恋しくて 1
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いつからだろう 気がついたら私は ただ一人の人のことを想ってた 特に 不意打ちで心が傷ついたときとか なんとなく誰かに甘えてみたくなったとき たった一人のことを考える 訪問者が途切れた執務室で ぼんやりと思い浮かべる どこからどこまでも人の良いあの笑顔 時々無性に あの人にすがりつきたくなる あの 乾いた肌に頬を寄せて あの のんびりとした口調で あの グレイの瞳に見つめられて 慰めてもらいたくなる でも 実際は そんなことできやしない 彼は そこまで私を甘やかしてはくれない 大切なところで いつも いつも 私を 静かにやんわりと 遠くへ押しやる けして踏み込ませない ほんの少しならいいのに 欲張るといつもダメなんだ だから どこまでなら許されるのか 今ではよくわかっている でも それは私にとって苦しみ以外のなにものでもない 恋しているんだから 私は彼に恋をしている 彼は 私がほんのぽっちりの恋心を忍ばせようとするのをすぐに見抜いてしまう そして 優しく拒絶する あろうことか 私の頭を撫でて 子ども扱いして 仕事をしろと 肩を押して私を追い出す その 触れられた箇所がぴりりと痺れて心地よいのに 後には こんなに心を揺らした私一人が置いてきぼりくらってる そんなとき きまって私の右の手首の内側がきゅっと痛む 彼を恋焦がれて切なくなると 私の心臓より先にこっちが痛みを訴える 彼の執務室のドアの外で 手首を押さえて私は唇を噛む こんなに好きで 好きでどうしようもないのに 私は彼にそのことが言えないでいる 他のことなら 他の人にならなんでも言える私でも 彼……ルヴァには どうしてもダメなんだ 私が臆病なのか それとも ルヴァが言わせないのか 恐らく そのどちらもなのだろう ルヴァにどんな考えがあるのかはわからない 私は それが知りたい だから 決心する いつまでもここままじゃ 私は先に進めない なんといってもこんなのは私らしくなくて気に入らない 私は今までずっと 好きになったら自分から告白してきたし 必ず手に入れてきた 黙っているのは性に合わないんだ 私は 必ず ルヴァに言ってみせる 「好きだ」って 決行は明日 これ以上結論を先延ばしになんてしない 明日 今までの想い 全てに決着をつけてやる ……ああ 私ったら どうしてこんなに 自分でも笑っちゃうくらい 悲壮な決意をしているんだろう 本当は怖いんだ ルヴァの顔がどう変化するのか とても怖い この私に 夢の守護聖オリヴィエにこんな怖いものがあったなんて 今まで知らなかった 知らなかったんだ |