まえがき


これは「トランペットの魔力」と同じく うらBBSにニシオギさんが書き込んでくれたことから始まったお話です

私はこれを読んで爆裂エモーショナルに感激したため続きをせっせと作りまして
それを見た真昼の星のいっしー石井さんがまたまた炸裂ボンバーに感激して(←ていうか感激してくださいいっしーさん)更に続きを書き込んでくれまして そんなふうにまたしても素敵に繋がったので懲りずにこれもここに残しておくことにしました

今回もギャグです
特に火原くんがとんでもないことになってます(香穂子もとんでもないことになってます)
それでも大丈夫とおっしゃる方 よろしく読んでやってくださいね





出会いは突然に(byニシオギ)


ぷっぷくぷ〜〜♪

これ以上も無いぐらいな陽気なトランペットの音に香穂子がなんとは無しに近づいて行くと
その気配に気づいたと思われるその彼がくるりと振り向き、開口一番こう言った
「トランペットって最高だよね!!」
……自分は明らかにバイオリン(間違っても”ヴァイオリン”などとは言ってやらない)を抱えているのだが。

「おれ、火原。君は?」
「え?日野……ですけど」
結構あるイミ有名人だと思うんだけどなぁと思いながら香穂子が答えると
「そっかー。男前な名字だよな」

何ですかその感想は

しかし確かこの火原……先輩もセレクションに出る人では無かったろうか
しかもバリバリな音楽科だった筈。

「あのぅ、私普通科ですけど……」
普通科の日野と言えば流石に分かるだろうこの脳天気な男も
「へーそうなんだ」

そ、それだけ?

「あ、それよりもさー。火原と日野って何となく響きが似てるよな」

いえ、「ひ」しか合っていませんが

「じゃあこれから宜しくな!野原さん!!」

混ざってるし!!

しかし満面の笑みで差し出された手と
香穂子は思わず握手してしまったのだった





アイムシーサー!(by真木)


ぴーかーん☆ と音がしそうなくらいいい天気のある日のこと
ていうかこの世界ではぴーかんじゃない日はほとんどない
むしろ皆無なので毎日ぴーかんなのであるが
そんな素敵な空の下 火原和樹はバイオリン(彼女はなぜか「バ」を必要以上に強調する)練習中の香穂子にたったかたったったー☆と近寄っていった

「野原ちゃ〜ん! 今日も元気ハツラツぅ〜?」

オフコース! と昔懐かしい(らしい)バンドの名前を言いたいところだが
香穂子はそれどころではなかった

てゆかなぜこの男(注:先輩です)はいまだに私の名前を間違える!?

「センパイ。わたし、れんしゅうちゅうです」

セレクションが近いからこの男(注:学年1コ上)と遊んでる暇なんてこれっぽっちも
そう ミジンコ いや 原子ほどもないのだと香穂子は顔で威嚇した

ちなみに香穂子は黙って澄ましていると大変な美人だが
威嚇中の彼女は沖縄のシーサーを思わせるほどの迫力である

そしてその顔に唯一ひるまないのがこの火原っち
あの柚木梓馬でさえ 「ひっ」と小さく呻いたほどの威嚇ぶり
沖縄県に表彰されてもいいくらいのシーサーぶり 熱いパッションの日野香穂子ちゃん

「ねぇねぇ、お願いがあるんだよね」
「……なんですか」

香穂子は諦めてバイオリンを顎から外した
そして適当にあしらっておこうと死んだ魚のような目で相手を見つめた
やる気ゼロを猛烈アピール 早くどっかへ行っておくれ!

「おれの彼女になってv」

香穂子はシーサーの元締めのような顔に変貌した

「おれと野原ちゃんってけっこう合ってると思うんだよね!
まあさ、こうやっていつも付き合ってくれてるし、わざわざ言わなくてもいいことかもしんないけどさ、やっぱ口に出して言いたいじゃん? 男としてはさ、うやむやなのはきみに失礼かなってね!」

……付き合いを申し込む前に大切なことをお忘れではございやせんか旦那……

シーサー元締めは小さく呻いた
だけどもちろん火原には聞こえていない
香穂子は怒りに震える喉をなんとかおさめて 能天気な目の前のヤツにわかるような言葉を発した

「センパイ、わたしの名前は日野です

どこの世界に告白する相手の名前を間違えるバカがいるんだ

「あ、そうだっけ? じゃあヒノちゃん。おれと付き合って!」

ここにいた ていうかじゃあってなんだ

怒りの鉄拳が火を噴くぜ お兄さん方気を付けな!
とりゃああああああ!

「ね、いいよね?(にぱv)

と……とりゃ…

「ヒハラちゃん大好きv」

それはてめえの名前だろ!

正義の鉄拳は結局ヒハラっちの腹に命中したのであった
めでたしめでたしv





男のロマン(byいっしー石井)


香穂子の鉄拳をくらって気絶した火原は、10分後に目を覚ました。

「うわー、いいパンチだったねえ、野原ちゃん。
見て見て、お腹に拳のあとがくっきりだよ〜」

ぺろりと自分の腹をめくってみせる火原。

「日野です。腹はしまってください先輩」

練習を再開していた香穂子は、とりつくシマもない様子だが、
そんなことを気にする火原ではなかった。

「じゃ、オッケーの返事ももらったことだし、
今度の土曜日デートしようよ、野原ちゃん」

日野です。返事をしたおぼえはありません。よってデートもありません」

「ええ〜?さっきのパンチはオッケーてことでしょう?」

普通はノーの返事だと思うところであろうが。
香穂子のこめかみがぴくぴくと動いたが、やはりそんなことは気にしない火原だった。

「駅前にさ、おいしいケーキ屋さんがあるんだって。食べに行こうよ」

「甘いものは嫌いです」

「えええっ?甘いものが嫌いな女の子なんているの?日原ちゃん!!」

日野です。いくらでもいます」

「そんなあ、ケーキを彼女におごるのは男のロマンなんだよ?
ケーキを食べて目を輝かす女の子ってかわいいじゃない?
おれ、それを見るのが好きなのに」

ごちゃごちゃとロマンについて語り出す火原に、
シーサー香穂子が再びキレた。

「いいかげんにしてください!私は毎日セレクションの準備で忙しいんです。
ただでさえ初心者なのに、音楽科の先輩たちと違って、日中の授業で練習する
なんてこともできないんですよ!?貴重な土曜日をデートなんかで潰せません!」

ものすごい見幕の香穂子に、さすがに圧倒された火原は肩を落としてうなだれた。

「……ごめんね、日野原ちゃん、兄貴や柚木にもよく言われるんだ、おれ。
もっと相手の立場になってものを言えって。
おれ、楽しいことが好きで、相手にも楽しくなってもらいたいから、
いろいろかまったりしちゃうんだけど…、
そういうことばっかりしてられない人だっているんだよね。ホントにごめん…」

おイタを叱られた子犬のような風情に、
さすがのシーサー香穂子も心が少し痛んだ。

だから、日野です…。
わかりました、先輩。土曜のお昼だけなら、つきあいます」

「え、本当!?」

「そのかわり、ケーキは勘弁してください」

「うん、いいよ!なんでも好きなものおごるから、なんでも言って!」

「じゃあ吉○屋の牛丼、大盛り汁だく、生卵つきで」

「えええ?ちょっといくらなんでもそれはないでしょ、日野ちゃん!」

「野原です!!」



「「………………あれ???」」


こんなふたりに、週末デートは無事に訪れるのか。





もんじゃdeもんじゃ(byニシオギ)


土曜日、香穂子は律儀にも火原よりも先に交差点に来てしまった
時間前集合なこの体育会系の体が憎い。

「わー。待たしてごめんよ日野ちゃん!」
「いいえ……」

すっかりツッコむつもりで拳を握りしめたのに、
こんな時に限ってこの男は。

「おれ考えたんだけどさー。
 やっぱ初デートに吉野○の牛丼、大盛り汁だく、生卵つきはムードに欠けると思うんだよ」
 
「ムードなどひとかけらも無くて結構です」

つーか何故ここまで詳細に覚えてる。

「おれもケーキを君におごるのは諦めるからさ。君も牛丼は諦めて間を取ろうよ!」

…………そりゃまぁ確かにそれに頷いたけど

何で間が『もんじゃ』なんだよ

「やっぱもんじゃは醤油だよねー♪」
「ちょ、ちょっと先輩!もんじゃと言えばソースでしょう!」
「え、醤油だよ醤油」

どぼどぼどぼ

ひ、人の意見も聞かずにこの男はぁあぁっ!!!

「おれさー。もんじゃって好きなんだよねー♪」

ええ、ええ、好き勝手やって好きなよーに食べてりゃ美味しいでしょうさ!!
そもそも律儀に来てやった事自体が間違えだったっつーの!!
もう帰る!帰るともさ!!

「もうか………」
「りまっか?」

『か』の形に開いた口につっこまれたもんじゃヘラ
そのしてやったりな顔はなんだと言うのよ。

なのになのに

「ぼちぼちでんな……」

そう反応してしまう己が憎い香穂子であった。





おれは陽気な火原っち(by真木)


もう帰る を言いそびれた香穂子は次にゲームセンターへと連行されてしまった
ていうか そもそも昼だけという約束でこうして仕方なく来た彼女だったのに
すっかり陽気な火原っちのペースに巻き込まれまくりである
恐るべし天然パワー
その穢れなき瞳が憎いあんちくしょう

「やっぱさ、ここでいっちょオトコを見せないといけないでしょう!」
「別に見たくありませんが」
「またまた〜♪」

冷たいセリフをものともせず 火原は腕まくりをする真似をしてやる気まんまん
そう 今日は休日扱いの日なので おふぃさるでは半袖を着ていることになっているのだ
むき出しの腕が若さをアピール その腕に毛は一切無い
なぜかってそれは彼がネオロマキャラだから

「日野ちゃん、どれが欲しい? エンリョなく言ってよね」

きらきらした眼差しでガラスの向こうにあるラヴリーなぬいぐるみたちを眺める火原
香穂子は自分よりよっぽどこの人が持ったほうが絵になるだろうと思った
それに悪いがぬいぐるみにはまったくまっっったく 興味が無い
むしろ欲しいのはローマ字でYAZ○WAと書かれたスポーツタオル
または年末のプ○イド男祭りのチケットあたりだとシーサー顔で狂喜乱舞だ

しかしそんなことはまったく気づかない火原っち
リサーチ不足もはなはだしい彼はマイドリーム一直線に男のロマンを追及し続けた

「あ! ねぇ、これなんかいいんじゃない? すっげかわいいし。
ちょうど取りやすそうだしさ、よし、これにしよう! いい?」

火原は小さな犬のぬいぐるみを指差し 香穂子の返事を聞くのを待たずにポケットから小銭を出すとちゃりちゃりーんと入れて捕獲作戦は実行に移された


「あれ? おっかしいなあ…」

一見取れやすそうなターゲットは掴むとつるりっとアームから逃げていく
そのたびに火原のポッケの中味はさみしくなっていった

「もういいですよ。行きましょう」

香穂子は思っていた
本当ならこんなとこでこんなことをしている場合ではないのだ
あのバイオリンをヴァイオリンといいやがるクソ生意気な音楽科のエースに今度こそ勝ちたい
勝利の美酒に酔いまくりたい

「センパイ、帰りますよ?」

火原の必死さに敬意を表して 優しく半袖の先をひっぱった

「いやだ。もうちょっとだから、お願い、待って?」

待って? の声がちょっと可愛くて香穂子は眩暈がしたが
ほだされてる場合じゃない オレは必死だ 勝て 勝つんだジョー
ごっつい昔のボクシング漫画のワンシーンを思い浮かべながら
香穂子はもう一度説得を試みた

「センパイ! もういいから、今度でいいから帰りましょうってば!

ぐいっ
今度は強めにひっぱった

うわわわーっ

バランスをとろうとして火原は慌てて手をつき ついたところは「1」と書かれたボタンの上
アームはぐいーーーんと目的地よりもめっちゃ遠いところへ旅立ってしまった

「もう! 日野ちゃんのせいだよ!」

「なんで怒られなあかんねん。
だから早よ帰ろとさっきからゆうとるやないか!」


なぜ人は怒ると関西弁くさくなるのだろう

もちろん当の香穂子はそんなことを考える余裕もなく
火原っちの前ではお馴染みになったシーサー顔で
もう一個の「2」ボタンをバン!と押してズンズンとゲームセンターを後にした


(さらばセンパイ。もー二度と付き合うもんかってんだこんちきしょーめ)

手鼻とタンをペッとやりたいくらいの勢いで漢らしく歩いていると
後ろから呼びかける声がした

…誰だかはわかってる だけど振り向いてなんかやらない
私は目的を達成することのみに生きるヴァイオレンスなサバイバーなのさ

わけわからないことを考えながら(しかも「ヴァ」と巻き舌)
香穂子はズンズン進み続けた

「おーい、日〜野〜ちゃ〜〜〜ん!」

無視無視

「おーーーい、日〜野〜香〜穂〜子〜さ〜〜〜ん!」

フルネームで呼ぶな

「おーーーーーい、香〜穂〜子〜ちゃ〜〜〜んv」

さりげなく下の名前で呼ぶな!
あ そういえばやっと名前を覚えてくれたんだな…
仕方ない 振り向いてやるか

「…………!!!」

視線の先にはぬいぐるみのクマがいた
しかも超絶ぶさいく

香穂子が何も言えないでいると クマの脇から火原の顔がぴょこっと出てきた
クマと比べるとなんて可愛い顔なんだ センパイのくせに

「日野ちゃんってスゴイよね! きみのさっきのボタンさばきはスゴかったよ!
ほんとはこれが欲しかったんだね。言ってくれればこれを狙ったのにな〜。
きみって意外におくゆかしいんだね!」

意外に が余計ですよ
て ボタンさばきって?

「きみのさっきのひと押し、キいたよ〜。きみが行っちゃった後、
これが転がり落ちてきたときはおれ、感激したよ。天才だね〜日野ちゃん。
おれ、今日すっげ勉強になったよ。人生毎日勉強だよな!」

アナタの人生もっと勉強することがあるでしょうに

だけど確かに彼は毎日何かに向かって進んでいるのだろう
とりあえず名前は覚えてもらえたようだし 今の彼はいい顔をしている

自分にしては珍しくほのぼのとした心地だと 香穂子は思った
今の気分のまま練習すればまた違った解釈で弾けるかもしれない

「じゃ、センパイ、帰りま…」
「次どこ行こっかv」

いい加減にしてください!

星奏学院へ向かう通学路の中心で香穂子の鉄拳が飛んだとか飛ばなかったとか





二人のロマンス(byいっしー石井)


結局土曜は、火原に夕飯までつきあわされた香穂子だった。
ちなみに夕飯は、またもや間をとって、
びっくりド○キーのチーズハンバーグ250gだった。
まあそれはどうでもいいことだが。

とにかくそんな悪意がないだけに始末に負えない妨害を火原から受けつつ、
なんとかセレクションまでに曲を仕上げた香穂子の結果は、二位だった。
そして優勝は

「香穂子ちゃん、おつかれさま!」

火原であった。
今回のセレクションのテーマは、火原の音楽性によく合ったものであり、
彼の演奏も以前より艶が増したようで、魅力に溢れていた。
よって、悔しくはあるものの、結果は当然と思ったし、文句もない。
ないが、やはり先ほど負けたばかりの相手を目の前にすると、
表情も元締めを通り越して地獄の番犬シーサーとなる香穂子なのである。

「うわ!どうしたの?すごい顔だよ。具合でも悪いの?」

悪いのは機嫌だ。

「大丈夫です。放っておいて下さい」
「そんなのダメだよ!公園で休んで行こうか。ね?そうしよう?」

この数日で、火原に逆らっても自分が疲れるだけだと悟った香穂子は
おとなしく公園についていった。
公園につくと火原は香穂子をベンチに座らせ、自動販売機で買って来た
缶ジュースを手渡した。

「少し顔色よくなってきたみたいだね。安心したよ〜」
「………」
「香穂子ちゃん、今日の演奏すっごくよかったよ。
さすが毎日あれだけ練習してるだけのことはあるよね」

その言葉を聞いた瞬間、香穂子は持っていた缶を
ガンと大きな音を立ててベンチに置いた。

「ど、どうしたの?」
「……厭味ですか…」
「え?」
「あんなに練習してたくせに、所詮二位どまりだろってバカにしてるんですか?」
「か、香穂…」
「そーですよね〜、先輩は遊んでばっかりみたいだったくせに、
さらっと優勝できちゃったんですもんね〜?さすがは音楽科ですよね〜?」
「ち、ちがうよ、おれ、そんなつもりじゃ……」
「…………」

そこで香穂子がそっぽを向いて黙りこくってしまったので、
火原は必死になって場を取り繕おうとした。

「えっと…、えっと、あのね!
香穂子ちゃんの演奏は、なんていうかこう、ズドーンときて胃がシクシクするっていうか、
あ!でも別にそれがイヤだとかいうんじゃなくて、
なんかムズムズして、今すぐにでもワーッて走ってきたくなるっていうか、
そんなのおれにはできないことだから、すごいと思うし尊敬してるし…」

「ぷっ、あははははははは!!!!」

しかし、そんな火原を遮るように、いきなり香穂子が吹き出した。

「か、香穂子ちゃん!?」
「はー、おかしー。
先輩の話って、本当に擬音ばっかりですね。わけわかんないですよ!」
「わけわかんないって……」

火原は密かに自らのボキャブラリーの貧困さにコンプレックスを
持っているので、軽いショックを受けた。

「それに私と先輩ってホント、ソリが合わないんですよね。
最初は、人の名前を全然覚えないくせにベタベタつきまとってくるわ、
会話は噛み合ないし、趣味は合わないし、音楽傾向も全然違うし、もんじゃは醤油だし、いっぺん殺したろうかコノヤロウ!とまで思ってたんですけどね」

なおも続く香穂子の攻撃に、火原は体が地面に半分埋まったような心境になった。

「でもね、先輩が私の演奏を好きだと思ってくれてるってことは
よくわかるんです」

しかしそこで香穂子が、珍しく、にっこりと微笑みかけてきたので、
単純な火原は、先ほどまでのショックをすぐに忘れて、
ココロの地面から這い上がった。

「う、うん!そうなんだよ、おれ香穂子ちゃんの音楽が大好きなんだ!」

「それに先輩って強引で考えなしなようでいて、さっきここまで来たときみたいに
意外と人のことを気にかけてくれる人だってこともわかってきたし」
「や、やだなあ、そんなことないけど…、
あ、じゃあさっきの不機嫌は演技だったの?やだなあ、香穂子ちゃん」
「あれは半分本気です。だって先輩があまりにノーテンキなんですもん」
「ははは…」

さっきから上げては下げる香穂子の舌鋒に、もう笑うしかない火原である。

「……でも、今日の演奏がよかったっていうのは本当なんだよ。
香穂子ちゃん、ひょっとして練習の時と少し解釈を変えた?」

「え?」

「さっき言ったみたいに、こないだまではムズムズしてシクシクしてたんだけど、
今日のはワクワクとドキドキが混ざって、聴きながら、もうどうしよう!って
すごく楽しくなってきちゃって…
あ、ごめん、また擬音ばっかりになっちゃったね」

苦笑した火原だが、香穂子は驚いたような視線を向けてくる。

「香穂子ちゃん?また怒らせちゃった?」

「先輩には適わないなあ…」

「え?え?」
「今日の私の演奏、本当にワクワクドキドキしてくれました?」
「うん」
「楽しいなあって思ってくれました?」
「うん、このままずっと聴いていたいって思った」

素直な火原の返事にため息をついた香穂子は、あきらめたように白状した。

「先輩の言う通りです。
演奏してる時の気分っていうか、火原先輩だったら、ここはどんな風に
吹くのかなあって思いながら、ほんのちょっぴり表現を変えてみたんです」
「香穂子ちゃん、それ、本当に?」
「本当ですよ。火原先輩のような、青空みたいに突き抜けてて、
思わず飛び跳ねたくなる感じの演奏をしてみたくなって」

だけど解釈を見直すほどの時間がなかったので、
人にわかるほど変えられるとは思わなかったんだけどなあと
付け加えた香穂子に火原は、

「そうなんだ。でもおれにはわかったよ。
やっぱり香穂子ちゃんのことが好きだからかな。
それにおれの演奏のことをそんな風に思っててくれたってのも嬉しいな」

と直球なことを言い、香穂子の頬を赤らませた。
そして香穂子は小さな声で、私もそうなのかなとつぶやいた。

「え、香穂子ちゃん、それって…」

「ち、違いますよ?誤解しないでください!?
だってほら、今回のテーマって、先輩の得意なものだったし、
ちょっと参考にさせてもらおうかなって思って」
「うん、うん」
「このあいだの土曜日も、困ったけどけっこう楽しかったし…
そのときに、ちょっと変えてみようかなって思いついたんですけど」
「そう、それで?」
「だから別に好きとか嫌いとかいうわけではなくてですね!
……その、つまり、そんなことをしようと思う程度には、
私も火原先輩の演奏が気に入ってるってことなんです」

香穂子は真っ赤になりながら、早口でまくしたてた。

「うん、嬉しいよ、香穂子ちゃん」

しかしさらに火原を喜ばせるだけの結果となり、悔しくなってきて、
香穂子は心の中で火原と自らを罵った。

そうしてるうちに落ち着いて来て、ふとあることを思いついた。

「先輩。このあいだ言ってた駅前通りの喫茶店のことなんですけど、
その店にコーヒーゼリーはあるんですか?」

「え?なに?」

鼻の下を伸ばし切っていた火原は、急な話題転換についていけなかった。

「コ・オ・ヒ・イ・ゼ・リ・イ です。
先輩おすすめの喫茶店のメニューにはあるのかなって」
「あ、あると思う…、うん、あったよ」
「そう、良かった。私ケーキはダメだけど、コーヒーゼリーなら食べられるんです。
だから今日の先輩の優勝を祝って、私がそのお店でおごってあげますよ」
「えっ、そんなぁ、だってそれはおれがしたいことなんだから」

香穂子は、火原の顔に手のひらを向けてストップをかけた。

「今日は先輩のお祝いだから却下です。おとなしくおごられてください」

香穂子は荷物を持って、さ、行きましょう、と歩き出した。
そして数歩進んだところで、呆然としたまま動かない火原を振り返り、
いたずらっぽい表情を向けて、こう言った。

「それに、いい女にお茶をおごってもらうっていうのも、男のロマンに入りません?」


「……うん、そうだね、それもすっごくいいね!」

火原はゆっくりと破顔して、弾んだ足取りで香穂子の後を追いかけて行った。


この時すでに、自分達がヴァイオリンロマンスへの階段を
一歩上がっていたことに二人が気づくのは、もう少し先の話である。

おわり。










あとがき


心の底からありがとうありがとう
言ってみるもんだと思いました

このリレーが始まる前 うらBBSで私はニシオギにこう言いました

「そんな火原×香穂子を書いてくれv」

これだけだと意味がわかりませんね
こう言う前にニシオギがこう言ってたのです

>香穂子さんが火原っちにはペース乱されまくりだと
>それはワタクシの好みだなぁと思いました。ぷっぷくぷ〜〜♪

友人の好みを知りたいあまりにわたくしは書いてくれとお願いしました
ええ けっして自分が読みたいためだけに言ったわけじゃありません
確かに火原っちはコルダキャラ心のランキング2位ですが
そんな利己的なわたくしではございません
ああ なんて友だち思いのわ・た・しv

na-ntyatte(←素直な心でお読みください)

くだらないことでスペースを埋めるのが大好きです
お付き合いありがとうありがとう


さて そんなわけでニシオギが書いてくれたことから始まりまして
非常に付き合いのいいいっしーさんも巻き込んで楽しくリレー創作をさせてもらいました
ここから下は恒例のうれしがりなわたくしの解説なぞ


ニシオギさん作「出会いは突然に」「もんじゃdeもんじゃ」

「出会いは突然に」
ここから全ては始まったわけです
香穂子はなんとはなしに近づいただけなのにこれが大恋愛に繋がるとは…!!

あ 違いますか? 少なくとも火原っちは思ってますよ
双方の思惑が全然違うのも人生のお約束です
むしろ一致するほうが奇跡です だって人はみんな違うから
みんな違ってみんない(パクる寸前に略 元ネタわからない人ごめんなさい)

名前を間違えて覚える火原っていう設定はこの後みんなの創作に受け継がれるわけですが
いやあ ここまでこの設定で遊べるとはねー
とにかくこのリレーの基本はここでできあがったわけですよ
ニシオギくん 書いて良かったねv ねv(シーサー顔で)

2度目の創作はもんじゃデート
「もんじゃ」のアビリティを持っているニシオギだからこそのお話です
(これを持っているともんじゃ屋でもれなくおいしいもんじゃが食べられる仕組み)

私は個人的に

>どぼどぼどぼ

これが異様に好きです 擬音が大好きです まるきり子どもです
ここだけ何回も読んでる(ていうか見てる)ってなんだろう……

それにしても 同じくもんじゃアビリティを持つわたくしとしては
この火原のような醤油の入れ方をしたらもの凄いモンができると思うのですが
香穂子さんは大丈夫だったのでしょうか?

あと この話は最初と最後に「憎い」繋がりがあって
こういうテクニックに痺れましたね まったくにしてわたくし好みです
火原の前では憎いこの体…(著しく誤解を招く表現)

んでね やっぱ最後の萌えポインツがガッツでナイスですね
もんじゃヘラをつっこんだ際の彼の顔ったら わたくしが解説できる範囲ではありません
これぞまさしく火原!
彼ったらこんな強力な武器を惜しげもなく晒しおってからに!

もう全力で香穂子を落としにかかっておりますよ
それが天然か策略の元にかはわかりませんが
(普通に考えたら天然ですが黒好きとしては可能性をさぐりたい)
とにかく彼は香穂子大好きです
好きなら全力 その姿勢が私を悶えさせます

全力は幸せへの近道です(でも途中に落とし穴とかある でもきっと彼なら笑いながら這い上がる ていうことは一旦は落ちる それが私の火原っち)
それをこんな若いうちから発揮してる火原っち
あなたの将来が楽しみでなりませんよ

…どうして火原は二次元なのかな…
(↑素で静かに壊れた3○歳 いいのみんなほっといてよ…ほんとにほっとかれると泣くけど)

だけどよく考えたらおふぃさるの彼はトランペットの練習する時
飽きたらすぐ違う曲吹いちゃうって言ってたから 今私が書いたこの文章はまったくにして私の脳内火原っちな様相を呈してきましたよ…


いっしー石井さん作「男のロマン」「二人のロマンス」

またしてもいっしーさんが素敵なものを書いてくれました

>ぺろりと自分の腹をめくってみせる火原。

うううっ ダメ…好き…
こんなことされたら香穂子のように冷静にたしなめるなんてできないよ

「うひゃあ! なななななにしてんですか!」

傍で見てそれとわかるほど大慌てです
だからこそ香穂子のこの冷静さに羨望の眼差しをおくります

この後にも延々と続く冷静な名前つっこみ
むしろ香穂子だ 香穂子に惚れそうだ

そして最後に至って効果的オチが来た…!!
思わずパソ前で拍手してしまいました

お約束といえばお約束
しかし実際にうまくそこへ持っていくのは難しいものです
それを綺麗にキメてくるとは恐れ入りました まさしく拍手喝采ぶらぼーものです


で トリですね
いっしーさんにこのリレー創作のトリをお任せして社長椅子にふんぞり返って葉巻を燻らせていた私は(一部事実と異なる部分がありますご了承ください)
このシメとなる話を読んで「いい話じゃないか…」と思わずがばちょ!とパソにかぶりつきました

二人がどんなふうに心を通わせていったかがちゃんと表現されてるばかりでなく
ニシオギと私が勝手に書きまくった設定をちゃんとまとめてくれて
なおかつコルダではお約束のヴァイオリンロマンスへの道まで指し示すこの技ときたら!

火原って愛しいですね
またしてもおふぃさるから遠い所に持ってきてしまったかもしれないけど
元ネタがあってこその二次創作ですよ
三人それぞれの解釈がそれぞれ愛おしいです
いっしーさんの書く火原くんがまたねぇ

>「うわ!どうしたの?すごい顔だよ。具合でも悪いの?」

機嫌が悪い香穂子のシーサー顔に対して普通にすごい顔だよと言い放つ彼
大物の予感にもっとドキドキv(←久遠さんの盤上遊戯CMのしゃべり方でよろしく)

香穂子の勢いに押されヘコまされながらもすぐに立ち直る彼
先輩で男のロマンなんてものを抱えているにもかかわらず
後輩にここまで言われてもプライドを振りかざすことなく彼女の全てを包み込んでくれているところがかなりのレベルのいい男ぶりです
歯を食いしばってがんばっちゃいそうなタイプの彼女を
その細やかな気づかいで労ってあげてほしいものです
そして時々(頻繁に?)ズレたことをして香穂子に怒られてください

二人とも これからもっと恋愛細胞が活発化していくのでしょう
是非ともびっくりドン○ーやもんじゃ屋さんでロマンスを繰り広げてもらいたいものです
びっくり○ンキーは箸で食べられて気が楽ですしね
もんじゃ屋と同じく「あーん」とかできるよ! 良かったね!






やーもうとっても楽しかったです
これを書くことによって火原も香穂子ももっともっと好きになりました
ていうか わたくしの中の彼らが出来上がってしまいました

特に香穂子にますます惚れた私です
ニシオギといっしーさんが書いてくれた香穂子も大変わたくし好みでした

それをうけて私が書いた香穂子はまるまる私の考える理想の女性です
みてくれは最高なんだけどある一瞬にそれを全て覆すほどの衝撃を与えるキャラ
それが私の日野香穂子です ああ 愛しとるがな…

そしてそんな香穂子を思いついたのはきっと
いっしーさんがご自分のサイトに載せている香穂子のべっぴんぶりに感化されたからです
そしてそんな彼女が人様に解釈を聴かせるときはあんな表情になるところが…
詳しくは真昼の星でお確かめくださいねv


それではここまで読んでくれた方 ありがとうありがとう
毎回長〜いあとがきでごめんね
辛抱強いお嬢さんたちに拍手拍手

そしてニシオギくん いっしーさん ほんとにほんとにありがとう
あなたたちの愉快ぶりは私の幸せへの近道ですよv
ええ 私だけの幸福を追求するのがこのサイトです


…na-ntyatte




アンジェ以外も万歳