エルとるいとランデーとれいの日記

パート8


久しぶりだね!アハハ!日記!!日記 SIDE:ランデー

やあ!段々寒くなって来たよね!新年も近いって感じ?
え?何を言ってるのかって?イヤだなあ。今は12月だよ!アハハ!!

それはそうとして12月24日は文化祭の打ち上げだったんだよな!
るいさんからは、『あんた馬鹿?』って言われたけど何でだろうな?
結構予約取るの大変だったけど、友達に言ったら一発だったよ!有り難いよな!!
れいちゃんには『ふーん。24日何だ……アンタこんな事してる暇あるのね』って言われた
『れいちゃんも来るだろ?』って言ったら『行ってもいいワヨ』だってさ!良かった!!
ゼヘルも誘ったんだけどさ、『何でそんなとこに俺が行かなきゃなんねーんだよ!』って
『だって、ゼヘルも参加したじゃないか!』って言ったら、
『そーゆー問題じゃねぇんだよ!!この馬鹿!!』って頭抱えてたよ!頭痛かな!!

で、結局ゼヘルは来なかったんだけど、他の皆は結構来て良かったよ!!
それで、先生も来たんだけど、乾杯したら動かなくなっちゃったよ!アハハ!!
んで、部長だからって言うんで、れいちゃんと、何故か凄く張り切ってるるいさんが介抱しに行って、
そしたらエルンストさんが来て、『あの文化祭は成功と言えるのだろうか……』
って悩んでたから、『成功に決まってますよ!!』って元気付けておいたよ!!
売り上げも良かったしさ!!何を心配してるんだろうな?!
責任感かな?やっぱエルンストさんは常に上を目指すっての?さすがだよな!!

れいちゃん達が戻って来て、
『るば先生、奥さんが迎えに来たヨ。スッゴク仲いいんだネ』
って。あ、俺挨拶しようと思ってたのにな!!
『そうかーもう帰っちゃった?』
って聞いたら、
『帰ったヨ!』って何だか怒ってる風だった。

何怒ってんだろ?ああ、腹減ってるのか!っと、取り分けておいた食べ物渡したら、
『お!ランデー気が利くじゃん!!』
っとるいさんが真っ先に食べてたよ。
『あ、それワタシのー!!』『先輩に譲るべきでしょ!!』
なんてさ!仲良いよな!!
『ワタシの唐揚げ〜〜!!』ってれいちゃんそんな唐揚げ好きだったのか?
じゃあと思って俺んとこにあったやつあげたら、固まってた
やっぱ人んとこにあるヤツは嫌だったか?ってそう言ったら
『ベツにそうじゃ無いモン!自惚れないでヨ!!』
って良くわかんない返事が来たよ!ま、いっか。アハハ!!

そんなこんなで次は2次会なんだけど、
気付いたら、俺とれいちゃんと、エルンストさんとるいさんが残ってた。
『親には良い言い訳になるよな!サンキュー!ランデー!!お前もうまくやれよ!!』
とか言い残して去ってった友達もいたよ。どーゆー意味だろうな!アハハ!!

そしたらエルンストさんが帰ろうとして、それをるいさんが力ずくで引き留めてた
楽しそうだよな!アハハ!!
れいちゃんが、『あの二人は二人でイイんじゃない?』って言うから、
それもそーかなと思った瞬間『お・ま・た・せv』と
るいさんがエルンストさん引き摺って帰って来た。


じゃあ皆でれっつごー!!って言って、お店に向かったら
れいちゃんがすっごい不機嫌になっちゃってさ
「チョット! ここってイカガワシイお店なんじゃないの?
 ほんとにここ? ヤバいよ。ワタシ帰る!!」
って言うんだよな。でも大丈夫!知り合いの店だしさ!ここの皆は口固いから!!

皆に迎えられて入ったら、どうやらるいさんと、ヴィエママは知り合いみたいだった!
やっぱるいさんは侮れないよな!アハハ!!
「バーテンの術を会得したらしいじゃな〜〜いv作ってヨンv」
ってお姉さん達が言うからさ!色々披露したらすっごく喜んでもらえてさ!
やっぱ気持ちイイよな!!

そしたら、お姉さんの一人が「彼女のイメージに合うの、作ってあげなさいよ」って
れいちゃん見ながら言うんだよな。オッケーオッケーって言ったものの、
正直レシピは憶えて無かったからさぁ(ゼヘルにはすげぇ怒られたけど)
ピンクとか可愛いかなぁと思って、グレナデンシロップとかと色々混ぜて出したら
お姉さんが『アンタ、やるじゃん』って。
何でかと思ったら、”ピンク・レディ”っていうカクテルなんだってさ!
カクテルのヒロインって言われてるらしいよ!!

そしたられいちゃんすっげえ機嫌良くなってさ!良かったよな!!
「もう一杯〜〜〜v」
って、かなり飲めるんだな!れいちゃん!!
んで、暫くしたら突然エルンストさんが

「1番! エルンスト! 脱ぎますっ」
て、立ち上がった。
れいちゃんも楽しそうだよ!良かった!!
んじゃあと思って、

「1番!ランデー脱ぎまーすっ♪」
って言ったら、

「にゃにぃ!!1番は私だっ!!間違えるなぁっっっ!!」

ってエルンストさんが掴みかかって来たよ。
こんな時でも秩序は守るんだね!流石だよな!アハハ!!

そんな事してたら、いつの間にか朝になっててさ!
れいちゃんは途中で寝ちゃって全然起きないから送って行ったよ!
ちなみにエルンストさんも寝てたんだけど、起きてから
『私は今迄何を……』って呟いてた。
るいさんは、全然変わらず騒ぎ続けてたよ!さすがだよね!アハハ!!



どこ行ってたのヨ!…お帰り日記 SIDE:れい

えっと……ジツを言うとあんま覚えてない……
覚えてることと言えばー……

ランデーのバカッタレがよりによってイブに打ち上げやるって言って、
ランデーにはワタシと一緒にどっかに行くとかそんなつもりゼンッゼンないことがわかって。
で、途中で二人きりになれるチャンスいくらでもあったのに、
やっぱりあいつにはそんな気がまるでなかったみたいってこと。

バッカバカシイよネ! ホント。
そのクセに普段、好き好き光線発射してくるんだからワケワカンナイ。

あ〜あ。るば先生んとこ、いいなあ。
スッゴク仲良さそうだった。るば先生ったらいつも以上に目尻下がっちゃって、
人目もはばからず嬉しそうな顔。
いいナ……。
これがワタシとランデーだったら…………


「んもv ランデーったらよっぱらいさんv」
「ごめんよれいちゃんv 僕のれいちゃんv 愛してるよれいちゃんv」

そしてきゅーーーってだきつかれちゃったりしてvvvvv


て………………私、バカ?
なんかるいセンパイの妄想癖がうつっちゃったみたいなんだケド。
怖い! これってものっすごく怖いんだケド!!

で、そのときこっちに来たランデーを見ると、いつもみたいに目尻下がってるのね。
節操なくいっつもニコーって笑ってる。
ワタシが怒ったってお構いなし。勝手に解釈して勝手に笑う。
ホントはこいつ、バカなんじゃないの?
あれでワタシより勉強ができるってのがどうしても信じらんないヨ。
……まあね。そんなギャップがいいんだけどさ……。

でも! このノーテンキな顔みてるとなんか腹立つのよネ!
たまにワタシに気を使ってくれるトキあるんだけど、
そうなると決まってるいセンパイが来るってどーいうこと?
ゼッタイ邪魔しに来てる! アノヒトってそーいう人!


えーっとそれからー……二次会に行ったんだよね。覚えてないけど。
なんか気がついたらタクシーに乗ってた。
で、隣にランデーがいて、
窓によりかかって寝てた。

「ランデー」

声をかけたけど返事は返ってこなくって。

ちょんって、ほっぺたつついた。
起きなかった。

ランデーの顔をまじまじと見た。
おとなしくしてればかっこいいのに。
差し込んだ光に照らされて髪の毛が薄い茶色。キレイ。

やっぱり起きない。

だから。

魔が差したっていうのかな、コレ。



クチビルに、キスをした。



ワタシ、しちゃった。キス……。

怖いくらいドキドキした。

どーしよー…………。


「ふご」

起きた!?
コントかと思うくらいワタシの体が跳ね上がった。

「………………………………むにゃ……」


こんの…………ガキ!!
この縮まった寿命をどーしてくれんのよぉ!

……ま、まあね、気がつかなくってよかったんだケドさ。


あ〜あ。おいしいごはんでも食べてんのかな。
寝ながら笑ってるよ。おかしな奴。

まいったな。ワタシばっかりヤマしいんだ。
ゴメンねランデー。寝てるときにキスしちゃって、ホントにゴメン。



日記−25 SIDE:エル

………一体何があったのだろうか。
文化祭は客観的に見ると成功であったらしい。
割りきれない気はするが、それはまあ良しとしよう。

目覚めた時、何故ベルトが後ろ側で止めてあったのだろう。
これでは外しにくいでは無いか。
頭のネクタイは誰が結んだのか。
眼鏡は何処だ。何故ツリーが倒れている。
帰りがけに部長を背負ったランデーが
『それじゃ今度は元旦ですね!アハハ!』
と言い残して去って行った。

何がだ。

不可解な事だらけである。



日記−25 SIDE:るい

エルンストさんったら朝っぱらからすっごい不機嫌だった。
ホテルのロビーで足を組んでふんぞり返ってるエルンストさん。
なんかこの人、段々私のイメージから外れていく気がするわ……

「おはよう、エルンストさん。今日は天気で良かったねー、めでたいねー」
「……なにがめでたいものですか」

そう言って足を組みなおしてはあーっと息を吐きながら顎を後ろに反らせて
ソファに頭を預けるエルンストさん。喉仏がいっそう強調されてる。

「エルンストさん、やっぱりスーツ似合うねぇ、かっこいいねぇ」
「はいはい、それはどうも」

体を仰け反らしたまま、おざなりに礼を言われた。
なんか随分疲れちゃってるみたい。
ラフな雰囲気に気が緩んだ私は ちゃっかり真横に座ってその立派な喉仏を鑑賞した。

「もうお姉さんに会った?」
「……ええ、会ったというか付き合わされたというか、
ずっとさっきまで一緒で……はぁ…………いい迷惑だった」

上下に動く喉仏。しゃべるとこくこくと動く。

「あ、そうだ。初日の出見た?」

はあ〜〜〜〜〜っ

心底忌々しそうなため息が上に向かって吐き出されて、
頭をソファに預けたまま、エルンストさんがこっちを向いた。

「見てない」

うらめしや〜 って感じ。
その後、ものすごい勢いで、いかに自分が不幸かを語られてしまった。
この人、しゃべりだすと止まんないんだよね。

ああ、私もこんなエルンストさんに随分慣れちゃったもんだなあ。
それこそこっちに唾を飛ばす勢いで(嫌じゃないんだけどv←ヘンタイ)
演説をおっぱじめたエルンストさんを、
慈愛の聖母のような微笑を浮かべつつ相手して差し上げました。


話によると、昨日の晩から今朝までずーっと、
エルンストさんは家族みんなとカラオケに行ってたらしい。
「最後なんだから」って言葉にまるめこまれて気が付いたら日が昇っちゃってたんだって。

物心ついた頃から初日の出を欠かさず見てきたのにどうしてくれるんだ
なんて言われても、私にどうしろって言うのかしら。おかしな人ね。
というか その十何年かの間には曇りだって雨の日だってあったはずなのに
エルンストさんの中ではなかったことになってるのね。素敵に変換されてるわね。

でも 熱心に話すエルンストさんは心なしか生き生きしていて、
実のところこんな災難を喜んでいるんじゃないかって思うくらい。
本当はお姉さんに振り回されるの、嫌じゃないんじゃないかなあ。

なんて思いながら微笑ましく聞いてあげてたら、サワヤカ声が上から降ってきた。

「おはようございます! エルンスト先輩! るい先輩!」

1回1回私たちの顔を覗き込みながら、ランデーが挨拶してきた。
ああ、ああ、いっつも元気だねー。年が変わっても変わんないねー。

「今日はおめでとうございます! エルンスト先輩!」
「だから……ちっともめでたくないと何度言えば……」
「え? 俺、今日初めてそれを聞きましたよ?」

エルンストさんの不機嫌なんてお構いなし。
ランデーはにこーっと笑って首を傾げた。
こうするとちょっと可愛いのよね、ランデーって。

「……そうでしたね。とにかくめでたくなんてありません。
元旦に初日の出が見られなかったなんて、先行きが思いやられます」

話が噛み合わないことに、ランデーはまたも首を傾げて私を見た。


今日がなぜめでたいか。
もちろん今日は元旦明けましておめでとうなのでそれだけでもめでたいんだけど、
1月1日。本日はエルンストさんのお姉さんとジュリーさんとの結婚式なのです。

どうして新年初日に結婚式をやるのかというと、
ジュリーさんの強い希望により、とのこと。
金ピカ大好きジュリーさんは、一年で一番めでたい日も大好きみたい。
みんなの反対を押し切って強引に、そして急に決めちゃったんだって。
私も聞いたときはびっくりしたー。


「オハヨウゴザイマース」
「うわ! れいちゃん、さっすが綺麗ねー、かわいいねー」
「ア、アリガトウゴザイマス」

胸元が大きめに開いててそこに光る小さな宝石。手首にはひらひら。
膝丈のスカートから覗く足がすらっとしてて、思わずみとれちゃう。
これで高校生。しかも私より年下だって。驚きだわ。

「れ〜いちゃ〜んv」

さっそくランデーがれいちゃんのとこへ行って両手を広げて褒めちぎってる。
あららー れいちゃんのまわりをくるくる回って、うわ、恥ずかしい奴だ。
ランデーは思ったこと全部そのまま、(脳)みそ通さないで言ったりしたりするからなー。
なんかもう脊髄反射って感じ?(この話を後でエルンストさんにしたら、
「脊髄反射というもの」について懇切丁寧にしつこくたくさん説明してくれたけど、
何も披露宴の間中ずう〜っとするような話じゃないと思った。でも止められなかった。諦めた)

ランデーもさ、ひとことでかっこよくキメたらいいのに何度も何度も繰り返すし、
ま、褒め言葉はあれくらいしつこく言われても悪い気はしないかも。
その証拠にれいちゃん、むすくれた顔しようとしてるけど全然成功してない。
ものすごい赤くなっちゃってるよ。
あれだけ手放しで褒められたらいくら相手がランデーでも照れちゃうのかもね。

ちょっとからかってやろうかと思って近づいていったら、
ランデーが「ひ・み・つ」なんて言ってた。
ちょっと! そのもったいぶった言い方、生意気よ。

「ひみつってナニよ! 教えてヨー!!」

私もれいちゃんと同意見よ! 教えなさいよ!

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…………!

詰め寄るれいちゃんをさっとかわして、ランデーは
笑いながら風のようにフェードアウトしていったわ。一体何だったのかしら。

「れいちゃん。今の何? 何の話してたの!?」
「シ、シリマセンヨ! センパイにはカンケーありませんから!」

サーモンピンクの唇を尖らして、れいちゃんもどっかに行っちゃった。
何よ何よ! 二人して除け者にして。いっつもそうよ。どうせ私は邪魔者よ。
体育祭の時だって…………

……フッ、嫌ね。私ったらそんな前のことをいつまでも根に持っちゃいけないわ。
私にはエルンストさんがいるじゃない。

「エルンストさ〜んv」

振り向いたらもういなくなってた。ちっ……



さて、気を取り直して肝心の披露宴。
いやー、なんかもう、これ以上ないっていうくらいヘンだった。

天井にまで届きそうなでっかさの金屏風。(どっから持ってきたんだろう?)
その前にふんぞり返ってる金ピカスーツのジュリーさん。(満面の笑み)
その隣、お姉さんはかろうじて白のウェディングドレス。
でも頭はこれでもかっていうくらい金色。(ひきつった笑顔)
主役が全然見えなくなるほどたかれたスモーク。(ていうか、隣のエルンストさんすら見えなかった)
混乱の中、司会者ランデーが「いつもより多くたいております!アハハ!」

ようやく煙がはけて、もうこれで安心と思ってたら
いきなり「オリーブの首飾り」が流れてきて、蝶ネクタイの男の人とレオタードの女の人登場。
主役二人をでっかい箱に押し込めて、ワン、ツー、スリーであっという間に消しちゃった。

ざわめきをよそに、マジシャン二人は笑顔で退場。
残された私たちはどうすれば? 主役のいない披露宴なんて意味ないじゃない。

1分後、天井がパカッて開いて、うわっ!
キラキラキラキラした物体がゴンドラに乗って降りてきた。

な…………あれ以上ハデになるわけないと思ってたけど……
ふ、二人ともいつの間にか金ラメ衣装に着替えちゃってて、スポットライトあびて、ま、眩しいよっ!

ジュリーさん、こんな服着てて恥ずかしくないんだね。むしろ誇らしげ。
お姉さんは堂々と怒った顔してた。当たり前だよね。
今日のこの演出、どう見てもジュリーさんの趣味だよね。かわいそう。
ま、他人事だけど。見てる分には面白いものよね。


ゴンドラがゆっくりと地上に到着すると、嫌そーな顔したお姉さんが
ジュリーさんに手を取られて降りてきた。途端、入り口の扉がバタン!

「ジュリー様!!」

うわv かっこいい! 真っ赤な髪が精悍な顔立ちにぴったりだわ。
カッカッカッと靴音もかっこいいったらv
でも驚き!
私たちが見てる前で赤い髪のお兄さんったらジュリーさんの前に跪いたのよ。

おお!スカー!来てくれたのか嬉しいぞ」
「当然でございます。ジュリー様」
お、スカーそれはどうした?」
「ああ、流石ジュリー様気付かれましたか。これはこの良き日、
ジュリー様ご夫妻の輝かしい未来の為にと私が丹精こめて作成した通称”たまねぎ”にございます!」
おお!スカー!見事だぞ! 見事な細工だ。早速新居に飾ろうぞ」
「お褒めに与り光栄でございます!」

なんなのかしら……ジュリーさんとオオスカーさん、だっけ。
二人の世界で見詰め合っちゃって、抱きつかんばかり。
オオスカーさんなんかすごいよ。滝のように流れる涙なんて、漫画以外で初めて見た。

えと、ジュリーさんが持ってる金色のたまねぎ型したあれって武○館のてっぺんに乗っかってるやつ、よね。
ていうか デカ!
オオスカーさん、あんなのどうやって作ったのよ………………ヘンな人。

おお!スカー。せっかくそなたが忙しい最中駆けつけてくれたのだ。”あれ”をやらぬか?」
「ジュリー様! ”あれ”でございますね?」
おお!スカー。”あれ”でわかるとはさすがそなただ。」
「当然でございます! では早速」

二人手に手を取り合って……はいないけど、そんな勢いでマイクのとこへ。
オオスカーさん、内ポケットから四角いものを取り出してスイッチオン。
イントロが流れてきた。どうやら二人で歌うみたい。

あ、いい声ー。オオスカーさん、やっぱいい男じゃな〜いv
ジュリーさんなんてすっごくうまいよ。すんごい色っぽい声。
ああしてれば普通に見えるのに惜しいなあ。
会場のみんなもハプニングの連続に慣れてきたのか、おとなしく聞いてる。
いいじゃない、いいじゃない。
愛する人を二人で守るっていう歌みたい。ちょっと感動しちゃった。

なのに、このまま終わってれば良かったのに、
最後のとこで赤毛の人、やってくれたよ。

「ファイヤー!」

いきなりオオスカーさんが叫んだ。
何? 何なの? 怖い。怖いよー。この人すっごくヘンだよー。

お!スカー。やはり最後にそなたのそれがないと歌った気にはならぬな」
「ありがとうございます。精一杯努めさせていただきましたッ」

見つめあい、笑いあう姿が思わず見とれちゃうほど素敵。はぁ……
……黙ってればいい男なのに……惜しい……惜しいよ二人とも……


あ、惜しいと言えばジュリーさんの幼馴なじみだっていう人も来てた。
ジュリーさんとは正反対の系統ですごい綺麗な顔してて、
長〜い黒髪をうっとおしそうにかき上げる仕草がアンニュイ。

どうやらジュリーさんとは仲が悪いみたいだけど、
披露宴に来てるくらいだから本当に嫌いあってるわけじゃないんだろうな。
と、思ったけど、お祝いの言葉は喧嘩売ってるのかって感じだった。
あれは冗談のつもりなのかな?

そもそも名前からして冗談ぽいというか「暗美子(くらびす)」っていうらしんだけど、

「……私は子供の頃、体が弱かったらしい…………
反対にあれ(ジュリーさんのこと)は
ムカつくほど元気だったそうだ……
母がそう言っていた…………話が逸れたな……
それで、体が弱い子供には女性の名をつけると良いと、どこからか母は聞いたらしく、
「影のある美しい子になれ」という願いも込めて付け直したそうだ……
まったく母の趣味の悪さにも困ったものだ…………フッ……
しかし、こうして大きく育ってしまったところを見ると悪いとも言い切れないのかもしれぬな…………」


ぼそぼそとしゃべる暗美子さん。この人もクセが強そうだったなあ。
でも綺麗な顔だからよしとするか。
オオスカーさんよりは扱いやすいかもね。


そんなこんなでもう、何がなんだかいろいろあって、やっとこさお開き。
会場を出て、ふと後ろを振り返ったら最高級にかっちょいい人発見!
長めの銀髪がさらりと額にかかってて、緑と、あれは金色かな、
猫みたいに色の違う瞳をしててなんか神秘的ーv

「ねえ、れいちゃん。あんな人いたっけ?」
「お嬢ちゃん。その質問には俺が答えてやろう」
「あ、オオスカーさん」

いつの間にれいちゃんと入れ替わったんだろ?
そのオオスカーさんが変な顔をした。

「お嬢ちゃん。”オオ”はいらないぜ。俺の名は「スカー」覚えていてくれよ」

バチッとウィンク。あれ? だってジュリーさんが……

「聞き間違えか? よくあることさ。気にすることは無いぜ」

人の話、微妙に聞かない人ね。
まあいいか。

とにかく、スカーさんの話によると、最高級にかっちょいいその人の名は「蟻男」
「どんなときも蟻のようにこまめに働く真面目な男」っていう意味なんだって。
でも名前の通り、という人じゃないみたい。子供って親の思うようには育たないものよねー。

「それよりな、あいつに『蟻男』って言うなよ」
「なんで?」
「やっぱかっこ悪いんじゃないか? リオって呼ばないとそりゃもう大変なんだ。
あいつの前の彼女、エリーとか言ったな。遠くにいるあいつに向かって
『あ、リオー』って呼んだ途端、ぼっこぼこにされたらしいからな」
「ぼっこぼこ…………」


姿かたちがいいと、どこかしら欠点があるものなのかしらね……残念だわ。
エルンストさんもやっぱちょっと、ていうかすっごくヘンだしなあ。
あ、そういえばエルンストさん、どこに言っちゃったんだろ? やだ、捜さなきゃ!

「それじゃ、これで!」

手を振ってさよならしたら、スカーさんがまた叫んだ……

「また会おうぜ、お嬢ちゃん! ファイヤーーー!!

ファ、ファイヤーはいらないよ……いらないったら……


まあ、楽しかったんだけどね。心残りは蟻男さんと話せなかったことかな。
是非とも「あ! リオー」ってやって速攻で逃げてみたいものだわ。
スカーさんはー……会いたいような会いたくないような。
はぁ、世の中にはいろんな人がいるものよね。ほんと。

とにもかくにも、お姉さん、ジュリーさん、お幸せにねv








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