恋しくて 6



「オリヴィエ様、オスカー様がお見えになりましたが……」

ドア越しに執事の声がした
誰も入れないでくれと言っておいたにもかかわらず
職務に忠実な彼がこうしてわざわざ確認しに来たということは
よほどオスカーが強く出たのだろう
だとしても 誰にも会いたくないという気持ちは変わらなかった

「……悪いけど帰ってもらってくれる?」
「かしこまりました」

それきり 室内にはもとの静寂が訪れた


(こういうの、わがままっていうんだよね……)

誰の前でも どんなときでも 本当の気持ちはいつもベールのこちら側に隠し
やっていいこと やってはいけないこと きちんと分けているつもりでいた

自分の思う 夢の守護聖オリヴィエとしての理想の姿
こうでありたいと思う姿そのままに 今の自分はなれていると確信していた
けれども こうして部屋に閉じこもり恋しい人を思って泣いている自分は
なんて格好が悪いのだろう

(格好が悪くてもいいじゃない、みっともなくなるくらい本気ってことでしょ?)

わかっている わかっている
それでも このどうしようもないみじめな気持ちは救われない

(一体どうしたっていうんだろうね、私は)

ベッドに体を横たえて 天井を見上げた

(ああ、頭痛い……)

この嫌な気持ちは熱のせいだ
そう思い まぶたを閉じた



カツン

何か小さな音がした

カツン

続けて同じ音
私は重い頭を上げて 神経を集中させた

ココン コン

その音は窓の方から聞こえてくる
窓を叩く音

どこかの間抜けな虫が体当たりしてきたに違いない
熱のために確かめる気力もなく もう一度枕の上に頭を乗せた

しばしの沈黙 そして

ゴンッ!

(何!?)

今度は今までのものと比べようもなく大きい音だった
飛び起きて 窓のカーテンをザーッと開けた


「おーい!」
「オスカー……」

遥か下に 片腕に石をたくさん抱えたオスカーが立っていた
私は窓を開け ベランダに出た

「何やってんのさ。窓壊すつもりじゃないだろうね?」
「お前が出てこなかったらいずれ壊れてたかもな。はははっ」
「何の用?」

露骨に不機嫌な声が出た
絶え間なく襲い来る頭痛のために 相手を 特にオスカーを思いやる余裕など
ほんの少しも持てなかった

「ピンピンしてるじゃないか。お前んとこの執事、重病人みたいなこと言ってたぜ」
「ああ……」

きっと しつこく食い下がるオスカーを前にして断りきれず
やむなくそのようなことを言ってしまったのだろう
しかし私に対するその心遣いもこの赤毛の男 オスカーには通じなかったらしい

「せっかく見舞いに来てやったんだから部屋に入れろ」
「…………」
「入れないと、今度はこれをお見舞いしてやる」

オスカーは持っている石の山から特別大きな どこから拾ってきたのか
手の平ほどの大きさの石を取り出し 私に示した

「……わかったよ」



「よう!」

数分後 やけに得意げな顔をしたオスカーが部屋にやってきた

「なんでそんなに元気なのさ。頭に響くだろ……」
「お前、本当に具合が悪かったのか」
「じゃああんたは何しに来たっての?」

眉間がますますズキズキと痛んできた
この男を入れたことを心底後悔し始めたとき 彼は思いもよらないことを言った

「ルヴァと何かあったか?」


私は ゆっくりとオスカーを見上げた





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