雪の鍵
一本の鍵を拾った。
白くて雪のような鍵だった。
どこの鍵だろう
僕はその鍵で開く扉を探してみた。
色々な扉にその鍵を差し込んでみる。
開かない…
僕が諦め始めた頃、その鍵がぼんやりと光った気がした。
僕はその鍵に導かれるように歩いた。
駅前のベンチの横を通り、
公園の噴水の前を通り、
金色の麦畑を通り、
街中が見渡せる丘を通り…
最後にたどり着いたのは深い森の中の大きな切り株の前だった。
僕は導かれるように切り株の前に立った。
さあ、扉を開けようよ
元気な女の子の声が聞こえてくる。
僕は切り株の前で、鍵を差し込む真似をした。
カチャリ、と音がした。
ふと気付くと、切り株は大きな木になっていた。
凄いよ■街が見える
女の子の声が上のほうから聞こえた。
僕は上を見上げた。
女の子が木の枝に座っていた。
僕と目が合うと元気な笑顔を見せた。
そして、幻のように消えた。
そこには大木もなかった。
いつの間にか鍵もなくなっていた。
夢だったのかな
けれど、夢でないことを僕は知っていた。
会いに行かなくちゃ
あの鍵の見せてくれた幻じゃない、本物の彼女に会いに。