エルとるいとランデーとれいの日記

パート11


忘れた頃に来るんだよ!アハハ!日記 SIDE:ランデー

いやー今日も皆元気かな!俺は元気だよ!アハハ!!

この間さ、エルンストさんに誘われてジュリーさんちに遊びに行ったんだけど、
すっげー家だったよ!!やっぱペンションといい、一貫してるっていうのか?
さっすがジュリーさんだよな!!
それにしても、あの家建てるのって相当大変だと思うんだよな。
明らかに規格外だしね。あれ乗せるの相当技術いるし。
誰に依頼したんだろ?聞き忘れたから今度聞いておこう。

ジュリーさんとお姉さんも相変わらず仲良かったよ!
スカーさんも元気そうで良かったし!しかしあのコーヒーを見付けてくるとはさすがだよな!!
あっちの話も出来て楽しかったよ!!

コーヒーはれいちゃんも気に入ってたみたいだから、少し分けてもらって来た。
快く分けてくれてさ!イイ人だよな!!
後は淹れ方がポイントだよな!そうれいちゃんに言ったら、「結構ワタシ上手いヨ」って。
喫茶店でバイトしてた事もあるからだってさ!じゃあ今度淹れてよって言ったら「……イイワヨ」ってさ!
その後に出てきた料理も美味しくてさ!あんな料理が毎日食べられたらいいよなー!!
そうスカーさんに言ったら、
「今時の男は料理ぐらい出来ないとな」
ってウィンクされたよ!カッコイイよな!見習わないと!!
れいちゃんが、「……アンタこの状況に何か疑問はナイ?」って言うから、
「どうして?」って言ったら、「キクだけムダか。ランデーだもんネ」
って何だろうな??

帰りがけ、れいちゃんが、コーヒー飲んでかないかって。
「あ、淹れてくれるのかい?」
って言ったら、ちょっと考えて「ソウネ」ってさ。

れいちゃんちに行ったらマルお君が出てきてさ。
「アンタ何でイルのヨ!塾は?」
ってれいちゃんが。
「今日は休みだよ。姉さん。何だったら僕、ケーキでも買って来ようか?」
ってさ!流石だよね!!だからそう言ったら、マルお君が
「流石って……?」
って聞き返して来た。あれ?何か悪い事言ったかな?思った通りの事言ったんだけどな!!
一人で買いに行かせるのも悪いから、一緒に買いに行ったよ。
途中何だか俺の事じーっと見てたけど、何だろうな?

ま、それはともかくれいちゃんの淹れてくれたコーヒーは美味しくてさ!
途中マルお君がちょっと用があるって言うから見送って、
暫くれいちゃんと話してたらいきなり「アノネ……」って言うから何かと思ったら、
バーンとドアが開いてお父さんとお母さんが帰って来てさ。
見ようと思った映画がスゲー混んでたから帰って来たんだって。
代わりにケーキ沢山買って来たから一緒に食べようって言ってくれてさ!
何で映画の代わりがケーキなんだろな?ま!オッケーオッケー!!

そしたら何故かマルお君もすぐ戻って来たよ。
やっぱり流石だよね。アハハ!!



今は秋だけど冬なのよ!ウフフ!日記 SIDE:れい

キンモクセイがいい香り! 風もすっかり秋らしく……


あれ? 今って冬よね?
なんでキンモクセイなんて言っちゃったのかな、ワタシ。
きっと気のせいランデーのせいね! ウフフ!


それにしてもあの金ピカの家は何だったんだろう?
今考えても不思議なキモチ。
あの家にいるヒトもみんなすっごくヘンだった。
でも、遊びに行ったこっちのみんなは平気みたいだったし、だからかな、
ヘンなのに普通に楽しかった。

ていうかー。
最近思うんだけど、ワタシの周りにいるヒトってみんなヘンじゃない?
ランデーは当たり前だけど、るいセンパイは前々からだし、
エルンストセンパイもさ、よく見るとちょっと変わってるよね。

なんかワタシだけがマトモっていうの?
うちの家族だってお父さんとお母さんは二人して年中頭の中お祭り騒ぎで
マルおなんて何考えてるかちっともワカンナイ

「姉さん、この角度どう? グッと来る?」

姉である私に向かってそんな顎突き出して色気出されてもさー、
気味悪いを通り越して気分悪いってば! ヤメテ!
友達にこの話したら、いいなーって目を爛々と輝かして言われたけどさ、
いくら綺麗な顔って言ったって弟だよ?
弟にグッとって……来るわけないじゃん!

弟がいないとヘンにドリームがあるみたい。
わかってもらおうとしたワタシがバカだったワ。


まあいいや。とにかくワタシがしっかりしなくちゃね。
みんなにはジョーシキってものをわかってもらわないと!
個を大切にとかって言うけどさ、物には限度があるんだから。

特にランデー。
あの金ピカ御殿にいた裸のメイド?さんに何の疑問も持たないってヘンだよ。
話の内容は普通だったケドね。裸じゃなきゃまるっきり普通なのにアノヒト。
……ううん、そういえば結婚式のときにヘンなもの贈ったのってこのヒトよね?

そうそう。それがちゃーんと家のてっぺんに乗っかってたな。
ランデーがしきりに関心してたっけ。
こういうのにも興味があるのね。意外なカンジ。
こんなランデーを見るとけっこうかっこいなーって思う。
この時、手を繋がれちゃってて、実は話の内容全然わかってなかったから、
今度何かのときに聞いてみようかな。

とにかく、ランデーって見た目の軽さと違って中身は割とまともなのよね。
ランデー自身はそれほどヘンじゃないのに、無駄に心が広いせいか、
あいつの周りにいる人たちが個性ありすぎ。ワタシと一緒かな?
うん。だからワタシが側に付いていないとネ! ウフフ!


そうそう。帰ろうと玄関に行ったら、ランデーがいないのね。
どうしたのかなーって思ったら奥からなんか大きな袋を担いでニコニコ来たの。
まるでサンタさんみたいな白い袋。

「どうしたの?」
「さっきのコーヒーを分けてもらったんだ! れいちゃん気に入ってたろ?」
「………………」

だからね、モノには限度ってものが……

「さすがに重いなー。アハハ!」

だからね……。…………もういいや。


センパイ達二人と別れた後、家の場所が逆なのに同じ方向の電車に乗ってきたランデー。
あまりにも当然ってカンジだったから、聞いてみた。

「送ってくれるの?」
「うん」

あ、ちょっとこの顔かわいい。
いつもワザとらしいほど満面の笑顔なのにそれとは違ってて。

でもやっぱりらしくないから、いろいろ話しかけているうちに
段々いつものランデーに戻ってきた。
さっきジュリーさん家でせっかくアピールしたことだしコーヒー飲んでく?って誘ったら
今度はあのバカみたいな笑い顔でニカーッ。

あまりはっきり嬉しそうにされてもさ……照れるヨ……。

ワタシ下心バリバリだったのに。わかってんのかなぁ……って。
今度こそイケルかなあって、思ってたんだよ……?


だーけーどー。


誰もいないはずなのに家に帰ったらマルおがいた。
思わず「塾は!?」って大声出しちゃった。
そしたらしれーっとした顔して、あの外行き用の澄ましまくった声で
「休みだよ」だってさ。
……ワタシって完璧なのになんかツメが甘いっていうか……。

でも外用のマルおはさすが気が利くワネ。ケーキ買ってくるって。
あいつがいない間だけでもランデーと二人きりじゃん?
きっとあいつのことだから適当に時間つぶしてくるだろうし、
ヤッターって思ってたら、ランデーが

「俺も行くよ! ひとりじゃ大変だろ?」

ある意味気が利かないランデー。ていうかわかってないランデー。
これってワザと? そんなことない、よ、ねー??

二人が帰ってきてから、3人でコーヒータイム。

「姉さんの淹れたコーヒーは最高だね」
「そうだねマルおくん!」

マルおのわざとらしさが気になるけど、ランデーが誉めてくれたからいいかナv

その後のマルお。

「用事があるから出かけるね。ランデーさん、父も母もいませんけど
気にしないでゆーっくりしていってくださいねv

ちょっとそんな言い方したらさすがのランデーも……

「そうかい? じゃあお言葉に甘えて。そこまで見送るよ!」

意味、わかってんのかなぁ。
それよりほら、マルおだって困ってるし。普通の顔に見えるけど、
右の頬がぴくって動いてたからわかった。
どうせ玄関先で待機しているつもりだったんだよ?


マルおの姿が見えなくなるまで見送ると、
やっと、やーっと、二人きりv
もう一回コーヒーを淹れてあげておしゃべり。

今日こそはランデーのキモチを聞くんだ! って思って、でも、
ランデーが何をしゃべってるかわかんないままどんどん時間が過ぎちゃって、
しかもどこにそんなに入るんだろう?って思うくらい
コーヒーをおかわりするもんだから淹れるのにも忙しかったし、
もうこのままじゃダメだって、思い切ろうって決心して、
なのに、ナノニーーー!

バッターン!!

「ただいま僕の子供達! ルルルー♪」
「ただいま私の天使達v ラララー♪」


歌いながらお父さん達が帰ってきた……。

そしてやっぱりマルおもすぐに帰ってきて、
みんなでお父さん達が買ってきたケーキを食べた。
もう! 4人家族なんだから15個も買ってこないでよねー。
しかも平等に分けるには1個足りないじゃない? そう言ったら、

「いやあ、さすが母さんだな。ランデー君を入れたらぴったりじゃないか」
「いやだわ。お父さんたら、半分は貴方が選んだのでしょうv」


……ホントこの家族にはついてけない。
どうせ映画代全部つぎこんだんだよ。どうして普通に4個買わないかなあ?
それに誰もいないときにランデーを家に入れたことに対して言うことはないの?

まあね。ヘンな二人だけど、仲がいいのはウレシイかな。
ワタシもランデーとこんなふうに仲良くしたいナ…………。


今回もマルおのお陰で家の門のとこでランデーと二人きりになった。
そこでランデーが気になることを口にしたの。

「マルお君って本当にいい子だね! 性格がれいちゃんにそっくり!」

そっくり?

「でも言っといてくれよ? 俺には気を使うなって。
あ、でもそんなこと言わなくても大丈夫かな? だってれいちゃんの弟君だもんな!」

意味が……

「れいちゃんも地のままが絶対可愛いしな!」

ナニを言って……

「アハハ! 何言ってんだろうな、俺。じゃあな!」


この話をマルおにしたら、両方の頬がぴくぴく動いてチョット面白かった。
それにしても、ランデーって、ヘンなヤツ。



日記−27 SIDE:エル

姉夫婦の新居へ行く事になった。
いきなり電話がかかって来たと思ったら、
『るいるいを連れて来なさい!今直ぐ!!』

落ち着いて欲しいものだ。

一体何を連れて行けば良いのかと問うと、
まだ憶えていないのかとか、ちゃんと普段名前呼んでるんでしょうね。
等と捲し立てられた。

……ああ、そういえばそんな名前だったな。

わざわざフルネームを連呼したというのに、ぴくりとも反応を示さなかった。
自分の名前を忘れていたのであろうか。あり得ないとは言えない話だ。
それはともかくとして、新居はやはり金色であった。
やはりマイク所の騒ぎでは無かった訳だ。
ランデーがやたらと感心して見ていた。

姉夫婦も相変わらずで、スカー氏の淹れたコーヒーは美味だった。

そういえば来る前に、電話で姉が仕切りと、
『もの凄く変なもの』があると繰り返していたが、何の事であったのだろう?

まあいい。

最近やっと天候が安定して来た。天体観測が楽しみである。



日記−27 SIDE:るい

ああ毎日寒い寒い寒い!
どうして冬ってこんなに寒いんだろ!

なんて、当たり前なんだけど言いたい時ってない?
昨日エルンストさんにそう言ったら、

「貴方にも暑さ寒さを感じる機能があったのですね」

機能……。私のこといったい今まで何だと思って…………。

「それはいいとして、寒さというのはうんたらかんたら……」

考えてるうちに説明を始めちゃって、とりあえずふんふんって聞いてたら最後に

「……というわけですので、この時季は寒いと感じるのが普通です。言うだけ無駄です」

と、締めくくられちゃった。
で、言うだけ言ってスタスタ去って行っちゃった。
だから私のこと何だと思って……。
伸ばした手のひらが虚しく空を掴んだわよ。

ふん。

まあいいわ。覚えてらっしゃい!



なんてことがあった次の日、今日のことね。
私はまたエルンストさんのお姉さんに呼びだされてジュリー家へ。
いきなり電話がかかってきて

「すんごいのが来るからあんたに見せようと思って。
スカーのこと気に入ってたでしょ? ある意味今度のはもっとすごいわよ。
ああ、私って親切。ケーキ買ってきてね。あ、金箔の無いやつにしてよ?
わかった? じゃあ絶対来るのよ。私をひとりにしないでよ?」

ガチャ! ツー ツー

もう。エルンスト姉弟は私のこと一体何だと思って……。
でも私っていいひとだからお願いされたら断れないのよねー。

まあ、「すんごいの」に興味が無いといったら嘘になるけど、
ていうか、スカーさんよりすごいって物凄いことよね。
これは行くっきゃないじゃーん!

で、ちょっと遠いけど前々からチェックしてたケーキ屋に行くことにしたの。
(同じ店のを持っていくとお姉さんに「手抜きだ」と罵られるから)


そこのお客さんにさー! ものすっっっっっっっっごい美形がいたのよ!!!

最初は後姿だけ見たんだけど、長い水色の髪が腰まであって、
それが綺麗なこと綺麗なこと。外人が出てるシャンプーのCMみたいに綺麗なの。
あとさ、なんていうかその人が立ってる周辺の空気が全然違うのよね。
なんかノーブルーって感じ。

もう、店員さんがその人を見る目ったらすごかったよ。
人間ってあそこまで無防備にぽーっとなれるもんなの?
それが一人や二人じゃなくて、中で作ってる人も見とれてるんだから。

きっと初めてその店に入ったのね。お店の対応がそんな感じだったし。
これは顔を見るしかない! と思って隣に並んで見上げてみたら。

たーおーれーそーうー

なくらい、びっくりした。テレビでもそれこそ漫画でも見たことないくらい綺麗。
しかも笑ってるのよ? 微笑よ? 美形の微笑よ?
こんなの見ちゃったら自分が人間なこと忘れちゃうよ。ほんと。

「これと、これと……あとこれもください」

美形がしゃべってるー! しかも美声ー!
美形が美声で微笑してるー!

漫画とかで、相手があまりに素敵すぎて倒れるシーンがあるけど、
あれは嘘じゃないね。本当にある話だね。
これがもし私に向かってしゃべってたら、確実に倒れてるよ。



「あんたこれ何? 嫌がらせ?」

お姉さんの家に行ってお土産のケーキを見せたらいきなり言われた。
何のことかと思ったら

「あれだけ金箔は嫌だって言ったのについてるのばっかりじゃないの。
あんた人の話全然聞いてないでしょ。」

ばっかりって、ついてるのは2個だけなんだけど。
そういえば金箔はやめてって言われてたんだっけ。
あの綺麗な人に見とれて忘れちゃった。

「まあいいわ。スカーなら喜んで食べるでしょ」

そんなに怒ってないみたい。良かった。で、今日はスカーさん居るのね。

「ジュリーったらあの馬鹿置いて仕事に行っちゃったのよ。
今日はお客さんが来るから家にいなきゃいけないし。
想像できる? あの裸男と二人きりで同じ屋根の下よ?」

お姉さん、おおきめにカールした髪を片手で苛ただしげにぽんぽん弄びながら
眉間に3つもの皺をつくって私を睨んでくる。
怒った顔も美人だけど、悪いのは私じゃないのに。

「でもだいぶ慣れてきたんじゃないですか?」

気持ちをやわらげてあげられるかと思ったら逆にヒートアップしちゃったみたい。
顔をぐーんと突き出してきて、人差し指で額をぐりぐり押された。
いた、いたた、爪が痛い。

「わかってないわねー。いい? あの男はね、何も着てないくせに普通の顔して話しかけてくるのよ。
天気がどうとか、今日の食事はどうしようっていうのもそうだし、
株価や、ジュリーの会社の取引先のことについて話すときもあの格好よ?
そんなんで返事をしろって言われても困るわよ。
その前にそこにぶらさがってる○○○しまえって言いたいわよ!
「アハハハハ!」
「あははじゃないわよ!」

思わず笑っちゃった。確かにその通りだよねえ。
その時、ドアが開いて白いエプロンがひらり。

「やあお嬢ちゃん! 俺に会いにきたのか?
君を夢中にさせるとは俺も罪な男だぜ……フッ」

確かに夢中にはなっているけど違う意味だし。
今日もスカーさんは裸に新婚エプロン。
お姉さんがいるときもつけてればいいのにと思ってそう言ったら

「家族によそいきの自分を見せてもしょうがないだろう?」

だってさ。お姉さんも気の毒に。「家族」ならしょうがないよね。



「ところで今日のお客様って……」

言いかけたら来客を知らせる音。
新婚エプロンをひらひらさせたままスカーさんが張り切って出て行ったけどいいのかなあ?

「スカーの親友でもあるから大丈夫よ」

へぇ〜〜〜。世の中にはそんな変わった役目を引き受ける人もいるのね。
親友、の言い方が気になるけどどんな人かな?
話も随分はずんでいるみたい。
と思ったら、部屋に入ってきた人を見て腰抜かしちゃった。
ケーキ屋で見たあの綺麗な人が目の前にいるじゃないの!

「こんにちは。あら、お見かけしたことの無い方がいらっしゃいますね。
ご紹介いただけますか?」

あわわわわわ、わ、私のことを言ってるの!?

お姉さんが説明してくれている間、私ったら緊張しすぎて思ったように体が動かない。
そんな私の前でその人はあのノーブルーなにっこり笑顔で自己紹介を始めた。

「初めまして。わたくしの名前は……」
おおっと! ここで突然だがクイズタイムだぜ!」

やけに陽気なスカーさんが私たちの間に割り込んできた。
邪魔! 邪魔よスカー!

「クイズその1。こいつの性別はどっちだと思う?」

一瞬、綺麗な人の眉根がぎゅぎゅって寄って、私の視線に気が付くと
すぐに何事もなかったように元に戻った。
そうよね。そんなクイズ失礼よね。
こんなのすぐにわかるわよ。ケーキ屋で後姿見ただけでもわかったんだから。

「男の人。……ですよね?」

自信はあったけど一応問いかけてみた。万が一ってこともあるし。
そしたら! そしたらー! に〜〜っこり笑ってくれたのよ!
にっこりじゃないのよ? 私の為だけにに〜〜っこりよ?
ああ、美形の微笑が私に向かって微笑んでにっこり……(ちょっと混乱してきた)

そしたらスカーさん、あきらかにがっかりといったふうに肩を落とした。

「5年前はもっとたくさんのお嬢ちゃんを驚かせることができたんだがなあ」

今度はあきらかに綺麗な人がスカーさんを睨んでる。
どうやら5年前は女性に見られがちだったようね。
こうやって緩やかなラインの服装をしているとわかりにくいけど、
けっこう筋肉がありそうな体つき。
もしかして女性に見られるのが嫌で鍛えたのかもしれないなあ。


「じゃあクイズその2だ。こいつの名前を次の3つから当ててみてくれ。
1.リュミエール
2.りゅみのすけ
3.りゅみお」

こういう3択のときって大抵、絶対違うって思うのが答えなんだよね。
ということは……。

「に」

答えたらスカーさん。

「おいおいおい。そんなに即答していいのか? ヒントはいらないか?
よし、特別大サービスだ! いつもなら一番最後に言うヒントを教えようじゃないか」

そんなのまで用意してるのね。しょうがないから聞いてあげようかな。

「こいつの名前はこれしかないって近所でも評判だ。本当だぜ? なあ?」

同意を求められて、りゅみなんとかさんの顔が緩んだ。
お姉さんも深く頷いている。
え? 騙してない? と思ったけど本気みたい。

「わたくしはこの名前がとても気に入っているのですよ。
皆さんにそう言ってもらえるたびにわたくしは、
この名前をつけてくれた両親に感謝の祈りをささげるのです」

わあ素敵。だったら答えは

「いち」
「ハズレ。残念だったな。答えは2だ」

即答したスカーがしてやったりっていう顔で私を見てる。
え? と思ってそのりゅみ……のすけ? さんのことを見たら、なんとも悲しげな顔。
ああああああっ、罪悪感が私をさいなむわ!

「お嬢ちゃんもまだまだだな」

くやしー!! スカーのバカッ! 狙ってたわね狙ってたわね!

「最後のヒントをこのスットコドッコイが言うと皆さん必ず間違えるのです。なぜでしょうか……」

なんか小さい声で聞こえた気がするけど気のせいかしら?
でもこれはみんな間違えると思う。りゅみのすけさんは自覚したほうがいいと思う。

「じゃあ最後のクイズだ。こいつの職業はなんだと思う? 今度は2択だぜ。
1.大工。2.吟遊詩人」

ドラ○エじゃないんだから……

「いち」
「当たりだぜお嬢ちゃん! やったな!」

もう今更当たっても嬉しくないよ。……で、大工ね。大工…………
えーーーーー!?

「この家を建ててくれたのが竜美之輔なのよ」

そーなんですかお姉さん…………。
この見た目で大工ですか…………。
それって、それって………………

素敵かもーーーvvv
ていうか好きーーーvvv

このギャップがたまらないじゃないの! 意外性に人は恋するものなのよ?
そうよ恋よ! ふぉーりんらぶってやつなのよ!

「今度建ててるところを見に行っていいですか?」
「ええどうぞ。(にっこり)」

ああ……とろけるじゃないの……かっこいいじゃないの……


そうそう。この家を建てたのが竜美之輔さんだってことを
ランデーに教えてあげないと。この家の構造を随分気にしてたしね。
そう言ったら竜美之輔さんが「彼にはもう会いましたよ」って。

「随分と熱心な若者でした。一緒にいらっしゃったお嬢さんもかわいらしくて素敵なカップルでしたよ」

ランデーったらいつの間に彼女なんて作ったのかしら!
知らないわよ知らないわよ聞いてないわよ。
くそー。あさって会ったらとっちめてやる!



その後はしばらく和やかに談笑。
スカーが裸なことが気にならないくらい完璧な空間だったわ。
ああ、美形に囲まれるって幸せ……
私はうっとりと3人が話しているのを聞いていた。

「でも、この家を建てるのにいろいろと無理を言ってごめんなさいね。竜美之輔さん」
「いえいえ。確かに金箔を貼る作業などは一般のお宅ではやりませんけど、
その分代金は頂戴しておりますしね。何もお気になさることはないのですよ。
なんといっても暗美子様が『これでしばらく働かなくて済む…………』
たいそうお喜びでしたから、わたくしは全然かまいません

暗美子って、この前の結婚式に来てた黒い髪の人よね。
どうしてここで出てくるのかと思ったら、
竜美之輔さんの勤める工務店の社長さんなんだってさー。
あの人そんな仕事してたのね……イメージってあてにならないわ。

「……でもアレだけはいただけませんね……」

憂い顔の竜美之輔さん。アレって?

「どっかのバカのせいで余計な仕事を……。
アレを屋根へのせるのにわたくしがどれだけ苦労したと……。
いえ、いいんですよ? 余分に代金を頂戴しましたしね。
なんといっても暗美子様のあんなホクホク顔はめったに見られませんし
しかしその原因がこのバカかと思うとわたくしは……ああっ……眩暈が…………」

アレって、スカーさんがジュリーさんにあげた金のたまねぎのことよね。
隣に座っているスカーさんにこっそり聞いたら「そうらしいな」って。続けて小声で

「気にするなお嬢ちゃん。こいつは俺があんな素晴らしいものを作ったもんだから大工としてじぇらし〜を感じてるのさ」
「違います! それに大工は彫刻はいたしません!!」

あら〜。最初の印象はどこへやら。竜美之輔さんったら立ち上がっちゃって。
うわあ。固めた握りこぶしが男らしくって素敵ー

「でも俺は知ってるぜ? お前最近一刀彫を習ってるだろ。
俺に勝とうなんてお前もかわいいところがあるよな。あんまり根詰めるなよ?」
「なぜそれを貴方が知っているのですか!?」
「暗美子さんが教えてくれたんだ」
「………………ああ暗美子様、なぜこんなバカに教えてしまわれたのですか……?」

どうやら勝負あったようね。竜美之輔さん、よよよっとソファに倒れこんじゃった。

それからも二人はいろんなネタを持ってきては喧嘩してたけど、
喧嘩しているつもりなのは竜美之輔さんだけみたいだった。
特にスカーが暗美子さんを呼び捨てにした時は頭に角が似合うくらい怒ってた。
だいぶ暗美子さんを尊敬しているようね。

高校の時にどっちが女の子にモテるか競争してたっていうし、
(あのケーキ屋でのしゃべり方はその時の名残みたい)
親友というだけあって気も合うみたいね。向かってる方向は違うけど。



しばらくして言うだけ言ったらさすがの竜美之輔さんも気が済んだのか、
最後の挨拶のときにはにこにこして帰っていった。
それを3人で見送った後、ふと疑問に思ったことをお姉さんに聞いてみた。

「で、竜美之輔さんは何しに来たんですか?」
「ああ。家の様子を見にね。いつも勝手に屋根に登ったりしているから、
たまには家に寄りなって前に来たときに言ったのよ。
そう言った手前、私がいないわけにはいかないじゃない。
それにスカーと二人だけにして家の中がめちゃめちゃになるよりましよ」

なんか竜美之輔さんってあれでもまだいいほうなんだってさ。
たった一日でこんなに印象が変わる人も珍しいわよ。
あ、そういえばあの時買ったケーキ、持ってきてなかったけどどうしたんだろ?

「途中で食べたんじゃないの?」
「あいつよく駅のベンチとかで缶ジュース片手に直食いするからな」

目で頷きあう二人。
聞けば聞くほど竜美之輔さんのすごさがわかる仕組みになってるのね。
これは是非仕事場を見に行かなくちゃ!



そろそろ暗くなってきたことだし帰ることをお姉さんに言ったら、
エルンストさんに渡してくれって何か袋を渡された。
なんかいいように使われている気がするけど、やっぱり引き受けちゃうのよね。

今日中だっていうからそのままいそいそとエルンストさんの家へ。

「どうもありがとうございます。それでは」

っておい! ちゃーの一杯くらい出さんかコラ。

「………………チッ

嫌々ながら持って来てくれたそれを飲んでみたら、あれ?
どんなまずいお茶が出てくるかと思ったらおいしいじゃないの。
私の真ん前にどっかり座ったエルンストさんにそう言ったら

「貴方だって一応客ですからね」

ずずーっと飲んで「ああやはり自分で淹れたほうがうまいな」とご満悦。
ひとしきりお茶の淹れ方について講釈を垂れた後

「では私はこれから出かけますのでお帰りください」

まったくいつもいつもいつもこの人は自分勝手よね。
予定があるとしてもちょっとはこっちにお伺いを立てるべきだと思うけど。

ま、言っても無駄か。


一緒に玄関を出ると、エルンストさんの手には、私が前にあげた天体望遠鏡があった。
聞くと例の場所に星を見に行くんだって。
私も行くと言うと「勝手にどうぞ」と返された。
これはエルンストさんなりの快諾よね。そう解釈して付いていくことにした。


エルンストさんは現場に着くと、空を見上げて感嘆のため息をひとつついた。
何事にも動じないエルンストさんが唯一心を動かされたことを態度で表すのがこの一瞬。
本当に星が好きなのね。

最初はこの星空にさえ嫉妬していた私だったけど、
今ではほとんど気にならない。
この人にこんなに好きなことがあってよかったと思う。
冬の夜風はものすごく冷たくて、頬っぺたが凍りそうなのに、心はなんだかとても温かかった。


しばらく眺めていたら、いきなりエルンストさんがどっかに行ってしまった。
望遠鏡は置いたままだったから、それを覗きながら待っていると、
手に何か持って帰ってきた。よく見たら缶コーヒー。気が利くー! と思ったんだけど、

「ねえ、なんで一本しかないの? 私のは?」
「あ、いたんですか」

ねえ冗談? 笑えない冗談を言うキャンペーンでもやってんの?

「普通さ、自分の分だけ買ってくるってしないよねぇ?」
「そこに自販機がありますよ」

しらーっとした顔で遠くを指差されちゃった。
そして私を無視してプルタブを開けて飲み始めた。
こ、この男はーーー!

「ちょっと! それよこしなさいよ!」

あんまりムカついたから奪い取って飲み干してやろうとしたら敵もさるもの、
力を入れて取られないようにふんばられてしまった。

「離しなさいよー!」
「何するんですか!」

ちくしょー諦めやがれー! このおー!!

バシャーッ

あ…………

エルンストさんの頭にかかっちゃった……
あらら……雫が長い前髪からぽたぽた垂れてる……アハハ……ハ…………

「何するんですか……」
「テヘ
「こ、こ、こ……このクソアマ!!!
「………………今なんて言ったの?」
「聞こえなかったのですか?何度でも言いましょう。帰れクソ女!


というわけでどうやらものすごーく怒らせちゃったみたい。
持ってたハンカチとティッシュをありったけその手に押し付けて、
これ以上まずい事態になる前に大慌てでその場を退散した。

それにしてもエルンストさん、クソアマなんて言うんだー驚きー。

なんて言っている場合じゃないか。あ〜あ、明日会いたくないなー。
しばらく逃げ回っておこう。学校に行くのもあともうちょっとだし違うクラスで良かった。
あはは、あはは…………。









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