「あっ!次は天之橋さんだ!!

 体育祭にはフォークダンスが付き物だ。
好きな相手と公然と手をつなぐ事が出来る重要な機会である。但しそれは運次第。
その運に願いを託す生徒も少なくもない。
しかし、このはばたき学園ではその願いは生徒だけのものではないようだ。

「ははは。君と踊りたかったからね。思わず飛び入りしてしまったよ」
「飛び入りって…それじゃあ、人数が合わなくなっちゃいますよ。(もう、やりたい放題なんだから!)」

理事長のフォークダンス参加の真意はわからないが、この女生徒の願いは叶った。
生徒ならまだしも理事長と踊ることが出来るなんてかなりの強運の持ち主なのかもしれない。


「大丈夫だよ。欠席した生徒の代わりに入れてもらったんだよ」

「ならいいんですけど…あ、この曲、オクラホマミキサーですよ」
 フォークダンスの曲が、2曲目に代わる。
「さあ、お手をどうぞ。お嬢様」
「は、はい」
 二人は手をつないで踊りだす。女生徒は興奮を隠し切れず、話し始めた。
目の前の人物に存在をアピールするかのように。

「知ってますか?この曲には歌詞がついてるんですよ」
「そうなのかい?」
「ええ、日本の歌手の人が勝手につけたものだと思うんですが、とっても素敵な歌詞なんです」
「どんな歌詞なんだい?」
「片想いの唄なんですよ………私の今の気持ちにぴったりかな」
「え?なんだい?音楽でよく聞こえなかった…」
「あ、いえ、なんでもありません!!
 と言った瞬間、女生徒はふらりとよろけた。結果、女生徒は天之橋の腕に抱きしめられた。
「大丈夫かい!?
 いくら呼べども女生徒は返事をしない。
周りの生徒も、ざわめき始めた。
「大変だ!保健室に!!
 天之橋は女生徒の身体を抱きかかえた。
そしてすぐさまフォークダンスの列から離れ、保健室へと向かった。


 夢じゃないウソじゃない
 目の前にその人が
 あんまりあなたがすきなので
 気がついてもあなたの腕の中


 って歌詞なんです、一鶴さん…

 女生徒は遠ざかるオクラホマミキサーの音楽に合わせて、心の中で口ずさんでいた。
 天之橋の腕の中で…