エルとるいとランデーとれいの日記

パート5


日記−20 SIDE:エル

最近部活内で、交流が盛んの様である。やはり合宿後というのは、その様な傾向が顕著の様だ
あの女と、部長も最近やたらと仲が良い
部長はこの間、私と話して居る時も、やたらとあの女を気にしていた所を見ると
放課後に約束でもしていたのだろう。慌てて戻ろうとして、何やらつまずいていた
あの女の落ち着きの無さが感染ったと見える
謝られたが、つまずいた時手近なものに捕まるのは当然なので、気にする事は無いと告げておいた
中々珍妙な組合せという気もするが、部活内の交流が円滑であるというのは良い事だ

そういえば、Rが何やら眼鏡をかけて部活へやって来た
眼が悪かっただろうかと問うと、伊達だと言う
何でも部長からのプレゼントという事で、大層ご機嫌であった
眼が悪く無いものに、眼鏡のプレゼント。随分と変った思考だが、まあその辺りは個人の自由であろう
あの女と気が合うのも、その辺りにあるのかも知れない

『でも、るいさんも良いんですよねぇ』等と言うので、それは誰かと問うと
全くエルンストさんは。とやたらと笑っていた。まあいつもの事だ
言われて思い出した。そういえばあの女はその様な名前であった
相変わらず遅刻しているらしい。あの音で起きないというのは、どうゆう事なのだろうか
そのくせ、授業をさぼったのは私のせいだという。全く今更というものだ
前回のテストの順位は9位だった様だ
13・4・9 ・・・ 成る程相変わらずである

Rに借りていた本を返す
この作者の場合、やはり原書の表現の方が好みである



日記−20 SIDE:るい

あっという間に夏だね〜! 7月だよ、7月。
なんで3年生になると時が経つのが早いような気がするんだろう。
やることがいっぱいあるからかなあ?

このところ、周りのみんなの話題っていったら、試験とか模試とか
もう、大学進学に向けての話ばっかり。
今まで全然そんなこと言わなかった子まで真剣に話に加わっているみたいで
ああ、なんか盛り上がってるなあって思う。

でもさ〜、私は就職するつもりだから、そういう輪の中に入っていけないんだ。
「就職する」って言っただけで驚かれちゃうんだもん。
早く外に出て自分の力で生活したいだけなのになあ。

そんな中、エルンストさんは相変わらず。
部活には毎日出てるし、例の場所での星の観察もほとんど毎日行っているみたい。
はあ〜。そういうのって落ち着くよね。
他のどこを向いてもみ〜んな額にシワ寄せてんだもん

だから最近、なんとなくエルンストさんとこに行っちゃう。
ちょっと星の話をふれば何時間でも語ってくれちゃうから面白いし。
話がチャイムで中断されると、その後あのエルンストさんが
わざわざ私のクラスまで来て話しかけてくるんだ。
とにかく語りたいみたい。星に対する情熱を吐き出したいみたい。

私はゴミ箱か

いいけどさ。
あの綺麗な顔が間近で見れるしさ。
髭の剃り残しまでわかっちゃう(水色の毛だからよくよく観察しないと見れない)

でもね、そんな風に毎日のようにエルンストさんと話してるからかな、
前みたいに目が合っただけでドキドキしなくなっちゃったのが残念。
・・・って思ってたんだけど・・・


話が前後するんだけどね
この前、後輩Rが思いっきりダテだってわかる眼鏡をしてきたのよ。
黒い縁のやつで、聞いたら、れいちゃんからのプレゼントだっていうのよね。
なんかウキウキしちゃって、Rってばれいちゃんのこと好きみたい。

「れいちゃん、俺に気があるみたいなんですよ。まいったなあ〜アハハ!」

だって。思いっきり舞い上がっちゃってたよ。

れいちゃんったらエルンストさんが好きなくせに
なんでこんな思わせぶりなことしたんだろ? これじゃRがかわいそうだって。
あんまり不憫だから思わずいい子いい子してあげちゃった。

で、その時ね、なんか視線を感じる! と思って振り向いたら
れいちゃんがこっち見てニヤッって笑ってた。
ああー、今思えばあれはなんか企んでる顔だったなー。

ま、いいや。この話は次が重要なのよ!

その後、Rにその眼鏡は似合わないって言ったのね(だってかわいそうだし、ほんとに似合ってないし)
そしたら、じゃあどんな眼鏡がいいんだって聞くから
ちょうど近くに来たエルンストさんの眼鏡を指差したの。たとえば・・・ってね。
やっぱ眼鏡っていったらエルンストさんだし。
あの形ってすっごくかっこいいもんね。

したらRの奴、エルンストさんに「眼鏡貸してくださ〜い!」って
エルンストさんも「はい、どうぞ」ってすんなり貸しちゃって。
かけた瞬間のRは意外と知的に見えてちょっと良かったんだけど
その後ががっかりよね

「み、見えませ〜ん!!」

当たり前だって。エルンストさんの眼鏡は強力なんだから。
Rったら千鳥足でどっか遠くへ行っちゃった。




その後よ

エルンストさんったら、エルンストさんったら!
ぐーんって
ぐーんって
ぐーんって!!

私の方に顔を近づけたのよ!!!

「わーーーーー!!」

思わずすっころんじゃったわよ!
だって、だって、あの時、1cm、ううん、1cmなかったかもしれない。

「大丈夫ですか?」
「そ、そそ、そう言うんなら、起こ、起こしてよ!」
「・・・見えないんです。まったく」

エルンストさん、困った顔してた。
あはは! 思わず笑っちゃった。そんな困るんなら貸さなきゃいいのに。

しょうがないから自力で起きて、あっちでも座り込んでるRから眼鏡奪い取って返してあげた

「ああ、見えました」

・・・当たり前だって。
でも、そんな当たり前のことに嬉しそうなエルンストさん。その後

「ありがとうございます。真木さん」

あれ? あれれ?
すっごいドキッとした。
名前呼ばれて、ドキッとしちゃった。
そういえば、エルンストさんってあんまり名前呼んでくれないんだよね。


なんか、だからね、エルンストさんに全然ときめかなくなったって思ってたら
今日はもう、心臓いっぱい使っちゃって、寿命が5年くらい縮まったかも

やっぱり私、エルンストさんが好きなんだなあ・・・
くやしいけど、仕方ないか。


それにしても、れいちゃん、いったい何の目的だったんだろうなあ? 眼鏡。



日記番外編 SIDE:後輩R改めランデー

いやーこの間は驚いたよなあ
何ってさあ、エルンストさんの眼鏡
くらくら〜っとして、別の世界を見たね!アハハ!
やっぱ、伊達とはひと味違うよね。うん
るいさんに「何やってんのよ!」って思い切り心配されたし

でもさーるいさんに思い切り似合わないとか言われたよ
あれかなーやっぱれいちゃんに妬いてるのかな!アハハ!
ま、あれはあれでれいちゃんのプレゼントとして大事にとっておく事にするよ

それにしても3年生はそろそろ受験期なんだよな
エルンストさんと、るいさんは何だか相変わらずだけど

エルンストさんは、星の研究施設が一番充実してるとこに行きたいって
幸い国立で、良い所があるから授業料も安いしラッキーですね。だってさ
るいさんは、就職活動だって
「へー就職っすか」
って言ったら
「いい加減そのモノマネ止めろっての。わかんないっての」
って言われちゃったよ、アハハ!
自分の稼いだ金で早く生活したいんだってさ
何か良いよな。そうゆうのって

今日帰りがけに、エルンストさんに会ったから
一緒にファーストフードの店に行ったら、外をるいさんとれいちゃんが通りかかった
最近あの二人も妙に仲良いよな!良い事だよな!
んで、俺を二人してじーっと見てんだよね
それから、エルンストさんを見るもんだから何だろうと思ったら
ああ、そっか、るいさん前に制服で喫茶店居る所エルンストさんに見られたの
気にしてたもんな!だから全然エルンストさんは固く無いんだって!
そう思って、笑顔で手ぇ振ったら、何だか二人で固まってた
面白い二人だよね。アハハ!



日記番外編 SIDE:れい

エルンストセンパイ、最近ミョーにランデーと仲がいい。
もしかして一番のライバルってランデー?
ワタシがるいセンパイにかまけてる間にさ、あの二人
スッゴク仲良くなっちゃってさ、なんか悔しい。
ランデーのくせに。

昨日、るいセンパイと一緒に帰ってたらマッ○の店内にランデーを
発見してさ うわーって思ってよく見たら、あいつの目の前にエルンストセンパイがいて

(なんで、エルンストセンパイがファーストフードなんか、しかもランデーとなんか!)

るいセンパイも気がついたみたいで、ショックはワタシと同じみたいだったヨ。
なんかちょっと親近感・・・なんて言ってる場合じゃないんだけどー。
ランデーは恐ろしいほどの笑顔でぶんぶん手を振ってくるし
エルンストセンパイは手に持ってるバーガー、全然似合ってないし。

その後帰りながら、るいセンパイがぼそっと言った。

「嗚呼、私のエルンストさんが穢れていく・・・ランデーパワーに・・・」
「私のって何よ! ・・・じゃなくて、何なんですかー?」
「エルンストさん、口の横についてた・・・」
「(ヒトの話聞いてないし)何がデスか?」
「ゴマ・・・」
「よ、よく見えましたね(あんな遠くなのに)センパイ視力いくつなんですかー?」
「5.0」
「ウソ!?」
「嘘。んなわけないじゃん」

なんでこんな嘘つかれなきゃいけないワケー??

「でも、エルンストさん、ランデーといると楽しそうだよね。
ランデーってけっこういい奴かもしれないなあ。ちょっと変わってるけど」

「エエー? だってさっき穢れるって言ったじゃないですかぁ?」
「なんかあのゴマ見たら気が抜けたわ」

見えてたんだ・・・ゴマ


るいセンパイはいいかもしれないけど、ワタシはナットクいかない。
ランデーが無理やりエルンストセンパイを引っ張っていったに違いないモン
で、今日聞いてみたんだよね、ランデーに。そしたらさ。

「いやーエルンストさんにおごってもらっちゃって、悪いかなぁと思ったんだけど
いつも本を借りてるお礼だって言ってくれたからさ!アハハ!」

おごった!?

こいつキライ


しかもランデーのヤツ、最近ワタシになれなれしいのよね。
特にメガネあげたあたりからずーっとなんだから。
なんかイラつく。すっごくイラつく。

今日だってさ、放課後、バカでっかい声で

「れいちゃ〜〜〜〜〜ん! 部活行こう!!」

ってさ、小学生じゃないんだからヤメテ欲しーよ。
それにしても、すぐ側にいるのになんで大声出すの? アノヒト。
両手を振るのもヤメテ欲しい。チョー恥ずかしいよ。

でも、こーんなヘンな男なのに、こいつを好きだって言うコがいるんだよねー。
この前ワタシの前の席のコが突然振り返って話しかけてきてさ

「れいちゃん聞いて聞いて。私、ランデーくんのこと結構いいなーって思ってるんだーv」
「(イキナリでビックリだよ)そうなんだ。(ニコッ)どうして?」
「頭いいしー、優しいしー、爽やかだしー」
「ああ、笑ったとき歯がキラッ☆って光るしね」(我ながら冷静な分析ね☆)
「そーなのーvv 素敵でしょ?」(・・・)

素敵なんだってさ。
ワタシにはぜ〜んぜんそう見えないんだケド。


とにかくね、そのサワヤカランデーがなんだか知らないけど懐いてくんのよ
ハッキリいって ウザ
だからクギさしとこうって思って言ったんだよね

「ねえ、ランデーくん。いつも私を部活に誘ってくれるけど
先生に用事を頼まれたりすることがあるから、先に行ってていいよ(ニッコリ)」

(↑一応相手はランデーだけど乙女モードでキメないとね)
「え? そんときは言ってくれよ! 俺、手伝うからさっ」
「(違うんだってば!)いいよいいよ、私が引き受けた仕事だもの」
「れいちゃんって、えんりょぶかいんだなー」
「(なんでコイツが言うと難しい漢字がひらがなに聞こえるんだろ)」
「でもそんなところが好きなんだよなー」
「え・・・」

なんでコイツはこんなことをさらっと言うの?
軽いじゃん。まるっきり軽い男じゃん。
キライだキライだ。やっぱりキライだ。

「私はあんたキライ」

つい、本当に思ってること言っちゃった。
あいつ動き止まっちゃってさ。「マズイ」って思った。
表情のないランデーなんて初めて見たから、オドロイた。
だってあいつってば、いーっつもヘラヘラ〜って笑ってんだもん。
ケド、心配無用だったよ。

「まいったな〜、アハハ!」
「は?」
「俺がれいちゃんからもらっためがねをしてないから怒ってるんだね」
「はあ?」
「ごめんよ。明日してくるから、きげんなおしてくれよ!」
「え? 違・・・」
「さあ! 部活で青春の汗を流そうぜ!」
「(文化部でショ・・・ああ、やっぱりこいつキライ・・・)」

この後ずるずる引きずられてっちゃった
ランデーってもしかして、ワタシがランデーのこと好きだと勘違いしてる?

まさか・・・・・・・・・

考えると怖くなるからヤメよ・・・



日記−21 SIDE:エル

夏休みである
休み中も部活は行われているが、3年生は殆ど出て来ない
何でも受験だからだと言う
いつものペースで勉強をし、憶えた事を忘れなければ試験も受かると思うのだが
まあ、その辺りは個人の自由と言うものだろう
しかし、あの真木という女は相変わらずである
何でも就職するそうで、公務員が希望だそうだ
自力で早く生活するには理想的らしい
それは結構な事だが、あの目覚ましで起きられない人間が大丈夫であるのかと問うと
意地悪だと言われた。事実に基づく疑問を述べただけなのに不可解な事だ

ランデーがやって来て、また帰りがけにファーストフードでもどうですかと言って来た
ハンバーガーというものを以前姉に、食べてもらいたい人が居るが先に味見をしてみろと言われて
初めて口にした。その相手を呪いたいのかと問うと、失礼だと言って去って行った
感想を述べよと言うから述べただけなのに。何故私が殴られなければならないのだ

それはともかく、先日ランデーに薦められて食べたそれをハンバーガーと言うのなら
姉の作ったものは、間違い無く違うものである
真木という女が、私も行くというとランデーが嬉しそうであった
そこに部長が来て、私も行きたいというと、やはり嬉しそうであった
特に差し支えは無いので、4人で向かう事とする
それにしても、最近いつも眼鏡をかけるでもなく頭に着けているが
それはどういう事かと問うと、二人の意見の間を取ったのだと言う
どうも良く解らないが、何やら幸せそうなので良いだろう

ランデーがテニスをしに行かないかと言う
たまには体も動かさないと。と言う事だ。最もな意見である
私は構わないがと告げると、後の二人も行くという
ランデーが手配は任せてくれと言うので、頼む事とした
久しぶりのテニスである。ガットを張り替えておこうと思う



日記−21 SIDE:るい

「でかしたランデー!」

思わず力いっぱいランデーの肩を叩いちゃったわよ。
最近あいつ、いい奴だと思ってたらやっぱりいい奴だった。

あのねあのね、

エルンストさんとラヴリーなペンションでお泊り旅行v

ってのを企画してくれたって言うのよ。
んもー、るいるい困っちゃうv

夜、湯上りのほてった体をエルンストさんの肩に預ける私・・・

「るいさん、ほら、星があんなに綺麗ですよ」
「ええ、そうね、エルンストさんv」
「るいさん、いえ、るい・・・。今夜だけは貴方のことをこう呼ばせてください。
私のことは『エル』と呼んでもらえると嬉しいのですが・・・」

「え?(ドキv)わかりました。えっと・・・エル・・・v」
「るい・・・v」


るいさん。るいさん。るいさん!
「んもう、るいって呼んでv」
「え? いいんですか? んじゃ遠慮なく。る・・・」
「お前が呼ぶな!(ベシ!!)」

ああ、びっくりした。まだランデーいたんだ。
目の前で「痛いですよ〜」なんて言ってランデーが頭抱えてるけど
そんなこと知ったこっちゃないわ。

とにかく! エルンストさんと一泊旅行よ!

「朝5時集合ですからね。遅刻しないで来てくださいよ! ハハハッ」

そう言って風のように去っていく幸せの使者ランデーを見送った後
顔がニヤけてニヤけて止まらなくなっちゃった。
5時くらいなにさ。おっけーおっけー。
簡単なことよ。ずっと起きてればいいんだから。



んで当日。気合を入れて30分前集合しちゃった。
なのにランデーがもう来てるのよ。

「早朝のランニングって気持ちいいですよね!」

あんただけだって・・・
しかもペンション行くってのにジャージで来てるよ・・・

そういえばランデーも一緒だったっけ、とあらためてがっくり。
でも、エルンストさんと二人きりになるチャンスなんていくらでも
あるはずよ。ふふふ・・・

集合時間10分前。エルンストさん到着! ・・・なんだけど
何かしら何かしら。エルンストさん・・・

ダサ

あの、なんていうのかしら・・・。「お父さんの休日」みたいな・・・
なんでポロシャツをズボン(って感じのズボンだった)の中に入れるのかしら。
色のセンスもちょっとどうかと・・・
前に私服を見たときはもっと素敵だったような気がするんだけど・・・
でもなんか・・・

ダサくてもす・て・きvv

かえってこの方がエルンストさんらしい気がしてくるから不思議ねv

その後すぐれいちゃん登場。
やっぱ来たのね。永遠のライバル。
れいちゃんはエルンストさんを見てショックを受けていた様子。
ふふん。まだまだアマいぜ。



ランデーの案内でめざすペンションに到着! はいいんだけど・・・
な、なにかしらこれ・・・この看板・・・

ペンション光・・・す、凄い名前ね・・・」

周りの緑に喧嘩売ってるのかしら・・・すごく金ピカなんだけど・・・
ランデーはそんな私に向かって「そうかい? ハハハッ」って
ずんずんペンション光に突入していったわ。男前ね、ランデー・・・

でもね、中に入ったら思ったよりセンスがよかったのよ。
それどころか、出てきた人を見て卒倒するかと思っちゃった!
すっごい美形が現れたのよ!

「ようこそペンション光へ」

この人、この名前が気に入ってるみたい。
めちゃめちゃ強調されちゃった。しかも素敵な声で。

「こんにちわ! お世話になりますね。ジュリーさん」

ランデーったらこの素敵な人の知り合いなのかしら。
ジュリーなんてぴったりの名前よね。
ウェーブのかかった長い金髪がすごく綺麗。うっとりしちゃう。

「そなたたち、疲れたであろう。部屋まで案内しよう」
「え? いいんですか? だってまだ朝の9時なのに」

私たち、観光もしないでまっすぐここに来ちゃったのよね。

「かまわぬ。客はそなたたちの他、誰もおらぬのでな」

どうやらこのペンション、あまり流行ってないみたい。
私はあのペンション光ってのがいけないと思うんだけど。



「テニスー!?」

聞いてないよー! って暴れたけど、なんかみんなラケット持ってきてるのよね。
ランデーは「言いましたよ」って言うけど、聞いてないったら聞いてないの!
怒ってたらランデーが突然部屋を出て行っちゃった。

しまった・・・!

多分きっと、私がエルンストさんとのこと妄想してたときに言われたんだよね。
ランデー怒ったのかな・・・?
うじうじしててもしょうがないから謝ろうとドアを開けたら
目の前に金ピカな物体がどーんと迫ってきた。

「これで大丈夫ですよ! るいさん」

ランデーの手にはビカビカ金色に光るラケットが握りしめられている。

「ど、どしたの? これ・・・」
「ジュリーさんに借りてきたんです!」

満面の笑みで渡されたそれは、気のせいか後光がさしてる気がした。
あの看板といい、このラケットといい、ジュリーさんとやらは
金ピカが好きみたい。
(す、すごい趣味だわ・・・)
これにはれいちゃんも驚いたみたい。
この4人の中で今の気持ちをわかちあえるのはれいちゃんだけ。

「良かったですね」

エルンストさんに言われて、笑う顔がビシビシひきつっちゃった。



私の持つラケットを満足げに見るジュリーさんに見送られて
私たちはテニスコートに直行した。

早めの昼食を終えた私たちの上にサンサンと照りつける太陽。
ランデーが異様に元気。エルンストさんもなんかウキウキしてる感じ。
暑いことこの上ないけど、楽しくなりそう。


・・・で、なんでかしら?
なんでエルンストさんとランデー、私とれいちゃんのペアで試合やってんのかしら。
まあその前に、これは試合とは呼べないものだったけど。

だってラケット、こんなに大きいのにちっともボールが当たんない。
サーブしてみろって言われてやってみたけど
これまた何度チャレンジしても、スカッスカッてラケットから回り。

キーッ

またしても怒り狂う私に

「ショーがないなあ、こうするんだって、こうやって・・・」

れいちゃんが(偉そうに)教えてくれた。

「じゃ、俺たちはあっちのコートでやってるから!」

ランデーがエルンストさんと隣のコートに移動して



5時間経過・・・

はっ! とれいちゃんと顔を見合わせた時には
夕日が私たちの背中を押していたのよね・・・

(なんで女同士でナカヨクしてなきゃなんないのヨ!)

そんな声が聞こえそうなんだけどお互い様なのさ・・・

「夜、みんなで天体観測しよ! ね?」

なだめるように言うと、れいちゃんの険しかった目が元通りになった。
ほっとした。

(でも出し抜いてやるんだもんねー!)

と、思いつつペンション光に戻ったら

「お帰りなさ〜いv」

な、なんでエルンストさんのお姉さんがここに?
しかも妙に愛想がよくて二度びっくり。

「ただいま! 暑い中大変だったですね。お手伝いできなくてすいません」

ランデー、普通に会話してるよ。どういうこと?
理由を説明してもらおうとエルンストさんの方を見たら
エルンストさん、ぽかんと口開けてた。

(間抜け顔・・・かわいいっっっ)

「姉さん、これは一体どういうことなんでしょうか」
「あらヤダ、言ってなかったっけ? 私、夏の間ここを手伝ってあげることにしたのよ。ね? ジュリーv」

ジュリーv と呼び捨てにされて、ジュリーさんったらムッとしたけど
顔が赤くなってるから全然説得力ないのよ。

「客人の前ではないかっ」

ぷいっと横を向いて、スタスタと奥へ引っ込んじゃった。

「うふv ジュリーったら照れちゃって。嫌ね、男はいつも堂々としてないとね、
エルりん。エルりんもそう思うでしょ?」
「・・・その呼び方はやめてください、姉さん・・・」

なんかお姉さん、うかれてるみたい。すっごく嬉しそう。



夕食は本格的な(といってもどういうのが”本格的”なのかわかんないけど)
フランス料理フルコースだった。
すっっっっっごくおいしかった。

「おいしいです」ってジュリーさんに言ったら
「本当にそう思うのか?」と疑わしそうな眼差し
他の3人も口々に料理を褒め称えてたら

「すまぬが味見させてはもらえないだろうか」
なんて言い出して、エルンストさんのお皿のものを口にした途端

「!!!!!!!」

なんか衝撃が走り抜けたみたい。
無言でヨロヨロと歩き去っていっちゃった。
あれは一体なんだったんだろう。



食後のコーヒーを飲んで、そろそろ部屋にって思ってた時
またジュリーさんがやってきた。
なんか怒ってるみたいだった。

「知り合いなら皿を片付けていくのだな?」

なんか断定されちゃった。そんなの聞いたことないけど

「やりますよ! ね?」

サワヤカサ○デー・・・じゃなくてサワヤカランデーが歯をキラキラさせたもんだから
結局4人で皿洗い。
でもこれが良かったのよ! 私的にグッドジョブランデー!って感じだったのよ!

うふ、うふふふふふふ。
なんで笑ってるのかって?
だって、だってだって

エルンストさんがお皿拭いてるvvv

キュッキュッキュッキュッキュって。イヤ〜ンv

まるで新婚家庭みたいだわ。はい、あなたv なんちゃってー!!!

「ちょっと手、止まってますよ! センパイ」

れいちゃんに怒られちゃった。そういえばいたんだっけ。(つくづく邪魔だわ)



お皿も洗い終わって、夜はこれからv
前を歩くエルンストさんに声をかけようと手を伸ばしたその時

「る〜いちゃ〜んv」

ヤな予感・・・
案の定、そこにはお姉さんが不気味な笑顔で仁王立ちになってたのよ。

「ね、ちょっと、今夜は女同士の話をしましょ、あ、そこのコギャルもね」
「は? え、えっと・・・コギャルって私のことですか?」
「そーよ。バレてないと思ったら大間違いよv 大きな猫飼っちゃって」

れいちゃん、あんなに「エルンストセンパイのお姉さんだもの!」って
気合入れてお嬢様していたのにね。かわいそ。

「ほら、るいるい、こっち来る!」

二人して首根っこつかまれて本物の猫のように連れて行かれちゃった。
で、何の話をしたかって、ジュリーさんの愚痴をね、延々と聞かされてたのよね。
「私は一生懸命やってるのに!」って言われてもね。


いい加減話が長くなってきて、れいちゃんったらお子様だからすぐ寝ちゃったし。
元気を出してもらうつもりでお姉さんにこう言ったんだよね。

「でも両思いだからいいじゃないですか。私なんか・・・」
そしたら
「あら、当たり前じゃない。あんた達とは違うわよ」
だって。おまけに
「まだあいつのこと好きだったの? 最近家にこないからやめたのかと思った」
それだけじゃなくて
「あれはねーオタクだよ、オタク、星オタク。いいの?」


「知ってます」
口に出すと、次から次に言葉が出てきちゃった。

「それに、エルンストさんが私のこと、全然見てないっていうのも知ってます。
エルンストさん、星のこと話してる時が一番楽しそうだし
きっと将来、そういう職業について、一生宇宙のこと考えて生きてくんだろうなって
思います。でも、そんなエルンストさんの人生の中でほんのちょっとでもいんです。
ほんの少しだけでも関わることができたら私はすごく嬉しい。
それで、できることならそういうエルンストさんの力になりたいし
彼が進む道を応援していきたいんです。
きっとエルンストさんは立派な学者さんになります。
ひとつのことにこんなに夢中になれるなんて、素晴らしいことですよね。
・・・でも、なんでエルンストさんが好きなのかって言われると
やっぱり私もよくわかんない。好きだから好き。・・・これって前にも
言ったような気がしますね。」

我ながらたいそうなことを言っちゃったなあと思うとちょっと照れた。

「オタクでも好きだから好きってことか」

お姉さんニヤニヤ笑ってくれちゃって。私も言い返した。

「お姉さんこそ、そういう人が好きみたいですよねー。ジュリーさんのあの
金ピカオタク振りは普通じゃないですよ。あとペンション光っていうセンスも含めて」

「そうなのよ・・・」

お姉さんにしては珍しくがっくりと肩を落として

「ここの内装と外装、全部私がやったんだけどね、放っておいたらどうなったと思う?
金閣寺よ金閣寺。落ち着かないことこの上ないわ。その時随分喧嘩してね。
まあ、私が負けるはずはないんだけど。
でもね、あの名前と看板。あれだけはガンとして譲らなかったのよ。
『これだけはいくらお前の願いとはいえ、聞くことはできぬ!』
とか言っちゃって。確かにそれ以外のほとんどを私の思い通りにしちゃったし
ひとつくらいは言う通りにしてあげようと思ったんだよね」

お姉さん、困った顔してるけど目が笑ってた。

「幸せ?」

って聞いたら

「うん」

恥ずかしそうな顔。


結局のろけられちゃったけど、お姉さんと話できて良かったと思う。
さっきエルンストさんの力になりたいって言っちゃったし
いろいろがんばろうって思った。

その後すぐ、お姉さんは寝ちゃって、私はまだ眠れなくて窓から空を眺めた。
いつも見ている空よりもずっとたくさんの星が散らばってた。
一瞬、流れ星が目の前を横切って、でも願い事を唱えることはできなくて、
でも、私は私の力で願い事を叶えるんだって強く思った。
そしてきっと、エルンストさんも自分の力でやりたいことをやっていくんだろうな
って思った。

そう考えたらすっごく、すっごく気持ちが良かった。
明日また、エルンストさんに会える。

「幸せ?」
「うん」

ひとり繰り返して、少し照れた。








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