別離


「久しぶりだな。宇宙の女王アンジェリークよ。
よくここまで来ることができたものだ。誉めてやる」


(本当に……よくここまで来たな。
お前の間抜け面が、よく見えるぜ……泣きたい位にな……)


「……さあ、お前の勝ちだ。
我に止めを……!」


(相変わらずあっちこっち傷こさえてやがる。痛そうなデコしやがって。
アリオス……か……。こいつらにとっては俺はまだアリオスなんだな。
適当につけた名前だったのに、こいつに言われると
そっちの人生が本物のような気がしちまう)


「クッ……何かと思えばその話か。
我の名前はレヴィアス。
お前の知っているアリオスなどどこにもいない。
お前らの仲間だったアリオスはな」


(あの日々が懐かしいなんてな。……だがそれも遠い……)


「聞こえたか?
我は皇帝、レヴィアス・ラグナ・アルヴィース。
お前は我を倒しに来たのであろう?
ならばそこにあるその剣で、我を刺し殺せ」


(これが運命というものか。
唯一おれが愛した女エリス。そのエリスに似た女アンジェリーク。
俺は、そのアンジェリークに
恐らく、まだ俺を想うアンジェリークに、残酷な決断をさせようとしている)


「……わらぬか。
ならばこう言おう」

「他の奴らではなく、お前に殺されたいんだ。これは俺の最後の願いだ。
アンジェリーク。俺を、殺せ」


「…………!」


(泣くな。泣かないでくれ、お願いだ。
そんな顔をするな
そんな顔で、俺を見るな)


「……なんだと? 何を言っている。……やめろ!」


(俺はもうお前の体に触れることなどできない。
お前は眩しすぎる。暖かすぎるんだ)


「クックックッ……笑えるな。我が一緒に死んでくれと言ったら
本当にこちらへ来てしまいそうな勢いだ」


(そんな必死な顔をするな。
お前の命は、お前だけのものじゃないんだ。
わかってんのかよ……)

(アンジェリーク。
俺はもう、俺が作り上げた道を突き進むしかねぇんだ)


「我は、皇帝になるために生まれてきた。
それが為にエリスを失い、この世界に復讐を誓った。
そして、
我に命乞いをする、父を、母を、この手にかけた。
なんの迷いも、ほんの少しの躊躇もなく、な」


(何もかも忘れて、お前と……など
俺はできない)


「お前がやらぬなら、自らが手を下すまでだ」


(今頃……今頃になって気づくなんてな。
もう、誰かを愛するなど不可能だと思っていた。
なのに、お前が恋しい。
抱きしめて、その頬に触れたい。触れたいのに)

(しかし、さよならだ。
幸せになれ。
アンジェリーク……)


「今度、我のような、宇宙を侵略しようとする存在が現れたら
その時は、そのような甘い顔は見せぬことだな。
大切なものを、守りたくばな……」


(お前の育む宇宙はきっと
お前に似て、暖かいのだろう……な……)




◆◆◆



レヴィアスは アンジェリークの姿をその瞳に映す
そして 禁断の魔導を 己に放った

レヴィアスの身体が 放たれた部分から黒い霧となり
それはまたたく間に全身を侵食していく

消え行く間際まで 揃わぬ色の両の瞳は
しっかりとした意思をもってアンジェリークを見続けた

そして 最後に かすかに笑った


アリオスの顔で 笑い
跡形もなく 消え失せた





エル以外も万歳