ!?本当だな!」
「うそ言っても、仕方がないだろう…」
おごっておかないと、いつまで経っても機嫌が直りそうにないしな。と心の中で、呟くライ。
「よ〜し!何おごってもらうかな…」
すでに、リュウセイの頭の中は、おごってもらう料理のことでいっぱいのようだった。顔には、満面の笑みが浮かべられている。
『…もしかして、自分はとんでもないやつにほれ込んでしまったのではなかろうか。』
なんて思いながら、でもこの嬉しそうな笑みが好きなんだな、と少しだけ、自覚を持った。

「よしっ!ラーメンおごってくれっ!!」
「…昼もラーメンで、またか?飽きないのか、おまえは…」
「人のおごりだから、いいんだよっ!!」
いつと変わらない会話に、ライは少しだけ安心してやはり少しだけ馬鹿にしつつも食堂へと向かったのだった。

彼が、いつまでも笑っていられるように、と願いながら。いつも、そばにいることを、誓うのだった。



FIN...

なんでしょ、これ…。一応、ライリュウなんだけど…初書きのせいか、性格が確立してないなぁ…
ライはリュウセイ馬鹿。これだけは決定。うちのはやさ男だから、リュウセイが泣いてるところにライがあり。
好きな子は泣かしたい精神よねっ!SRWαでライがちょっとした冗談を言うようになったのを『リュウセイ君の影響ね』といわれて少し照れてるように見えたのは、あたしだけかっ!
ん〜。でも、いいね、ライリュウ。ほかの人のはすごくいいよね。もうちょっとがんばってみるかな。


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