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何故かオトメモードの降臨だってさ!アハハ!日記 SIDE:ランデー 「ああ、雨足が強くなって来ましたね。今日はもう続きは無理でしょう。 折角来て頂いたのに済みません。宜しければまた後日改めて来て下さいね」 「いえ、そんな!こちらこそいきなり押し掛けて済みませんでした!有り難うございます!」 この間、早速ジュリーさんに、ジュリーさんちを建てた大工さんを紹介してもらったらさ、 なんなら明日にでも見に来て下さいって!てな訳でれいちゃん誘ったら、 『イツモ急なのネ』とか言いながら来てくれたよ! 竜美之輔さん凄いんだ!電ノコとか一切使わないしさ。理由聞いたら、 『お使いになる方はお使いになれば良いと思いますが……わたくしはこちらの方が早いですので』 とか言って、墨壷でぴっぴっと目印付けてさ、息一つ乱さず、あっという間に切り上げてった。 『やはり、木材で建てる家の方がやりがいがありますね』 とか言いながら、見事に薄い帯になった鉋屑【かんなくず】がシャーってさ。 継ぎ目の寸法もほぼ一発で合わせるし。 すっごいよなぁ〜〜!! 残念ながら、途中から雨が降り始めて、作業は中断されたんだけど、 その後、『宜しければ工務店の方でお茶でもどうぞ』って!親切だよな、竜美之輔さん! れいちゃんが『手土産、ケーキでヨカッタのかなぁ?』 とか心配してたけど、竜美之輔さんも暗美子さんも、手づかみであっと言う間に平らげたよ! やっぱり力仕事には糖分だしね!! 「それにしても、この雨には参りますね。暗美子様」 「フッ……構わぬ。もう暫く働かなくても良いぐらいの実入りは既にあったからな……天気は我々のせいでは無い……せいぜい待たせておけば良い……」 ってさ!やっぱこの余裕が良い仕事を産むんだろうな!働いてる方も安心だよな! 「いや、しかし嬉しいですね。こんなお若いカップルが、我々の仕事に興味を持って来てくださるとは」 「そりゃだって、あんな見事な家建てた方にはお会いしたいじゃないですかー」 とかって話してたら、れいちゃんが唯でさえおっきな目を見開いて、俺と竜美之輔さんを見比べてた。 「どうしたんだい?れいちゃん」 って聞いたら、 「エ?だって……ウウン!何でもナイ!!」 って何だか真っ赤になって、やけに機嫌が良い。 何でだか暗美子さんが「フッ……」て笑ってたな。 日が落ちるのも早くなって、帰り道はすっごい綺麗な夕焼けだった。 そんな中、 「ネ……ランデー。ワタシ達って、その、カ……カップルとかに見えるのカナ?」 って聞くから、 「え?嫌?」 って聞き返したら、 「イ、嫌だなんて言ってナイじゃない!そうじゃなくって……もうイイヨ!」 ??何膨れてるんだろーな?ま、そーゆーとこも可愛いんだけどさ! ずんずん先に歩いて行くもんだから、追いかけたら突然ぴたっと止まって、くるりと振り向いた。 「カ…カップルとかに見られていいんだったら……その……もっとその前に何かあるでショ!」 とかって、きゅっと上目遣いに睨んで来る。 「アンタはそれでイイかもしんないけど!オンナノコはね!……ワタシはね!!」 ……え?何でれいちゃんここで泣くんだよ? と、れいちゃんの目が驚いた様に見開かれた。 ……って……あれ?俺、今何したんだろ? 薄らいでる夕焼けの中でも、見る見る真っ赤になるのが分かる。 確か…その、こんな夢を見た事があるような。 初夢は正夢だっけ?夢は自分で叶えるものだって?あれ?……って、俺何言ってんだ。 「あの……さ、れいちゃん」 「…………」 「ケーキ………」 「は?」 「その、さっきれいちゃん一個も食べられなかったろ!買って帰ろう!!」 そう言って、歩き出すと、後ろから「なんなのヨ〜〜〜!!」 って声がする。ホント、何なんだ。俺。 暫く歩くと、れいちゃんが力を籠めて、俺の手を引っ張った。 それでもれいちゃんの方を見れなくて、 「……もうちょっとゆっくり歩こうヨ」 って言うもんだから、「そうだね」って言って、 それからゆっくり歩いて帰った。 ときめき!ウフフフフフフ!日記 SIDE:れい …………何から書いたらいいのかな。 エート、エーット………… うん! やっぱり最初から書こうかな。 「れいちゃん明日空いてる?」 ランデーったら突然電話してきて開口一番それだった。 「チョット、そんなこと言う前に相手を確かめてから言ってよね」 って言ったら 「大丈夫大丈夫! わかってるから!」 だって。 わかってるって言ったって、ワタシ、まだ何も言ってなかったのに。 あっけにとられて黙ってたら、待ち合わせの場所と時間を言われて 「はい、メモしてメモ!」って言われて 「じゃあ明日絶対来てくれよ! 待ってるからね!」 で、ガチャ。 いいんだけど、予定なんてなかったし、いいんだけどー。 ランデーってばいつも強引だし、突然だし、 ワタシの都合なんて今まで聞いてくれた試しないんだよね。 それでもさ、嬉しいから、誘われたら100%行っちゃうワタシなんだよね。 そういえばケナゲよね。ワタシってさ。 「イツモ急なのネ」 ちょっとは抗議の意思を表明しておこうかと思って 会って早々、恨みがましく言ってみたの。 「そんなこと言って、いつも来てくれるんだよな、れいちゃんは。 ありがとう! 俺、嬉しいよ!」 にこにこにこっ 天然、天然、天然! 天然ノーテンキバカ! そうよ。いつもそうなのよ。 ワタシ、この顔をされると何も言えなくなっちゃう。 どうしてこんなに………… あああっ、もう! こんなの言えないよ! なんでワタシがこんなヤツに振り回されなきゃいけないの!? なんで追いかけるのがワタシばっかりなんだろう。 話を元に戻して ランデーにどこに行くのか聞いたら、 ジュリーさんの家を建てた人の職場の見学だって。 そんなとこに行くのにランデーってば手ぶらだから ワタシ、慌ててケーキ屋に行ってお土産を買った。 気が利くようで抜けてるところがたくさんあるのよね。ランデーは。 で、行ってみたらあれ?って思った。 だってなんか見たことあるヒトがいるじゃない。 そういえば、ジュリーさんの結婚式の時にスピーチしてたなって途中で思い出した。 それにしても、言っちゃ悪いけど大工さんには見えないよ。 一緒にいたヒトもまた、どう見てもビジュアル系アイドル風情のお兄さん。 でもその印象は仕事を見させてもらったらすぐに変わった。 二人ともスゴイ! 何が凄いってうまく説明できないけど、かっこいいっていうか、凛々しいっていうか。 ランデーもしきりに感心してワタシに同意を求めてきてたけど、 頷かずにはいられないカンジ。 ジツはね、最初ビジュアル系お兄さん、りゅみのすけさんって言ってたかな、 彼の髪型を見て笑いそうになっちゃったのよね。 だって頭にふたつお団子ができてたんだヨ! 髪の毛が長くて量が多い(って言ってた)からってふたつのお団子はどうかと思うワ。 そのうち雨が降ってきて仕方ないから休もうってことになって、 ケーキを出したら、フォークなんてないって言うのよ。 それだったら違うもの買ってくればよかった。たとえば大福とかって ランデーに言ったら大丈夫大丈夫!って。 何が大丈夫ナノヨって言おうとしてふと前を見たら ぱっくぱっくぱっく 「ご馳走様。大変おいしかったですよ」 「うむ。美味だな……」 手づかみで…… だからランデーが大丈夫って言ってたのネ…… 「やっぱり力仕事には糖分ですよね!」 ぱくぱくぱく! ランデーまで…… 「れいちゃんも食べなよ!」 「食べぬなら私が頂いても構わぬか……?」 くらびすさん、半分冗談で言ったみたいだったケド、 ホントに欲しそうだからどうぞ、ってオススメした。 ぱっくん ひとくちで消えてったヨ。ワタシのケーキ。 あの顔から想像できないくらい大きな口だった。 その後いろいろお話していたら、りゅみのすけさんが私たちをさして 感心したように「若いカップルが来てくれて」って言った。 カップル…… カップル! そ、そう見えるのカナ? そうよネ! ランデーがあんまりニブいから自信をなくしかけていたけど、 やっぱりはたから見るとそう見えるのヨ! ヤッタ! だから、帰りにランデーに聞いてみた。 「ワタシ達、カップルに見えるのかな?」って。 そーしたらあっけらかーんとした顔で「嫌?」って、そーじゃなくて! もしかしてカップルの意味わかってないんじゃないの? カップルだったらトーゼンするはずのこと、全然してないじゃない。 そうよ、一体どんなつもりでこんな………… そう思ったら泣けてきた。 今まで届かなかった想いとか、いろいろ思い出して、 ランデーといるとうまくいかないことばっかりで。 ワタシ、人前で泣くのだけはゼッタイに嫌なのに! 男に甘えるようで、そんなの理想のワタシじゃない! かっこ悪い、恥ずかしい、そんな、しかもランデーなんかの為に……! まるでワタシがランデーのこと好きで好きで仕方ないみたいじゃない。 いつだって余裕なのはワタシのほうだったのに。 いつの間にかワタシがランデーのことばっかり考えるようになってきて ランデーはそんなワタシを連れ回して、かき回して、 ココロまでぐちゃぐちゃにして、バカ! ほんとバカ! ……って、思ったら。 最初、なにがおきたかわからなかった。 柔らかい感触が唇に…… これって、これって…… 唇が離れて、やっとわかった。 キス、されたんだって。 顔が見れない。力が抜けて、立っているのもやっと。 キスってこんなだったっけ? 前に眠ってるランデーにワタシからした時とも違う。 こんな、こんな、ただ触れられただけなのに、こんなに…… もう何も考えられない。何も言えない。 「あの……さ、れいちゃん」 ランデーが何か言ってる。 「ケーキ…………」 ケ、ケーキ……? 「は?」 素っ頓狂な声が出ちゃった。ランデー、こんなときに何言ってるの? そう思ってたら、ケーキ買って帰ろって言って、スタスタ歩き出しちゃった。 なんなのヨ〜! 急いで追いかけて、すぐに追いついたんだけど、 どうやって話しかけたらいいかわかんなくて、 ランデーは止まんないし、しかも早歩きだし、 すごく迷って、しばらく付いてって、で、思い切って手を掴んだ。 「……もうちょっとゆっくり歩こうヨ」 こんなにドキドキしたのなんて初めて。 「そうだね」 ランデーが、ぎゅっと握り返してくれた。 ウフフフフフフ! ランデーダイスキ! そーいえばりゅみのすけさんが今日買っていったケーキのお店の場所を 必死の形相で聞いてきたんだけど、そんなにケーキが好きなのかな? やっぱりランデーの言った通り、”力仕事には甘いもの”なのネ! 日記−28 SIDE:エル あのクソアマあのクソアマあのクソアマ!! よりによって、よりによって 俺の前髪に何て事を!! 決して許さない。 日記−28 SIDE:るい 私、もう既に今世紀最大の驚きを体験しちゃったよ。 ね、どういうこと? 何なのこれ? 「ハイ、ア〜ンv」 「あ〜〜〜んv」 何なの、この光景……。 ランデーとれいちゃんがおままごとしてる…………。 教室だってさして広いわけじゃないのに 二人の周り、少なくとも半径2mくらいスカスカよ。 そしてみんなチラチラ横目で眺めたり、ポカーンと口開けてたり。 そうよね。驚くよね。怖いよね。何これ? どうしちゃったの二人とも? 「れいちゃ〜ん……」 この私がびくびくしながら声をかけるなんて信じらんない。 「あ、センパイ。コンニチワv」 「るい先輩!俺たちに用事ですか?」 いつも通りって言えばいつも通り……な気がなきにしもあらず。 「用事っていうか、聞きたいことがあったんだけど……」 ああっ、なんで二人ともキラキラした眼差しで私を見るのよ! 目が潤んでるっちゅうのよ! 幸せそうじゃないのよ! ……ああ、そういうことね、ランデー、わかったわよ。 嫌んなるほどわかりましたよーだ。あっかんべー! 「……だけどもういいや。たった今解決したから……じゃーねー……」 力無く手を振るわたし。 対して「バイバーイv」とコドモみたいに元気よく手を振るバカップル。 この日、こいつらは部活でもラヴラヴバカップルぶりを発揮して 他の部員も次々にハニワみたいな口にしていったのよ。 エルンストさんを抜かして。 もうほんと、この男は人が何してようがまったくお構いなし。 特定のこと以外は全然興味ないみたい。 そう。たとえば触覚、もとい前髪とかね……。 明らかに私を敵視してるんだけど、どうしてこんなに大人げないのかしら。 最初は逃げまわろうって思ったけど、やっぱりそれじゃ解決しないし、 このままじゃお互いに楽しくないし、許してくれるまで謝ろうって思って ちゃんと部活に出て、私から離れようとするエルンストさんを捕まえたんだけど。 「この前はごめんね」 「………………」 「悪かったと思ってるよ」 「………………」 「コーヒーちゃんと落ちた?」 「………………」 「でも元通りになって良かったよ。ほんと」 「………………どこがです?」 「は?」 「どこが良かったと貴方は言うのですか?」 うっわー、そんなに睨まないでよ。コワイじゃないの。 「あれから私がどんな思いで帰宅したと思っているのですか? 私の自慢の前髪が!貴方がぶちまけたコーヒーのせいで! めちゃくちゃの!ぐちゃぐちゃに!なったんですよ!?」 ああまあ確かにそうだよねぇ。だから悪かったと思ってるよ……。 「だからごめんって……」 「なんですか、その謝り方は!!」 うっひゃ〜。なんなのよ。なんでそんなに怒ってんのよ。 ほら、みんな見てるよ。びっくりしてるよ。はぁ〜……。 「よりによって、俺の前髪を……」 「俺???」 「もう貴方とは二度と口をきかないからそのつもりで!」 「はぁ?」 ……いい加減にしてよね 「そもそもアンタがいけないんでしょ!?」 もうこうなったら我慢なんてするもんか! 「いくら私のことなんとも思ってないからってね! あんな態度失礼よ! ちゃんと人間扱いしてよ! コーヒーだって私の分も買ってきてよ! じゃなかったら自分だけ買ってきて飲まないでよ! それでなかったら私にも分けてよ! ひとくちくらいいいじゃない! ケチ!」 あれ? なんかこれじゃコーヒーが飲みたくて怒ってるみたいじゃん…… 「べ、別にコーヒーが飲みたくて言ったんじゃないわよ!」 弁解すればするほど変かも。 あ、エルンストさんが口をぽかーんと開けてる。あのテニスの時に見た以来かも。 もういいや。言うのやめよう。 「じゃ、じゃあね! ごきげんよう!」 ……シマらない……何よ「ごきげんよう」って…………。 結局、謝って許してもらおうと思ったのに、更に溝を深めちゃったと、こういうわけで。 しかも間抜けな怒り方しちゃって、どこまでバカなのわたし。 ……あんまりバカで涙出ちゃったわよ……。 コーヒー飲みたいって言って涙出すなんて。 しかもこんなボロボロ泣くなんて。 部室の扉を閉めたら抑えがきかなくなっちゃて。 私ったら高校生にもなって泣きながら家に帰った。 「で……やっぱこうなるのよね……」 「どうしたんデスカ?」 ランデーと手をつないだれいちゃんが幸せいっぱい夢いっぱいな顔して 私のこと見つめてきた。 予想はしてたのよ。 ランデーに誘われた時点でこうなる予想はね。 「あ! エルンストセンパイこんにちは!」 ランデーがれいちゃんを引っ張って走っていった。 私はというと…………やっぱり近寄れないのよね。 困ったなあ……エルンストさん来てたよ…… そう思っているうちにエルンストさんたちがジュリーさん家の門を入っていったから、 とりあえず私も行くことにした。帰るわけにはいかないし。 どでかい門をくぐって歩いていくと、人だかりがしているのに気が付いた。 なんかみんな上を見てる。何だろうと思って見上げると、 屋根のてっぺんにあるスカーの作ったたまねぎの所に誰かが乗っかってた。 何してんだろ? とにかくこれを見せようと思って私たちを呼び寄せたみたいね。 ちょっと面白そうじゃないの。 あ! あの端っこにいる赤頭はスカーね。さすがに外だから服着てるんだ。 「スカーさん!」 聞こえないみたい。 「スカーさん!」 近寄りながら、しかもさっきより大声出したのになんで振り向かないの? わざと? こんにゃろー。こうなったら呼び捨てしてやる。 「スカー!!」 ……振り向かないよ。 それどころかエルンストさんが振り向いちゃったわよ。 目が合っちゃったじゃないの! 気まずいわよ! どうしてくれんのよスカー! あの赤頭〜〜〜っ!はたいてやる!はたいてやる! そう決めて、勢いつけてスカーに近づこうとしたら、足に力が入らないじゃないの! エルンストさんと目が合って気が動転しちゃったみたい。 そのことに気が付いたのは体が傾き始めた時だった。 「おっ」 地面につまずいた。 「スカ〜〜〜……」 「なんだいお嬢ちゃ……ん!?」 地面と仲良くする直前、スカーが振り向いたのがわかった。 手を伸ばしたのもわかったけど、2歩も3歩も遅いよスカー……。 「すまなかったな、お嬢ちゃん。俺としたことが、レディを危険な目に遭わせてしまった」 怒りたい気持ちはやまやまだけど、スカーがほんとにすまなそうな顔をするから、 なんとなく怒りそびれてしまった。 「ああ、俺がもっと早く気づいたならお嬢ちゃんが怪我することもなかっただろうに」 (ほんとだよ) そう思ったけど言わなかった。 おでこに薬をつけてくれるスカーの指が優しかったし。 だいいち膝枕よ? みんな見てるのよ。恥ずかしいのよ。 「悪かった。許してくれお嬢ちゃん……」 チュ (お、お、おで、おで、おでこにチューされたーーー!?) 「め、め、めめっめ、め」 「め?」 (こちとらそういうの免疫ないのよ! 何すんのよ!?) 手をひいて立たせてもらってからも、動揺が止まらない。 なんか屋根の上の人に呼ばれてスカーがそっちに行って、 たまねぎに何かとりつける間、上と下で口論してて、 スカーが「ファイヤー!」っていつもの決めセリフ叫んでて、 屋根の上の人がどうしてかわかんないけどハープ弾き始めて。 いったいこれ、何のイベントなんだろうなあと思っているうちに、 またスカーが戻ってきた。 「大丈夫か? お嬢ちゃん」 私のこと、まだ心配そうに見つめてくるスカー。 これがエルンストさんだったらこうはいかないわよね。 「自分で勝手に転んだのでしょう? あそこに薬局がありますよ」 とか言ってとお〜くを指差されるのがオチよ。 ああ、なんであんな人が好きなんだろ。ヤメタヤメタ! もうやめた! 「ねえ、聞いて欲しいことがあるんだけど」 「何だ?」 ほら、こ〜んなに親身になって聞いてくれる。 スカーってちょっと……一部分においてはすっごく……変な男だけど、 女の子の扱いはピカ1だもんね。やっぱり付き合うならスカーみたいな人がいいかも。 私は、エルンストさんとの喧嘩の一部始終を説明した。 適度な相槌を打ちながら聞いてくれるスカー。 こういうふうにしてくれると話しやすいのよね。さすがスカー。 「……というわけなの」 ひととおり話してかなり気分がすっきりした。 スカーはフェミニストだから、口だけだとしても私の気持ちを優先してくれるだろうし、 後は私にとって気持ちのいい言葉を聞くだけv ありがとうスカー…… 「それはお嬢ちゃんがいけないな」 「え゛、私が!?」 思わず目をひん剥いちゃったわよ。 そしてその理由っていうのがこれ。 「男には譲れないものがあるんだぜ。お嬢ちゃん」 気のせいか「男には〜」のフレーズが得意げね……。 ていうか譲れないものって前髪が? そこに至るまでの私の立場より前髪が? 貴方のキャラからいって、ここは私の立場を……。 「そんなこともわからないようじゃお嬢ちゃんもまだまだレディにはほど遠いな」 言いたい砲台、もとい放題じゃないの。 スカー……。 あんなに私を舞い上がらせておいてこんな落とし方するなんて許せない……。 女にだって譲れないものがあるんだから! もう絶対、スカーに心を許すもんか! バカ! バカスカー! まったく、今日という一日は一体何だったんだろう。 スカーがバカスカーだってことがわかっただけ。 あのインチキフェミニストめー。 期待通りの仕事してくれなきゃ困るじゃないの。 でも……おでこにチューはちょっとときめいた……かな? あ〜あ。 結局 スカーも、そしてエルンストさんも、嫌いになれないんだろうなあ。 あ〜あ。 |