『未来はきっと晴』
書いた暇人:変身動物ポン太
放課後、教室でダラダラしていると春原の奴が声をかけてきた。
「おい、岡崎」
「何だよ」
「あれ、見えてるか?」
「ああ、外はどしゃ降りだな……天気予報では晴れだったのにな」
「違うって、彼女の事だよ」
「知ってるって」
ずっと前から気付いてたさ。
あいつが、教室をずっと覗いている事なんて。
「……相手してやらなくて良いのかよ」
「……良い訳ないな」
こうやって無視して、そのまま放置すると、翌日が辛いのは判ってる。
どのくらい辛いかと言うと……
「明日は面倒くさくなるな」
……多分、ずっとついてくる。
ずっとずっと後をつけてくる。
でも、いざ相手しようとすると逃げられる。
『岡崎さんはデリカシーが無いから嫌いですっ』とか言って、逃げられる。
……非常に面倒くさい。
「……僕の目にはただのバカップルにしか見えないんですけどっ」
「目の錯覚だ」
……さて、どうするか……
「だったら相手してやりゃ良いじゃん。ボクはそう思うよ」
「……めんどい」
「……おいおい」
いや、面倒くさいと言うのは嘘だ。
実際は―――――――――――――――――ただ、こっ恥ずかしいだけだ。
しかし、そんな事を言うとあいつはこう言うだろう。
『もう、岡崎さんは女心を解してくれませんっ』
俺は黙って外を見る。
そこはどしゃ降りの雨。
天気予報でも言ってなかったどしゃ降りの雨。
…….ああ、想像できる。
あいつが今、何を期待してこの教室を覗きこんでいるのかと言う事が……
そんな事を思いながら、俺はゆっくりと席から立ち上がる。
「お、ついに行く気になったのか……」
「いや、帰るだけだけど」
「帰るのか……そう言えば岡崎、最近僕の部屋に来ないよね」
「そうだな」
まあ、今は行かなくても退屈しないしな。
え? 何に退屈しないって?
……そうだな。
少なくとも、からかう相手には退屈しなくなった、な。
「退屈しない相手って.……….くう、良いなあ彼女って……」
「そんなに言うならお前も……ふっ」
「途中で台詞切らないで貰えませんかねっ! てか最後の『ふっ』って何だよ!?」
俺は泣きそうになってる春原を無視して歩き出す。
扉に近づくと……教室を覗きこんでいたあいつは走っていった。
行き先は……恐らく下駄箱、だな。
「確か、非常階段を使えば……早く着けそうだな」
・・・・・・・・・・・・・
「はあはあ……って、えっ!?」
「よう」
息を切らしながら走ってきたそいつと、下駄箱で鉢合わせする。
……む、先回りしたつもりだったが、予想以上にこいつの足は早かったな。
「ぐ、偶然ですね岡崎さん。こ、こんな所で会うなんてっ」
「……毎日会っとるだろ」
「そ、それでも偶然ですっ」
滅茶苦茶動揺しているのを必死に隠そうとしているのを見て、可愛いと思う俺は彼女バカなのだろうか?
……そんな事わ思いつつ、そいつの次の一言を聞いた。
「そ、それよりも外は大雨ですっ」
「ああ、そうだな」
「そうですねっ」
「そうだな」
「……」
「……」
……ここまで言って俺とそいつの会話は途絶えた。
そいつは俺の顔をじっと見詰めると……急に両手を振り回して語り出した。
「もうっ、岡崎さんは女心を理解してま」
「ほれ」
両手をぶんぶんとふって、如何にもわたしは怒ってます状態のそいつの面前に、俺は……1本の傘を差し出してやった。
「……」
「……」
一瞬、呆然とした顔……直後、そいつは顔を真っ赤にして言った。
「そ、それはどう言う意味ですかっ!?」
「相合傘……というらしいぞ」
そう、こいつ―――――伊吹風子は最初からこれを願っていたんだろう。
突然の大雨
教室を覗いてじっと監視
下駄箱での不自然な会話
何と言うか……微妙に分かり易い奴だった。
春原辺りに言わせれば、これだけでこいつの思考が読める俺も変だというかもしれないが。
古河に言わせたら『ホントに仲が良いんですねっ』と言うかもしれない。
「そ、それは岡崎さんの傘に風子が入れという事ですかっ」
「そうだな」
「そしてそのまま仲良く帰宅という事ですかっ」
「……そうなるな」
「そんなの……恥ずかしいですっ、ご近所に噂になってしまいます、スキャンダルですっ」
目の前で悶えている風子……お前、自分で願っておいてそれは無いだろ。
ホント、こいつは素直じゃない……まあ、俺もだが。
で、『ワイドショーですっ、お嫁にもう行けませんっ』と一通り悶えた後、何とか立ち直ったのか風子は俺に向き直って言った。
「わ、判りました。岡崎さんがどうしてもって言うのなら、風子はその傘に入ってあげます」
「……ああ」
「ちょ、ちょうど、風子は傘を忘れてきた所でしたし、何だかとってもそう言う気分ですから、今日は特別ですっ」
「……そうか」
「な、何でそんなにニヤニヤしてるんですか!? 岡崎さんはデリカシーがありませんっ。ぷち最悪ですっ」
ぷりぷりしている風子に
「まあ、そんなに怒るなよ。これから商店街で何か奢ってやるからさ」
「え!? ホントですかっ……判りました。今日は特別に許してあげます」
「そうか」
「ええ、明日のベッタリ期間は午前中だけにしてあげます」
「何じゃそりゃっ!」
……こいつ、教室で無視したのをやはり根に持ってるな……
あと、そのベッタリ期間はきっと一日中に延長されるだろう。
何故なら……今日は雨の中、一つの傘に二人が入って歩くんだからな――――――――――商店街を。
きっとこいつは目茶目茶恥ずかしがりながら、『プチ最悪』を連呼するだろう。
それでも……楽しいだろうけどな。
「さあ、ぐずぐずしてないで早く行きましょうっ!」
「ああ」
風子と一つの傘で歩き出す。
俺達の行く先は大雨
でも、未来はきっと晴
そう、思えるような放課後だった―――――――――――――――
「で、何奢って欲しいんだ?」
「風子は大人なのでマックでストロベリーシェイク飲みたいですっ」
「いやそれ、思いっきり子供だから」
「岡崎さんは、なかなか吸えないあのシェイクの奥ゆかさが理解できないんです」
「あれって、確か同じ速度で吸えるようになってるんだよな。そう、母親のぼにゅ「わ――――!??」」
END