恋しくて 5



私は熱を出した
ルヴァとあんなことがあった翌々日のことだった
朝 なんとなくだるいと思っていたら 昼には起きていられなくなり
早々に私室に帰ってベッドに潜り込んだ

原因はわかっている
認めたくないけど 認めるしかない



昨日 何事もなかったようにルヴァの執務室を訪問し
いつものようにたわいない話をしてきた
彼に会うことを考えて フェイスケアも充分しておいたから
常と変わらない美しい私をルヴァに見てもらえたはずだ

私は美しさを司る守護聖なのだから
ルヴァには守護聖としてだけの私を見てもらえればいい

たぶんきっと ルヴァはほっとしていた
昨日の私は完璧だった
心の動揺をうまく隠しおおせることができた
そんな自分が我ながら誇らしいくらいだった

私はもう平気だ
あれだけ泣いたのだから 彼のことは大丈夫
きっとこのまま私たちはいい同僚でいられる
ルヴァに迷惑をかけないで済む


私を迎えるルヴァはいつもと変わりなく
彼がなにもかもを なかったことにしたがっていることがわかった
あくまでも 彼と私は”守護聖同士”だと
淀みなく話す彼の口調で知れた

だけど
そんなルヴァの態度に少なからずショックを受けた
わかっていたのに 私はやっぱり”何か”を期待していたんだ



頭がガンガンする
自分の趣味で個性的に着飾らせたメイドたちが
入れ替わり立ち替わり世話をしに部屋にやってきたが
今日はそんな彼女たちを見てもちっとも楽しい気持ちにならない

「もういいよ。だいぶよくなったからひとりにしてくれない?」

ベッドから起き上がり 氷枕を替えに来たメイドにウィンクをひとつした

「それからね、誰か見舞いに来たとしても通さないでくれるかな」
「かしこまりました。失礼します」

そう言って部屋から出て行く彼女に向けて手を振った


「ふぅ…………痛っ……」

両手で体を押さえ そろそろと氷枕の上に頭を乗せた
冷たい感触が少しだけ心地よかった



日が傾き 時計を見ると 執務の終わりの時間がきていた
多分 きっと ルヴァは見舞いに来る
以前 やはり熱を出して執務を休んだときも 彼はやって来た
マルセルのところから貰ってきたと言って 大きな花束を抱えて


あの日ベッドサイドに腰掛けた彼は いつもよりももっと もっと 優しそうだった
だから

「大丈夫ですか? オリヴィエ……」

そう言って ルヴァの手が熱で火照る額にあてられた時
私の手が自然とその手の上に重ねようとするのを 止められなかった

でもそれは やはりいつものようにかわされた

「熱……まだだいぶあるようですね」

すうっと ゆっくり 彼の手は私の額と私の手の間からすり抜けていった
あの瞬間 背中が凍るような気持ちがした
また 拒絶されたのだ と

ひどく 寒かった


(なんでこんなこと、思い出しちゃったんだろ)

最初からわかっていたのだ
ルヴァは絶対 私を受け入れない
私はこういったルヴァとの間にあったことひとつひとつを
その都度 心の奥底に封印してきたのだった
 
ルヴァは私の気持ちを ずっと前から知っていた
少なくとも この頃には気づいていたはずだ
今なら確信が持てる

でも

だとしたら

ルヴァは随分思わせぶりなことをしてきたということになる

(なんで……?)

好き過ぎて今まで気がつかなかった

(酷いじゃない……ルヴァ……)

おととい 額に触れられた指を思い出す

(あの時だって、ルヴァは私に触れてきた。
私がルヴァのこと好きなのを知ってて、どうして……?)


熱は 思考を嫌な方向へ変えていく
あんなに好きだったルヴァを憎みそうになる

目をつぶった
なんとか気持ちを切り替えようとうつぶせになると
丁度氷枕に額を乗せる形になった

(あ、まだ冷たい……)

あの日のルヴァの手も これくらい冷たくて気持ちよかった

(ルヴァ……ルヴァ……)


涙が滲んだ





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