「キャー!!」
突然悲鳴を浴びせられた。
「啓子ちゃん!お客さんだよ!」
オーナーらしい人物が必死になだめている。
「何と接客態度の悪いペンションだ」
俺はあからさまに毒づいた。
「どうも申し訳ございませんでした。えっと、本日はどういったご用件で?」
俺はあきれた。ペンションに宿泊以外の目的で来る奴がいると思うのか。
まあ俺達は飯をいただきに来たわけだが。
しかし泊まれるものなら泊まりたかった。
「泊まりたいんだが。まあそれが無理なら飯だけでいい」
「申し訳ございません、当ペンションは予約制でして、お部屋が空いていればお泊まりいただくことも出来るのですが宿泊の方は現在・・・」
「小林君!そんな事言うてる場合やないやろ!人が来たんやで?」
なんだかおかしな雰囲気だ。事件の臭いが臭うぜ。
「そ、そうでした。すっかりパニックになってて・・・」
そしてオーナー達はゴチャゴチャ話し始めた。
談話室にいた人間は俺達2人を抜いて12人。
若いOL風の3人組、バカップル一組、老夫婦一組、ペンションの従業員らしき男女一組、オーナー夫婦一組、ヒゲモジャ一人。
「なんかわけありってかんじだね」
耳元で雪が囁いた。
「そんな事入る前からわかってんだよ。まあ俺等は飯を食いに来ただけだから何があっても関係ない。泊まれないみたいだしな」
「浩二って事務所以外のところだと全然仕事したがらないよね」
「電車の運転手が電車のないところで運転できないのと同じだ」
「違うと思う」
奴等を見ると、どうやら終わったようだ。
「あの・・・」
話し始めたのはバカップルの男だ。
「ちょっと先ほど事件があったんです。9時10分頃だったでしょうか・・・」
9時10分・・・?
「ア!!」
俺は悲鳴を上げた。
「ど、どうしたんですか?」
俺は馬鹿男の言葉を聞く前に、談話室にあったテレビに飛びついた。
「ひ、101匹目のマルチーズが!!!」
すでに終わっていた。
「アアアアアアアアアアア!・・・ボフ!」
俺は首の後ろに強い衝撃を感じ、そのままソファに倒れこんだ。


「浩二」
俺は目を覚ました。どうやらさっきのソファの上だったようだ。
「くそったれ。誰かに襲われたようだ」
「ごめん、それ私」
雪が心底申し訳なさそうに言った。
「雪。テテテテテテメェ!!!」
「きゃっ!」
「ちょ、ちょっと浩二君!やめなさい!」
オーナーに止められた。
「とにかく、俺達は飯を食いたんだ。無ければ帰るからいい」
そう言って俺は出て行こうとした。
「待ってください!今外は非常に危険なんです!」
オーナーは必死だ。
「殺人犯がうろついてるんだろ?」
俺は最高のジョークを言ってやった。
「え?」
沈黙。
「ちょ、浩二何いってるの?もしかして事件のこと知ってるの?」
なんだか空気がおかしくなってきた。