永遠の隣 1


こうして揺さぶられると
穏やかな気持ちよさが じんわりと体全体にいきわたる

以前は感じることのできなかった感覚に
アンジェリークはたまらずエルンストの肩をぎゅっと掴んだ

「少し……動きます」

それでも やはりこうされれば痛みが勝る
やはり まだ慣れていないのだ この行為には


アンジェリークは歪んだ顔を見られないよう顔を伏せ
ぐっとエルンストの肩に押し付ける

エルンストの動きが更に激しくなった
それと共に 苦痛はより一層大きくなる
それでも 彼が息を荒げるのを見るのは なんともいえない喜びがあった
だから

「大丈夫ですか?」

と問われれば アンジェリークはこう答える

「大丈夫です…………もっと……きて……!」


どこかで聞いたようなセリフ
それを恥じる間もなく エルンストの動きに耐えるべく
アンジェリークは抱きしめる腕に力を込めた



できてしまえば あっけないものだった
繋がることができないという悩みはある日すんなりと解決した

2度目の喧嘩をしたその日
「今日は何もしない」という口約束はあっけなく破られた
その言葉に安心しきっていたアンジェリークは常になく乱れ
いざその段になって 騙されたことに気づいたのだ

それまでの苦悩が嘘のようにするりと入ってきたそれは
圧倒的な圧力でアンジェリークを蹂躙してきた
しかし一度入ってしまえば恐怖は去り 残るは痛みだけ
驚きと喜びの中にある彼女は 辛いながらもなんとか最後まで耐え切ったのだった


後でそのことをなじると エルンストは得意のしれっとした顔でこう言った

「なりゆきです」

むーっと頬を膨らませたアンジェリークが
小さな声で「嘘つき」と言うと エルンストの指がその頬を一回つつき

「嘘つきの私は嫌いですか?」

と 自信をうかがわせるような表情でアンジェリークを覗き込んでくる

アンジェリークは そんな顔をされたことが悔しくて よっぽど「嫌い!」と
言い放ってしまいたかったが なぜか頬が緩んでしまい
結局口にしたのは「好きです」という 相手の期待通りと思われるセリフだった

そして 予想通りエルンストは嬉しそうに顔をほころばせ
それはそのままいじわるそうな笑みへと移行した
彼がこんな顔をするときはろくなことを言わない
アンジェリークは 今日こそ返り討ちにしようと身構えた

「なりゆきというのは本当ですよ。さきほどの貴方は非常に協力的でしたからね。
とてもよく…………濡れていた」

返り討ちどころか とどめの一発をストレートに決められて
今度は子供のようににこにこした夫に
頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でられてしまうのだった



その後 初めてエルンストの腕の中で迎えた朝のことを
アンジェリークは一生忘れないだろうと思った

人のぬくもりがこんなに温かくて心地いいなんて
そして これほどの幸福がこの世の中にあっただなんて


あの日 初めて見るエルンストの寝顔に
アンジェリークはこうして側にいてくれることの奇跡を思っていた
何度も泣いて 何度も諦めたその人が すぐ目の前にいる

そう
こうして手を伸ばせば 届く距離にいる

そうっと 指で彼の頬を辿った


エルンストは目覚めない よく眠っている
規則正しい寝息が聞こえる

ならばと いたずら心をおこしたアンジェリークは
人差し指をぴんと突き出し エルンストの下唇の真ん中を優しく押した

薄い唇 アンジェリークの体のあちらこちらを愛撫するその唇……

よみがえった記憶にアンジェリークは思わず指を離し
急な火照りを冷ますように 自らの頬に手のひらをあてた


「もう終わりですか?」
「ひゃっ!」

気が付くと エルンストが笑ってアンジェリークを見ていた

「お……起きてたんですか?」
「ええ。だいぶ前から」

そう言って楽しそうにしているエルンストは
別人かと思うような錯覚をアンジェリークに起こさせた

しかしそれは 眼鏡がないせいなのだろう
いつもかけているあの眼鏡は 彼を必要以上に厳しい人物に見せている
そして 眼鏡をしていないエルンストは
笑うと幼く見えると アンジェリークは思った
もちろん それを言いはしなかったが

そのかわり 両腕をエルンストの首の後ろに伸ばしてぎゅっと抱きつくことで
発見したばかりのそのことに対する愛しさをより一層
身の内に刻み込んだのだった




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