恋しくて 10



リュミエールの執務室は いつ来ても心地いい
さらさらと流れる小川を眺めているような気分だ

穏やかに笑う彼に挨拶をして
部屋の隅にある水色の大きなソファにごろんと寝転がった

「オリヴィエ、仕事中だということを忘れてませんか?」

席を立ち こちらに向かって歩いてきたリュミエールが
おかしそうにクスクス笑いながら言う
私は大げさにため息をついた

「つっかれんのよね、あのバカのせいで」

笑い声は止まり 不思議そうな目をした後 小さく口が開いた

「こうやって息抜きしないとやってらんないよ。リュミちゃん、かくまってくんない?」
「そんなことをしたらあの方はとても怒りますよ」

再びその顔に笑顔が戻ってきたが 無理やりにしか見えなかった
揺れている今がチャンスだ だから
あの男と同じ手だと思いながらも 私はこう言った

「ズバリ言うけどさ、オスカーとなんかあったでしょ」


水色の髪がふるりと揺れる こわばった顔
可哀想だと思ったと同時に
あの時 オスカーの目の前で自分はこんな顔をしたのかと
私は胸の中で盛大に悪態を吐いた

しかしもう 今更どうしようもない
それに 今はリュミエールのことをなんとかしなければと考えた


「隠してもダメ。ちょっとこっちに来なさい」

起き上がり 隣の場所をぽんぽんと叩いて呼んだ
リュミエールは大人しくソファーに座り 私の手元を見ている

「らしくないね。なに俯いてんのさ」

頼りなげな瞳がこちらを見た
ドキリとした


リュミエールは その話し方と儚げな外見から 弱々しい印象を受けるが
実はまったくそうではない

むしろ普段の彼は快活といってよく
悲しげな顔をするときというのは決まって 自分以外の誰かのためだった

己をコントロールし いつ会っても穏やかな波のような雰囲気を保っている
いつもいつも 人に優しい
他人の為に生きているんじゃないかって思うくらい

ルヴァに似ている

水色の髪に手を触れさせながら 私はまたも 恋しい人を想う
ただ違うのは ルヴァは確実に自分の為に生きているというところだ
その上で 皆に対して平等に 均等に 優しさを配り歩いている

ルヴァが好きだ

「平等に配られるはずの優しさ」を 誰よりも多く貰っていたから だから
もう少し あと少し もっと もっと もっと
欲しくなっただけなんだ


ぎゅうっと 息苦しくなって 私はゆっくりと息を吐いた
我ながら諦めが悪すぎる


ふと見ると リュミエールは僅かに視線をずらし 唇を引き結んで何かにじっと耐えていた
彼を放ってしまったことに気が付き 直後 はっとした

リュミエールが苦しんでいる
長く一緒にいたのに こんな彼を見るのは初めてだった
彼はなぜ こんなに辛そうなのか
それはきっと 多分 オスカーが絡んでいるからだ

リュミエールが特に生き生きとするときというのが
強さを司るオスカーに向かって 正面切って堂々と意見している時

他の皆にはわからない そう オスカーも気づいていないだろうけれども
そんなときのリュミエールはとても楽しそうで
私は安心して見ていられた

オスカーとリュミエール
誰よりも仲が悪くて 誰よりも仲のいい二人を





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