永遠の隣 2


様々な障害を乗り越えた末に やっと辿りついたこの場所
アンジェリークが求めると すぐにエルンストは抱きしめ返してくる
心の体もひとつに解け合って その一瞬は何者でもない
ただの恋人同士になる


このまま時間が止まってしまえばいい


この願いは多くの恋人達がしてきたものだったであろう
しかし アンジェリークにとっては切実な問題だった
ここ新宇宙の聖地では
サクリアを持たない普通の人間であるエルンストの寿命は 驚くほど 短い

そして アンジェリーク本人は女王のサクリアを持ち
それが宿っている限り 体の成長は緩やかすぎるほど緩やかで
尚且つ 命果てることはけしてない

アンジェリークもエルンストも 熟知している事実
変えることはできぬ運命と知りながら
それでも二人は一緒にあることを選んだのだ

しかし それでも わかっていても

わかっているから


少しでもエルンストの体内で進み続ける時間を止められはしないかと
アンジェリークはより一層 力を込めてエルンストにしがみついた
そうすると エルンストも抱きしめる腕に力を入れてくる

その拘束の苦しさは 一時アンジェリークを慰めたが
やはりそれはひとときだけのもの
すぐに もっと もっと と叫ぶ心が勢いを増して胸の中を渦巻いた

その息苦しさから逃れようと いったん力を抜いてもう一度強く抱きしめ直す
腕の位置を変え 頭を首元に潜り込ませると
頬を押し当てた部分が柔らかく 温かくアンジェリークを迎え入れた


エルンストの肌は思いのほか柔らかく
アンジェリークは猫のように二度三度 頬を摺り寄せた
エルンストが黙ってじっと受け止めてくれるのを幸いにして

しかし 何度こうしても足りない気がする

どうしたらいいかわからなかった
何をどうやっても 満たされるどころか胸が苦しくなるばかり
体に感じる心地よさが かえって飢餓感を煽っているように思えた

そうしている内に 行き場を失って溢れ出た想いが
涙となりあっという間に瞳から零れ出してしまった

(あ、やだ……!)

泣いていることを知ったら エルンストが心配する
触れ合わせていた頬を慌てて離したが それが逆効果となり
勢いに揺れた雫が一粒 ぽろりと流れてしまった

「あっ……」

思わず小さく声が出て その後アンジェリークの動きは止まってしまった
もう誤魔化しようがない
こぼれたそれはエルンストの鎖骨のあたりに落ちたはずだ


エルンストは…………
黙ってそっとアンジェリークを引き寄せ 腕の中に閉じ込めた
それは緩やかな動きだったが アンジェリークがもがいてもびくともしないほど強い拘束だった

エルンストは何も聞かない 何も言わない
それが アンジェリークにはとてもありがたかった
今考えていたことを エルンストだけには言うことはできなかったから



その日以降 二人は朝目覚めた後
しばらく互いを強く抱きしめあうという行為を続けた
どちらかが手を伸ばし どちらかがそれを受け止めて
何も言わず ただひたすらに強く抱いた


アンジェリークはもう泣かなかった
たとえ今日が エルンストが主星に行ってしまう日だとしても


朝が来て いつもの通り体全部で抱き締め合って
その後 求められてエルンストを中に迎え入れた
昨夜に引き続きのため 正直言って体は辛かったが
エルンストがしたいと言わなければ恐らく自分から言っていただろうとアンジェリークは思った

明日から20日間 会えない日が続く
それだけでも耐え難いのに エルンストにとっては1年なのだ
忘れたくない そして 忘れないで という気持ちが体を開かせたのだろうか


別れの朝 エルンストに貫かれたままゆっくりと揺さぶられ
いつもとは違う感覚が体を支配していくのをアンジェリークは感じていた
もっとそれを追いたいような しかし そうするには恥ずかしいような心地
そのうち 慣れた痛みがじわじわとやってくると 後はしがみつくしかなかった

彼を喜ばせてあげたい その一心でアンジェリークは耐える
そして今日は 特にその気持ちが強く作用していた

ひとときの さよならの前だから


「大丈夫です…………もっと……きて……!」
「アンジェ……っ!」

愛する人の名を呼ぶエルンストの声は 語尾がわずかにかすれていた
それはアンジェリークに 次に来るであろう早い動きを予測させた

アンジェリークは更に 強くしがみつく

閉じたまぶたにぎゅっと 力が入った




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