私は常に完璧だ 1
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ジュリアスは完璧な首座の守護聖だ 聖地の朝はジュリアスと共にやってくる 夜明けと同時に出仕するためか 彼の背後からは後光が射し その姿を見た者に ひれ伏さずにはいられないほどの衝撃を与えるという 豪奢な金色の髪の毛は背中で波打ち 非のうちどころの無い これまた完璧な美貌に華を添えていて まるで神話に出てくる神そのものだと 世間でもっぱらの評判だった しかしもったいなくも その美しいジュリアスが笑むことはほとんどなく その口元は 常に真一文字にきりりと結ばれ 形の良い薄めの唇が開けば 必ず出る言葉はこれだった 「女王陛下」 彼は女王陛下の為に そして女王陛下が治めるこの宇宙の為に生きていた それも仕方のないことといえるだろう わずか5歳で聖地に上がり 同時に”首座”として聖地を任された 根は素直な性格のジュリアスである 守護聖の首座として生きる道を100%受け入れ 現在まで突き進んできただけなのだ クラヴィスとは大違いである 6歳から聖地にいる闇の守護聖クラヴィス ジュリアスの幼馴染(でも仲悪い)クラヴィス 彼とジュリアスの違いについてはたっぷりと説明したいところではあるが このことは残念ながら今回の話には関係ないので省くとする さて そんなジュリアスは今 大変怒っていた いや 怒っていた などと言うと本人に力いっぱい否定されるので言葉を変えることにする ”指導していた” 「マルセル、そなたは何度言ったらわかるのだ!」 「ご、ごめんなさい、ジュリアス様……」 「謝れば済むと思ったら大間違いだ。なぜ一度言われたことができぬっ」 「でも……でも……」 「言い訳は聞かぬ!!」 目にいっぱい涙を溜めて それでも雫を零さぬように我慢している 最年少守護聖マルセルは 最後の衝撃にびくっと肩を震わせ そのひょうしに ぽろりと頬に涙を伝わらせてしまった それを見て ジュリアスははっきりくっきり ムッ とした 「もうよいッ。下がれ」 「え……」 「よいと言っている。そなたに期待をした私が愚かだったのだ」 「ジュリアス様……」 その場に立ち尽くすマルセルを無視して ジュリアスは執務机に向かい 隅に積み上げてある書類の一番上にある紙束を取り 目を通し始めた そのまま時間が経過すること約1分 マルセルはまだその場に突っ立っていた 無視をしているつもりでも その存在をすっかり忘れ去ることなどできるわけがなく かといって許すつもりも(というよりも怒りが冷める気配がという方が正しい) まったく無いジュリアスは もう一度退出を促そうと顔を上げた そんな時 コンコンコン ノックの音がして 「ジュ〜リ〜ア〜ス〜、いますかぁ? ジュ〜リ〜ア〜スゥ〜」 今の雰囲気にまったく馴染まない 字面だけ見たら幼稚園児のお迎えのような のほほ〜んとした声が扉の向こうからやってきた ジュリアスは一瞬 返事をするのをためらう 「ジュ〜〜〜リ〜〜〜ア〜〜〜」 「なんだ!」 バカでかい声にジュリアスが慌てて返事をすると ゆっくりとドアが開き 地の守護聖ルヴァが にこにこにっこりしながら入ってきた 「なんだ!」などと 怒りに任せた返答を聞いたにもかかわらず いつもと変わらぬマイペースを貫く そんなところがこの聖地における ぼけぼけ守護聖ルヴァのスタンスなのである 「こんにちわぁ、おや? マルセル、どう……」 名を呼ばれた幼い緑の守護聖は もう既に涙を拭った後だったが 何かあったと思わせる雰囲気を隠しきれてはいなかった ルヴァは 部屋の中央にどっしりと腰を落ち着けて憮然とした顔をしている首座と 儚げな最年少守護聖とを交互に見比べ ある程度の予測をつけていた 「あ〜、マルセル、ちょっとお話が。ジュリアス、いいですか?」 「構わぬ」 ふて腐れて投げつけられた言葉を柔らかい笑顔で受け止め ルヴァはマルセルを促して 光の執務室を出て行った パタン と小さく扉が閉まる (……泣けばいいと思って……) ジュリアスは面白くなかった すぐに下を向く新しく来た緑の守護聖 もう14歳だというのに そんなに甘いことで守護聖としてやっていけるのか しかもその彼を庇う知恵の守護聖ルヴァ その他の皆も マルセルに優しすぎる 甘すぎる 思い出してみると ルヴァはあのクラヴィスのことも何かと気にかけているようで よく一緒にいるところをジュリアスは見かけていた (そういえば……) 今のようにクラヴィスを呼んで詰問している時も 彼がかたを持つのは必ず クラヴィスの方だった (フンッ) 品性あるジュリアスらしくなく 鼻息を荒くすると 再び机に向かい ペンを握り締めてサインを入れた Juli ピシャッ i の上にある点を書いた途端 青いインクが盛大に飛び跳ねた それは書類を汚すだけでなく 彼の白い衣をも点々と青く染めた 「うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…………」 地鳴りのような音は 長くなが〜くどこまでも 光の執務室に轟き渡ったのであった |