「ああ、おれもうダメだよ………」
ステージから下がった火原は彼らしくも無く意気消沈し、誰にともなく呟いた。
意気消沈という単語を知らなくとも意気消沈は出来るものなのだなと、
志水はぼんやり考えた。
「おれはさ、このトランペットの魅力を存分に発揮出来る曲だと思ってこれを選んだんだよ。でも、おれの力が足りなかったって事だよな……」
彼の曲を聴いていた観客は暫くすると次々と席を立ったのだ。
「柚木の時なんて、あいつの背中に羽が見えたぐらいだったのにさ……花火も上がってたし……曲なんだっけ?何かが来て笛を吹くとかなんとか」
きっとその羽は黒かろう。
志水は無言であった。なぜなら火原は別に自分に話しかけている訳では無いのだから。
しかし志水は密かに彼こそが今回の最大のライバルであると思っている。
観客が席を立ったのは彼の演奏に失望したからでは無い。
むしろ彼の演奏が打ったのだ。彼等の………腹を。
今回の火原の選曲。それは。
「ラッパのマークの正○丸」
ぱっぱらぱっぱぱっぱらぱっぱぱ〜〜らぱらぱ♪
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