恋しくて 13



私の知らないルヴァ…………
確かに私は知らない
さっきのあの表情だって 初めて見たのだから

ルヴァと 彼の言った「ずるい」という言葉
それを同一線上に考えたことなど今までなかった

人間なんだからそんな感情もあるだろう
もちろん あのルヴァにだって
それを大げさに考えて私に言ったのだとしたら 彼は私をみくびっていることになる
私が彼に対して感じる想いは そんなもので覆されるほど軽いものじゃない


でも 初めてだった
強い視線 強い力 拒絶する背中
そんな姿を晒してしまうほどのことなのだ

もう長い間ルヴァと一緒にいると思っていたのに
彼の次にとる行動をほぼ予知できるほど 私は彼を知っていて
それくらいずっと ルヴァのことばかり見てきたというのに
それなのに その私が知らなかったこと


(本当に彼のことを何でも知っていると言える?)


主の消えた地の執務室で 愕然とした
当たり前のことだ
なのに 私はいつの間にかそんな気になっていた
いつの間に 私はそんな甘い考え方をするようになったのだろう

そう 他人のことが全てわかるなんてありえない
私だってどれほどの衣をこの身にまとっているか

知られたくない秘密など ごまんとある
できることなら忘れたいことも 数え上げたらきりがない
それらをひた隠しにしながら 普通の顔をして当り障りなく過ごし
時に暴れ出す欲望と折り合いをつけ なんとか前を向いて生きているのだ


当然のことだ
ルヴァに言われるまでもない


ならばなぜ 彼はそんなことを私に対してぶちまけたのか
知って欲しいのか 知られたくないのか


考えても仕方がない
というより 私がどうしたいかは決まっている

私はルヴァのことが好きだ
彼がこの先 私に振り向くことがなくても 彼が好きだ
諦めようとしたところで こうやってルヴァの方から関わりを持とうとするならば
それをルヴァが求めているならば どこまでも付き合っていこう

私はもう遠慮をしない
知って欲しいなら聞いてやる
知って欲しくないなら 黙って側に付いていてやる



決意が固まると すっきりとすがすがしい心地になった
自分に対して拍手を送りたいぐらいだ

奥へと通じる道 ルヴァの姿はやっぱり見えない
私がここを出て行くまで あの人はあそこから出てこないだろう
いつもなんでも受け止めるくせに 妙なところで強情な時があるのだ

明日
また来てくれとルヴァは言った
ということは 明日ならばいいということだ
ルヴァは私を完全に遠くへ追いやったわけではない
この話をするかしないかはわからないけど……

そして……



私は地の執務室を後にして リュミエールの待つ部屋へと向かった
その間 考えるのはリュミエールのことではなかった

その時 私は胸の奥にほんのりと灯るもうひとつの光を自覚していた
先程 ルヴァに掴まれた腕が切なく痺れている
二の腕から手首へとその痺れは伝わっていき その手で私は自分の胸を押さえた

私は ルヴァに拒絶されたと思っていた
でも少し 違うかもしれないと考え始めている
掴まれた時の強さ そしてあの強い瞳
告白されたことによって 私の願望を知った後だというのに
あの態度はなんだろうか

少なくとも嫌悪は感じていないのだ
ルヴァは 私のことを”そういう意味”において拒絶しているわけではない

そうだ 嫌いじゃなければいい

私は立ち止まった

少しでも受け入れてくれる用意があるのなら 私は迷わず彼と寝るだろう
彼にとって1番じゃなくてもいい 2番でも 3番でも

欲しいのだ どうしてもどうしても ルヴァが欲しい

こんなのは私らしくないのかもしれない
恋愛とは人生を楽しく生きるための極上のスパイスだとあの男に言った覚えがある
あの男……オスカーに今のこの気持ちを言ったら 一体どんな顔をされるだろうか

……きっと 皮肉気に一笑した後 急に真面目な顔をしてこう言うだろう

「がんばれよ」


オスカーはいい奴だ
かなり”たらし”だが


「あ、リュミちゃん!」

遠くでリュミエールが手を振っている 私は早足で近づいた

「今帰りだったのですね」
「オスカーは?」
「もういませんよ」

いつもの自然な笑い顔だ かなりすっきりして見える
話し合いはうまくいったのだろう

「それじゃ、とことん話を聞くとするかな」
「はい。よろしくお願いします」
「ああもう、堅っ苦しいの抜き抜き!」

ふふっ と笑う彼の頭をぽんと叩き 私たちは笑いながら水の執務室へと向かっていった





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