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今年もよろしくね!アハハ!日記 SIDE:ランデー いやー元旦に結婚式なんて、やっぱジュリーさんはひと味違うよな! いきなりケータイメールで『元旦に司会を頼む』って入った時には何かと思ったけどさ! その後お姉さんから電話が入ったんだけど、何だか妙に疲れてるっぽかったな。 やっぱいきなり決まったから準備が大変とかってやつかな? ま、俺は全然問題無いし! んで、打ち合わせもあるしちょっと早く行ったらエルンストさんと、るいさんが居た。 るいさんて、こーゆー時は早く来るよなぁ。 イベントだと早く起きれるんだね!アハハ! エルンストさんは何だか不機嫌だった。やっぱお姉さんが結婚するって寂しいんだろうか? ……って思ってたられいちゃんが来た! あーやっぱ可愛いよなー!! 「恥ずかしいからいい加減にしてヨ!」 って言われたけど、何回可愛いって言っても足りないよな! すっげぇ可愛い以上に可愛いってどう言えばいいんだろうな? 「そ、そういえばこの間は送ってくれてアリガト」 いきなり言うから一瞬吃驚したけど、 「ああ!楽しかったよな!」 って言ったら、何だかちょっと困った顔してた。 なんだろうと思いながら、 「それにさー、俺あの日スッゲー良い夢見たんだよな!」 って言ったら、 「え?ドンナ?」 って見返して来る。こんな顔も可愛いよなー でもさ、夢って人に言うと正夢にならないっていうよな? だから秘密だよな! そしたら 「ひみつってナニよ! 教えてヨー!!」 いくら可愛く聞かれても、特にれいちゃんには教えられないよなー 何だかるいさんに捕まりそうになったから、打ち合わせの場所に急ぐ事にしたよ。 控え室に行くと、そこは別世界だった。 スゲー眩しい。金閣寺でもこんな眩しくなかったよな?アハハ! 「ランデー、今日は司会を引き受けてくれて嬉しいぞ」 ってジュリーさん。すっげぇ上機嫌。やっぱ結婚って嬉しいんだろうな。 「……元旦から悪いわね」 反対にお姉さんはローテンション。緊張してるのかな? 「いえ!全然オッケーです!一年で一番お目出度い日を選ぶなんて、ジュリーさん流石ですね!」 って言ったら、ジュリーさんは更に上機嫌。お姉さんは項垂れてた。どうしたんだろうな? それはともかく、進行表を渡されたんだけど、 お姉さんに『それ、暫定だから』って。当日に暫定ってどうゆう事だろうな!アハハ! 「参加かどうか解らぬ者が居るのだ。連絡が上手く行けば来てくれる筈なのだが…… その辺り、そなたの手腕に頼ってしまう。済まぬな」 サプライズパーティみたいなもんかな?ま、オッケーオッケー!! 『とにかく一生に一度の事、悔いの無い式にしたいのだ』 って事だったけど、さっすがスモークも気合い入ってたよ! 自分の手元も見えないっていうのは、中々出来ない経験だよな! 『衣装替えも、客人を飽きさせる事無く行いたいのだ』 って、やっぱジュリーさん流石だよな!マジックも上手く行って良かったよ! れいちゃんも驚いてたみたいだ。 ちょっとホッとしてた所に、 「ジュリー様!!」 って声が響いた。良く通る声だよなー。 あ!この人が来れるかどうか解らないって言ってた人か! 来れたんだな!良かった!! 進行するまでもなく、何だか勝手に話が進んでるし、スムーズでいいよな! あ、歌のテープも持ってきてるんだ。準備良いよなー いきなりカラオケテープ用意しろとか言われなくて良かったよ。 気配りが出来る人なんだなぁ。歌もかっこよかったし、 あのお祝いは、ジュリーさんの趣味をよーく解ってるよな! それから暗美子さんは幼なじみって事で、 スピーチもやっぱ幼なじみならでわって感じだったよ! それにしてもすっごいケーキだったよなー 天井にも届くぐらいの。しかも金箔が貼ってあるケーキなんて初めて見たよ! 照明落としてライト当てると眩しくてさ!ちゃんと写真に撮れてるかな?アハハ!! ま、そんなこんなで良い式だったよ! 帰りがけ、れいちゃんに、ちょっと後片付けがあるから待っててくれるか聞いたら、 「待ってるのも暇だから手伝ってあげるワヨ」 って。やっぱれいちゃん優しいよな! 「エルンストさんのお姉さん、綺麗だったネ」 って言うから、れいちゃんの方がもっと綺麗だよって言ったら、黙っちゃってさ。 あ、こーゆー時って花嫁さん誉めるのが礼儀だったかな? そしたら、 「今日は元旦なんだから、初詣行こう!」 って急に。何だか今日はれいちゃん色々唐突だなー。ま!全然問題無いし! 行きたい神社があるっていうからそこ行って、 甘酒飲んで、お雑煮とか食べて楽しかったよ! 一年の計は元旦にありだっけ?今年も良い年だよな!アハハ!! あと半年しかない気がするケド日記 SIDE:れい 今年もよろしくネ! さて、今日はワタシ、とっても気分がいいんだー。 誰がなんと言ってもあれはデートだよネ。 ゼッタイゼッタイそうだと思わない? だいたいランデーと関わるようになってから、どれもこれも思ったようにいかなくて、 期待する分だけバカみたいっていうことがたくさんあるから、 このところ、そういうこと考えないようにしてたんだけど、 それでもさ、やっぱりさ、キアイが入っちゃうのよね。 エルンストセンパイのお姉さんとジュリーさんの結婚式、 急に知らせが来て、ワタシは大慌てで貯金を下ろして ドレス買ってそれに合う靴買ってジュエリーも奮発して、 エステにも行って朝は美容院でセットしてもらって、 もう、とにかく、すっごく、すっごーく! タイヘンだったんだから! そんなワタシを見てマル(←弟ね)が 「姉さんも大変だねーv」 ってニヤニヤ笑いながら通りすがりにイヤな笑い方をしていくのよね。 ああ、あいつほんっとナマイキになっちゃって。 親戚連中が見たら卒倒するヨ。 ていうか、親戚に愛想振りまいているあの子を見るワタシの方が、 悪夢を見ているようなキモチになるのよね。 あの外面の良さは一体誰に似たんだろ? 「僕はみんなのアイドルだもんv」 悔しいけど、マルの髪ってすっごくサラッサラなのよね。 おんなじシャンプー使ってるっていうのにドウイウコト? ま、いいや、そんなことはどうでもいいのヨ。 今日ワタシが言いたいのはランデーのこと。 エヘヘ…… なんかね、スッゴク褒められちゃった……v なんか、がんばった甲斐があったなーって思っちゃった。 まあ欲を言えばさ、もうちょっと静かに褒めてくれたら ワタシだって怒らないで「アリガト」って返せたのにって思う。 それだけが残念。 それで、間をもたせようとしてこの前のイブの時の話をしたのね。 でもさ、途端にあの時のこと思い出しちゃって、 うわーやっぱこれシッパイ!ってもう、頭の中真っ白。 でもそんないっぱいいっぱいな顔見せられないから、普通にしてて、 そしたらやっぱりランデーったらあの時夢見てたみたい。 どんな夢か聞いてみたんだけど、秘密なんだって。 ひ・み・つv なんて言っちゃって。 うかつにもそう言った顔にドキドキしちゃったヨ。 どうせ世界一大きいプリンとか世界一長いホットドッグとか そんな程度だと思うんだけど。 で、披露宴が始まって、ランデーがてきぱきサクサク進行してるの見て 正直スゴイ!って思った。 途中でいろいろアクシデントがあったのに、 それをうまくさばけてるし、このままこれを仕事にしてもいいかも。 後でそう言ったら「そうかい?」って結構その気になってて、 目がとっても嬉しそうだったからワタシまで嬉しくなっちゃった。 うん、でもホント、いつもはチャラチャラしてるのに いざという時に頼れそうなカンジで、こういうの悪くないって思う。 ちょーっとニブいけど、それがランデーの持ち味だと思えばネ。 もちろん、そんなふうに思ったことは言わなかったよ。 言えないよ。ハズカしくてさ。 恥ずかしいと言えば、一緒に帰ってる途中、 ランデーが柴犬みたいな目をしてワタシに綺麗だって言ってきたのよね。 もう、こういうのスゴク困る。 何を言ったらいいかわからなくなるじゃん。 でももちろん、嬉しいんだけど。 そう言われたくて綺麗なカッコしてきたんだもん。 まあ、そうね、ランデーは子供なんだよね。 そしてそんなあいつをワタシは好きになっちゃったんだよね。 「今日は元旦なんだから、初詣行こう!」 ちょっとベタな誘い方だけどあれでオッケーだったかな。 付いてくるあいつの後ろにぶんぶん振ったしっぽが見えそうだった。 「いらっしゃい。こんにちは、初めまして。僕は弟のマルおです」 「やあ!こんにちは。俺はランデー。仲良くしような!」 お参りをした後、お雑煮を食べさせてあげるって言ったら、 案の定大喜びで家まで着いてきたランデー。 「いつも姉がお世話になっております」 「いやいや、こっちこそ!」 マルはすっかり舞台の上に上がってて、思ったこともないセリフがすらすら出てる。 「あ、姉さん着替えないの?」 「いいのっこれで!」 一緒に部屋に入ってきた私を見てマルが天使の笑顔でそう言った。 だってワタシがいない間にランデーに何をふきこむか わかったもんじゃないし、第一、せっかくランデーが褒めてくれたから もうちょっと綺麗なままでいたいしさ。 「娘をよろしくお願いしますねランデヒさん!」 「わかりましたー!」 「お父さん!!何言ってるのー!!ランデヒじゃなくてランデー! って、そうじゃなくて、あ!ランデーも何返事してんのヨ!」 そうとう酔っ払ってる父さんはランデーの肩抱いて上機嫌 「あらあら困った人ねぇ、ランちゃんごめんなさいねぇ」 「いえいえすっごく楽しいですよお母さん! アハハ!」 ふと横を見たら、マルがそんな3人をいかにも微笑ましげに見てた。 この子は舞台に立ったら誰も見てない時でも演技を忘れないのよね。 北島マル! 恐ろしい子! 「いやあ、楽しかったよ。ありがとね」 「う……うん……」 ランデーを見送るためにワタシだけ玄関を出て二人きりになった。 父さんも母さんも出てきそうになったんだけど、 天使のマルが二人を押しとどめてくれた。 急に静かになると、少しだけ不安定な気分になる。 それはランデーも同じだったのかな。 「あのさ……」 「ナニ?」 「……いや、いいんだ。じゃな!」 ランデーにしちゃ珍しく言いよどんだりして、 でも一瞬後にはいつもの爽やか顔で帰っていった。 玄関を開けると、悪魔のマルがワタシを待ち構えてた。 「あのさ……」 「ナニ?」 「……いや、いいんだ。じゃな!」 手の振り方までランデーそっくりに演技をして、 北島マルは見事に二人分演じ分けてくださった。 そしてその後こう言った。 「チューくらいすると思ったのに。ちっ、つまんねえの」 ほんっとーにつまんなそーな顔をして2階に駆け上がっていった。 ムッカー!!! 誰よ! あんな子に育てたのは! 覗き見するなんて、しかも再現するなんて、 しかもチョット似てたりするなんて! サイッテー! でも両親に言っても無駄なことはわかりきってるからさ。 いいんだ、もう……ハハハ…… あ、でもマルには言っとかなきゃ。 ワタシはランデーに向かってあんなに乙女チックに首を傾げたりしないってコト! もう演技はヤメたんだもんねー。 ……あれ? 演技………… ワタシも人のコト言えないかもシレナイ……。 日記−26 SIDE:エル こんな事が許されて良いのだろうか? 物心付いた頃から毎年、一度として欠かす事無く見ていた初日の出。 結婚式ごときが邪魔をする権利は無い筈である。 それがどうだ。姉だけならともかく両親までそんな事よりも大事な事があるだろうと言う。 そんな事とは何だ。全く不愉快だ。 無理矢理連れて行かれ、無理矢理歌わされたカラオケで何故か満点が出た。 店員がヤケ気味な祝いの言葉と共に、金色のマイクを賞だと言って差し出した。 その瞬間に姉が『もう金色は沢山よっ!!』と叫んだのは印象的であった。 これから更に金色に囲まれるだろうに、面妖な事だ。 それはどうでも良いとして、 結婚式は実に退屈であった。 今頃は初日の出の余韻と共に過ごしていた筈なのに。 ああ、そういえば、一つだけ中々良いスピーチがあった。 『光有る所に必ず影あり……浮かれている時こそ精々気を付ける事だ…… これからの二人にこの言葉を贈ろう……”人生一寸先は闇”』 全く真理であろう。 日記−26 SIDE:るい 3学期が始まった。 といっても、まともに学校に来るのはこの1月だけ。 あ〜あ、もうすぐ卒業。 頬杖ついて窓の外を見ると薄曇りの空。 なんか珍しくセンチメンタルな気分だわ……。 パッコーン! 「痛! なにすんのよバカッタ…………レエぇぅっ?!」 頭押さえて見上げたら、エルンストさんが無表情でまるめた本を振り上げてた 「耳垢は定期的に掃除していますか?」 「は?」 「耳垢はきちんと取っておかないと肝心な時に使い物になりません」 「はぁ……」 「名前というものは個体を識別する大切な要素です。 自分の名前くらいは覚えておいていただかないと困ります」 「…………言ってることよくわかんないんだけど」 はぁ〜〜〜 ものすごく攻撃的なため息なんだけど、一体私が何したってのよ。 「もういいです。用件だけお伝えします。 姉からの伝言その1。明日家に来ること。 伝言その2。何を見ても驚かないこと。以上です」 「何それ?」 その後のエルンストさんの無味乾燥な説明を繋ぎ合わせると、お姉さんいわく、 『誰か新居に遊びに来て欲しいんだけど、 ものすごく”変なもの”を置いてあるからやたらめったら友達を呼べないし、 だからといってこのことを誰かに訴えたくて、 じゃあ誰にしようかなと思ったときにるいるいのことが頭に浮かんだから、 そうだ今すぐ呼びつけなさいエルンスト。』 ということらしい。 いろんな意味でなんで私なんだろうと思わなくもないけど、 お姉さんの家には興味アリアリだし、何より 「待ち合わせは○時△分。☆駅改札です。遅刻厳禁。それでは」 な〜んてエルンストさんたらv キャ☆ これって二人っきりってことじゃない! そういうことは早く言ってよ。行く行く! すぐにでも行っちゃう〜v そして次の日 「…………なんであんたがいるのよ」 「エルンスト先輩に誘われたんです! 後でれいちゃんも来ますよ!」 あっ……そ。浮かれて損したわ。 そーよね、そーよね。グループ行動なのよね。ええ、ええ。 ランデーの言った通り、すぐ後でれいちゃんが来て、 ○時△分ぴったりに着いたエルンストさんと4人でお家に向かった。 「ス、スゴイデスネ……」 れいちゃんが足を止めて見上げた先には、あの金ピカたまねぎ。 スカーさんがつくったあの物体がちゃんと屋根の上に輝いてた。 それだけじゃなく、予想はしてたけどやっぱ金閣寺……。 前にジュリーさんの経営するペンションに言った時は 森の中みたいなとこにあるからまだよかったけど、 これ、住宅地ど真ん中にあるってどうよ。 しかもここ、超有名な高級住宅街じゃないの。 「なんか帰りたくなってきたね……」 「ワタシモデス……」 「ばっくれよっか……」 「バックレましょう……」 前を歩く男二人組にばれないようにそっと後ずさり。 気づいてなさそうだったからくるっと背を向けて猛ダッシュ! 「待ちなさい!」 びっくぅ! 「私には貴女を家に連れて行く任務があるので。ちょっと失礼」 「うひょわっ! やーめーてーーー」 首根っこ掴まれて、憐れずるずる引きずられてゆく私。 隣ではランデーのニコニコ笑顔がれいちゃんに向かって炸裂。 「どうしたんだい? 一緒に行こうよ。ね?」 手を握られて、あら、大人しくついていってる。 荷物みたいになってる私とは大違いだわ。 まあ…………あのふざけた外観に比べたら趣味がいいかも。 いや、かもじゃなくてすっごくマシ。非常にまとも。 「シャンデリア」ってのも初めて見た。けっこう綺麗よね。 迎えてくれたお姉さんとジュリーさん、すっごく仲良さそうだし、 ジュリーさんなんて王子様みたい。 いいなあ、こんな人にエスコートされる気分ってどんなんだろ。 ソファもふかふか。”ぼふぼふ”と感触を楽しんでる私に ジュリーさんが微笑みかけてくれて、思わずときめいちゃった。 いいなあ。お姉さんったら結局ノロけたいだけなんじゃない。 確かにこの家に入るにはものすごく勇気がいるけど、 中身は大丈夫なんだから、それがわかったら友達だって平気じゃないかな。 「今、茶が入るから少し待て」 ジュリーさんには偉そうな言葉がよく似合うわねv ここにはお手伝いさんがいるみたい。 ううん、多分「メイドさん」ってやつよね。この家は洋風だもん。 うわあ、私初めて見るのよね〜。そういう人。 「失礼するぜ」 ぶーーーーーーーーーー! ドアを開けて入ってきたその人は、その人は…… 「おお!スカー、すまぬな」 ス、スカーさんが、スカーさんが…… 「やあ、いらっしゃい、お嬢ちゃんたち」 キラン☆ と歯を見せて笑うその顔はとってもかっこいいんだけど…… どうして裸エプロンなの?! 思わずお姉さんに問いかけの視線を投げたらあからさまに横を向かれた。 答えたくないみたい。 れいちゃんのほうを見たら顎がはずれんばかりの勢いでスカーさんを凝視してた。 エルンストさんは…………普通にしてる。 ああ、多分知ってたのよね。 ランデーは…………やっぱり普通だ。 それどころかニコニコ話しかけてるし。なんかアットホームな雰囲気になってるし。 どうしてここにいる男どもはこの異常事態に平気で笑い合えるんだろうか。 おかしいから、おかしいから! 絶対変だから! だって裸エプロンは新妻の醍醐味vなのよ!? この場合はお姉さんが裸エプロンするべきよね。(想像中) プッ(想像で鼻血中) ……なんか主張が変な方向へ行っちゃったみたい。 そんな私をよそに、ジュリーさんと裸スカーさんが会話を進行。 「これは我が社で輸入しているものだ。おお!スカー。そなたが見つけてきてくれたのであったな」 「さようでございます。さあ、レディたち、これは俺が長いこと捜し求めてきた味だ。 よく味わって飲んでくれ。あ、コーヒーが苦手だったら先に言ってくれよ?」 だから……かっこつけても裸エプロンだから……ねぇ? しかも胸当てがハートの形してるしさあ……新婚エプロン…… 「あ、ほんとだ! すっげぇおいしいです!」 「だろ? これは○○の□□という場所に◇という人がいてうんたらかんたら……」 「そうなんですか! そこなら※※という人知りませんか?」 「お!▽▽の※※だろ? ※※といえばこの前こんなことがあったぜ」 何やら盛り上がる裸エプロンと人脈男。 ていうか、ランデーの行動範囲ってどうなってんだろ? とりあえずすすめられたそれを飲んでみた。 うわ、すごく香ばしくて飲みやすくて、 「おいしぃ〜……」 「だろ?」 すごく嬉しそうなスカーさん。こうやって無邪気に笑うほうが素敵じゃない。 「私、コーヒーってあまり飲まないんですけど、なんだろ、すごくおいしいです」 「そうさ。そのコーヒーはまさにお嬢ちゃんのためにあるんだぜ。 俺が追求したのは誰もが楽しめる味。かつリーズナブル。 他にもいろいろこだわりはあるが、簡単に言えばそういうことさ」 「あたり前のことが大切なんだぜ」と続けた後ウィンク。 あ、スカーさんがかっこよく見えてきた……裸エプロンなのに…… でももうそんなこともどうでもよくなってきたみたいで、ヤバいかも。 ドキドキし始めた心臓。もしかして……恋しちゃった……? ジュリーさんと思い出話に花を咲かせるスカーさんを見ながら もう一度コーヒーを飲むと、やっぱりおいしくて こういうものを見つけてきたスカーさんを尊敬してしまう。 裸エプロンだけど。 「じゃあ俺は次の準備にとりかかるとするか」 スカーさんは勢いよく立ち上がった。 立ち上がって、くるっと背中を向けたと思ったら ぶはーーーーーっっっ 尻が! 尻が尻が尻が尻が尻が! 思わず飲んでたものを盛大に吹き出してしまった。 まっぱ! まっぱじゃないのぉ! スカーさんったら本当に真っ裸だった。 下着ぐらいつけてると思ってた私がバカだった。 スカーさんを甘く見ていたみたい、私…… お尻をふりふりドアの向こうに消えていった彼。 あの、恋したってのは却下です。却下。 なんか変な幻見ちゃったみたいです。この飲み物のせいかもしれません……。 後でお姉さんに聞いたら、スカーさんは新婚旅行中に突然あらわれて、 その後もなぜか居付いているとのこと。 パダカなのは最初っからで、普段はエプロンですらないそうで。 (ちなみにあのエプロンは元々お姉さんのものらしい) どうして服を着ないのかと問うと、 「俺はいつも家の中じゃこうだぜ?」 なぜそんなことを聞くんだと言わんばかりだったそうな。 仕方なくジュリーさんに抗議したら 「あやつは外国暮らしが長くてな。許してやってくれ」 と、光り輝く笑顔で言われてしまって、反論できなくなったんだって。 「外国はいいけど、その国にはその国の礼儀があると思わない? 朱に交わればしゅらしゅしゅしゅよ!」 怒りのせいでお姉さん、何言ってるかわけわかんなくなってた。 ていうか、この場合は『郷に入れば郷に従え』よね? はぁ……。結婚って大変なのねぇ。 なんかしばらく結婚なんてしなくていいやって気持ちになっちゃった。 あ、でも彼氏は欲しいんだけどな。 そしてできればそれがエルンストさんだといいんだけどなあ。 ……「できれば」ってとこに弱気な私が見え隠れね。 ふん! 私だって現実ってものを知るようになったのよ。 だいいちラヴラヴしたかったらエルンストさんじゃダメよ。 ……だからといって他にいるわけじゃないけど。 ……。 …………。 おやすみなさい。ぐー。 はっ! 唐突だけどそういえば昨日あの時、学校でエルンストさん、 私の名前を呼んでくれたんじゃないの? で、呼んでも呼んでも私が気がつかなかったってことじゃないの? あー……ちくしょー。めったに名前でなんて呼んでくれないのにぃ。 「個体を識別するうんたらかんたら」って そう言うならちゃんと普段から名前で呼んでよね。もう。 あ〜あ、眠れなくなっちゃったよ。悔しくて。 ちくしょお……。 |